沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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一年生も半分が終わったっちゅう段で、新しく「クラス代表」なるものを決めようってなった。
自薦が基本らしいのに――ウチの連中はめんどくさがりばっかなんか――いっさい誰も挙手せーへんかったんや。
ちょい最悪なことに、そのへんハンドリングすべき担任教師の女性は椅子の上で居眠りかましてやる。
せやけどどうあれ、決めなあかんことは決めなあかんやろう。
向こう見ずなオレはしぶしぶながらも「はい」って手ぇ上げた、なんせはように帰りたい、なにより即物的なんや、自覚してる。
エッセイストやったり生徒会メンバーやったり小説家やったりとそれなりに忙しくしてるんやけど、まだキャパはニ十パーセントくらいある。
ってな具合にオレは立候補したわけで、そったらや、次は女子枠をっちゅう段になって、そんな折にや、「はいはいはーいっ!!」って勢い良く声ぇ上げた女子がおった、名前は知らへん、綺麗な長い黒髪をポニーテールに結ってる、オレ的には高ポイントや。かなりかわいい。せやったらなんで今の今まで目に留まらへんかったんか――それはオレがアキラっちと彼女を取り巻くニンゲンにしか興味がなかったし、今なお、ないからやろう。
学級委員の瓶底眼鏡の太っちょがピザ声で「じゃあ、男子は犀川くん、女子はホンダさんで」って、宣言するみたいに言うた。
せやったっけ?
ホンダさんやったっけ?
ホンマによう知らへんなぁ。
「では、クラス代表は犀川くんとホンダさんで決まりです」とあらためての太っちょ、ホンマにピザ声。
オレは率直に「学級委員とクラス代表ってどこが違うんですか?」って訊いた。
「ツリー構造で言うと、このクラスにおいては僕がトップで、お二人は僕の部下です」
「部下とか嫌やさかい、せやったら断りたいんですけど?」
「僕はパワハラ上司ではありません」太っちょがなおもくぐもった声で言う。「何か命令するつもりはないし、そうでなくともお二人になら何も言うことなんてない、それが発生しようもないって思います」
まあ、そのへんは確かな審美眼ゆえの結論かもしれへんけど。
「お二人だけとは言わないです。三人でがんばってまいりましょう」
太っちょの発言は前向きすぎるさかい、リアリストのオレとしては、ちょい眉を顰めたくもなる。
「僕は統括すべき立場ですから、何か要望等あればご相談ください」
ちゅうたかて、オレとしては今のガッコに不満はないしなぁ。
そのまま六時間目が終わりを迎えた。
要るもんだけをスクールバッグに詰め込んでる段で、忙しなくアキラっちが駆け寄ってきた。
「今晩、弁当をくれてやるぞっ。悲しいかな、ウナギが余ってるんだっ」
相変わらずの語尾跳ねが愛おしい。
おぉ、ウナギ。
好物やさかい、消費期限がきわどくてもバッチコイやぞ。
そないな最中にあって、艶やかな黒髪、ポニーテールが愛らしいホンダさん――が近づいてきて、「やっほー」って手ぇ振ってみせやった。
ホンダさんはアキラっちを押しのける――ような真似はせーへんかってんけど、アキラっちは気圧されたように場所を譲ったんや。
「せっかくおたがいクラス代表になったんだし、まずはいろいろ相談しよう」とか、はつらつと言うたホンダさん、人懐こい笑顔がえらい眩しい。
オレは椅子に座ったままで――そないなオレの顔に顔、近づけてきた。
「二人きりで話そう。こういう関係になったわけだし」
こういう関係?
どういう関係なんや?
ホンダさんはいよいよオレの右手を両手で引っ張って、オレんことを立たせようとする。
そないな真似までせんでも、仕事を賜ったもんやから、「同僚」の言うことは聞いたろう思う――っちゅうか、聞いたるしかない。
ゆえに、まあ、そりゃそうや。
アキラっちは無言ながらもあきらかなプンスコ具合で場をあとにしやった。
オレは悪くないはずなんやけどなぁ……って思うのは間違いやろうか?
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校舎五階には生徒会室以外にも会議室があって――。
一室のほぼ真ん中、ど真ん中で、オレは背もたれを前にして脚割って椅子に座ってる。
なんや無意味にしか思えへんねやけど、ホンダさんは教室の周囲をくるくる歩きやる。
「そろそろ秋の文化祭だよね」
「御意にございまする」
「なあに、そのセリフ」ころころと、ホンダさんはわろた。
「わからへんなぁ。学級委員ってのは唯一のポジションなんやろ? せやったらあいつ一人で決めればええやん」
「べつにいいじゃない。下っ端にやらせたって」
「トップダウンで捻じ込まれるんは気持ちのええもんやない思います」
「変な敬語ぉ」
「――で、オレらは何を話し合えば?」
「だから、秋の文化祭の出し物について」
そんなんなんやかてええやろうが。
口には出さへんかったけど、そのへん、きちんと伝わったらしい。
「一応、意見をば。悪目立ちしてまうと仲間の立つ瀬がないやろうね」
「同感。でも、ウチのクラスはユニークなニンゲンばかりだからねぇ」
「クラス代表、今からでも辞退できへんもんやろうか」
「えーっ、つめたーい」
それはそうなんやけど、妙案がぱっとは思いつかへん。
「ホンダさん、また明日にしようや。それまでにはなんか考えとくさかい」
「ほぅほぅ。それは興味深い進言だわ」
「だわ?」
「長い時間、犀川くんと一緒だと、容赦なく妊娠させられそうなんだけど?」
「は?」
「エア妊娠ってね。あはは、冗談冗談」
じゃあ、また明日ね。
ホンダさんは身を翻して、出入口のほうへと向かう。
めっちゃ姿勢がええ、美しい背中やった。
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その日の放課後――を、迎えたばかりの時間帯。
アキラっちとさっちんとみゆきちと談笑してたところで、ホンダさんが現れたんや。
少し遠めの位置から、こっちに向かって右手、振ってみせる。
犀川くん、約束の時間だよーっ。
デカい声であり、また変な誤解を招きそうな内容やった。
さっちんとみゆきちはホンダさんのほうを見て揃って首をかしげやって、アキラっちに至っては怒りの混じった顔、しやった。
いよいよホンダさんは近づいてきた。
ホンダさんはアキラっちのほうに顔を向けると、めちゃくちゃ爽やかな笑みを浮かべた。
そこには嫌味も挑戦的な色合いもなかった。
「お三方、ちょっと借りるよ? 犀川くんのこと」
お三方とは当然、アキラっちとさっちんとみゆきちのことや。
ホンダさんはオレの右手をぐいぐい引っ張って、オレんこと立たせた。
せやさかい、もはや彼女についていくしかなかったっちゅうわけで。
廊下に出たところで、「どこ行くん?」って訊ねた。
会議室ぅ。
そないなふうに、ホンダさんは楽しげに答えた。
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くだんの会議室。
オレは今日も背もたれをまえにして椅子に座り――。
「何か案を出してくれるように言ってたふうに思うけど?」
「言い訳します。そないな暇はなかったんです」
「約束を破ったわけね?」
「そういうのは得意なんです」
だったらホント、どうしよっかなぁ……。
視線を斜め上方にやり――ホンダさんは少々困ったみたいやった。
「ねぇ、犀川くん、どうしたらいいと思う?」
「さぁ。見当もつかへんわ」
「きみは賢いでしょ?」
「ホンダさんほどやないです」
「嫌味?」
「本音やよ」
じつはね?
そないなふうにあらたに切り出した声色は事務的な今までのものとはいっぷう、ちごた。
「犀川くんの挙手がなかったら、私はクラス代表に立候補したりしなかったよ?」
「そういうケースは想定してましたぁ」
「それこそ嫌味ぃ」
「なんとでも言うてくれやぁぁぁ」
間――。
「ねぇ」そないなふうに、ホンダさん。「やっぱり七尾さんと付き合ってるの?」
「言わずもがな、やな」言うてオレは微笑んだ。「ま、向こうがどないおもてるんか、それは確かめた覚えがないんやけど」
「ふぅん」なんやつまらなそうにホンダさん。「ああ、私もカッコイイカレシが欲しいなぁ」
「ホンダさんやったら、望めばすぐやろ。はっきり言うて、いろいろ百点やぞ」
「軽いなぁ、軽薄すぎるなぁ。。犀川くんが私の何を知ってるの?」
「ああ、そういうの――めんどくさいのはホンマにかんにんです」
ホンダさんはくすくすわろて、「犀川くんの正直すぎるところ、好きだよ」――。
少し照れくさくなったとかなんとか――。。
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休み時間になると、誰より早くにホンダさんがオレんとこ来るようになった。
仕事の話もするんやけど、ほとんどは他愛もない、どうでもええ話や。
ホンダさんには最近、好きな男ができたらしい。
うまく関係が進んでもセックスはまだ先だなぁ。
――とか言いやった。
「どういう理由があれ、安売りはようないわな」
「でしょう? ――それよりさ」
「んあ?」
「いや、オナゴらの強烈に攻撃的な視線を感じるのだけれど?」
その筆頭がアキラっちであり、さらにはさっちんとみゆきちなんやろうな。
「気にしなや。ホンダさんかてオレかて誰にも不義理、働いてないんやさかい」
「えっと、その考え方は浅薄すぎて良くないと思うけどなぁ」
「そうかなぁ」
「そうだよぅ。――でも」
「でも?」
私は今の立ち位置がすこぶる楽しいんだけどね。
そない言うと、ホンダさんはニコニコわろた。
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今日の放課後はアキラっちとしゃべってた。
アキラっちは健気でおもろいヤツやさかい、否が応でも話ははずむ。
「夕食、奢ってやるぞ。何弁当がいい?」
「弁当限定かいな」
「ウチは弁当屋だからな」
「おっしゃ。そろそろソーセージ弁当のお世話になったろ」
ぶっといソーセージが五本のっててカロリーに非常に問題がある一品や、総重量かてちょうど一キログラムとのこと。
「うげげ、あたしが言うのもなんだけど、あれって評判良くないんだぞ?」
「身体に良くなさそうではあるな。せやからこそ、チャレンジしてみたいんや」
アキラっちはわろた。
「マゾいし、馬鹿だなぁ、おまえは。つくづくマゾで馬鹿だよ」
そないなふうに笑い合ってた折に、教室の前方の出入口から「犀川くーん!!」ってデカい声がした。
聞き覚えのある声で、そっち向いたら実際、今日もホンダさんの姿があった。
ホンダさんは右手つこて「来い来い」ってオレんこと招きやった。
このたびの役割の話やろうってことで椅子からすっくと立ち上がると、オレは彼女んとこを訪れた。
「たこ焼き、作れる?」それがホンダさんの第一声やった。「作れるよね? 遺伝子が遺伝子なんだから」とか小難しい語句を並べやった。
「すなわち出し物はタコパーなんやね?」
「たこ焼きは正義じゃん?」
「オレが的屋するとして、他のみなさんは?」
「このたびリサーチしてわかったことなんだけど、どこも人手不足みたいだから、そっちに派遣しようと思うんだ――どう?」
「ホンダさんが決めたことにいちゃもんつけようとは思いませーん」
だったら決まりね。
ホンダさんはウインクしてみせると、「それじゃあ先方に伝えてくるねーっ」――そない言うて、立ち去ったんや。
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放課後、またくだんの会議室で、ホンダさんと二人きり。
「まだなんか仕事あるん? だいたい終わった思うんやけど」
「いいでしょ? 独占する時間があったって」
「独占?」
「抱かれたいとまでは言わないけど、犀川くんの容姿は異常すぎるくらい美しいから」
先天的に秀でている箇所があるとするなら、それかて才能の一端なんやろう――って思うことにしてる。
――思うことにできるまでには、やや時間がかかった。
オレの白い瞳は、蛇のそれと、ホンマに差がない、気色悪いことウケアイなんやさかいな。
「私は犀川くんのことがけっこう好きなんだけどね」
「セックスでもする? 今、ここで」
「そういうのもアリかもだけど、しなーい」
「まだ仲良くなる余地があるとでも?」
「そのとおり、だよ」
とりあえず、あと半年は相棒同士なんだし、だからこそまあ、関係が発展しないとも限らないんだけど――とか、ホンダさんは口元緩めて。
それから邪な笑顔を口元に貼りつけながら、「確実に、女のコ連中に妬かれちゃってるよね。まあそれもこれも含めて楽しいんだけど」
ったく、なんたる性悪か。
「ホンダさんの元気いっぱいなポニーテールはかわいい」
「なに、いきなり」
「素直にそうおもてるっちゅうだけやよ」
着信音、LINEやった。
ホンダさんに断り入れてから確認、アキラっちからやった。
『ままっ、待ってるぞ、今日は待ってるぞ!!』
まったく文章でどもるとか、いっつもいったいどういうことやねんな、どういうつもりやねんな。
ともあれ、オレは椅子から腰ぃ上げた。
帰ります。
そう告げた。
「ああ、でも、送ってかなあかんとかやったら――」
「だいじょうぶ」にこってホンダさんはわろて。「私も友だち、待ってるから」
「男ですか?」
「気になる?」
「気にせんようにしとくわぁ」
オレはぺこりと頭下げると、教室を後にした。
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夜、22時過ぎ。
アキラっちの自室におる。
アキラっちが、めんたいのりから弁当を持ってきてくれた。
目いっぱいの白米の上に明太子が塗られてて、その上にありえへんくらい巨大な鶏のから揚げがのってる、これほどジャンキーでギルティな食べ物をオレは知らへん。
オレが食べてるあいだに、アキラっちが熱いお茶をそそいでくれた、まったく気が利く、小さい頃から生真面目さを口酸っぱく説かれたに違いない、律義な性格なんや、ずぼらなところなんてあろうはずもないんや。
ホンマにめんたいのりからは異常なほどうまい。
発案者らしいアキラっちのじいさまには感謝しかない。
もぐもぐ食べながらにこにこしてたら、アキラっちが「おまえは単純だよなぁ、馬鹿だよなぁ」とかいっぷう、非難してくれた。
否定のしようがない。
しようがないから、オレは弁当を掻き込むことに終始する。
そして、唐突に――。
「あ、あたしも髪、伸ばそうかな……」
「んあ? そりゃまたなんでや?」
「だって、あのコのポニーテール、むちゃくちゃかわいいから」
「ああ、ホンダさんのことか」
「目鼻立ちも整ってるしな。なんか、ミスった気がしてるんだ」
ミスった? 何をや?
オレはそないなふうに問いかけた。
「クラス代表とか面倒なことだろうと思って立候補しなかったんだ。だから今、後悔してるんだ」
「ああ、なる。そういうことか」
「そうだ。あたしが手を上げていれば、こんな気持ちの悪いことにはならなかったんだ」
苦笑じみた笑みのアキラっち。
「そない気になる? ホンダさんのこと」
「だって、だってさ……」一転、アキラっちは沈んだ声で言う。「ホンダさん、ホントにめっちゃかわいいじゃんかよ……」
「オレかて髪長い女のコ、めっちゃ好きやけどさぁ」
「うっ、ううぅぅぅっ」
「せやけど、ショートボブなアキラっちがいっちゃん好きや」
アキラっちがいよいよ泣きそうな顔しやる。
せやけどすぐに気を取り直すように明るく笑みやった。
「こ、今夜はどうする? 泊まっていくか?」
「そのつもりやから一式、揃えてきたんやぞぉ」
「シングルのベッドしか、なっ、ないんだぞ?」
「狭いベッドのが気が利いてる」
「だだだっ、だろ?」
つーか、オレのほうが髪、切ろっかな。
そないに言うと――。
「い、いいじゃんか、おまえは、それで」
「おまえ、こないだ、男のロン毛はみっともない、みたなこと抜かしてくれたやんか」
「言ってないっ、気のせいだ、そ、そんなの」
アキラっちはちゃぶ台を迂回して隣に来た。
少し前屈みになって、オレの前髪にそっと触れて、それから後頭部をがしがし掻いてくれた。
オレはほんの少しだけ怪訝な顔を寄越したかもやけど、にへへって歯ぁ見せてわろたアキラっちの、かわいいこと、かわいいこと――。