沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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自宅のベッドで目ぇ覚ました――らしい。
オレがごそごそ蠢くと、「よぉ、おはようだな、イクミ」とか至極フレンドリーな女子の気持ちのええ声――。
アキラっちはベッドのフレームに背中預けて、スマホ、操作してやった。
ふあぁ――って、オレはあくびをし尽くしたって。
「悪いなぁ、アキラっち。オレはおまえとのセックスに疲れて眠ってしもたんやな」
「ばばば、馬鹿言え、ししし、してないぞ、そんなこと」
「えっ、胸にも触らへんかった? その巨大なバインバインすら無視した?」
「そそそ、それはまあ、いろいろ要求されたし、だからいろいろ手伝ってやったというかなんというか……」
「要求? 手伝った? ぱふぱふというか、もっと言えば挟んで――」
「ばばば、ばかっ、死んじゃえっ」
オレは勢い良く身体起こして、そったらアキラっちは「うひゃぁっ!」て驚きやった。
「い、いきなり派手に動くなよ、ビックリするだろ?」
「ソシャゲは楽しいかぁ?」って、オレは訊いた。
「うん、どれも、それなりにな。でも、課金兵にしか用事がないのが軒並みってカンジだ」
「なるほどなぁ」
「ああ、だからかえって中毒者が出ちゃうんだろうな。メメたそとか飛鳥井くんもそんなこと言ってたよな」
オレはベッドの上、アキラっちの右隣に座った。
「うああぁぁ、眠いぞぅ、めっちゃ眠いぞぅぅぅ」
「だったら寝てろよな、馬鹿野郎。べつにどこにも急ぐつもりはないからな」
「そこにあるのは愛って概念か?」
「概念とか難しい話は知るかよ」
真っ白なTシャツにタイトなデニムパンツ、10月も結構過ぎたのに意外と薄いファッションやなって知る。
「アキラっち、今日は暑いんか?」
「暑いぞ、まさに残暑だ」と、アキラっちはきっぱり。
「どっか行きたいとこある?」
「ゲーセンだ。UFOキャッチャーでジャギのヘルメットが欲しいんだ」
ジャギさんのメットとか、いったいどういう趣味してんねん。
「ラゾーナ行こうぜ。水谷豊が来るらしいんだ。きっとすっごい盛況になるぜ」
せやさかい、どういう趣味してんねんな。
なんのつもりか、アキラっちがじっとこっちのこと、見つめてきた。
「そうか。おまえは眉毛もまつげも白いんだったな」
そうやよ。
ご存知のとおり、何もそれって今に始まった話やないぞ?
「出歩くにあたっては空腹感がぁぁぁ」って、オレ。
「くだんの有名エナジードリンクを買ってきてやったぞ。ピンク色が眩しいパイプラインパンチだ」
「うへっ、ソレはヤバいやろ? ギンギンになってまうぞ。それともアキラっちはじつはそれを期待して――」
「たたたっ、他意はないんだぞ? ほんとうなんだぞ? でも時に男はギンギンであったほうがいいとも思うんだぞ、男のコ的に」
なんとも、おっしゃってることは意味不明で不可解。
「まあええわ。お好み焼きでも食べて、それから出動や」
「いいな、お好み焼きっ」はずんだ声で、アキラっち。「恋人同士趣味が合うっていうのは尊いよな!」
それ言うと、バインバインはもっと尊いんやけどな。
最近、アキラっちは恋人って言葉を抵抗なく遠慮なくつこてくれてるように思う。
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おねえさんが一人でやってる店でお好み焼きと焼きそばをめっちゃ食べて、それから京急蒲田に至り、それから川崎まで移動した、京急川崎な。
そこからJRの駅にまで進んで、おおう、ホンマや、ラゾーナで水谷豊が歌うてやんぞ。
アキラっちはミーハーなところがあるさかいノリが良くて、渋い感じでうとてる水谷豊に向かって「ゆたかぁ! ゆたかあぁ!!」とか叫びやった。
いや、まあ、それは悪くないんやろうけどさ、仮にも水谷豊なんやぞ? 人生の大先輩なんやぞ? せやったらもっと敬意を払ってもいいはずでやな。
「おーいおーい水谷豊ぁ、ぜひともこっちを向いてくれぇぇぇ」
ミーハーすぎて鼻血が出そうや。
そんなんをこらえつつも、どうしたってアキラっちは水谷豊氏が好きらしく、奴さんが去るまで大きく右手ぇ振ってやった。
満足したらしいわ。
アキラっちは「もういいぞ」とかさっぱり言った。
「ええんか? ある意味、思い人やったんやろう?」
「それはそれ、これはこれだ」
「ホンマにええのん?」
「あたしはさっぱりしたニンゲンのつもりだぞ」
どう考えたって、そうは思えへんねやけど。
「水谷豊はほんとうにもうどうだっていい。暴言かもしれないし、暴言なのかもしれないけど、ホント、それでいい」
「せやったらどないする?」
「おまえが川崎まで連れてきたんじゃんか。だったらおまえが好きにしていいぞ」
そういうことならオレがやりたいことは決まってる。
オレは確認する意味で、「ホンマについてくるかぁ?」って訊ねた。
そったらや。
「どこにだって行くぞ。それが恋人ってもんだろ?」
今日はなんとも「恋人」連打。
ホンマ、照れ屋のアキラっちはどこでそないな愛らしい言葉を習ったんや?
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ラゾーナのフードコートでお茶しながら。
「おぉ、このコーヒーはうまいぞ、美味だぞ」
まったくもって、アキラっちの舌は高価やないんや。
「で、イクミは何を買いたいんだ?」
「ツナギや」
「へっ? ツナギ?」
「たとえばや、オレは同じ画、同じ柄の服着て、おまえと一緒に天下の往来を歩きたいわけや」
お、おおぉぉぉ、そういうことなのか――って、アキラっちは死ぬほどビックリしたみたいやった。
「だ、だけど、ペアルックは、さすがにダサいぞ? ダサいんだぞ?」
「ツナギは別やろうって考えたわけや。ツナギはおそろでも、そこまで間抜けやないやろ?」
「それはそうかもしれないけど……って、もう言いようがないな。おまえが、イ、イクミが決めたことだったんだったら……いいよ、べつに」
「アヴィレックスがあるんやぞ。ラゾーナは有能なんやぞ」
「ななな、何言ってるのかまったくわからないけど、用は足すんだな?」
「まあついてこいや。ツナギは楽で楽ちんなんやぞ?」
「な、なんで楽を二回も言ったんだ?」
「大事なことやさかいな」
「ま、まぁそうか。そうなんだな?」
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オレらは「アヴィレックス」を訪れたわけや。
ミリタリー的なファッションが主なわけで、せやさかい、茶色い店内はなんとも言えへんオモシロ加減な重厚さに満ちてる。
オレは前にこの店で以前、ボディーバッグをこうた。
そのへん、若い男性店員さんは覚えてくれてたらしくって、「イクミくんだよね? きみが目立たないわけがないよねぇ」ってことやった。そういやけっこうしゃべったっけな。オススメを教えてくれたんもしっかり覚えてる。
「で、今日は何を見にきたの?」
「それがですよ中性的な男性店員さん」
「いきなりあらたまった言い方だね」
「まあ聞いてくださいよ。ツナギを買いに来たんです」
「いいね、それ。ウチのツナギはサイコーだから。といっても、見繕うほどの種類も数もないんだけどね。一騎当千なんだ」
ほならかえって諦めがつくっちゅうもんや。
「そちらの彼女の分も――っていうことかい?」
そったらアキラっちは慌てたようにぺこぺこ頭下げやった。
「むむむ、胸が大きいと、ややややっぱりサイズはないですか」とかどもりながらえらいこと言いやった。
「いや、そんなことはないよ。もともとツナギは大らかに作られているからね」
とっとと選ぼうやないか。
オレがそないに言うたったら、アキラっちは「う、うんっ」ってやっぱりどもりやった。
オレは飾られるようにして壁にくっついてる、問題のツナギんこと見つめてる。
「店員さんのおにいさん、オレにはLがぴったしみたいなんやけど」
「それはだよイクミくん、ツナギっていうのはね、ジャストサイズで着るものじゃあないんだよ」
「そうなんですか? って、ああ、たしかにそうかもしれへんなぁ」
「うん、ワンサイズ上でいい。XLをオススメするよ」
もはやオレは当該店員さんをメチャクチャ信頼してる。
せやさかい、言われるようにしたろうおもた。
「はいはいはーいっ」はずんだ声でアキラっちは言うと、「あたしもサイズは上のほうがいいですかあ?」って訊きやった。
くだんの店員さんは「だ・か・ら、きみはきみで大き目のサイズにしたほうがいいよ。なにせ」――。
「うああぁぁ、うああぁぁ、おにいさんもあたしの胸の大きさを考慮されるんですね? そうなんですね?! でもせっかく買うんですから親身になっていただけたほうが嬉しいですっ!!」――。
アキラっち、どうやらこの店員さんに対しては防御せーへんって決めたらしい。
信頼がおける――そないなふうに感じ取ったからやろう。
「僕はただの店員さんだからさぁ、思ったこと感じたことを、言ってるだけだよ」
そったらアキラっちは深く理解したように、納得したように首を縦に振って。
「了解しました。このツナギが欲しいです、いただいていきます」
「お二人の仲に幸あれ」
「えっ?」
「きみたちは気持ちのいい関係らしいから、僕は心から、祝福したい」
店員さんの物言いを聞いてアキラっちは頬を赤らめて、せやけど、「ありがとう……」って正直に言うたんや。
*****
オレは今、右手にアキラっちとオレの着替えが入った紙袋を下げてる。
アキラっちと二人しておそろいのツナギを着れてることは気持ちがええ。
「きっとあたしたちは馬鹿みたいだよ。やっぱペアルックってダサいよぅ……」
「せやったら訊くけど、おまえはそないなおまえが嫌なんか?」
「そうじゃないから困ってるんだよ」
「困りなや。ええやんか、そこにはお互いの愛があるんやし」
「あっ、愛とかっ」
「えっ、ちゃうん?」
「ちゃうんじゃないけど……」
手ぇつないでる。
お互いにそうしたいんやから、そこに疑問符を設ける余地なんてないわな。
「マジはずい。どうしよう……」
オレはアキラっちの右手を、アキラっちが「痛いっ」って述べるくらいに握り締めた。
「痛いよイクミ、ほんとうにやめてくれっ」
「せやったらやめるけど?」
「うっ、うそだ。今のは嘘だっ。もっと強くしてもらってもかまわないんだっ」
ツナギ、嫌じゃないんだぞ?
アキラっちがそない言うもんやから、オレはオレで嬉しくなって。
オレはアキラっちの右手を左手でさらにさらーに強く握った。
かなり強い力やったはずで、せやけどやっぱりアキラっちはなぁんも言わへんかった。
愛し合うことはカンタンなんやろう。
たぶんそれは「トコシエ」に続くことで、せやからこそ、「今」のオレは、気持ちがええんやろう。