沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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夜、「そろそろ寝るかぁ」っちゅう段にあって着信音。
出てみたら、おとんやった。
『明日、フウカちゃんがそっちに行くんや。どうか面倒、見たってくれや』
……は?
じゃっかん戸惑い、眉根が寄った次第――
フウカっちゅう名前には聞き覚えがある。
そう遠くはない親戚の女のコ――やったはずや。
『明日から週末や。かまへんやろ? ちゅうかお願いしますやで、我が息子』
「特に予定はないさかいええんやけど、とはいえそういうことはもうちょい早めに言うてくれへんかなぁ」
『阿呆を抜かすな。斜陽の牧場にかてやることはあるんやど』
「忙しいわけがない。虚言を抜かす親父殿に死を」
『やめろやめろ。わしは偉いんやど』
酒ぇ飲んでるんやろう。
上機嫌な時は決まってそうや。
今度新潟の地酒でも送ったろう――っちゅうオレはなんて優しいんやろう。
にしても、町内会レベルの雑談でしかあらへんな。
とりあえず、親父が風呂敷たたむことができへんニンゲンやとまでは言わへんけど。
オレがなんやアクション起こす前に、向こうから通話を切られた。
フウカちゃん、フウカちゃんなぁ。
会うのは五年ぶりくらいやろう。
っちゅうことは、彼女、もう中学三年くらいなんかぁ。
訪ねてきやるようなら相手したるしかないわな。
ええコやったって記憶してるから、アテンドしたっても楽しいことになるやろうって予測できた。
ホンマに――望む望まんは抜きにして――最近、女のコの相手してやることが多いなぁ。
今度の相手は親戚のコやとはいえ、オレのモテキは継続中なんやろうか?
まあええわ。
おのぼりさんに愛を――。
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懐かしいことに、フウカちゃんからLINEがあった。
家で待っててええらしい。
ほならと我が自宅にて待機することにした。
ちょいとばかし眠いんを我慢して、到着を待った。
まだ昼前の、比較的早い時間帯や。
インターフォンが鳴って、出てみたらおさげ髪に丸眼鏡のフウカちゃんの姿があった。
上から下まで田舎っぽい、っちゅうか田舎臭いだぼだぼなファッションなんやけど、得も言われぬかわいげがあるところは変わってへん。
ああ、そうや。
フウカちゃんの素直そうなところはなぁんも、変わってへん。
「イクミおにいちゃん久しぶりです。おにいちゃんがアルビノという品種だと最近知りました」
フウカちゃんは心底感慨深そうに言うと、にこって笑いやった。
品種とか――。
「フウカちゃん、正直オレ、きみの記憶があんまりないんやわ。ごめんな?」
「かまいません。私が知るかぎり、イクミおにいちゃんは他人に興味がないヒトですから」
なんともヒドい言われようやけど九割は正解やさかい、いちゃもんつけられへん。
「早速の相談なのですけれど、今晩、泊めていただいてもよろしいでしょうか?」
「かめへんよ。歓迎する」
「彼女さんの二人や三人、いらっしゃるのでは?」
「二人以上おったら問題やなぁ」
「一人はいらっしゃるんですね? そのヒトには怒られたくありませんから、別に宿を探します」
気にすな言うてんねん。
オレがそない言うたらきょとんとなって、それからいそいそと「でしたらお願いします」――。
「ホンマに任せとけ。今日明日はしっかり向き合ったるぞ、フーちゃん」
ああ、そうやな。
オレは「フーちゃん」って呼んでたんや。
「秋葉原に行きたいです」
「そりゃええけど、あっこ、じつは全然なぁんもないぞ?」
「それはおにいちゃんの価値観ゆえの評価です」
ふーむ。
そこまで言うてくれるんやったらポジティブさをもってつきおうたろうやないか。
「話がついた以上、早々に出発したいところですけれど、まずはシャワーを浴びさせてください。家を出る前にお風呂には入ったんです。しかし東京だからでしょうか? なんだかすごく蒸し暑く感じられて」
どうやらフーちゃんはめっちゃ綺麗好きらしい。
*****
京浜東北線の車中。
それなりにヒトがおるさかい、フーちゃんと二人して吊革に掴まりながら。
「んで、なんのフィギュアが欲しいんや?」
「私の初恋の人であり、私の教祖様でもあらせられる、某ルルーシュさまです」
某を付けてるだけで全部言うてしもてるやないか。
「資金は? いくらなんや?」
「三万円です」
「ほえぇ、ブルジョワやないか」
「バイトして貯めました」
「なんのバイト?」
「新聞配達です」
おぉ、なんとも尊い。
健気やないか。
せやったら、せめてっちゅう話でな――。
「メシんことは任せろや。食いたいもん食わせたんぞ」
「いいんですか?」
「おぅ」
「っていうか、おにいちゃんは稼ぎがあるんですか?」
「それが、あるんやな。オレかてバイトが順調でな」
だったら甘えます。
すぱっと言い切りやったフーちゃんの気持ちのええこと、ええこと。
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秋葉原でフィギュアショップめぐり。
ホンマにアニメとかマンガとかが財を成す、大げさに言うてまうと虚構の街、嗜好と憧憬の集合体。
ちょいこないだまでただの電気店街やったらしいのに、どこをどないしたらこないな意味不明な一角に成り果てるんか。
そのうち、フーちゃんは目当ての――っちゅうか、気に入った商品に出くわしたらしい。
「うあぁ、これは掘り出し物ですよ、絶対にそうですよ」
某ルルーシュさまが「ゼロ」の恰好してるんやけど、マスクだけ取ってる。
たかがフィギュアやのにめちゃくちゃ強大かつ高貴かつ圧倒的なオーラ放ってやる、せやからこそ、ルルーシュはホンマに恐ろしい。
軍資金は三万や言うてたけど一万ちょいで買えたもんやから、フーちゃんときたらご満悦や。
「二万円余りました。私だって奢りたいです」
「言うたぞ? 年上に恥かかせんなって」
「見栄っ張りはどうかと思います」
「女のコに伝票持たせるわけにはいかへんっちゅうだけの話やよ」
「だったら、お言葉に甘えます」
「ああ。二度も三度も言わせんな。任せとけや」
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オレんちに帰る途中の電車ん中でネットつこてピザ頼んだ。
フーちゃんに「ピザなんかでええん?」って訊ねたんやけど、「ピザがいいんです」――。
ああそうかって気づきがあった。
北海道の片田舎なんかにはまともなデリバリーがあるはずがない。
フーちゃんには、人件費のカタマリにすぎへん宅配ピザすら愛おしく感じられるんやろう。
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家に着いたところで、まもなくしてピザが到着した、ドミノピザ、Lサイズが二つ。
フーちゃんはシャワー浴びてやる。
オレは幾分おっきな声で、「ピザ来たでーっ!!」
聞こえたらしくって、「もうあがりまーす!!」
やがて風呂場の方からフーちゃんがぱたぱた駆けてきた。
上はぶかぶかの白いTシャツなんやけど――。
「フーちゃん、ブラとかパンツとかつけへんのん? やめぇや。気ぃつけぇや」
「お言葉ですけど、だったらイクミおにいちゃんは私に欲情するんですか?」
「さあ、どうやろうな」
「それって『せーへんわ』って言うてるようなものです」
「そうやとしてもやなぁ」
「襲われたって文句は言いませんから、好きにさせてください」にこっとわろてみせたフーちゃんやった。
「あっ、迂闊でした! タバスコがありませんっ!!」
「まぁったくや。今日日コンビニでも置いてるやろ。こうてくるわ」
「一宿一飯の恩です。ゆえに私が行ってまいります」
「せやさかい、ノーブラでふらふらすんなってば」
オレは腰上げた。
タバスコがないと画竜点睛に欠けるんやさかい、やっぱ要る。
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おみやげにマウントレーニアのカフェラテこうてきたったもんやさかい、それ飲みながら、フーちゃんはぱくぱくピザ食べやる。
「ピザってこんなにもおいしいものなんですね。愛おしい、愛おしいです」とはフーちゃんはご満悦の様子。「ホント、ウチの周囲にはピザなんていう概念すらありませんから」
「宅配ピザには失礼かもやけど、とりあえずうまいもん食わせてくれ言うんやったら、他のジャンルの店かて紹介してやれたんやぞ?」
「私は今、とても感動しています。だからそれでいいんです」
そこまで言うんやったらっておもて、いたずらにツッコミは入れへんことにした。
「イクミおにいちゃん」
ピザ食べるの止めて、マウントレーニア一口飲んで、それから神妙な面持ちで「イクミおにいちゃん」ともう一度――。
「なんや? 改まってからに」
「最近、失恋しました。彼は私とセックスすることが目的だったみたいです」
は? 失恋?
セックス?
オレはフーちゃんのこと見て右側にこてんって首倒した。
「私はまだ中学生なんですけれど、どうやら肉体を求められたようなんです」
悲しそうに、わろたフーちゃん。
そう、か。
中学生のくせしてセックス、か。
――ま、アリっちゃアリやろう。
チューボー男子の下半身なんて、猿のそれでしかないやろうからな。
「――で? 恋多き年頃のフーちゃんは異性に対してゲンメツした?」
フーちゃんはその問いには答えずに――。
「男性を受け容れることには寛容であるつもりです。でも、悔いだけは残したくないですよね」
フーちゃん、おまえは、男になんて言われたら納得すんねんな?
オレはまあ、そないなふうに訊ねたわけや。
「あるいはそれって、『オレの赤ちゃんを産め』ってことなのかもしれません」
「フーちゃん、それは間違いやぞ」
「そうでしょうか」
「一瞬でも『あかん』って感じたら突っぱねたほうがええ。ホンマに好きな男が見つかるまでは身持ちは堅いほうがええ」
フーちゃんはビックリしたみたいに目ぇおっきくしてから、おかしそうにくすくすわろた。
「性欲の権化みたいなイクミおにいちゃんにそんなふうに言われるなんて」
なおも、ころころわろてみせた。
オレは眉寄せて難しい顔をする、「知ったふうな口利きなや」って注意した。
「わかりましたっ」語尾跳ねで、フーちゃんは勢い良く。「いいおみやげができました。今回の一人旅は大成功でしたっ」
「どのへんがや? 目当てのルルーシュ買えたからか?」
「そのへんはご想像にお任せします。フーは明日、地元に戻ります。ほんとうに、ありがとうございましたっ」
「おう、達者でな」
フーちゃんは腰を上げて、オレもそれに続いて。
フーちゃんとハグして、そったら「ありがとう、イクミおにいちゃんっ」ってはつらつと耳元で言われた。
*****
オレんち。
夕暮れ時が終わった暗い時間帯、オレはキッチンに立って、アキラっちはっちゅうとちっこくてまあるいちゃぶ台の前でスマホいじってやる、たぶん、今日もストラテジー系のソシャゲで遊んでやるんやろう。課金なんて滅多にせーへんっちゅうんは事実らしいけど地道にしこしこやってるあたり、案外おもろいゲームなんかもしれへんな。
「なー、なあなあなあなあ、イクミイクミぃ」
スマホ見ながらなんとも気だるげにめんどくさそうに、そないなふうにアキラっちは呼びかけてきた。
「おぅ、なんやぁ?」
「すごくすごくピリ辛な匂いがするぞ。エスニックな感じだ。何作ってるんだ?」
「アラビアータや」
「おぉ、アレか? ペンネ的なアレか?」
「そうや。オレかて料理できるんやって謳ったらんと」
「謳う? 誰に対してだ?」
「誰でもええやろぉ」
ペンネを茹でただけや。
あとはレトルトの「素」をひっくり返して和えるだけ。
出来上がった真っ赤さも鮮やかなペンネアラビアータをトレイにのせて進む。
まあるくておっきな皿をちゃぶ台にのっけても、アキラっちはまだスマホいじってやる。
せやけど、五秒と待たずにさっぱりと操作するんをやめやった。
「マジ誤解すんなよな。ゲームなんてあくまでもの二乗で暇潰しでしかないんだから」
そうなん?
そない問いつつ、オレは左のほうへと首倒した。
「ヒトがこしらえた庭で遊ぶことに時間と金割いて、何が楽しいんだよ」
それはまあ、そのとおり。
熱心な課金兵が聞いたら怒りそうやけどな。
「まあええわ。とりあえず、メシにしようや」
「ほーい」
アキラっちは細身のフォークを手にしやると、早速、ペンネをつつきやった。
うひっ、からいからい!
っちゅうことらしいけど。
からいからいをくり返しながらペンネ食べてそれからドリンクを口にするアキラっち。
「ドリンクがジンジャエールってのはイケてるよな、さすがだ、おまえは、イクミさんよぉ」
なんや意外なとこで褒められてしもた。
「そもそもルルーシュが好きだっていう時点で見る目があるぞ」
「ウチのフーちゃんの話かぁ?」
「そのとおりだ。フーちゃんとあたしはきっと気も話も合うんだぞ」
「そうかね」
「そうだよ、そうに違いないんだ」
アキラっちはにひひって笑いやると、なおもばくばくペンネを食べた。
からいからいとは続けやるんやけど、お気に召したらしい、「おまえは料理の才能があるのかもしれないな」とまで言うてくれた。
やっぱオレの第一希望の就職先は「七尾の弁当」――その跡取りなんやろう。