沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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瞳の色まで白い、言ってみれば不健康そうでしかないオレやけど、ところがどっこい、原則、元気や。
日差しに晒されると肌は痛々しいまでに真っ赤になるんやけど、それでも基本元気いっぱいなんや、オレは結構頑丈なんや。
「メガネを買うぞ。ついてこい、イクミ」
力強い感じでそない言うアキラっちに伴われてきたわけやけど、どこにって、そりゃ我が庭と言うてええ「蒲田のグランデュオ」の眼鏡屋や。
今、アキラっちは前屈みになって――前屈みやさかいバインバインのπが余計に重そうに見えるんやけど――そのへんさておき、熱心に品定めしてやるみたいや。
「どれでもええやろ」ってテキトーに声掛ける。
そったら、「馬鹿言ってんじゃねー」とか返してきやった。
「メガネってのは高級品なんだ。フレームとレンズが織り成す高価な反則技なんだ。ちっこいくせにメチャ高いんだ」
それは知ってるつもりやけど――。
「福井がダントツなんだぞ。地味な県なのに、メガネについてはそうなんだぞ」
地味とか言わんほうがええな。
積極的な当該のニンゲンに刺されかねへんさかい。
「なにより、まずは視力検査からだよな」
おおぅ、ここに来てそこに気づかれましたか。
「よよ、よし。視力検査、してもらうんだぞ」
なんでどもんねんな、いきなりの緊張か?
今の今まで堂々としてやったくせに。
そないな折のことやった。
ようやくと言うてええタイミングで店員さんがやってきやったんや。
遠目に見てたんは知ってたんやけど、いよいよそっと、そばに寄ってきたんや。
顔がめっちゃちっちゃいイケメンや。
申し訳なさそうに微笑むんはなんでなんか、そもそもただただそういうキャラなんか。
「しししっ、視力検査をしたいです!」アキラっちはいっそう激しくどもりやった。
どうあれ気がちっちゃい女のコなんやさかい、無理もない。
イケメンの店員さんがいよいよ近づいてきた。
べつに恥ずかしがりとか、そういうわけでもないらしい。
奥ゆかしいニンゲンで、せやさかい人当たりがソフトなんやろう。
「ウチの視力検査はオススメできません」
とか店員さん――イケメンメガネさんは突拍子もなく言いやった。
「へっ?」アキラっちは唖然となったみたい。
「ほんとうなんです」イケメンメガネさんは気まずそうに笑みやった。
「どういうことなんですか?」とアキラっち。
「言葉どおりの意味です」苦笑に違いないイケメンメガネさん。「視力検査をするのであれば、きちんとした眼鏡屋さんのほうがいいですよ」
自分の仕事を否定するようなことを言いやったな。
せやけどそのへん、なんや、理解できるような気がした。
「メガネ売りたいだけやったら、検査なんてそこそこでええわな」ってオレは知ったふうな口を利く。「だってメガネが売れればそれでええんやもん。需要としてはひょっとしたら必要性よりファッション性に駆られるニンゲンが多いんかもしれへんねんから、そりゃあそのとおりやわな」
綺麗な関西弁ですね、いや、大阪弁かな?
イケメンメガネさんはようやっと、心からの笑顔を見せてくれたように感じられた。
「イケメンメガネさんは関西弁と大阪弁の違いがわかるん?」
「なんとなく理解できます。イケメンはやめてください」
「せやけどオレ、あなたの名前知らんさかい」
「スギヤといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそぉ」オレはきっぱり、九十度のお辞儀をした。
お辞儀の仕方を心得ていらっしゃるんですね。
スギヤくんは感心したみたいに言うた。
アキラっちは品定めを繰り返す。
オレは「まずはしっかり視力検査らしいぞぅ」ってあらためて訴えたんやけどそったらアキラっちは、「フレームがカッコよければいいんだよ。あたし、目なんて悪くもなんともないんだから」――おっと、ついにつまるところを白状しやったなぁ?
「メガネって、いいですよね。かけるヒトによるかもしれませんけれど、いや、そうじゃないのかな? ――とりあえず、カッコよくなりますから」
「イケメンのスギヤさんよぃ」
「はい、スギヤです。イケメンと言われると気が引けてしまいますけど」
「スギヤくんのデフォルトはそないな細身の眼鏡なん? あるいはキャップかぶるときは太い黒縁やとか?」
「普段はこの眼鏡ですね。眼鏡なんて、やっぱりストレスフリーがいいんです」
「ホンマ、羽みたいなつくりの軽そうな眼鏡やもんな」
「目下好評すぎて、売り切れです」
少し気まずそうに笑んだスギヤくん。
「で、や、スギヤくんよい――って、スギヤさん言わんでタメ口でもええんでしょうか?」
「かまいません。あなたは卓越しているようですから」
「せやったらスギヤくん、スギヤくんは訛ってる。どっか地方の育ちなん?」
「それが、生まれも育ちも東京なんです」
「えーっ、そうなん?」
「趣味はサイクリングです」
言うて、スギヤくんは右手でサムズアップしてみせやった。
「サイクリングは危ないんですよ。雨の日なんかマンホールに乗り上げただけでこけそうになりますから」
誰もそないなこと訊いてないんやけど。
そったらそったらで、「誰もそんなこと訊ねてないですよね」って――スギヤくんは勘がええらしい。
「ほんとうに綺麗なカノジョさんですね」
「おぉ、スギヤくんってばわかってるなぁ」
「女性として隙がありません」
「慧眼なんかな?」
「そういうわけでもないんですよ。ただ、女性の美しさについては、それなりにわかっているつもりなんです」
言いにくそうにしたスギヤくんを見て、すぐに覚った。
ま、そのへん、多様性の時代の本質やっちゅうこっちゃな。
「とにかく胸デカいやろ、カノジョ」
「不満なんですか?」
「本人が気にしてるんよ」
「フツウに魅力的です――なんて言っちゃう俺はダメなのかな?」
「そのへん、べつにどうやかてええって思うけどな」
「どうあれ彼女が特別であることに間違いはありませんから」
そのとおり。
ごもっともやぞ、スギヤくん。
――と、そないなオレらのやりとりなんて素知らぬ様子で、アキラっちは眼鏡の品定めを続けやる。
「よし、わかったぞ」
おぉアキラっち、何がわかってんな?
「あたしはこの細く尖った奴にするぞ」
とにかく透き通った、フレームの面積が小さいメガネや。
「こいつはストレスフリーだぞ、ふははははっ」
まあそうかもしれへんけど。
これください。
アキラっちはスギヤくんにそう言いつつ、ちょい照れくさそうに、目当ての品を右手で指差しやった。
「アキラっちよ、で、なんぼやねんな?」って、オレは早速、下品なこと訊いた。
そったら、「ニーキュッパだ」――。
抜かせ阿呆が、旧で言うたら諭吉が三枚飛ぶやんけ。
そないなふうにオレは文句つけようとしたわけやけど、スギヤくんは隙がないな、「ありがとうございまぁす」って軽やかに言うて、注文された品を持ってそそくさと奥に消えやった。
「待てや、アキラっち。オレは思うぞ。あないな細くて頼りないもんに三万も払うんか?」
アキラっちってば、ここに来て意外そうな表情を浮かべやった。
「イクミ、それ、本気で言ってるのか?」
オレはオレで眉寄せた。
「っちゅうと?」
「デカいとか小さいとか、太いとか細いとか、物によっては関係ないじゃんか。たとえば今、あたしが注文したメガネの原価、フレームとレンズだな、そのへん、おまえはパッと思い浮かぶのかよ」
お、おおぉぉぉ、なんちゅう理詰め、意外や、そないな真似がアキラっちにできたとは。
そもそもや、アキラっちは殊の外控え目やさかい、強く言うてくるんは想定してへんかった。
せやけど、っちゅうたかて、とにかくこのたびアキラっちが口にしてることは、問答無用でいちいち正しいな。
「いい買い物ができたぞ。リアルにいいメガネが欲しかったんだ。ホント、あたしだって年頃だからな」
ぬあぁぁぁ、そこまでカワイイ笑顔向けられたら折れるしかないやろぉぉぉっ。
「わ、悪かったな、しょうもないことに付き合わせちゃって」
いいや、そないなことはないんやぞ。
「ホント、ありがとうな、いつも、いつも」
そない言われると照れるしかないんやけど。
「にしても、蒲田って魔境だよな。ダサくて小さな街のくせして、こじゃれた眼鏡屋があるんだから」
そんな、蒲田のニンゲンみんなを敵に回すようなことは言わんでも――。
*****
もはや深夜と呼べる時間帯。
今日はアキラっちんとこに泊まってくことにして、その準備をしたうえで、オレは今、アキラっちの部屋でアキラっちと一緒におるんや。
アキラっちの自室にて。
こうてきたばっかりのメガネ姿のアキラっちは卓上の鏡を見ながら「うふふ、うふふ」とか気持ち悪くわろてやる。
本人的にはいたくお気ににらしいけど、自慰的に自らに酔いしれるあたり、それはどないなんやろうか。
「イクミ、これでメガネプレイができるぞ――って、はぅあっ!!」
自分で言うたことのミスにソッコーで気がついたらしい。
メガネプレイとか。
抱く抱かれるの話に趣味嗜好を持ち出すとか。
アキラっちが立ち上がった。
オレの近くまで来ると、オレの頭のてっぺんをばしばしばしって叩きやった。
「痛いやんけ、アキラっち。オレはなぁんも悪いこと言うてへんやんかぁ」
「メガネをかけたあたしとエロいことをしたいんだったらそれはお断りだっ」
「えー、オレ、ホンマになんの希望も要望も出してへんねやけどぉ?」
「とにかくダメだ。おまえはスケベすぎるぞ」
美人とか美少女とはイチャイチャしたいとおもてるけど、せやからっていきなり頭どつかれるいわれはないんやぞぅ?
「それはそうとだ」アキラっちがオレの隣に腰を下ろした。「あたしのメガネ、どうだ?」
ぶっちゃけのいきなりの質問やさかい、ちょいとばかし戸惑う。
せやさかい、「なんのことを指してるんや?」って正直に訊ねた。
「決まってる。あたしのメガネ姿はイケてるかって話だっ」
「いや、フツウにイケてるやろ」
「へっ」アキラっちは意外そうに間抜けな顔しやった。「ほっ、ほんとうか?」
「嘘なんてつくかいな。つくかもしれへんけど、できるだけつかへんのが、オレの美徳や」
アキラっちは俯くと、「てっ、照れた」とか言いやった。
オレはアキラっちの顔に顔を近づける。
「メガネっこ、アリやと思うぞ。おまえの新たなオプションや」
アキラっちは顔を真っ赤にして。
「おまえとか、偉そうだぞっ」
「堪忍」
「ううっ、嘘だ。おまえになら、べつに……」
オレは「寝るぞ」言うて、そのへんにくたばったみたいに横になって、タオルケットをひっかぶった。
そったらアキラっちが、「い、一緒にベッドで寝ようぜ」――。
「嫌やわ」
「へっ、嫌なのか? マジか?」アキラっちは心底驚いた様子。
オレは「冗談やよ」って言うて、ソッコーでベッドに入った。
壁際に寝返り打ったら、後ろからアキラっちが来やった。
背中にぎゅっと抱きつかれたもんやから、「おぉ、意外やなぁ」って応えた次第――。
「明日から時折メガネ姿のアキラっちなんだぞ。阿呆な男どもは喜ぶかもしれないな、ふはははは」
「おまえはそれで平気なんか?」
「あ、あう、そんなわけがないんだ」
「せやけどオレがおるさかい心配すな」
オレの首に巻きつけてるアキラっちの腕に、力が込められた。
「おまえはどうしてそこまで自信満々なんだ?」
「好きな女のコ一人守れへんで何が男や」
「……してる」
「あぁん?」
「愛してるって言ったんだっ!」
睡魔に苛まれるなかにあって、オレは白い壁に向かって微笑んだ。