沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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いよいよ寒くなってきた十二月の夜、兄貴から呼び出された。
なんでも、バー「ストレイシープ」に顔出せってことやった。
スマホの電話口でアキラっちにその旨、知らせた。
アキラっちも来いいうご命令やったからや。
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「ストレイシープ」を訪ねたったところ、ボックス席に並んで、シャル兄と葛葉アンナ刑事が座ってた。
オレはアキラっちんことを奥に押し込むように座らせて、席についた。
今日も「ストレイシープ」は「ストレイシープ」や。
静かな時もあり、賑やかな時もある当該――今は騒がしい時間帯らしい。
「お二人さん、何を飲む?」っちゅうのはシャル兄。
オレは「赤ワイン」言うて、アキラっちはオレンジジュース言うた。
兄貴にはしばしば「アルコールはよせ」言われるんやけど、今日はなんも注意されへんかった。
なんや、そこにあるんは重要かつ重大な議題っちゅうことやろうか?
きっとそういうことなんやろう。
「葛葉アンナ女史が約一名、仕留め損ねたそうだ」って兄貴。
「約一名?」言うて、オレは首ぃかしげた。
「某ヤクザを潰す段だったそうだ」
「某ヤクザ?」って、今一度オウム返しのオレ。
いったい、どういうこっちゃねんな?
オレはそない訊ねた。
「ヤクザはいていい――というのが、アンナ氏の意見らしい」
「そないなはずが。兄貴はアンナさんに優しすぎへん?」
「そうでもないさ――というのが実感とするところだ」
うーん、いろいろと疑問やし、悩ましいとこやけど。
にしたって、まあ――。
「お二人がわざわざオレらんこと呼び出した理由は?」
「当該ヤクザにおまえたちの存在を知られたということだ」
兄貴やさかいしょうもない嘘なんてつかへんわけで、せやけどその言葉には首をかしげざるを得ーへん。
「どういうこっちゃねんな?」
って訊いたら、「すまない、弟君」ってアンナさんがぺこって頭下げはった。
椅子からおりると彼女、床に手ぇついて、土下座までしてくれたくらいや。
オレはびっくりした。
アキラっちはもっとびっくりしたらしくて、オレンジジュースを吹き出しそうになった。
オレは「だいたい、わこた」言うてから、アンナさんに「はよ座ってや。目立つし、なんや、申し訳ないさかい」って伝えた。
アンナさんは言うこと聞いてくれたんやけど、席に戻っても、なんやめっちゃ難しい顔しやって。
「せやけどさ、そんなん、アンナさんのヘマなわけがないよね?」オレは言う。「不可抗力やったんやろ?」
「それはそうだ。――が」アンナさんは鼻から息漏らすと、がっくりうなだれやった。「重ね重ね申し訳ない。しばらくのあいだ、イクミにアキラ嬢、おまえたちには警護がつくことになる」
「そうなん?」
「ああ、そうなんだ」
おまわりさんを庶民の警備に割り当てるとか。
その権力があるあたり、やっぱアンナさんはただの刑事やないらしいな。
「話、戻すんやけど」あらためて、オレは言う。「察するに、要は逆恨みなんやろ? せやったらいっちゃん危ないんはアンナさんなんちゃうのん?」
「そういうことで、そういうことなんだが」アンナさんは難しい顔をする。「だからこそ、連中は私に近しいニンゲンを的にかけようというんだよ」
「いっちゃん近しいニンゲンっちゅうんは、シャル兄のことやよね?」
「まったく我が弟は賢いな。ああ。そのへん知られてしまうあたり、まったくどういうことなんだかな」
そんなん考えるまでもないし、言うまでもないことや思うけど――。
たぶん、身内にユダがおったんやろう。
世の中、怖いなぁ。
「ともあれそもそもさ、アンナさんは電警、やっけ? そんなんちゃうのん? いわゆるマル暴やないんやろ?」
「そのとおりではある」
「働きモンやねぇ」
「そういうことだ」
オレらんことは、ええわいさ。
オレはそないなふうにアンナさんに言うて。
なにせ、おまわりさんが守ってくれるいうんやから。
せやからこそ――。
「アンナさんのことが心配やわ」
「おや? シャル氏のことはそうじゃないのかね?」
「うん、そのとおり。不安がる要素は見当たらへんな」
「今回はだな、弟君、傍観者であってくれてかまわない」
「それでも一緒におることにする。大切な恋人やさかいな」
「たっ、大切な恋人とかっ」左隣のアキラっちは照れたみたいに応えた。
アンナさんって、オレは呼びかけた。
「早いとこ、ケリぃつくとええねぇ」
「それはそうだ。そして、そうするつもりだ。私だって早いところ、ゆっくり眠りたいからな」
おぉ、意外。
アンナさんほどの女性でも、満足に寝られへん夜があるんか――。
兄貴へと視線をやった。
兄貴は小さく肩をすくめてみせた。
「オレはな、イクミ、ただのエンジニアでしかないんだぞ?」
「せやけど自衛については――」
「ああ。問題がない」
「アンナさんのことも守ってやれって話やよ」
「葛葉女史に限って、それは必要がない。なあ? そうだろう?」
シャル兄にそない問われたアンナさんは、苦笑じみた表情を浮かべながら、「ああ」って答えやった。
*****
翌日。
しょうもないこと――オレとアキラっちがどこぞのヤクザさんに狙われてることなんてわざわざ打ち明けへんし、せやさかい、さっちんとみゆきちと一緒に屋上で昼休みを過ごしてる。
「寒くなってきたなぁ、わびしいなぁ。そんな雰囲気があるよねぇ」
さっちんがそない言うんも頷ける。
もうとっくに師走やしな。
「そろそろ生足はキツいよぅ」言うたんはみゆきちや。「だけど何かはくのはダサいしぃぃぃ」
「そういうもん?」ってオレは訊ねた。
「そういうものだよぅ」ちゅことらしい。
うん。
そういうもんらしい。
「私はまだ平気だなぁ」っちゅうた、さっちん。「極力ミニスカぁ。世の男どもの目の保養になってやろうって思ってるよ」
「そういうもん?」
「そういうものだよ」
うん。
そういうもんらしい。
「アキラちゃんはいいよねぇ」って、みゆきち。「デフォルトのパンツスタイルが市民権を得てるもんねぇ」
「ホントホント」とは、さっちん。「でも、布に包まれてるからこそ、男子どもはいろいろと妄想が捗るんだろうけど」
前やったらアキラっちは目ぇ白黒させながら「ばばばっ、馬鹿言うなっ」とかどもりまくったことやろう。
せやけど今は男とそれに伴う事柄についてけっこう耐性がありやる。
それってオレのおかげやろう。
*****
すっかり早くに迎えるようになった夕暮れどき。
オレはアキラっちの右手を左手で握って、帰り道を行ってた。
前にも後ろにも、付かず離れずの位置に制服警官がいらっしゃる。
アンナさんの「強い立場」を知るとともに、警察官にわざわざ警備を担っていただいているあたりには申し訳のなさを感じてる。
「なあイクミぃ、マジであたしたち、狙われてんのかなぁ?」のんびりな感じでアキラっち。
「アンナさんが嘘つく思うかぁ?」
「そりゃそうだけどさ」
「オレは二人んことが心配や」
「アンナさんに、それと?」
「決まってるやろぉ、兄貴や」
シャル兄がやられたりするわけないだろ?
まぁさ、アキラっち、そりゃそのとおりに違いないんやけど。
ぱぁんっ!!
突然鳴り響いたんは銃声やって、本能的に悟ったんや。
オレはすぐにアキラっちの頭のてっぺんを下へと押さえつけつつ、自分もしゃがんだ。
瞬間、アキラっちは「ひゃっ」って短い悲鳴上げやったんやけどすぐに落ち着いたみたいで、「てっ、鉄砲だよな?」って訊いてきた。
オレはすぐさま駆けだした。
「イクミ!」
「じっとしてろや! 問題ない!」
それもこれも、撃ってくれたらしいニンゲンが見えたからや。
「おい! 追うな! 何考えてる!!」
後ろからおまわりさんのそれに違いない大声が聞こえたんやけど、かまわへんでオレは走る。
鉄砲、ぱんぱん撃ってくるんやけど、オレの目の良さがあればいつでも避けれるって感じてた。
捕まえて、そしたら奴さんは何か重要な情報を吐いてくれるかもしれへん。
そないおもて、オレは黒い人影を追う。
逃げながら撃ってくる。
そのうち弾が切れたらしい、ただ逃げるだけになりやった。
めっぽう足は速いつもりなんやけど、相手も速かった。
せやさかいがんばりすぎやいうくらいがんばって追いついた、後頭部に飛び蹴り食らわしたったんや。
バランス失って、ごろごろって前に転がった奴さんの背にのしかかる。
右腕を捻り上げたったら「ぎゃぁぁぁっ!」って醜い悲鳴上げやった。
「おたくがくだんのヤクザか? 吐けや、そのへん」
「くだんの? ああ、聞かされていたのか」
「おまわりさんに警備されてるんやさかい、言わずもがなやろぅ?」
「まあ、そうだな」
細身の、その男の口調は冷静そのものやった。
後ろからのことや。
イクミぃ、イクミぃぃっ!!
そないな声が聞こえてきた。
アキラっちのそれやってわかると同時に、「なんで来んねん!!」ってツッコミを入れざるを得ぇへんかった。
「心配だからに決まってるだろ?」隣に来るなり、荒い息をしながら、アキラっちは言うた。
うだうだ言わへんで、許したろう思う。
っちゅうか、許したるしかないわな。
「そいつがヤクザさんか?」
「らしいわ。さぁて、ぶち殺したろうかね」
「ややっ、やめろよ。今、無事なんだったら、とりあえずはそれでいいじゃんかよ」
まったくもって、そのとおり。
ややあって、複数の足音。
おまわりさんたちが追いついてきたらしく、そうである以上、アキラっちの脚力には舌を巻くしかなかった。
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ストレイシープ。
訪れたらボックス席には兄貴だけがおって、アンナさんは「遅れてくるとのことだ」――。
オレは眉寄せて、アキラっちは「何かあったのか?」って心配そうな顔しやった。
「詳しいことは、俺も知らない。ただ、何かはあったんだろうな」っちゅうことらしかった。「おまえは? そしてアキラ嬢は? 何を飲みたい?」
ラムコーク。
オレはそう一言。
アキラっちは「じゃあ、あたしも同じヤツ」っちゅうた。
「我が弟はもちろんのこと、アルコールは感心できないな、アキラ嬢」言うて、兄貴は優しげに目ぇ細めた。
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アキラっちと二人して一皿のミックスナッツをつついてたところに、アンナさんは現れた。
左腕を白い三角巾で吊るしてやる、コートは羽織ってる状態。
オレは難しい顔になる。
アキラっちは「あうあう」と要領の得ぇへん声を発しやった、びっくりしてやるんやろう。
オレの向かいの席――兄貴の左隣に座ったアンナさん。
早速、オレは「どないしたんさ?」って訊ねた。
アンナさんは「二、三、撃たれた。腕に力が入らない。だから吊っているというわけだ」って言うと、自虐的な様子で肩ぁすくめはった。
アンナさんは「ふふ」って穏やかにわろた。
「シャル、どうだ? 少しは私のことを心配してみないか?」
「その必要はない」兄貴は言い切った。「数発撃たれた程度でしょげるようなら、そもそも相手をしてやりはしない」
「なんとも、冷たいね」アンナさんはまた肩ぁすくてみせた。
事は?
片付いたってこと?
「ああ、そうだよ、弟君。もう何も心配はない。明日から警備もいなくなる。窮屈な思いをさせてすまなかった」
「らしいぞ?」オレはアキラっちのほうを向いた。
「だったらなによりだ」ってアキラっちは微笑みやった。
しんどかったやろ?
なあ? アンナさん?
「しんどかったさ。しかし、特段の問題は生じなかった」
「アンナさんが撃たれたやん?」
「私の負傷は損害とは言わない」
まったく、お強いこって。
いきなり、ふらりとよろめいて、兄貴の身体に身を預けたアンナさん。
「しかし……ああ、疲れてしまった。労い、また慰めてもらえないかね。シャル、打算的なおまえのことだ。金銭なら惜しまないぞ?」
「腕の痛みに耐えられるのであれば」
「耐えれば抱いてもらえるのか?」
「やぶさかじゃあない」
兄貴らしからぬ、首肯。
アンナさんはきょとんとなって、左隣を向いたら、アキラっちは顔を真っ赤にしやった。
「つくづくモテるなぁ、兄貴は」
「まったくだ」
兄貴のほうへゆっくりと、倒れるようにして身を寄せたアンナさんやった。