沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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自分の部屋、放課後、1-A の教室に居座ってたら会長なりなんなりオレが属する生徒会の誰かが「活動に顔を出しなさい」みたいなふうにやってくるとおもてたんやけど、だぁれもこぉへんもんやさかい拍子抜け、オレは椅子の背もたれを前にして座って、今日もパンツルックで足組んでやる凛々しいとしか言いようがないアキラっちと一緒におるわけや。
「来ないなぁ」
「ああ、こぉへんなぁ」
「見限られたのかなぁ。それならそれえ、かまわないんだけどさ」
「べつにそこまで勘繰る必要はないやろ。たまたまそうしようって気がないだけで」
「イクミ、おまえはとことん前向きだよな」
「オレのメンタルはブレへんさかいな。どんだけ攻撃されたところで効かへんわ」
うだうだぐだぐだどうでもええ会話をかわしてたんやけど、そったらアキラっちは話題として、せやけどふいうちに違いない勢いで、「ブラッド・ピットってメチャカッコいいよな」――。
否定はせーへんし、できへんな。
オレが知ってる中でも、エラのはった奴さんは最上位クラスの男やからな。
「『フューリー』とか、『ジョニー・スエード』とかを、最近観たんだ」
「またマニアックなところから攻めたなぁ」
「うん。ブラピを観るならまずは『ファイトクラブ』みたいなところはあるよな」
「で、感想は?」
そないに問いかけたところ、アキラっちは表情を笑みのかたちにして、「メッチャ良かったんだっ」って声ぇ弾ませやった。
「そうなんか。どっちもオレは名前しか知らんさかい、『そうなんか』としか言いようがないんやけど」
「ブラピは天才だと思ったんだ。作品には恵まれてないと思ったんだけど、案外、ブラピは演技派なんだっ」
「『スミス夫妻』も、あるいはそうなんかぁ?」
「そうなんだよっ」
元気な語尾跳ねが続いたアキラっちってわけや。
「で、だ」と、アキラっちはあらためて切り出して。「ブラピを追った結果として、最近、すばらしい作品に巡り合ったんだ」
「それは?」
「『スナッチ』だ」
ほぅ、スナッチな。
せやけど、何を今さらって感じも否めへんで――。
「あー、おまえ、イクミぃ、おまえ、今更感が否めないとか、そんなふうに思ってるんだろう?」
せやからまさにそのとおり。
せやさかい、ただ押し黙ることで、先を促したわけや。
「スナッチは良かったんだ。当時の映画雑誌の付録でポスターがあったらしいんだけど、その真ん中もブラピだったんだ」
「スナッチは群像劇やさかいな。個性的なキャラクターがぎょうさんおったわけやけど、そこに脇役みたいにしてブラピを持ってきたあたりに、斜に構えたセンスの良さが窺えるわ。ワンパンチ・ミッキー。ファイトクラブでもそうなんやけど、オレはその研ぎ澄まされた筋肉に憧れたもんや」
「お、おぉぉ、おまえ、良く知ってるな」
「なにせオレにとっての教祖様でもあるさかいな。ガイ・リッチーもそうかもな」
で、だ。
そないな前置きをしたあたり、まだまだ話を展開するつもなんやろう。
「で、なんだイクミ、だけどな、イクミ、あたしはひそかに浮気したんだ」
怪訝におもて、オレは「浮気?」って訊ねた。
「フランキーフォーフィンガーって知ってるか?」
フランキーフォーフィンガー?
ちょい考えて、結果、すぐに答えに行き当たった。
「ああ、ベニチオ・デル・トロな」
「そうなんだっ!」アキラっちはいっそう、元気良く言いやった。「スナッチは奴さんの強盗から始まったわけだけど、それがすごく良かっんだっ!」
オレは記憶を探る。
そったらその「フランキーフォーフィンガー」、ことベニチオ・デル・トロが当該作品においてメチャええ役してて、せやけどあっけなく簡単にぶっ殺された絵に思い当たった。
他にもおったな。
ブレッドトゥーストニーにボリス・ザ・ブレイド、ダグ・ザ・ヘッドみたいなんもおったな。
「話戻すけど、ベニチオ・デル・トロの何が良かったん?」
「最近、物理的なメディア、DVDを借りたんだ。『トラフィック』っていう作品だ」
「ああ、スティーブン・ソダバーグな」
「うあっ、うげげげげっ、おまえ、なんでそんなことまで知ってるんだよ」
「好きなんやよ。スゴい監督やよな。出始めから巨匠の雰囲気やもんな」
「うげげ、うげげげげっ」
一通りビックリしたらしい言葉を吐いたら、アキラっちは「トラフィックって、麻薬をテーマにした作品なんだ」っちゅうた。
「せやさかい重かったんやよ。当該はあんまり好きやないなぁ」
「あたしには刺さったぞ。胸に響いたぞ。エグかったからな」
「エグいのはほっといて、とりあえずオーシャンズ的なヤツでも観てろって言いたい」
「ミーハーな作品を勧めてくるあたり、それは暴論だぞ」
そうかもな、せやけどまあええわ。
ベニチオ・デル・トロに興味を抱くっちゅうんはJKにあっては珍しいことやろうからな。
「トラフィックの時はけっこうなおっさんみたく映ったけど、スナッチのときは若々しくて、さらに顔も含めて存在感も濃いもんだから、そのグラデーションがめちゃくちゃ魅力的に映ったんだ。さすがだなぁ、って」
その点、否定はせーへんし、できへんな。
実際、奴さんは唯一無二の俳優さんやって思うしな。
「でや、つまるところ、アキラっちはオレに何が言いたいんや?」
「いや、べつに映画を観に行こうとか、そういう話でもないんだ」
「そうなん?」
「そうなんだ」
要領を得ーへん話を突拍子もなくかますところが、なんともアキラっちらしいんやわ。
「で、結局のところ、アキラっちはブラピが好きなんか?」
「好きだ。さっきも言ったように、作品には恵まれてない印象だけどな」
それはまあ、間違いないやろうな。
「タイラー・ダーデンっていうのは名前もファッションもカッコよかったけどな」
またファイトクラブの話に戻しやった。
「派手なシャツに赤いジャケット。誰がやってもカッコいいわけがないファッションだけど、ブラピにはメチャ似合ったんだ」
「せやけどさ、やっぱどう考えたってくだんの作品はヒットしたとは言えへんぞ。ウチの母ちゃんかて、つまらん言うてたさかいな」
「そ、そうなのか? あのヒトの良さそうな母ちゃんがそうなのか?」
「なにせ、わかりにくいもんやったさかいな」
まあ難しいよな、映画って。
アキラっちはそないに知ったふうな口を利きやった。
「でも、ベニチオ・デル・トロはいいよな」
ぴょんぴょんぴょんぴょん、また話が飛びやった。
そのへんの飽きさせへん思考回路が、アキラっちの魅力の一つなんやろう。
「ベニチオ・デル・トロは、スナッチのときは若者みたいだったんだ」
それはわかった。
「でも、トラフィックのときは冴えないオッサンだったんだ」
それもわかった。
「でも、どう考えたってカッコいいよな、イケメンだよな」
イケメンっちゅう意見には異議を唱えたくもなるんやけど。
「博打で負けて『フォーフィンガー』とか」アキラっちはわろた。「奴さんは馬鹿だったんだなぁ」
いつまでだって話してられる、オレとアキラっちはそういう関係や、なんやかんやで、なんとなく話が合う。
外は寒くなりつつあって日が暮れんのもはよなってきたさかい、そろそろ会話は切り上げて、アキラっちをおうちまで届けてやろう思う。
腰上げて、歩みを進めて、それからアキラっちに右手を差し出すと、アキラっちはにこってわろてオレのその手を掴んだ、オレに手ぇ引かれて、「ひゃぁ」って勢い良く立ち上がった。
「一緒にベニチオ氏を観ようぜ。きっと勉強になるはずだから」
いったい、なんの勉強なんやろう。
オレはジェイソン・ステイサムがけっこう好きやぞとは、なんとなくやけど、言わんことにしといた。
トランスポーターはカッコよかったよな。
ステイサムから俳優の起用が変わった途端、メッチャつまらんくなった――。