※この作品はR-18です。

沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~   作:XI_01

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80.キャプテンとマネージャー

*****

 

 屋上にて、初見のセンパイから悩みを打ち明けられたんやわ。

 

 恋をしたんだ。

 おまえはどう思う?

 なんて、ざっくりした質問が飛んできた。

 

 アキラっちは親友のさっちんとみゆきちと輪を成して弁当食べてる。

 要するに、当該先輩の話を聞くのはオレしかおらんわけや。

 

 当該先輩――名前は玉野トシキさんっていうらしい。

 キラキラネームが幅ぁ利かせてる昨今にあって珍しく、男らしい名前や思う。

 

「恋をしたんだ?」オレは訊く。「それはそれで良くて、せやさかいゆえに、なんの悩みがあるっていうんですか?」

 

 一応、敬語で物申したオレなんやわ。

 

「……えっと」ぐいと切り込まへんと要領を得ーへんやろうから、核心を突くことにする。「どなたに恋をしたんですかぁ?」

「それが、後輩なんだ……」

 

 暗い顔かましやるんがようわからん。

 べつに恋の相手が一つ二つ下やからって問題ないやろうに。

 

「それがなんかあかんのですか? っちゅうか、そもそもなんで申し訳なさそうにするかっちゅう――」

「だって良くないだろう? オレは野球部のキャプテンで、彼女はマネージャーなんだから」

 

 んんん?

 オレはあらためて首ぃかしげた。

 

「べつにそのへん、自由なんちゃいますのん? 自由恋愛。あかんのですか?」

「健気に真面目に部のために働いてくれてる女性なんだ。独り占めにするなんて、いいはずがない」

 

 そない言われると、そないな気もする。

 

「せやけど好きなんでしょ?」

「そうなんだ……」玉野キャプテンは深々と吐息をついた。「だから困っているんだ」

 

 オレは「せやったらいっそ野球部、やめてしまったらどうですか?」と画期的な案を提示した。

 そったら、「そんなわけにはいかない。俺は甲子園を目指しているんだから」――と返ってきた。

 

 いや、我が蒲学はおつむはそれなりなれどスポーツはからきしやろう?

 甲子園に出たいとか、そんなんとんでもない話やわ。

 

「それでもがんばりたいんだよ」玉野キャプテンはある種、悔しげに言い。「夢くらい、みんなで見たっていいだろ……?」

 

 まあ、そりゃそうなんやけど。

 

 話を理解し、解釈すると、要するに、玉野キャプテンはどっちを選ぶんやって話や。

 好きになってもた女のコを取るんか、それとも誠実に生真面目に部の栄光を目指すんか。

 

「にしたってや、やっぱオレに相談するんが意味わかりませんよ」

「俺だって迷ったさ。でも、おまえなら正解を出してくれるように思ったんだ」

「初対面でのおまえ呼ばわりは腹が立つとはもはや言いません。ただ、力になれるとは思えへんなぁ」

「どうかどうか、彼女と話をしてもらえないだろうか」

「恋心のお相手に、ですか?」

「そうだ。おまえ――いや、犀川に話してみて気づいた。犀川だったらなんとかしてくれるはずだ」

 

 他力本願なんはどうかって思う。

 せやけどまあ、オレに解決できへんことはないやろうなぁっていう手前味噌――。

 

「わかりました。女のコの名前だけ教えてください。あとはうまくやりますよってに」

「ほんとうにいいのか?」

「先輩、悪いヒトやなさそうですから。そうである以上、あんたが好きになったっちゅう女のコにも興味が湧きました」

「ありがとう、ありがとう。名前は〇〇だ。ほんとうにありがとうっ!」

「うまく行くか、それはわからへんのですけどね」

 

 オレは右手を上げ、顔を後ろに向けながら、「おーい、アキラっち」って呼んだ。

 今日もパンツルックのアキラっちはオレの隣であぐらをかくと「なんだよ、イクミ」って訊いてきた。

 

「一年で、青島コウメっちゅう女のコらしいわ。知ってるかぁ?」

「おぉ、知ってるぞ。評判の美少女だぞ」

「胸のサイズは? ざっくりでええ」

「それ、なんか関係があるのか?」

「ない」

「スケベすぎるのはどうかと思うぞ」

 

 まあ、そのとおりやな。

 

「話、通してもらえるか? 会いたいんや」

「なんの用事だよ」

「いろいろあるんやよ」

「だったらいいや。取り合ってやる」

 

 以前なら怒ってたやろう、嫉妬かましたことやろう、オレが他の女のコと話すってなったら。

 オレの不変の愛は伝わってるんやろう、せやさかい、こないなお願い事も快諾してもらえるわけや。

 

「放課後に会うぞぉ」

「あたしは今日はカラオケだ。さっちんとみゆきちとだぞってちゃんと言っとく」

「ほなら、夜、おまえんち行くわ」

「待ってるよ」

 

 オレはアキラっちと、ハイタッチした。

 

 

*****

 

 放課後の2-Aの教室。

 夕暮れにあってオレは背もたれを前にして椅子に座ってて、正面には青島コウメちゃんの姿がある。

 

 コウメちゃん、噂にたがわぬ美少女や。

 目はくりくりでほっぺがまるうて、まるっきり黒髪なんが印象がええ。

 前髪ぱっつんで清潔感があって、どこからどう見たって好感が持てる。

 

 長話するつもりはないさかい、オレはとっとと用件を告げた。

 そったらコウメちゃんはくりくりの目をいっそうくりくりさせて、それから首をかしげてみせた。

 

「ほんとうに? キャプテンが? そう?」

「そうやよ。何か問題、ある?」

「ないです。ありません」

 

 あまりにさっぱり答えてくれたもんやから、今度はこっちが目ぇ丸くさせられた。

 

「付き合ってもええっちゅうのん?」

「そういうわけでもないですけど。仮にお付き合いさせていただくとしたら――」

「お付き合いするなら?」

「やっぱり何か問題があるのかっていう話です」

 

 何が言いたいんかわからへんさかい、オレは「つまるところ?」って突っ込んだことを訊ねた。

 

「私がキャプテンとお付き合いしたら、いろいろとあれこれが起きるでしょう?」

「あれこれ?」

「ウチの野球部は、ヘアスタイルが自由です」

 

 ……ん?

 

「それがなんか関係あるん?」

「カッコつけを認めてるんですよ?」

 

 そう言われると――ああ、なんとなくわかった。

 

「坊主頭の野球部員のほうが好きやってことやね?」

「だってそうじゃありませんか? 野球ばかりに打ち込むニンゲンは髪型なんて気にするはずがありません」

 

 ああ、そうか。

 そない言い切ってまう女のコからすると、変に色気づいた男子生徒は嫌かもな。

 

「せやったら、キャプテンがずっと丸坊主を決め込んだらええってこと?」

「まあ聞いてください」

 

 なんともしっかり物を言う女のコやな。

 

「結局のところ――」

「結局のところ?」

「ウチの高校は甲子園なんて無理なんです。無理なんですよ」

「せやいうたかて、目指してがんばるんはアリやろう?」

「だとしても、私はキャプテンと付き合おうとは思いません」

「やっぱ、どうしてもあかんのん?」

「ですから、野球から浮気してる時点でダメです」

 

 その言い分は理解できる。

 理解できるんやけど、「なんとか話つけてくれ」って仰せつかったわけでなぁ。

 

「せやけどわかった。もはや何も言うまい」オレは速やかに折れた。

「わかっていただけてよかったです」にこにこ、コウメちゃんはわろた。

 

 甲子園って遠いんかなぁ。

 おもむろに、オレはそないなふうに呟いた。

 

「遠いに決まってます。特にウチは激戦区の東京にあるんですから」

「せやけど野球ってスポーツは魅力的やし、尊いやろ?」

「そう思われるなら、どうしてしないんですか?」

「部活のノリがめんどくさいやからや」

「怠け者の理論ですね」

 

 まったくもって、そのとおり。

 

「玉野先輩には、オレから話したほうがええ?」

「いえ。私からします。そこまでお世話になるのは申し訳ありませんから」

「結果だけは教えてもらえる?」

「どうしてですか? ――って、べつにかまいませんけれど」

 

 オレは椅子から腰を上げると前へと進んで、それから握手をすべく右手を差し出した。

 そったらコウメちゃんも立ち上がって、オレのその手を両手で握ってくれた。

 

「なんだかごめんなさい。私自身の問題でしかないのに」

「そうでもないわ。きみみたいなニンゲンとお知り合いになれて良かったんや」

「七尾アキラさんは幸せですね」

「その心は?」

「犀川くんは優しいのでしょうから」

 

 にこって微笑んでみせたコウメちゃんやった。

 

 

*****

 

 冬空が続く12月の今日の放課後も、オレは2-Aの教室で椅子の背もたれを前に座ってる。

 同じような体勢でいるのはアキラっちや、帰宅し次第、弁当屋の手伝いが待ってるそうなんやけど、今しばらくはつきおうてくれるらしいわ。

 

 オレらの向かいには玉野トシキキャプテンの姿。

 

 オレは前日に青島コウメちゃんに話してもろたことを、一言一句、嘘をつくことなく、玉野くんに伝えた。

 玉野くんはかなり残念そうな顔しやって、深いため息つきやったけど、特段、文句は言わへんかった、予想くらいはしてたんやろう。

 

「ひたすら甲子園を目指す野球部員が好きだってことなのかなぁ……」

「そりゃそうやろうさ、玉野くん。オレが知るかぎり、女子はひたむきな男が好きなもんやぞ」

「帰宅部の犀川くんには言われたくないって話だけど」

「犀川でええよ」

「そのへん、べつにどうだっていいんだけど」

 

 とにかくきみはフラれたわけや。

 オレはあらためて、しっかりとその旨、教えたった。

 

「結局ヤりたいとか、そういう話やったんちゃうん?」

「ひどいこと言うなよ、犀川くん」

「違うん?」

「違わないな」

 

 年頃の男子らしい欲求の告白には好感が持てた。

 

「玉野くんはええ奴や思う。せやけどコウメちゃんとは、うまくいかへんのちゃうかな」

「何を根拠にそんなことを言うんだ……って言いたいところだけど」

「そないな気はするやろ?」

「ああ。どうしてかな」

「じつは彼女は派手好きや思うな」

「それだったら、つまらない男に捕まるかもしれないじゃないか」

 

 それも彼女の意思であり、人生やろ。

 オレがそない言うと、玉野くんはがっくりと首をもたげた。

 

 唐突に、アキラっちが「あの、先輩?」って口利いた。

 そったらその先輩こと玉野くんは「なんだ?」って訊き返した。

 

「だからって、そんな理由だけで諦めるなら、つまらない話だと思います」

「うーん、そうかなぁ……」

「そうですよ。そうに決まってます」

「美人だからそう言えるんだよ、七尾さんは」

「たとえ美人じゃなくても、あたしは最後の最後までしっかり恋をします」

 

 はきはき、元気良く言うと、アキラっちはにっこり、あるいは悪戯っぽくわろた。

 

「わかった。最後まで頑張ることにするよ」って、玉野くんは言いやった。「でも、身体が目的だと思われるのは、やっぱり、なんだかなぁ……」

「そのへんは努力して払拭すべきです。セックスしたいしたくないは切実な問題かもしれませんけれど、なんとかうまく処理するべきです」

 

 アキラっちは逞しくなった。

 以前なら「セックス」なんちゅう単語持ち出すだけでも抵抗があったやろうに、顔だかて真っ赤にしてたやろうに。

 

「ちなみにあたしは応援します。誰かが幸せになることを悪く言うつもりはありませんから」

「イイヒトなんだね、七尾さんは」

「自覚してます」

 

 ホンマに、アキラっちは前向きになった。

 

 

*****

 

 その後、玉野くんと青島さんがどうなったか、そないな話は聞かへんかった。

 うまく行ったってんなら幸せなことやし、仮にそうやなかったとしても――。

 

 ガキ同士の恋愛は素晴らしい。

 うまくいったとしてもうまくいかへんかったとしても、お互いに成長できるに決まってるんやから。

 

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