沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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中学生の吉田流星っちゅうらしい小柄な男のコに、オレは礼を述べる立場にある。
なんでそないなことになったんか、そのへん踏まえ、このあとは真摯に真面目に応え答えていこうって考える。
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蒲田はバーボンロードに近いとこにめっちゃ古い洋食屋がある。
ホンマにめっちゃ古いし、店主はそのへんに無頓着なんか、何度訪れても脂っこい店内に改善の変化はない。
まあ、そのへんはどうやかてええんや、メシはうまいんやさかいな。
オレは「この店」が好きやし、アキラっちにいたってはもっと大好きや。
さておき、今日はアキラっちはいーへんで、オレはオレに憧れてるらしいチューボーの吉田流星くんと一緒におる。
当該店舗で奢ってほしい言われたからや。
吉田君は遠慮なく高価なミックスグリル定食を頼みやって、オレも倣った。
そのうちやってきた品物の鉄板はぐつぐつで、ソースと油とで溢れそうやった。
いただきまぁす――オレは手ぇ合わせてそない言うて、早速、エビフライにかぶりつく、うん、うまい、店は汚くても、やっぱ味は一流や。
吉田流星クンはというと、上品にハンバーグを切り分けてそれを口へと運びやった。
吉田くんは「おいしいです」言うて、はふはふしながらにこにこ笑いやった。
オレの口ん中は熱いもんに対して耐性がある。
せやさかい――ライスを含めて――とっとと食い散らかして、とっとと食い終わったった。
いっぽうで、吉田くんは熱さに対して貧弱らしくって、ゆっくりゆっくり食べてやる。
「吉田くんは猫舌なんやなぁ」
「ご覧のとおり、言わずもがな、です」
本題を聞かせてもらおうやないか。
オレはそないなふうに踏み込んだ質問をして。
「本題、とは?」
「だっておまえ、明後日の方角からオレにいきなり接触してきたやんか。ホンマ、何が目的なんや?」
吉田くんはにこって笑んで――。
「もっとめちゃくちゃ言われてもいいかな、って。でもきっと、イクミくんはそれ以上のことは訊かないんだ」
「うーん、まあそうやな」
「興味を持ってもらえたってことなのかな」
「せやからそのへん、自身持ってもらってええってば」
「嬉しいなぁ」
「黙れや」
オレはそないにキツい言葉浴びせて、それから水をおかわりした、キンキンに冷えてるもんやから、かなりうまい。
「イクミくんの綺麗さ美しさはボクの学校でも有名な話で、それってじつは蒲田、ひいては大田区中に知れ渡ってる話で、だったら、会いたくなったっておかしくないでしょう?」
「せやから、それってホンマなん?」
「そういうこと。迷惑だってとか言う?」
「いんや。自分に課せられた宿命とか役割とか、それくらいは自覚してるつもりやさかいな」
「立派だなぁ」
「やかましい」
ボクはね、イクミさん。
ボクは現職の総理大臣を殺さなくちゃなんだ。
は?
どういうこっちゃ?
「ボクの両親は極左暴力組織のお偉いさんだった。幹部だったんだ」
「『幹部だった』とか、過去形の物言い、しやるんやな」
「過去形も過去形なんだ。二人とも、死んでしまったんだから」
「ああ、そのへん、あるいは陰謀論でも唱えるんか?」
「陰謀論なのかな。真剣に、邪魔に思った政府に殺されたくらいに思っているんだけれど」
オレは肩ぁすくめて、「そないなわけが」って嘲るように言うた。
「我が国において左巻きの連中は存在感を示せてへん。超保守の政府からしても取るに足らないっちゅうこっちゃ」
「でも、ボクのお父さんとお母さんは殺されたのかもしれない」
「そないなわけないやろ言うてる」
「じつのところ、ボクもそう考えてるんだ」
「せやったら――」
おじいちゃんがボクに言うんだ。
「いったい、何をや?」
「だから、ボクの両親は国に殺されたんだ、って」
「そないなわけないやろうっちゅうてるんや」
「イクミさん、きみはそんなに偉いの? そんなことすら知る立場にあるの?」
「どあほう、ないわ」
「だったら――」
なんや、めんどくさくなってきた。
「どうしたって、おまえのじいさまか? そいつんこと信じたいんやったら早々に行動に移したったらええわ」
「だけど――」
「ああ。オレはそれって無意味な行動や思う」
「あるいは国をひっくり返せるかもしれないよ?」
「せやから、そない信じてるんならやればええ」
「支持してくれる?」
「せーへん。そのかわり軽蔑もせーへん」
だったら、やろうと思うんだ。
そない言うと、吉田くんはにっこりわろて。
「今度、ボクは一般的な中学生として、『国を思う』っていうテーマで作成した作文を、首相官邸で、読むんだ」
「ああ、なるほ。そのときが最大にしてサイコーなチャンスっちゅうわけやな?」
「やっぱり止める?」
「たとえばや、吉田くん、オレにはホンマに親しい刑事さんの友だちがいるとしよう」
「そうなの?」
「せやから、たとえばの話や」
イクミくんに話したのは失敗だったのかもしれない。
ネガティブな言葉のわりに、べつに重々しいことやともとらえてへんみたいや。
「イクミくんは邪魔なんてしないよね? ボクはそう信じてる」
「せーへんわ。やれるもんならやればええ。総理大臣くらいぶち殺せばええ」
「総理大臣くらい? 簡単に言ってくれるなぁ」
「オレならたぶん、問題なく|殺(や)れる思うさかいな」
やらなくちゃ、なんだ。
ボクたち家族の悲願なんだから。
「吉田くん、おまえ、きょうだいは?」
「おねえさんがいるよ?」
「カラダの関係は?」
「変な質問だね」
「答えろや」
ないよ。
まあフツウ、そうやろう。
「せやけど関係は良好で、せやから何をやるにしても姉貴から心配されたりする」
「だから、それが何か?」
ヒトをぶち殺すとか、しょうもないことはやめとけや。
オレはそないなふうに案外強く言うた。
「そうやぞ、吉田。へたに姉貴に心配かけんなや。やめとけ、妙な左巻きに染まんな」
それでもボクは、今の政権に疑問を持たざるを得ないんだ――。
「せやからそないおもたかて無意味や言うてるんや」
「だったら間違った国の運営を見逃せって言うの?」
ああ、めんどうな奴。
まったくめんどくさい、頭でっかちのガキんちょやな。
「失敗して死ぬさかい、やめとけ言うてんねん」
「死ぬのは怖くない」
「嘘つけ」
「準備をして待ち受ける。そんな真似だけはしないでほしいんだ」
「せーへん言うてんねん。渾身の一撃であってもたかがガキの一発が、時の総理大臣の喉元に届くわけがないやろ?」
それでもボクはやるんだ。
そこまで言うんやったら、だぁれも文句は言わへんねんってば、くどいし、アホやなぁ。
ぼろい洋食屋をあとにして、吉田くんたっての頼みとあって、近所のつけ麺屋で油そばを奢ったった。
ありがとうです、すごく美味しかったです。
そない言うと、ぺこりと頭ぁ下げて、吉田くんはゆったりと向こうへと歩いて去った。
――翌日のことや。
首相官邸での爆発騒ぎ。
なんでも被疑者は自爆したんやっていう。
首相にダメージを与えるまでにはいかへんかったらしい。
せやけど、吉田くんはやりきったみたいやな。
ああどうやら、やりきってみせたらしい。
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ケータイに、力強い刑事であるアンナさんから連絡があった。
少し話せないか?
そういうことやった。
電話越しに――。
「なんの話ですか?」
『おやまぁ、つっけんどんな口調だ。おまえは将来、私の弟になるガキだ。それなのに私を無下に突き放すのかね?』
「そないなつもりはありませんよ。他意なく『なんの話や』ってことだけ伺ったつもりです」
『おまえ、何か知っているんだろう?』
「せやからそれってなんの話ですかぁ?」
『いいから付き合えよ、少年。おまえの近くまで出向いてやるから』
気持ちのええセリフやし、会わへんかったらめっちゃ怒られるんやろうから、会うしかなかった。
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JR蒲田駅西口のバー、「ストレイシープ」――。
四人が座れるテーブル席。
グレーのソファに背中ぁ預けると、アンナさんはふかぁく紫煙をくゆらしやった。
「総理は死ななかった、むしろ無傷だ。事象としては剣呑極まりなかったが、結局、誰も損はしなかった」
誰も損はしなかった?
ホンマにそうなんかね。
そない思うからこそ、「せやけど爆破かました野郎はある意味、無意味に死んでしもたんやろ?」って訊ねた。
「野郎か。はて、公式発表として、手を下したニンゲンは男だという話があったのかね」
「あったよ。ボケてるん?」
「私からすれば、そのへんはどうでもいいっていう話だ」
吐き捨てるように言われたもんやから、オレはつい目を宙に泳がせた。
アンナさんはつまみのピザの一片を頬張って――。
「奴さんは、吉田流星くんは誰も幸せにならないしょうもないことに手を染めようとしたんだよ。イクミ、それくらい、わかるだろう?」
「そうやとしても、オレは吉田くんこと、悪く言おうとは思わへんね」
「物分かりが悪いなぁ、ぶったたくよ?」
「それは嫌やさかい物分かりはええつもりでいたいけど、オレは吉田くんと会った立場やから」
「その吉田くんは総理の喉元まで迫った。つまるところ、『イケてた』ということだ」
「なんや、アンナさんかて買ってるんやん?」
「面白い手合いであったと述べたつもりだ」
ホンマに吉田くんは殺されてしもたん?
オレはそないなふうに訊ねて。
「正確に言うと、自爆はしたが射殺もした。それって悪いことなのかね?」
「正しい思うよ。オレはまた、吉田くんに会いたかったけど」
「おまえにそこまで言わせる吉田くんとやらは、どれだけの大人物だったんだ?」
「大人物やったかどうかは知らへんけど、楽しかったよ、彼と話してると、楽しかった」
そうか……。
感慨深げにそない言うと、諭吉を一枚、アンナさんはテーブルに置いた。
それから立ち上がって、「案の定、ここの会計は持たせてもらう。おまえは稀有な存在だ。おまえとの話は金を払うだけの価値がある」――言うた。
「オレかてそれなりに稼ぎ、あるんやで?」
「知っている。こないだ某雑誌でおまえのコラム、エッセイか? それを目にした。大手の雑誌だし、だからこそ、おまえの才能は確かなんだろう」
「金さえ得られれば、名声とかそんなんはどうやかてええんやけどな」
「そう言うな。誰もが持ち得る才能じゃないんだからな」
残念や――。
「何が残念なんだ?」
吉田流星くんが死んでしもたんが残念や。
「しつこいな。だが奴さんは爪痕は残したぞ。行動的には極左だが、彼自身は生真面目で、思想に染まってもいなかった――そうだろう?」
まったくそうや。
まったくもって、そのとおり。
にしたって、止められへんかったもんやろうか?
もうちょいおしゃべりしたかったもんやから、止めてやりたかったなって思うわけや。
うまくいかへんかったな、吉田流星くん。
もうちょいうまくいってたら、おまえは死なへんで済んだわけやからな。
オレはきみんこと、嫌いやなかったよ。
せやさかい、天国か地獄かはわからへんけど、またどっかで会おうや――。