沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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アンナさんからしばしば「お仕事」を振られる。
シャル兄に丸投げしたいところなんやろうけど――ダーティかつギルティな案件をこなす対価として自身の資金力は人並み外れて潤沢なんやろうけど――兄貴は本業に重きを置いてるさかい、アンナさんからの依頼を受けるにあたっても、そのプライオリティについては、言うまでもない。
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アンナさんとすっかりいつものバー「ストレイシープ」――。
コークハイは置かんくなったらしい、いかにも安っぽいドリンクやからやろう、時間の問題やったってわけやな。
ゆえに、ラムコークをすするようにして口にする――まあ、こっちも大好きなんやけど、せやさかい、今後のオレのドリンクは当該ばっかになることやろうって強く予測する。
テーブルを挟んで向こうのソファに座ってるアンナさんが、「あいにく私だって暇じゃあない」とかいきなり述べてくれやった。
「なんやかてええわいな、べつに。オレに頼むってことは、所詮大した話やないんやろ?」
「相手は武器商人だ。旧時代の遺物であり、新時代の旗手でもある。ロシア系のバケモノらしくてな。コントレイルと名乗っているらしい。奴さんを捕縛してもらいたい」
「……は?」
武器商人?
でもってロシア系のバケモノ?
コントレイルとかいう洒落た識別子はいいとして、たかがちょっとウツクシイだけのDKに武器商人の相手しろっちゅうんか?
「報酬ははずむぞ。といっても、賞金稼ぎどもと競争になるが」
「その報酬はいくらなん?」
「五百万だ」
「ルーブルは嫌や。ドルやとええな」
「残念。円だ」
えーっ、なんでそない安いんさ?
――って言いたくもなるんやけど、大人の世界のことや、いろいろと事情があるんやろう。
「オレはアンナさんこと、けっこう好きやけどさぁ」
「何か反論じみたことでも?」
「到底、割に合わへんよ。そもそもオレが武器商人なんかに敵うわけないやんか。めっちゃ危なっかしいガードマンかてぎょうさんおるんやろう?」
「シャルなら無理だと言わないな。そうである以上、おまえが断るというのであれば、無理やりにでも、シャルの奴に仕事をさせることにする」
「せやから、そんなん兄貴が受けるわけが――」
「私のお願いなら請け合ってくれるんだよ」
ああ、そうか。
二人はもうそないな関係にまで進展してるんか。
「ここはニッポンだ。そうである以上、いくら護衛がいようが、無茶はできないだろう」
「せやったら、そないなニッポンになんの用事が?」
「地場産業に秀でたヤクザとの繋がりも捨てたものじゃないという話ではないのかね。コントレイルはアジア担当らしいしな」
「アジア担当っちゅうことは、企業そのものの活動範囲は全世界的なんやね」
オレが呆れて肩ぁすくめると、「おまえはすこぶる勘がいい、弟氏」とかお褒めの言葉を返された。
「せやけどシャル兄オンリーなアンタからすると、弟のオレなんてどうやかてええんやろ?」
「そうだ。あいにくと、私は一途なんでな」
「オレにかて愛おしい恋人がいるんやけど?」
「だからアキラ嬢の耳には入れないよう気を遣ったのさ」
それは合点が行く理由やな。
うん、そないなふうに言い切れる。
「わこたよ、やったるわ。で、当該コントレイルさんことはどこでどないに見つければええ?」
「蒲田の西口で聞き込みを繰り返していたら向こうのほうからかかるだろうさ。奴さんからすれば早々に見つかってもあまり不利益がないんだよ」
「蒲田の西口とか。阿呆なくらい、つくづくの大物やね」
「まったくだ。だからこそ手柄にできれば、私はいっそう、警察組織にデカい顔ができる」
「強欲なこって」
「言っていろ」
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その女からはたしかに血の匂いがした。
女――名乗られへんでもわかる、実際、目当ての人物、コントレイルさまなんやろう。
どうわけだか白髪は豊かであからさままでに麗人やけど、小さな黒目は完全にイッてしもてる、恐怖を覚える以外のなにものでもない。
情報を探り当てた結果として、地下にある某暴力団の事務所を訪れたところやった。
「誰かな、きみは」軽口を叩くようにして、コントレイル女史。
「これ、アンタが一人で?」事務所の白壁の多くには鮮血が飛び散ってて、だからこそ、コントレイルの人並みならざるヤバさを知ることができた。「抵抗されたん?」
「抵抗されたというかなんというか。報酬について私は絶対的な現金主義者なのに、こいつらはコカインを寄越してきたんだ。うまく裁けばより儲けられると謳ってね」
「それって事実ちゃうん?」
「言ったぞ、少年、私はキャッシュじゃないと我慢ならないんだ」
まあ、その考え方はわかるような気がする。
現金ほど嘘つかへん「単位」ってのはあらへんさかいな。
「主にきみの義姉から依頼された――違うかな? 少年」
「違わへん」どうやらあっちはこっちの手の内なんてお見通しらしい。「正確には姉貴でもなんでもないけどな」
「私は商売がしたいだけなんだ。そうでなくとも武器商人は世界中から必要とされてる。そんな生業を、私は心の底から愛している」
どうあれヒトをぶっ殺しといて何を。
剣呑すぎるやろうって言ってやりたい、面倒事に発展するのが嫌やさかい、言わへんかったけど。
「コントレイルさんはまだやんのん? 場合によっては、まだヤクザんこと殺すのん?」
「いや、もう飽きたという部分が大きい。かかってくるというなら相手はする、しかしそれだけだ」
そういう手合いなんか。
仕事熱心なくせに、しょうもないことについては割り切るんがめっちゃ早いらしい。
――オレはおもむろに、コントレイルさんの額に、鉄砲の照準を合わせた。
「おや? 犀川イクミくんは私と一戦交えるつもりなのかな?」
「べつにどうやかてええんやけど、報酬を獲得しようとするんであれば、アンタんこと、ぶっ殺さなあかん。――ちゅうか、ご自慢の護衛サンらはどないしたんさ?」
「もうこの建物を囲んでる。私を殺したところできみには脱出の術などないということだ」
「怖いなぁ、ちびりそうや。せやけど、請け負った以上、オレにかてプライドっちゅうもんがあってやな」
「やめておいたほうがいいと言ったんだ。私も私の兵隊も、敵対する者には容赦をしない」
なんとも説得力がある理由、ゆえにその果てに至るであろう現象を脳裏に思い描くんも簡単や。
オレが今ここでコントレイルさんのこと殺したって意味がないっちゅうことやな。
「あれなん? 商売のメドがついたら、とっとと国を出るつもりなん?」
「『境』という概念があまりなくてね、私が担当しているアジア地域についてもそうだ。与えられた使命をまっとうするかたちで、私はこれからも当該において武器を売りさばいてやろうと考えるわけだ。そんな私のことを、きみは狂っていると言うのかな?」
誰もが武器を持ってええ、そういうもんや。
そもそも鉄砲の所持の割合で言うと、世界中においてそのほとんどを民間人が占めてるわけやさかいな。
べつにニッポンに多くの火器がもたらされたところで、それは現状の平和をひっくり返すには至らへんねやろう。
そういうもんや、世の中っちゅうもんは、なんとなく軽く間抜けにできてやる。
「とはいえだ」
おーよ、とはいえなんなんさ、コントレイルさん?
「じつのところを話そうじゃないか」ふふふふふ――そないなふうに悪戯っぽく鼻ぁ鳴らして、コントレイルさんは値の張りそうな長机――組長の愛用やったんやろうマホガニー製のそれに、腰を落ち着けた。「たとえばだイクミくん、きみが愛してやまないこの国家は、すでに何者かに侵食されているのだとすれば?」
それってあり得る話やろうっておもたんやけど。
実際そないなふうに、オレは口利いたった。
「セイント・スクワッド――通称『SS』だ」
「SS? セイント・スクワッド?」
「第二次世界大戦から息づいている負の系譜であり、だがしかし、今の今までニッポンにおいては実力者であり、結構な働きを繰り返している」
「要するに、武器商人としてのコントレイルさんからすれば、あるいは敵方やっちゅうわけ?」
「まったくもって、そのとおりなのだよ、勘がいいなぁ? ふふふふふ」
コントレイルさんの笑みはホンマにいちいち悪戯っぽい。
子どもっぽい邪さが、そこには多分に見受けられた。
「そのSSとの縄張り争いってこと?」
「実力で圧倒しているから、あとはいつ実行に移すかってことだけなのだが」
「せやったら、とっととやってまえばええやんか」
「ほんとうにそうなんだ。連中だって、こちらの武力を知っているに違ないんだから」
おおかた、これで一通り聞かせてもらったことになるやろう。
「わこた。オレはコントレイルさんにつくことにする」
「おやおやおや、少年よ、それでいいのかな?」
「旧日本軍の亡霊、そんなん担ぐよりは金になるやろ」
「私としてはたかが高校生にすぎないきみに事をを依頼するのは気が引けるんだけどなぁ」
「うまく立ち回ったるわって話。おたくらの邪魔になるような真似はせーへんよ」
きみは偉い。
卓越した人物だ。
そない言うて、マホガニーの長机から腰を上げると、右手を寄越してきやったコントレイルさん。
オレはその手を握って、「危ない橋渡るんやさかい、報酬はそれなりに色付けたってぇや」って訴えた。
「それは約束する」と、コントレイルさん。「というか、すでに私の愛はきみのことをひどく欲しがっている。最初は釣り合わないのかもしれないが、時間をかけさえすれば、我が私兵にひけをとらないニンゲンになるだろう」
「恐縮です」オレはぺこりと頭ぁ下げた。
とりあえず、きみには斥候をお願いしようかな?
斥候か。
これまたイヤな単語が飛び出してきやったな。
「何をやるにもやぶさかやないよ」オレはそないに断言した。「役に立ったろうって思ってる」
「私と接触したことくらい、先方はじきに掴む。確かな情報として、だ」
「へぇぇ。つくづくやり手やんか」
「そうだ。だからきみを攻撃することも想像に難くない。その折にどれだけうまく立ち回れるか、そのへんにかかってくるわけだ」
「そういうことならうまくやってみせたるわ。――が」
「が?」
「いんや。やっぱ条件次第では、オレは向こうにつくこともあるんかなぁ、って」
当然、ふっかけてみただけやけど。
「好きに判断すればいい」とコントレイルさんは言い。「しかし、私の敵にならないほうが賢明だとは伝えておこう」
厳しさと迫力のある物腰に、オレはコントレイルさんの真実を見た。
*****
ケータイに直接電話があった。
べつにナンバー隠してへんかった。
せやさかい通話に応じたったわけであり――出てみたら、そいつはオッサン声で『SSのニンゲンだ。元一佐だ。タケダという』とか真っ先に明かしてくれやった。
SSのタケダ一佐さん、か。
SSっちゅうのは「セイント・スクワッド」の略称で――せやからって、なんやっちゅう話でしかないんやけど。
ずいぶんと古くからある一種の特殊部隊やっちゅう話やったな、旧来の日本兵っちゅうわけや。
そうである以上、百戦錬磨なんやろうし、せやからこそ、油断するわけにはいかへん。
今は自宅のベッドの上。
ぺろぺろちゅっちゅってオレの舌を舌で遊びやったアキラっちが下着取り払って全裸になると、騎乗位の格好で、オレの「アレ」を自分の「ナカ」に迎え入れやった、しまいこむみたいにして大切そうに。
甘ったるい声でとことんまでに喘ぎやる。
オレは左手でその重量感に溢れる爆なπを下からさするように揉みしだきながらもえらく冷静に、それなりに頭回転させて、降りかかった案件をどないなふうに片づけたろうって考えてた。
アキラっちはなおもオレの「アレ」を深く「アソコ」でくわえたまま腰を前後に揺すって、「やっば、めっちゃヤバい、イくイくイく、イっちゃうぅ、イっちゃうよぉぉ……」とかいっそう甘い声を出しやった。
オレはアキラっちの腰を左手で掴んで、右手使って「しーっ」って唇に人差し指をあてがった。
意外とアキラっちはきょとんって、不思議そうに首をかしげてみせやった――ひとまず「イくん」は我慢してくれるらしい。
そうか。
アンタが「セイント・スクワッド」の、言ってみれば「班長」さんか。
『一度、お会いできないかね? 私はきみと敵対するつもりはないのだよ』
「紳士然とした物言いやけど、オレを評価する以前に、オレはご存知のとおり、コントレイルさんに味方しようって立場なんやで?」
『コントレイル氏のことはともかく、今のきみはニッポンの行政そのものに近しい立場にあるんだろう?』
まったくもってそのとおり。
もとをたどればオレはアンナさんの弟分やさかいな、子分やとも言うか――。
「ゆうたかて、戦うことについてはやぶさかやないですよってに」
『私はそれを嫌うと言っている』
「せやけど、どうせやりあうことになると思いますよ?」
『話し合いの余地はまだあるはずだ』
「オレかてしょっぱなからそない言うてます」
後悔することになる。
タケダ一佐はイケボでいきなりそない言うて。
『きみにだけ明かしておこう。我々は明日、コントレイル氏と会う。互いが苗床とするアジア圏のテリトリーの分配について話し合うんだ』
「えぇー」電話越しながらも、オレは眉に皺ぁ寄せた。「そんなんコントレイルさんは飲まへんやろう。だって戦力的に優位である以上、折れてやる必要がないんやさかい」
『戦力うんぬんについてこちらが劣っているとは誰が言った?』
「ほなら、彼ら相手に勝てるっちゅうん?」
『やってみなければわからないということだ』
「そうかなぁ。タケダさん、アンタはすべてを把握し、正しいところを予測してるように思うんやけど?」
どうあれ手が空いてるうちはコントレイルさんの指示に従うわぁ。
オレはのんびりそない言うて、「ホンマ、負け戦や思うで? タケダさん、いんや、タケダ一佐」ってずばりと忠告した。
『我々はと言ったが、オレの駒の中でもっとも優秀なニンゲンを六本木のホテルに、夜、やる。試金石と言ったところだ」
「せやさかい、その言い分が偉そうや言うてんねん。上から目線はようないぞ」
『場合によっては、きみの実力すら見定めよう』
ホンマ、偉そうな言い方には多少ならず腹ぁ立つなぁ。
――ずっとあんあんあんあん喘ぎながらオレの上で腰振ってたアキラっちが、力尽きるみたいにして前のめりに倒れ込んできた。
ぎゅっと抱き締める、「ヒドいぞ、おまえ。こっちは必死だってのに、ケータイ片手に余裕の顔ばっかかますなよな」とか文句垂れやった。
まあ、そのへんは今んとこ、良しとして。
「なんだよ? なんの電話だったんだ?」左隣にごろんと転がったアキラっちが、横から抱きついてきた。
大したこっちゃないんやよ。
オレは正直に、そない答えた。
「大したこっちゃないんだってんなら、あたしにも打ち明けられるだろ?」
「それがそうでもなくってやなぁ」
「ああん? いったいどういうことなんだ?」
せやからアキラっちに話すようなことやないんやってば。
そないなオレの言葉を聞いて不満げにほっぺ膨らませたアキラっちは、「なあ? なんか知ってるか? 『イエロー』って奴から連絡があったんだけど」とか突然明かしやった。
妙な話やっておもて、せやさかい、唐突かつ不躾に、背筋を冷たいもんが滑り落ちた。
「出たんか、アキラっちは、そのイエローさんからの電話に」
「出たから知ってるんだよ。なあ、誰なんだよ、アイツ、たぶん女の声だったけど」
知らん電番、あるいは非通知、そないな電話になんで応じたんやってやっぱむかついたりもするんやけど、今さらそれを言うたところでしょうがない。
ああ、そうか――って思う。
敵さんは思ったより、こっちの動きをけっこう、つまびらかに把握してるらしい。
恐ろしい話やな。
アンナさんからの依頼やとはいえ、なんでたかが高校生のオレが事に関わろうとしてると知ってるんか……ホンマ、怖い話でしかあらへんな。
「そのイエローさんは何言うてやったんや?」
「よくわかんなかったから、よくわかんないって答えてやった」
「そったら?」
「無言で切りやがったんだ。でも、愛想は良さそうだったぞ?」
愛想とかはどうやかてええなぁ……。」
なあ、イクミ。
おまえ、まためんどくさいことに首突っ込んでるんだな?
否定はできへん。
「べつに巻き込んでもらってもかまわないんだけど、自分のことは大事にしろよな。おまえだけの身体じゃないんだからよ」
言うて、アキラっちはにこってわろて。
このへん照れずに言えるようになったあたり、アキラっちの成長と呼んでええんやろうか。
「イエローさんとは連絡つくか?」
「会いたいのか? でも、まあ無理だ。そのかわりの情報だけど、明日、六本木のホテルでなんとかかんとか……」
ああ、やっぱ、そういうことか。
事のつじつまっちゅうもんは、期せずして、帳尻、合わせてくるもんなんやな――。
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オレはいま、コントレイルさんから「来い」言われたもんやさかい、港区のホテルの高い一室におる。
導かれた先はコーナースイートやった、なにせホテルの立地が立地やし、絶対に金持ちしか泊まれへん部屋に違いないんや。
白髪がメッチャ綺麗なコントレイルさんがソファに座ってて、背の低いテーブルの向こうには艶やかな茶髪の女――イエローやって名乗ってくれた。
ああ、そうか、アンタが噂のイエローさんかいな。
それにしても、めっちゃにこやかやないか。
とてもやないけど、武闘派で鳴らす部隊の筆頭やとは思えへん。
オレはコントレイルさんが座ってる一人掛けのソファの隣に立ってる、なんかあってもべつに彼女んことを守ったる義理はないなぁって思いながら。
「当該――ニッポンですね、ここらにおいても我々が支配のイニシアチブを獲得している」威厳に満ちた声で、コントレイル女史は言う。「今、手を引くというのであれば攻撃は慎むことにする。ディールだよ。それではダメですか、ミス・イエロー?」
「ええっと、私どもとしてもですね、やはりニッポンという豊かな土壌を簡単に明け渡すわけないということでありまして」
「だから苦肉の策として分割案を提示しようと?」
「ええ、ええ、いけないでしょうか?」
条件によっては飲んでさし上げてもよいのですが。
コントレイルさんは優雅にそないなふうに言うて――。
「ですが、イエローさん、仮にそんな約束を結んだとしても、あなたがたはそれを守らないでしょう?」
「まあですねぇ、ミス・コントレイル、これまでの我々の活動からそう捉えられても仕方ないという話ではありますけれどぉ」
でしたらいっそ、潰し合いませんか?
殺し合いませんか?
なんの怯えも憂いもなく、そないなふうにコントレイル女史は言い切って。
「いいんですか? コントレイルさん」一息で目を鋭くしたイエローさん、一気に殺気立った雰囲気すらまとった。「拝見したところ、あなたの護衛はそこの子どもだけのようですが? 高校生か何かでは? そんなニンゲンに私が遅れを取るとでも?」
「取るんじゃないかなぁ。私は審美眼には自信があるし、そうでなくとも、彼はいっさい負けないはずだ」
途端、いきなりもいきなり、テーブルを右足でだんって踏みつけると同時にイエロー女史は左の腰から日本刀を抜き払い、オレんことを勢い良く横薙ぎに殺してくれようとした。
スウェーバックだけで避けたもんやさかい、イエローさんは目を見開いてみせた。
ちゅうか、なんでおたがいに「武器アリ」で会ってんねんな。
持ってへんほうがみんな幸せってもんやろうに。
「ほら、見たまえ、イエロー女史。きみじゃあ私はおろか、彼すら討つことができないのだよ」とうそぶいたのはもちろんコントレイル女史。
イエローは狭い部屋においても器用に日本刀を振るってくる。
せやけど――ギリのことやけど――オレにはその太刀筋が全部見えてた。
せやさかい、避けることだってできた。
そのうち――女性に対して何しくさってんねんって話やけど――オレはイエローの左の頬を右の拳でぶん殴って、彼女んことをぶっ飛ばした。
そったらや。
満を持してって感じで近づいてきたコントレイルは仰向けに倒れてるイエローの顔面に二、三四発って九ミリをぶっ放した。
さっきまで息してたニンゲンがあっけなく死んでまうんはむなしく、あるいは悲しくもあるんやけど、諸々の事情を踏まえると、しゃあないことやって感じさせられた。
「いいアクションだったよ、イクミくん。チャイニーズムービーも顔負けだ。私兵に加えたいくらいの働きぶりだった」
そない言われても嬉しいはずがないんやけど。
「で、この場はどないなふうに処理するんですか?」
「任せておくが良いぞ。言うたでぇ、私の兵は優れてるってぇ」
へたな大阪弁も美人が笑顔交じりに使うとかわいげがあった。
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「たまによくあるみたいな話」――で、オレはJR蒲田のスタバにおった。
呼び出してくれたんはくだんのタケダ一佐やった。
いい大学出た律義で勤勉なホワイトカラーみたいな身なりで、髪がしっかり黒いこともあって、還暦よりはずいぶんと若く見える。
オレは今日はカラメルフラペチーノを雑に醜くすするようにして口にする。
その食し方はなんだかエロいんだぞってアキラっちから言われた――魅力的なんやろうって前向きに捉えることにしてる。
「怒ってはる? タケダ一佐、あんたは、もしかして」
オレは茶化すようにからかうように言うたつもりなんやけど、そこはさすが歴戦の猛者とでも言うべきか、奴さんは苦笑じみたもんを浮かべるだけで、すいって受け流してみせた。
「俺はね、犀川イクミくん、俺は、だ」目鼻立ちの整ったおっさんであるタケダ一佐の顔が、急に険しさを増した。「周りから見ればただのセックスフレンドに見えたのかもしれないが、きみたちも良く知るイエローのことだ――彼女のことを、私は本気で愛していたんだよ」
そのケースはアリやろうし、アリやなって思う。
せやからって、立ち上がって、こないな大衆の目がある場で九ミリ、突きつけてくるかね。
その所作があまりにゆったりしたもんやったからやろう。
周りは鉄砲にもおっさんのホンマの剣幕にも気ぃつかへんみたいで――。
「今撃たれたら殺されてまうな」オレは大いにわろた。
「持て余している部分もある。なにせ旧世代――戦時から続く部隊だ。俺自身、つまらないと感じている部分もあるんだよ」
「せやったら、殺したら?」
「知る限りの、サイコーの殺し文句がある」
「なんやおっさん、言うてみぃや」
「墓にはなんて、書けばいい?」
――すんでのところで拳銃を右手で弾き飛ばした。
めちゃくちゃ素早く立ち上がって、おっさんに飛びかかる。
やっべ。
すぐに二丁目、腰から左手で抜き払いやった。
こっから先はマジで金うんぬんの話やないな。
問答無用で、殺るか殺られるか、や。
店内が一気に喧騒に包まれる。
オレが仕留められたらもっと話は早いんやろうけど、あいにく、殺されたるつもりはないんやわ。
一通り殴りつけたった。
殴りつけたったんやけど、まったく効いてへんみたいで、馬乗りになってたところを突き飛ばされた。
撃ってくるっておもたさかい、頭下げて身を低くした――すぐにもう一回、床を蹴ろうとする。
やっぱ一発二発と発砲してきた。
はなから当てるつもりはなかったみたいで、タケダ一佐は身ぃ翻すと、気持ち良く逃げくさってくれやった。
どうやら――っていうか、多分やって話やけど、奴さんは逃げおおせることやろう。
きちんと切符買ってJRに乗ったんかな?
もはや投げやりなおっさんにしか見えへんかったけど、五体満足で帰りさえすれば喜んでくれる仲間がいるんやろうって、少しくらいは信じたい。
その場ですっくと立ち上がって、身体についたガラス片とかを払いながら、オレは近づいてきたニンゲンに、「もう大丈夫なん?」って訊いた。
オレのすぐそばで埃っぽさに「けほけほ」かわいらしく咳込みやるんはアンナさんやった。
「おやおや、さんざんだったようだ。なあ? 我が弟よ」
オレはホッと一つ息を吐いたら、月から帰ってきたような思いにすら駆られた、それくらい胸を撫で下ろしたっちゅうこと――。
「タケダ一佐は逃げてしもたんちゃう?」
「私の部下は優秀だ。それでも逃げられてしまったかもしれないな」
「どっちやねんな」オレは肩ぁすくめて軽い調子で笑った。
SSについては、正直、存在自体が眉唾だと思っていたんだよ。
それがアンナさんの見解やった。
「その上で申し上げようじゃないか。イクミ、間尺に合わんことも、時にはあるんだよ」
何回目やろう。
もはやため息しか漏れへんかった。
「怖い怖い。オレがおるんは、やっぱ東京なんやな」
「一つ、賢くなったようだ」
「最悪やろ、オレ的以前に、蒲田的に」
「珍しい惨事ではあるだろう」
やとしたらそりゃ酷い話やし――。
せやけど生き残った以上、どうだってええ話でもあるし――。
「もうしばらくは私といるといい。警察だから、お仕事があるんだよ、事後処理だ」っちゅうて、肩をがしって抱いてきたアンナさん。
「心得てまーす」言うて、オレはまたため息ついた。
そったらかわいそうやっておもたんか、ほっぺたにキスしてくれた。
煙草臭いんが三割、女の色気が香ったんが残り七割――。
ホンマ、へた打ったら死んでたな。
生きてるって、すばらしーっ。