沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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蒲田西口近くのバー「ストレイシープ」、今夜はシャル兄と一緒――。
四人掛け、未成年ながらもオレは容赦なくラムコーク飲んでて、向かいのソファの兄貴はという今日も日本酒のとっくり。
兄貴は「最近、翌日までアルコールが残るようになった」とかオヤジクサいこと言うて、「そろそろ焼酎に変えようかと考えている」って続けた。
「じつは体調悪かったりするんちゃうん?」
「変なフラグを立てるな」
「メタ的やとでも?」
「そういうことだ」
オレはラムコークを一口分、喉に通してから、「それで? なんの用?」って訊いた。
「兄上様に呼び出されて妙な疑問を抱くのは良くないな」
「そのとおりではあるんやけどさ」
「最近、新たな知り合いができたんだよ」
「知り合い?」
「ああ。某豊洲でリゾート施設を営んでいるらしい。綺麗なところでバーベキューができるとな」
「綺麗なところでバーベキュー? なんやそれぞれ、相対するような属性に思えるんやけど?」
「ただで奢ってくれるそうだ。が、オレはしばらく手が空かない。あいにく本業も副業も忙しい」
本業はともかく、副業、ね。
ホンマ後者については結局のところ、知らへんなぁ。
「察するに、代わりにおまえに権利を譲ってやるぞ、って?」
「そういうことだ。場合によっては急遽でも貸切にするから、何人伴っていっても問題がないそうだ」
「ひょえぇ、なんでそうなるんな。しかもタダなんやろ?」
「オーナーにいたく気に入られた」
「オーナーって男? せやったらぁ、まあ、多様性の時代やしなぁ」
「おまえが行くというのならそれでいい。行かないのであればまた別の奴に振る」
行くに決まってるやーん。
オレはもううきうきしてる。
うまいもんをタダでいただけるんや、ましてやこちとら高校生でもある、食べ盛りなんやわ。
「何人で行く? きちんと伝えるべきだと考える、礼儀だ」
「ほならぁ……」オレは少し考えて、それから「ほな、五人」って答えた。
わかったとだけ言うて内訳にはまるで興味がないらしい兄貴のことを兄貴らしいなって感じた。
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豊洲には立派なデーターセンターがあって、そこから目と鼻の先や言うてたな。
夜、オレは今、四人を伴って、くだんのリゾート施設におる。
四人――。
アキラっちはもちろんやけど、今夜はメメたそに獅子堂ネモちゃん、それに飛鳥井くんを連れてきた、生徒会メンバー大集合っちゅうわけや。
ひらひらの桃色髪がかわいらしいメメたそは髪と同じくピンク色のワンピース、ボリュームのある茶色いショールを羽織ってる、あったかそうや。
アッシュグレーの髪のメチャクチャゴツいネモちゃんは問答無用のタキシード姿。
飛鳥井くんはというとグレーのパーカーにカーキ色のカーゴパンツ、緑のマフラーまでして今日もデカいヘッドホンを首にかけてやる。
そして我らがアキラっちはというと、豪奢な白いボアのロングコートにつやつやした質感の黒のロングドレス姿、胸元はばっくり、爆なπがこぼれそう。
ちなみにオレはというと、ノーネクタイの黒いスーツに黒いトレンチコート――華がない装いやけど、「おまえのスーツ姿なんて初めてみた」ってアキラっちには評判が良かった。
きっとポリシーとして普段着を貫いてるんやろう飛鳥井くんはともかくとして、正装で来て良かった。
かちっとしたドレスコードがあるっちゅうわけやないやろう、せやけど食べるもんはバーベキューやとしても、明らかに高級感のある空間やって言えた。
これから火に晒される食材を目にして、「うひょーっ」ってアホみたいな声上げやったんはメメたそや。
「なんスか、これ! めちゃくちゃ分厚い肉ッスよ? なんか海鮮もヤバいっすよ! アクアパッツァまであるッスよ?!」
なんかすでにえっらい喜んでもらえてる。
もうそれだけで嬉しい。
「こんな豪華で偉そうでしかない食材を、私たちで焼けというのか?」
腕組みネモちゃんが低いしゃがれ声で言うた。
うん、そのとおりや、きみの危惧するところはすごいわかる。
なにせ豪華すぎるもんやさかい、素人が調理してええんかっちゅう疑問が大いに残る。
メニュー表見てたメメたそが「うあっ、やべーッス、このキンメ、一匹で五千円するッスよ!!」って言うて目ぇ見開いた。
「いや、それは相場どおりだろう」とはネモちゃんの言葉。
「いや、いやいやいや、高いでしょうよ、一般的には!!」とはメメたその言い分。
まあええやん、とりあえず焼いてこうさ。
オレはそない言うて――オレのその言葉をしおに、メメたそもネモちゃんも網の上にいろいろ乗せ始めたんや。
マジでヤベーじゃんっ。
アキラっちすらそない言うて、うきうきした様子で「焼き担当」に加わった。
――となると、もはやオレに接してくるのは飛鳥井くんだけなのであって――。
「メメちゃんとか獅子堂さんはいいよ。でも、どうして僕なんかを誘って――招いてくれたの?」
飛鳥井くんが陰キャな感たっぷりにぐだぐだ言うんはうっとうしい。
せやけどオレはどうあれ飛鳥井くんのことは嫌いやない。
むしろ好きなんやよなぁ、飛鳥井くん。
「オレはオレで、べつに飛鳥井くんこと、偏屈やとはおもてへんぞ?」
「正直、言っていい?」
「おぉ、ええぞ、どうぞ?」
「それなりにヒトがいると楽しい。今夜初めて、その旨、僕は知った」
「それは何より」
「ありがとう」
きみが、あるいはきみらが礼を言う相手がいるとするなら、それはオレの兄貴なんやけどな。
いよいよバーベキューが始まった。
肉も魚もアクアパッツァも確かにヤバい。
食い意地がはってる奴は間違いなく食うし、オレかてその一人や。
「マジヤベーッス!!」カタカナばっかの言葉を、メメたそは吐いた。
メメたそは肉も魚も焼きまくって、どんどんどんどん喉に通しやる。
彼女に加え、ネモちゃんも、それに無愛想極まりない飛鳥井くんですら楽しんでるみたいやさかい、オレからすればほんまに喜ばしかった。
――アキラっちが来やった。
相変わらばっくり空いた胸元から容赦のない爆なπがこぼれ落ちそうでオレからしたら鼻血ブーッ(嘘)。
アキラっちときたら「もっと食べたいぞ、もっと食べたいぞ」言うもんやから、オレは牛肉も豚肉も鶏肉もアクアパッツァも整え仕上げたる。
もぐもぐ食べてにこにこしやるアキラっちのその様子を見てまうと、どうしたってこっちかて笑顔になるしかなかった。
意外やったんは飛鳥井くんがえっらい食べやるっちゅうことや。
めっちゃ食べやる、普段、家で食わせえてもらえへんのかっちゅうくらい、めっちゃ食べやる。
「来れて良かったんだ」って、隣でアキラっちは言うてくれて。「にしって、生徒会メンバーを連れてきたっていうのはどうしてなんだ?」
そのへん、じつはやな――。
以前は蝶野ミキなる卓越した――かつ絶対的な生徒会長がおったわけや。
その彼女は今、テレビ局でアナウンサーやっててお天気おねえさんまでやってて、せやさかい、もはやオレらが安易に接触できるニンゲンやないやろうって思うんや。
要するに、今や生徒会は形骸化してるやろうってことや。
次の選挙で新しい会長が決まったら――うちはけっこう優秀なガッコやさかい持ち直すんやろうけど――にしたって、蝶野会長が抜けたダメージは小さくないやろう。
そのへん、メメたそもネモちゃんも飛鳥井くんもわかってるはずで、せやさかい、オレが勇気づけるみたいにしてこの場を展開したんも知ってるに違いないんや。
アキラっちはアホやさかい、そのへん、オレはしっかり説くようなかたちで話したった。
そったらアキラっちは「へぇ、そういうもんなのかぁ」って目ぇ丸くした、やっぱアホで間抜けやなぁおまえは、アキラっちよ。
なんや、メメたそとアキラっちが向こうでじゃれ合いやる。
飛鳥井くんは肉やら海鮮やらを焼いて黙々と食べてやる、好感が持てる。
残りのネモちゃんはというと、静かに静かにオレんとこに近づいてきやった。
なんやぁ?
そないなふうに声かけた。
「蝶野会長がいなくなったことについて、やはり、おまえにも思うところがあったのか??」
そない訊かれた。
それは言われたとおりやさかい、せやさかい、「そのとおりやよ」ってオレは答えたっちゅうわけや。
「犀川、おまえにそこまで世話を焼かれるつもりはないんだがな」
「そうは言うてもさ、ネモちゃん、実際みんな、会長がおらんくなって寂しいやろ?」
そったらネモちゃんは苦笑じみた表情を浮かべて、ふるふると首を左右に振りやった。
「私はおろか、メメも飛鳥井も会長を愛しているには違ないんだが、それぞれそこまで子どもなわけでもないんだぞ?」
「それはそうなんやろうけどさ、せやけど、おらんくなってしもたらダメージあるやろ? 不安と、それに後悔みたいなもんが――っちゅう感じやろ?」
「犀川、おまえはいたずらに気が回りすぎる。それは良くないぞと謳っておく」
「そのへんは甘んじて受け入れたるわ」
「……ああ。私は寂しい。なんだか悔しくもあるな。ミキがいなくなってしまったんだから、私は悲しい」
三者三様なれど、そのそれぞれの思いを知っていたはずなのに、会長はさっぱりとおらへんくなってしもた。
それを無責任やって思う気持ちもある、ホンマ、ちょいテキトーなあしらいすぎるんやないか、って。
そう思う反面、すべては会長の判断やったんやろうって考えると、それを否定はできへん。
会長は会長で自分で考えて、しっかり飛び立ち旅立ったんやって思う。
隙を見計らってってこともないんやけど、くだんのお三方が食べることに夢中になってるもんやから、改めて、オレはアキラっちと二人きりになることができた。
海と手すりを背にして、アキラっちときたら大胆に、両腕を左右にそれぞれ広げてみせた、「来い」っちゅうか「抱き締めろ」ってことなんやろう。
導かれるままに、近づいて、オレはアキラっちの腰に両腕を回した、抱き寄せて、首筋にキスしたると、アキラっちってば照れくさそうにくすぐったそうに「やめろぉ」って言いやった。
それから離れて、二人して海のほうを向いた。
「スッゲーな。東京タワーもスカイツリーもレインボーブリッジも全部見える」
「兄貴に感謝やな」
「ホント、何者なんだよ、シャル兄はよ」アキラっちはおかしそうに、あっはっはってわろた。
じつはな?
オレは思うところを口にすることにする。
「蝶野会長がおらんくなって寂しいんは、オレかてそうなんやよ」
「ぶぅぅ……って、あたしが妬くとか思うか?」
「思わへんよ。せやさかい、打ち明けたんや」
「会長はサイコーだったよ。図抜けてた」
最近のアキラっちは、ほんまに素直になったって思う。
「チチ、揉んでやりたかったなぁ」
「あー、それはさすがに怒るぞ? 明らかに怒るんだぞ?」
「冗談やってば。アキラっちの爆なπは超秀逸やさかいな」
「だろ?」
また前に目ぇやって、東京タワーもスカイツリーもレインボーブリッジも眺める。
「なあ、アキラっち、下手したらオレは、ずっと日高で馬乗ってるだけの男やったんやぞ?」
「それは知ってるよ。あたし的にはそんな人生でも良かったって思うけどな。日高好きだし、馬だって好きだし」
「ホンマにそないなふうにおもてるん?」
「冗談に決まってるだろ。おまえが引きこもりだったら、あたしはおまえと出会えなかったんだから」
「おおきにな」
「けっ、変な感じで謝るなよな。あたしはありがとうって言ってるつもりなんだから」
オレは左手つこて、アキラっちの右手を掴んだ。
アキラっちはなあんも言わへんで、手をぎゅって、握り返してくれた。
「どうなるかはわかんないけどさ、おまえが日高に帰るっていうんだったら、あたしはついていくからな」
「そんなんさせへんってば」
「たとえばの話だ」
「おおきにな?」
「あたりまえの話だ。あたしはおまえと出会って、愛ってものを知ったんだから」
「何ラブラブしてるんスかぁ、全部全部食べちゃうッスよぉぉぉ!!」
後ろから声かけてきたんはメメたそや。
「おっしゃあ、食うぞぉっ!!」
オレは元気良くそないなふうに言い放って、メメたそのあとに続いた。
おもむろに、空を仰ぐ。
澄んだ夜に星が映えた。