沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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今夜も冬、冬の夜。
空ぁ向いて吐いた白い息が暗闇に溶けて消える。
潰れてしもてるせいで左目に今夜は白い眼帯つけてる黒いネッコさんと一緒におる。
それは誰って、ホープさんや。
「彼女」は気持ち良さげに細い声で鳴きやった。
にゃぉーんにゃぉーんって何かを恋しがるみたいに鳴きやった。
七尾の弁当、その店先――。
二十二時を過ぎてようやく仕事を終えたアキラっちが、表に出てきた。
「さみーさみぃ。早く入っちゃえよ。コーヒー淹れてやっからさ」
「ほうじ茶のがええなぁ」
「なんでもいいよ、って、おぅ、ホープさんじゃんか」
アキラっちかてホープさんと知り合いや。
「おう、お仕事、ご苦労だな」
そない労うあたりホープさんはホンマにホンマにお利口さんや、そのへんのニンゲンよりよっぽど賢く立派にできてる――。
「私はここでおいとまするぞ。人家は埃っぽくていけないからな」
「ホープさんは失礼だな。ウチはいつだって清潔だ」
おまえの家はおんぼろだ。
それを捨て台詞に立ち去った、まったく容赦のないホープさんやった。
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翌日、学校でのこと――二時間目の最中のことやった。
いきなり「何しやがる?!」なる男のそれに違いない大声が聞こえた――廊下に響き渡った。
ウチ――英語教師であるウチの――1-Aの担任は肝が太いセンセやさかい、黒板にチョークで物書いてた手ぇ止めて「あらあら、何事かしら?」、ゆっくりとした足取りで教壇から下りて、教室前方の出入口に向かう。
オレは半分寝てたんやけど、オレかて興味本位で、オレは後方の廊下に出た。
そったらや。
えっらいスカートが短い――その裾から覗く細い脚がえっらい白い女のコが、頭抱えて亀みたいになってる男の背中をげしげしげしげし蹴りつけてた。
アキラっちもついてきたらしい、「おいおいおい、メッチャ物騒じゃんか」――。
いや、まあ、そないなふうには見えるけど?
すぐそばでくるっと踵返しやったんは我らが担任教師や。
「センセー、止めへんでええんですかぁ?」
「ほうっておきましょう」
「同僚が蹴りまくられてるんですよ?」
「何かしでかしたんでしょう。彼には悪い噂もあるし」
悪い噂?
そうなん?
にしたってなぁ。
「オレが止めて、問題は?」
「好きにしなさい。欠席扱いにはしません」
「やさしー」
「そうよ、先生は優しいの」
ちゅうわけで、オレはすたすた歩いて現場に近づいた。
その女のコは特段の感情――そないなもんを顔に貼りつけてるわけやなかった。
ただ怒ってはいるようやった、眉寄せるくらいはしてたさかいな。
「まあまあまあ」オレは場に収集をつけるべくやんわりと介入した。
せやけど、女のコは――長い黒髪を高い位置でポニテに結ってる彼女はげしげし蹴るのをやめへんわけや。
せやからって、無理やり止めるような理由はないなぁ。
そないおもて、オレは両膝折って屈んで、女のコの気が済むんを待つことにした。
二分くらいは待たされたな。
げしげしがやむと、亀になってた男――茶色いロン毛の若いに違いない派手なスーツ着た教師は慌てたようにして、おまけに「ひいぃぃぃっ!!」とか悲鳴上げながら走ってった。
ようやっと、女のコはこっちを向いてくれたっちゅうわけや。
「誰や、おまえ。さっき、わたしのこと止めてくれよったよな?」
おぉ、見事な大阪弁。
シンパシーを感じざるをえーへん。
「自分、1-Bなん?」
「見りゃわかるやろーが」
いや、見ただけではわからへんぞ?
「なんでアイツんこと蹴っぽってたん?」
「アイツ?」女のコは意外そうな顔しやった。「おまえ、奴さんは教師やぞ?」
「オレはそれなりに不良少年で、おまけに非国民でもあってやな」
すると、今度は女のコってば目を丸くしやって。
「へぇ、意外やな。おもろいやんけ、おまえ」
「ちょい話聞かせてや。聞いたるさかい」
「妙な言い回しや。授業は? ええんか?」
「問題ナシやよ」
「せやったらついてこい」
女のコは先導するみたいにして歩き出した。
小ぶりなんやけど、そのお尻はぷりぷりや。
背も小さい、せやけど、後姿からもしなやかさが伝わってくる。
じつはπのサイズもちょうどええ感じでシャツを突き上げてんのは確認済み。
ぷちぷちしたナイスバディの彼女の名前はなんちゅうんか。
そのへん、もはや気になってた――。
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ぷちぷちボディの女のコに続いて屋上に出た。
天気はええんやけどなにせ12月、ちぃとばかり寒いんや。
「おまえ名前は? なんてゆーんや?」
「きみから名乗るんが礼儀や思うけど?」
「きみ言うな、気色悪い。男やったらへりくだるな」
「っちゅうことならごめん、謝る。言い直したろ。おまえの名前はなんやねんな?」
「おまえやとぅ? 清々しいまでの切り替えや」
「そういうのが得意なんやよ」
女のコはくるっとこっち向くと、いきなり腰下ろしてあぐらかきやった。
なにせスカートが短いもんやからいろいろと見えてまいそうやったんやけど、そのへんのケアについてはカンペキみたいで絶妙に隠されてていっさい見えへんかった。
女のコから一メートルほど離れたところで、オレもあぐらに落ち着いた。
初めてお目にかかる彼女んことをしげしげと見つめる、左足の太ももからふくらはぎにかけて、巻きつくようにしてトライバルタトゥー。
けっこう派手なもんやさかい、オレはついそれを指差して、「シールかなんかやよな」――?
「普段はそれで通してる」
「通してるっちゅうと?」
「ホンモノやっちゅうことや」
「うへぇ、ホンマに?」
「左の肩から二の腕にもある。いっそお目にかけたろか?」
嘘やないんやろう、嘘つく理由があらへんさかいな。
オレは感心した、口を突いて出てきたんは「傾奇者やなぁ」なる言葉。
そったら女のコはまた驚いたみたいにきょとんとなって。
次に訝るみたいに眉根を寄せて。
「おまえ、やっぱ変な奴やな。見た目も変やし」
「あえて教えたる。ルッキズムはようないぞ?」
「そんなんちゃうわ、アホ男子」
「仲ようしようや」
「おまえ次第や」
オレはふたたび「なんでセンセ蹴ってたん?」――。
「アイツはセンセやない。タマゴや。現状は単なる実習生や」
ほえぇ、そうなんかぁ。
「で、何やらかしたんや? 教えたってくれへんかぁ?」
「手当たり次第に見境もなくウチの女子どもんことハメくさってくれたんや。くだんの男はイケメンやったやろ? そのへん、うまく利用、活用したっちゅうわけや」
「ああ、そういう」なんちゅうか、納得。「まあ、そういうヤリモクでセンセになろうとする野郎がおってもおかしないやろ」
「せやな、そのとおりや。それこそ奴さんの甘い言葉に騙されて、あるいは惚れてしもた阿呆もおった。そのへんも含めて、わたしからしたらけったくそ悪くてやな」
「そないな理由で暴行かぁ?」
「泣きついてくるダチもおったっちゅうてんねん。せやったらやるに決まってるやろ」
泣きつかれるくらいやから人望はあるんやろう。
それに応える格好で行動するバイタリティもある。
かわいらしいだけやのうて、漢気まで備えてるっちゅうわけや。
「なるほど。つくづく正しいヒトなんやな」
「そうや。わたしは正義ん女や。話は以上か?」
「うん、以上や」オレはすっくと立ち上がった。「久しぶりに気持ちのええ女のコに会えた。気分がええわ」
「意外やな」
「その真意は?」
「おまえ、亭主関白に見えるさかい」
今度はオレがきょとんってなった。
すぐに笑みが込み上げてきた。
そったら気が変わって、「LINEしようや」――オレは言うた。
女のコは鼻で笑うと、「ええわ、ちょっとくらいはつきおうたるわ」――。
ケータイ突き合わせて、それから女のコはぐいって下から、睨みつけるようにして見上げてきた。
「目ん玉の真ん中だけはギリ黒いんか、それ以外は白い……気色悪いやっちゃな、おまえは」
酷い言われようやけど、オレはいよいよ彼女の固有名詞が気になった、せやさかい、「名前は?」って訊いた。
「自分から名乗れや。おまえ、男なんやろ?」
「犀川、犀川イクミくんやよ」
「あたしはベニコや。苗字も要るかぁ?」
「いや、必要ない。識別子として成立してたらじゅうぶんや」
「珍しい名前やってか?」
「だってそうやろう?」
オレは身ぃ翻した。
階段室から出たところに、アキラっちの姿があった。
ちょい難しい顔してやる。
「なんだよ、アイツ。っていうか、おまえ、早速、お友だちになったのか?」
「まあ、そないなとこ」
「怒るぞ」
「黙れ。キスしたる」
「えっ――んんっ、んんんんんんんんっ!!」
口に蓋するみたいに無理やりしたったもんやさかい、アキラっちはそないなふうに声にならへん声発して、じたばたじたばた両手振りやった。
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「鉄拳」やってた、「8」、アキラっちがハマり始めたんや。
オレんちの回線は速いさかい、ウチでがちゃがちゃスティック動かしてボタン叩きやる。
「今度、メメたそと死合うんだ。練習しとかなくちゃなんだよ」
メメたそとはもはや言わずもがな生徒会メンバーの桃色髪の女のコにしてアーマーキング使いの強者の名。
アキラっちが操る「レイナ」はどこまで抗えるんか、興味深いところではある。
アキラっちが必死の形相で「修行」してる最中にあって、ベッドで横になってるオレ。
そないなとこに、ケータイに着信があった、LINE――。
なんとまあびっくり、ベニコさん? ――いんや、ベニコちゃんやった。
『家どこや? 教えろや?』
まるで不躾、酔っ払いみたいな勢い。
せやけど優しいオレは無防備に住所晒したった。
『今から行く。アルコール用意して待ってろや』
今から行く?
っちゅうか、酒やとぅ?
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アキラっちはなおも「鉄拳8」に夢中で。
夢中すぎてインターフォンが鳴ったのにも気ぃつかへん。
出迎えに玄関から出ると「よぉ」、黒い革ジャン姿のベニコちゃんがおった、黒いタイツで、長い黒髪はやっぱりアップのポニーテール、ルージュは彼女自身を象徴するような紅色――。
「ええんか? カノジョ、おるんやろ?」
「おや? ようご存知で」
「調べるまでもなくわかったわ。おまえの恋人は馬鹿女らしいってな」
「キツい言い方やなぁ」
「怒らへんのか?」
「からかってるだけなんやろうから」
部屋に上げたった。
ベッドの端に腰掛けたまま、やっぱアキラっちは必死で、スティックとボタンをがちゃがちゃいじってて。
そないな調子の彼女にベニコちゃんが、「ホンマに馬鹿っぽい女やな」――。
てっきりアキラっちはびっくりするかムッとしやるか、そのいずれかやおもたんやけど、どっちでもなかった。
「おぉ、アキラっち。冷静すぎんぞ、どういうこっちゃ?」
「あたしは確かに馬鹿っぽいかもだけど、じつはそうでもないんだぞ?」
その一言で、アキラっちが賢いところを知ることになった。
なるほど、先方かて全部全部お見通しで、いろいろと見当までついてるっちゅうわけや。
オレはベッドから地続きの位置にある丸いちゃぶ台の前にベニコちゃんのことを促した。
「晩飯は? もうけっこう遅い時間やけど」
「食べてへん。おまえにごちそうになったろうおもた。あかんかぁ?」
あかんことはない。
ベニコちゃんの開けっ広げで大胆なところが、オレはもはや、けっこう好みや。
「何食べる?」
「ピザがええわ。ピザ屋のハットさんや。わたしが知る限り、あっこは至高や」
ベニコちゃんのそのセリフを耳ざとく聞きつけたアキラっちは、「へんっ! 安い舌だなっ!!」――。
ベニコちゃんはきょとんとなって。
「えっ、そうなんか? ゆうたかて、ピザハットは高いやろ?」
「高けりゃサイコーなのか? おまえのほうが馬鹿女だな、ふははははっ!!」
魔王みたいに高らかに笑いやったアキラっち。
っちゅうか、女のコってみんな、ピザ、好きなんか?
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とはいえアキラっちも来たら来たでピザは食うらしい。
「なんや、結局食べるんやんけ」
そないなふうにベニコちゃんにツッコミ入れられると「うるさいやい、食べるんだい」――。
「誤解すんなや」って、唐突に、ベニコちゃん。「ホンマにわたしに他意はないんやぞ?」
なんとも抽象的な物言いやけど、ベニコちゃんのガードが堅いくらいはわかってるんやわ。
でも、せやったら、なんでオレんち訪ねてきたんやってことになるわけやけど――。
「せやから誤解すんなや、わたしは暇なんや。それ以上でも以下でもない」
そこまではっきり言うてもらえると、なんや助かる。
――おもむろに「暑い」言うと、ベニコちゃんが黒い革ジャン脱ぎやった。
下は真っ赤なタンクトップで、細い肩と真白の胸元が露わになった。
確かに、左の肩から二の腕にかけてはトライバルタトゥー――。
「かっこよ」オレは感心した。「マジ、かっこよ」
「せやろ?」得意げに、ベニコちゃんは微笑んだ。「おかげで公衆浴場にはお邪魔できへんけどな」
「そりゃそうや、ちゅうかやめとけ。まともな価値観持ってる一般市民に迷惑かけんな」
「わかってるわ。せやけどわたし的には、彫物入れたおかげで開き直れた部分もあるんやぞ」
「せやさかいそんなんは勝手にせぇや」
「おまえ、かわいないぞ。ちゅうか、なんでそこまで強気やねんな」
オレは男やさかいな、しかも身勝手な。
横柄でいる理由なんて、そんなもんでじゅうぶんやろ?
「今日、泊まってってもええか? 家は近いんやけど、帰んのもう、めんどくさい」
「とか言うてんぞぉ、アキラっちぃ」
ピザをもぐもぐしながらもはやプレイに戻ってるアキラっちは、「ベッドはあたしとベニコちゃんで使うからな」――。
「えぇーっ、オレも混ぜたってやぁ」
「うるさい。男は床で寝ろ」
二人して声揃えてそない言わんでも。