沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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先日の立会演説会と投票を経て正式に――一年生ながらも生徒会長に信任された東条チカコちゃんは昼休みに1-Aを訪れて、「今日はなんとしても来てください、お願いします」とか言うて立ち去った、なんやのっぴきならへんことでもあったんか……直感的に、そないなふうに思わされた。
一緒に机を前にしてたアキラっちは、「なんか、切羽詰まってるみたいだったな」――。
そのとおり。
まったくもって、そのとおり。
「そういやぁ、オレらって生徒会メンバーやったな」
「そうだぞ。あたしは賢いからその旨、忘れたことなんてないんだぞ」
「やるなぁ、アキラっちは」
「そうだ、あたしは偉いんだ」
偉いとまでは言うてへんねんけど。
彼女が立ち上がると、胸がバインバルンって揺れた。
触りたいさかい夜、二人きりになった折には存分に揉んだろうって思う。
「で、なんだろうな、会長が用事って」椅子に腰を下ろしたアキラっち。
「アキラっちはお呼びやないように見えたな」
「たしかにそうだけど、あたしはついていくからな。邪魔にならないようにしたらいいんだろ?」
「確かにそうや。アキラっちかて生徒会メンバーなんやさかい、居合わす権利はある。――ところでや、アキラっち」
「なんだよ、改まって」
オレは「先達て、長らく空席やった副会長の座に指名されたんやわ」――って言うた。
「はぁ?」アキラっちは驚いたようなしかめっ面みたいな。「そんなの初耳だぞ?」
「そりゃそうや。初めて言うたんやさかい」
「らっ、LINEか?」
「まあ、そないな感じ」
「うぅぅっ、裏切り者だ、おまえは裏切り者だっ」
オレの愛が伝わってへんとは。
オレはにひひって笑いながらアキラっちんことを見た。
そったらアキラっちは、「ま、まぁいいよ」って許してくれた。
「にしても、なんの用なんだろうな」
「くどいな、アキラっちも。行って聞いてみりゃあ、それだけではっきりするやろ」
「っていうか、副会長の指名は会長の専権事項なのか?」
「せやさかい、オレについてはそういうことなんやろぅ」
「会長も、胸がデカいよな」
「それが何か?」
「浮気したら承知しないからな」
せやさかい、そないな心配ないんやってば。
誰よりチチデカなんがアキラっちなんやさかいな。
――って。
「オレが胸の大小云々でカノジョを選んでるって、本気でおもてるんか?」
「思ってないよ、うん、思ってない。だけどさ、おまえはモテるからさ……」
「そいつぁお互いさま。おまえかてめっちゃモテるやんか。せやさかい、オレかていっつも不安なんやぞ?」
そ、そんな心配必要ないっ、必要ないぞっ。
アキラっちは突っかかるように言うてきた。
「せやったら、ええんやけど」
って、オレはまたわろた。
アキラっちの愛情の強さは絞首刑に匹敵する。
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会長――東条チカコちゃんもオレもアキラっちも生徒会室において、それぞれ高級感漂う――ちゅうか実際に高級な品物やろう、その上に腰掛けてた。
目の前にはグレーの背広姿の、頭はバーコードのおっさんがおって――。
バーコードにするくらいならいっそ剃ってしまったほうが潔いやろうって思うんやけど――。
そうもいかへんねんやろう、バーコードとはいえ残ってる髪は生命線で、だからこそ大切にしてるんやろうとは察しがつく。
東条チカコちゃん――チカコ会長が慌てたようにびっくりしたように、あるいは申し訳なさそうに席を立った。
「やめてください、理事長」
困ったような思いやりに溢れることを言うた。
「そこにもう一脚あります。どうかお座りになってください」
優しい声で気遣うように、そない言うたチカコ会長。
申し訳ない、申し訳ない。
何が申し訳ないのかはわからへんねんけど、とにかくバーコード頭の理事長――この学校、蒲田学園において最も偉い人物はそない言うて。
ようやく理事長は革張り回転椅子に腰ぃ下ろした。
それでもぺこぺこって頭ぁ下げて、額に浮かぶ汗をハンカチでしきりに拭いやる。
理事長はなあんにも言わへん。
言い出せへんように見える。
せやからやろう。
会長が口を切る格好で、「何かあったんですね?」って、静かに問いかけた。
「ほんとうのところを、お話ししたい」
「いいですよ、かまいません。どうかお話になってください。でないと私としても、すっきりしませんから」
オレもアキラっちも真剣に耳を傾けてる。
やっぱのっぴきならへんことらしいって、悟ってるからや。
「今日明日にも、ニュースでも流れると思います」と理事長。
「ニュース?」と首をかしげたのはチカコ会長。「どういうことですか?」
「じつは、生徒の個人情報が、外部に流出してしまったのです」
最近にあってはありがちな事象やなって思いつつ、オレは会長に流し目をやった。
会長は驚いたふうに目ぇぱちくりさせてた。
アキラっちもアキラっちで、そないな感じやった。
「それは大問題では?」
いや、チカコ会長、そんなんべつに言わへんでも――。
それでも理事長はただただ素直で正直らしくって、「はい。大問題です」と答え――。
「そのうちメディアにも流れる、そうおっしゃいましたよね?」
「否が応でもそうなるでしょう」
他人事っちゅうか、無責任な発言にも聞こえるんやけど――。
アキラっちはまあ怒らんわ、めちゃくちゃ優しく出来てるさかい。
オレも怒らん、このご時世、まあそないなこともあるんちゃうかって思うさかい。
チカコ会長は正義のヒトやさかい憤ってもしゃあないなぁっておもたんやけど、彼女は「で、私たちになんの用なんですか?」って訊ねたんや。
「そのようなことを打ち明けられる。要するに、私に、あるいは私たちに、何かしてほしいということですよね?」って、チカコ会長。
「そうなのです」俯きつつも、やっぱり額の汗をハンカチで拭う理事長。「じつは、あなたたちにお願いしたいことがあるのです」
「そうだろうなって理解しています。つまるところ、何なのですか?」
私は学園の長として、生徒さんにもその親御さんにも謝罪する立場にあります。
理事長、その物言いはまあわかるんやけど。
「で、その上で、オレらになんの用ですかぁ、ってことやよ」オレは遠慮なくタメ口を利く、礼儀は支払うつもりやけど、率直に訊いたったほうが話が早いやろうっておもたから。
「言いました。私はみなさんに謝罪すべき立場なんです」
「で?」オレは訊ねる。「バレたんは名前と住所ってとこ? それ以外には?」
「顔写真等々も、です」
「ネットワーク周りっちゅうか、セキュリティかて業者に依頼してるんやろ? せやったら――」
「彼らが謝ったところで誰も納得しないと考えました」
「ま、そりゃそうやわな」
業者は業者や。
奴さんらに謝罪してもろても、なぁんも解決せぇへんであろうことは自明の理や。
「率直にお聞かせください」チカコ会長は言う。「改めて訊きます。私たちに何をしろ、と?」
「あなたたちは生徒の代表だ。ですから、私が考えた謝罪の弁に赤ペンを入れていただきたいのです」
オレが「そういうこともあるわな」って納得したいっぽうで、チカコ会長は難しい顔しやった。
「私はかまいません。ですが、生徒会メンバーにまで責任を背負わせるわけにはいきません。わかってくださいますよね?」
「わかります、わかります。ですが……」
「取っ掛かり、あるいは指針が欲しいと?」
「そのとおりです。藁にもすがる思いとは、こういうことなのだと思います」
わ、悪いヒトじゃないと思うぞ?
アキラっちはどもりかげんで言い――。
「だからって信じろとは言わないし、まっすぐに考えればそれってナシだろうとも思うんだけどさ」とアキラっちは続け――。「でも、見方を変えれば、あたしたちで力になれることがあるっていうんなら、さ」
アキラっち、ええこと言いやった。
ちょい難しい顔してたチカコ会長も毒気を抜かれたみたいにして、椅子に座り直した。
――セやけどさ。
「理事長さん、ホンマに赤ペンだけでええん?」
「と、いうと?」
「手の内は明かしてほしい。全部、手伝ってさしあげるさかい」
そったら理事長は眉間に皺寄せて、口をへの字にして――それって泣きだしそうな顔にも見えた。
その日は夜まで理事長に付き合った。
生徒の代表――とやらとして出来上がったもんには容赦なく赤ぁ入れて、次の朝の臨時集会に備えたんや。
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案の定、朝一の体育館での集会は喧騒に満ち、怒号が飛び交った。
打合せして、文言としては一片の不誠実さもなく伝えてくれはったんやけど、やっぱり生徒たちは納得がいかへんみたいやった。
深々とお辞儀してる理事長の頭に、どこの誰かが石ころ、ぶつけやったんや。
それでも理事長は微動だにせーへんかった、痛そうにもせぇへんかったんや。
感動せぇへんかったと言えば嘘になる。
頭にきぃへんかったって言ったらもっと嘘になる。
頭から血ぃ流しながらも頭ぁ下げ続ける理事長は立派なニンゲンや。
オレとチカコ会長は、壇上の陰でその姿を見てた。
関わった者として、理事長と一蓮托生を請け合った身として、誰よりもそばで立ち合うべきやって考えたからや。
いつも毅然としてるチカコ会長やけど、その様子を見たら泣きだしそうになるんもわかる。
「悪くないのに、悪くないのに……」
そない言うて、挙句、右手で口元を覆うとぽろぽろ泣き始めた。
なおも飛び交う罵声。
いろんな物が理事長に向かって投げられる。
まったく、しゃあないな。
ああ、しゃあない。
オレはすっと歩を進めて、歩き出した。
途端、オレの左の袖掴んで「ダメです」言うてくれたチカコ会長。
オレがにっこり笑いかけると、チカコ会長はオレを自由にしてくれた。
オレはゆぅっくり歩んで、壇上の真ん中で頭下げっぱなしの理事長の隣に立った。
オレの外見が少なからず異常に見えたからかな?
それともオレがヤバい奴って知ってるからかな?
しんと静まり返った。
「かんにんや、みんな。せやけど、理事長が悪いってこともないんや。賢いおまえらなら、それくらい、理解できるやろ?」
オレは微笑んで、「せやさかい、もうこの冴えへんおっさんのことを罵倒するんはやめてほしい。頼むわ。ホンマ、お願いや」――。
オレはゆぅっくりと膝ぁ突くと、「このとおりや」言うて、土下座した。
いっそう、息を飲んだような静けさに包まれた。
「さ、犀川くん、やめてくれ。謝らなければならないのは――」
「せやさかいさ、理事長、それやと収まらへんみたいやから」
「しかし、きみが頭を下げなければならない理由なんて――」
オレは顔上げて、この学園に住まう生徒たちを見渡して、それからにっこり、笑ってやった。
「オレはここが好きやさかいな。それだけなんやよ」
理事長は慌てたように跪いた。
せやから、あんたがそこまでする必要はないやろうに。
理事長は「申し訳ありません」って苦しげに言うて、おでこを床に擦りつけた。
そのうち、チカコ会長までやってきた。
綺麗なお辞儀をした、うっとりするくらい。
それから毅然とした態度で「集会は終わりです。みなさん、教室に戻ってください!」って大きな声で告げやった。
生徒が去っても、理事長は土下座したまま。
泣きながら、土下座したまま。
助けた甲斐があった。
そういう人物や。
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放課後。
生徒会室にて。
うえぇ、うえぇ。
革張りの椅子の上で泣きじゃくってるんはアキラっちや。
「誰も悪くないじゃんよぉ。ウチのガッコの誰だって悪くないじゃんかよぉ……」
それでも誰かが頭下げなあかんシチュエーションってのはあってやな。
「さっちんもみゆきちもそう言ってた。だから馬鹿なあたしも納得しようとはしてる。でも、でも、おまえが土下座なんて……」
「その場が収まるんであれば、いくらかて床舐めたるわいさ」
「おまえのプライドはそれを許すのかもしれない。でも、あたしはそんなの許したくない」
「アキラっちは優しいなぁ」
「あたりまえだ。恋人なんだから」
恋人とか言われると、なんや背中がむずがゆくなる。
椅子に座ってるオレの前で、チカコ会長が頭を垂れた。
「今回の件はほんとうにごめんなさい。私にもっと力があれば……」
「力云々の問題やないよ。オレがごめんなさいすることにはそれなりの威力があって、たったそれだけのことや」
チカコ会長が目ぇ逸らすようにして目ぇ伏せた。
オレは椅子から腰上げて。
それからチカコ会長の頭を平手でぽんぽんってして。
「いくぞ、二人とも。つけ麺でも食べに行こうさ」
顔を上げると、きょとんとなったチカコ会長は「つけ麺?」って不思議そうにしやった。
「アキラっちんちの近くでな、べらぼうにうまいんや。せやけどやってる夫婦の仲が悪くて近々店閉めるやろうってのがもっぱらの噂なんやわ」
「夫婦の仲ですか……って、つけ麺?」も一度そないなふうに言いやった会長。
「つけ麺は嫌いかぁ? 雑色商店街なんやけど、それやと家から遠いとか?」
「いえ、遠くはありませんけど……」
「なら決まりや。心配すなや。帰りはきちんと送ったるさかい」
カッコ、いいんですね……。
そないなふうに言われた、褒められたような気がした。
ありがとう。
そう言うてもらえたことが、なにより嬉しかった。
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チカコ会長のご自宅はガッコと目と鼻の先やった。
せやさかいチカコ会長は「一人で帰れます」言うたんやけど、彼女が良くてもオレが心配で、やな、もうとっぷり日は暮れてるし。
「今日はありがとうございました。変な言い方になってしまいますけれど、思い出に残る日になりました。つけ麺もすごくおいしかったです」
って、マンションの前で、チカコ会長は言い――。
「ホンマ、サイコーのつけ麺やったな」オレはわろた。「にしても、ホンマ、土下座なんて、人生で初めてのことやったわ」
「ほんとうは、私が誰より先にするべきだったんです」
「アホ抜かせ。女のコにそないな真似させられるかいな」
「犀川くん、あなたは副会長なんですよね? 私の、副会長なんですよね?」
「そうやよ」オレはにっこりわろた。「オレはきみの副会長や」
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帰り道。
いろいろと言いたいことはあるんだけどさ。
そないな前置きののち、アキラっちはすっきりとした口調で、「おまえのおかげでみんなが救われたんだ、理事長も会長も、生徒みんなも救われたんだ」って褒めてくれた。
「業者にはお灸を据えたってほしいな」
「そういうもんなのか?」
「仕事っちゅうのは、そういうもんやよ」
唐突に、がばっと、アキラっちがオレの左腕を胸に抱きやった、相変わらずハリと柔らかさが同居する爆な感じのそれ、こちとら鼻血がでそうや。
「おまえのこと、誰にも渡さないからな。ぜぇぇぇったいに、だ」
「おぅ、任せろや。オレかておまえんことはなさへんさかいな」
「ラブラブだ、あたしたちはラブラブだっ」
「これからどないする?」
「エッチしようぜ、セックスだ!!」
エッチとか。
セックスとか。
照れ隠しっちゅうわけでもないんやろうけど、アキラっちがぴゃーって走ってくもんやから、オレもがんばって追いかけた。
アキラっち、走るとけっこう速いんや。