――今日はカノエと、デートをする日だ。
この日の為に、溜まっていた全ての業務を終わらせて、不規則であった生活も見直して、健康体を維持する事を心がけてきた。
ハプニングへの対応も、皆の協力があって無事に完遂させたので、明日の朝までは完全にフリーな時間を、私は手に出来たという訳だ。
カノエと付き合っている件は、キヴォトス全土に知れ渡っている。
……クロノス報道部が、情報をバラ撒いてしまったので、沢山の生徒から詰め寄られて大変だったが、遅かれ早かれ皆には真実を打ち明ける予定であったので、少し早まっただけと捉えるべきだろう。
デートのスケジュールは、予めカノエと共に考えてきている。
待ち合わせ時刻は、10:00丁度。
……私は絶対に遅れる訳にはいかないと、1時間も早く着いてしまったが。
恥ずかしながら、カノエとは既に肉体関係にまで至っている。
私が多忙でロクな睡眠が取れなかった日には、授乳手コキをして癒してくれた。
寝て、起きたらしゃぶられていて、なすすべもなく勃起を収めながら「気持ちよかったでしょお……?」
精液をムグムグ嚥下しながら、いつもの、にへらとした笑いを向けてくれた。
と、忙しい合間を塗って何かとエッチしているものの、実は……デートをした事はまだ無い。
童貞こそカノエで卒業し、カノエの「初めて」も私が貰い受けた。
が、デートをするより先にセックスをしたのが、少しおかしくて二人で笑ってしまった事もある。
なので、今日は待ちに待って、念願叶った日。
気合が入り過ぎて緊張が止まらないけれど、1時間もあれば緊張を少しでも、解せる猶予がある。
「…………! あ、あれぇ……先生ったらもう来てたんだねぇ」
とりあえず、深呼吸でも……
思った直後に、ねっとりと、いつまでも鼓膜に残り続ける暗い声色の持ち主が、襲来してきた。
「前世では30分前だったんだけどねぇ、イヒッ……先回りしてきちゃうなんて、やるねぇ先生……」
声優学科を専攻している彼女は、七色の声の持ち主。
妹系からお姉さん系、私と過ごす夜であれば、サドにマゾ、あらゆる性癖に応える声色をも作れる。
私の彼女である、ワイルドハント芸術学院三年生、板垣カノエ――私の恋人。
「先生、どうかなぁこの服?」
カノエが纏っているのは、所謂、地雷系のファッションである。
ピンク色のワンピース、フリルが沢山ついている黒のミニスカート。
胸元には大きな黒いリボン、袖やベルトも黒にして、甘過ぎない雰囲気に締め上げている。
首には十字架のネックレス、いつもより心なしかデニールが薄いタイツ……ではなく、オーバーニーソックスと、ガーターベルトの組み合わせに、厚底のエナメルローファー。
カノエの髪留めと同じものをサイドに取り付け、チェーンはハートの模している、ショルダーバッグ
「先生、こーゆーの好きだもんねぇ♪ イヒッ、前世でも初めてのデートではねぇ、この恰好だったんだよぉ」
髪は敢えてボサついたままのツインテール、ドストライクだ。
色々なカノエの姿を見て来たけど、私が最も見たいと思っていた地雷系は、「今はダぁメ♪」と、唇を人差し指でツンツンさせながら、すべからく断られてきた。
この日の為に、ずっと封印させていたらしい……そして、封印を解いたカノエは似合い過ぎている。
「…………♪ 見惚れちゃってるねぇ♪ いいよぉ、先生に見て貰う為に着てるんだからねぇ♪ 穴が開くくらい見たっていいんだよぉ……」
カノエは勿体付けた動作で、両手でミニスカートを持ち上げながら、その場で一回転する。
……スカートからハミ出ていた紐が見えた。
あぁ、地雷系を着るのならば、その系統の下着は確かにベストマッチしている。
こんな姿を見せられたら、ドキドキが止まらなくなってしまう……緊張をどうにか解そうとしたのに、もうそんな事出来る筈もない。
「イヒッ♪ 普段肌を見せない子なのに……ニーソとスカートの隙間はチラッ、そういうのも好きだよねぇ♪」
カノエには敵わない。
最初こそ、カノエの話に乗ってあげていたつもりだったが、どうやら本当に私とカノエは前世でも、恋人だったのだと改めて実感せざるを得ない。
「ちょっと早いけど、ゆっ~~くり、遠回りしながら映画館に行こうかぁ」
言いながら、私の腕に絡みついて来て、つま先をめいっぱい伸ばしながら、耳元で囁いてくる。
服を着ていても、カノエの低体温なひんやり、冷感グッズな涼しさは変わらない。
しかし、ぞわぞわ……慣れている筈なのに、される度に身体の根底から、ぐつぐつ湧き立つものがある。
鼓膜を愛撫されている。
カノエは声優として商業作品にも出演しているので、囁き中心ASMRは得意だが、作品として聴くのと、リアルで密着されて囁かれるのでは、臨場感が全然違う。
人気の声優を独り占めにしている。……陶酔感、支配感、生徒にそんな想いを抱くのは間違っているのに――
「先生」
カノエは私を腕を優しく引っ張り、今度は上目遣いで覗き込んでくる。
「私はもう、先生だけのものだからねぇ~……イヒッ♡」
……………………やっぱり敵わないな。
今はアレコレ考えるよりも、カノエとのデートを楽しむ事を優先させる。
30分間、ただ腕を組んで歩くだけでも、恋人と一緒なのだ。
楽しいに決まっているし、カノエにも楽しんで貰いたい。
「じゃあ、行こうかぁ」
ここまで密着されたら、カノエの控えめどころではない胸も、ぴったりと二の腕に当たってしまっている。
ぐにゅり、という感触は全くないが、微かに女の子が伝わってくる。
地雷系衣装で腰を絞り、胸を強調させる形になっているが、彼女の大きさも形も、何ら変わらず安心してしまった。