「イヒッ、私達にぴったりな映画だよねぇ」
本来であれば目的地である映画館には、すぐに辿り着けたが……
上映開始時間ギリギリまで、周辺をブラブラしたり、公園のベンチに座りながら、肩を寄り添い合ったりしていた。
たった30分間で、凄くイチャイチャ出来ていたし、シャーレで過ごす日々の疲労が流れ落ち、身体中の不純物までもが取り除かれていく感覚だったが、まだまだ……デートは始まってすらない。
「前世で恋人だった二人……現世でも再会して、少しずつ前世の記憶を思い出していき……また恋人になる。…………まるで私達みたいだもんねぇ♪ イヒッ……」
もしかして、いや、間違いなくカノエは、この映画が公開されるタイミングを見計らって、デートの計画を提案してきたに違いない。
「ねぇ、先生」
隣り合って席に座る私へ、そっ……と、ひんやりして、恐ろしいくらい細い掌を、私の掌と重ねて来た。
「映画のヒロインちゃんは、随分と女の子らしい身体つきだけど……私の身体とどっちが好き?」
考えるまでもない。
カノエもちょっと、からかいたいから言っているのだと分かっている。
「……イヒッ♡ 先生ったら大胆だねぇ♡」
……カノエが誘導してきたんだけど。
動悸がまた激しくなってしまう私に対し、カノエはやや恐怖さえ覚える程に白い肌を、少し紅く染めてはいるものの、伝わる体温と動悸は平静を保ち続けていた。
デートのスケジュールは、滞りなく終了した。
映画観賞中は、サービスシーンやキスシーンの間、カノエが私の太ももを撫でてくるものだから、勃起を鎮めるのが大変だった……
上映終了後は、予約していたレストランへ行き昼食。
「私が作る料理と、どっちが美味しい?」などと、意地悪な質問をしてきた彼女へ、迷うことなくカノエと答えたら席を立ち、私の隣に移動して太ももを触りながら、食べるのを再開させたので、色々な意味でドキドキしてしまった……
昼食後、カノエが興味を抱いていたオカルトグッズ専門店へと、足を運んだ。
大釜や不気味な人形? 鳥籠のようなものからペンダントを、興味深く観察するカノエはとても可愛い。
展示されている品よりも、ついついカノエばかりを目で追ってしまって、ハッ、と視線を真下に下ろしたら、既に彼女が潜り込んでいた。
「先生、ありがとうねぇ」
店の死角なのを良い事に、カノエは私の鼻の先端に軽くキスをした。
だけど、悪魔の装飾が成されていた、大型鏡にはカノエの背面姿や、背伸びしている光景までも全部映り込んでいた。
普段は見る事の出来ない視点から、キスされた気分になって、ドキドキどころかムラムラが湧き出てしまったが……
「夜に、ねぇ♡」、膨れつつある竿の側面を一撫でしつつ、「しっ~~♪」と、人差し指を唇の前に立ててきたカノエを、少しばかり抱きしめて、どうにかその場を乗り切れた。
「次はさ、先生が気になっていたところに行こうよぉ」
スケジュールにはない提案だった。
私の趣味、ロボットのフィギュアやプラモデル……
カノエはあまりそれらに興味が無いと知っているから、プラン作成時には提案をしなかったが、「先生の楽しそうな顔を、見たいからさぁ♪」とまで言ってくれたのなら、お言葉に甘える事にした……
「イヒッ、いいんだよぉ、先生の近くでこうしてるから」
私の前方に位置を取り、ニタニタとしながらフィギュアでも、プラモデルでもなく、私の顔を鑑賞してくるカノエ。
「全然退屈してないよぉ♪ 先生が童心に戻っている顔、もぉ~~と見せてねぇ♪」
私も後半になると、カノエの事ばかりを見てしまっていた気がする……
そして夕食を摂り、夜の公園で手を繋ぎながら天然のプラネタリウムを、暫し観賞しながらデートの感想を伝え合っていた。
「楽しかった時間って、どうしてこんなに早く過ぎちゃうのかなぁ」
時刻は20時を過ぎている。
カノエは監隊のミリアの協力を得て、ワイルドハントからの外出を許可されている。
が、それは日付を跨ぐまでの間のみ。
どうあっても学院へ戻るまでの時間を加味し、カノエと過ごせるのは残り三時間も無い。
「先生」
きゅっ……
幅広く使われる「手を繋ぐ」から、恋人だけしか行えない、互いの指を一本ずつ絡ませていく、ラブ握りへ。
どれだけ密着されても、カノエの鼓動は平静を保っていたのに、ラブ握りを合図にして初めて、とくっ……何かが弾けてきた。
「私、まだまだ先生とお別れ……したくないなぁ」
ここから先のスケジュールは「あえて」立てていない。
何度も何度も、身体を重ねて来た関係なのだ。
この先に「何を」求めているか、分からないほど私も――
「私……子供だけど、大人な事は出来るんだよぉ……♡ いっぱいいっぱい、先生としてきてるもんねぇ♡」
また、太ももを擦って来る。
デート中も何度もされてきた、セックスアピール……
その気になれば、デートの途中でホテルへ直行出来ていただろうが、今まで性的衝動を押し殺して、耐えきってきた。
……もういいんだ、恋人との陽の時間は終わり、ここからは夜の時間へ。
「うん♡ 行こうかぁ♡ ホテルの場所はねぇ、ちゃんと検索してきてるんだよぉ♡」
用意周到、例え私がこの場でお別れしようとしたって、カノエはあらゆる手段を用いて、ホテルへお誘いしてくれただろう。
ラブホテルがずらりと立ち並ぶ、艶やかなネオンが相方を誘惑する蛍のように、私とカノエはネオンにつられる足取りで、お目当てのホテル前まで辿り着いていた。