【本編完結】前線基地あまあま娼館ライフ 作:ヒマリすきすきクラブ
①にはR-18はありません。
このヒマリは紋章が情熱です。
ドットアビスで需要があるのかは置いといて、非R-18パートのほうが筆が乗るという……。
前線基地の司令官がホウライへと旅立ち、そして鬼ヶ島のプロデュース成功と共に紛失していた危険なクリスタルの再回収に成功したとの連絡が入った。
これから帰途につくらしい。
そんな報告を受けた日、前線基地は大穴方面からやってきた激しい雷雨に包まれていた。
『渦雷の厄災』。
以前、大穴第一階層こと『砂嵐の階層』で現れ、前線基地を襲った『砂嵐の厄災』と同じく、厄災としてはさほど大きくはない。
戦闘力としても飢餓の厄災と比べれば正直大したことはないが、これは比べる相手が悪かった。
だが、それでもかつて三大国にも現れた厄災の一つ。
『天光満つる処に
渦雷の厄災という名前から分かるように、この厄災は嵐を伴った轟雷と共に現れ、移動すれば激しい雷雨と電磁波を撒き散らす。
まるで雷が渦を巻いているようだから渦雷の厄災というわけだ。
まさに電子機器の天敵。
異世界から流れ着いた品々の中に時々ある、高度文明産らしき品がよく故障しているのはこの厄災が原因の1つでもあった。
この渦雷の厄災は、飢餓の厄災を失ってただの死に果てた荒野となった第四階層こと司令本部命名『闇の階層』から現れた。
そして全くの偶然ではあったが、司令官がいないうちを狙ったかのように前線基地を襲ってきたのだ。
まるで、何かから逃げ出してきたかのように。
──ああ、しかし。
──この厄災には運がなかった。
天駆ける閃光の道標が、衝撃波の咆哮と共に万象薙ぎ払うべく放たれた。
一条の光が雷雨を切り裂き、軌道に沿って黒雲を晴らす。
そして雷の渦を前にすると突然遥か空高くへと飛翔して、そこから真下へ
渦雷の厄災、その本体は徹甲弾とサイコパワーの光を受け止めきれず。
前線基地の正面で大地へと叩き落とされた。
『厄災の体勢が崩れました!皆さん、一気に攻撃してください!』
最近相手をした飢餓の厄災と比べれば弱敵だったこの厄災は、防衛設備として布陣したレイのサイコランチャーの直撃を受けて完全に地面に抑え込まれてしまい。
前線基地正面の誘導エリアで二度と飛び立つことなく迎撃部隊に討滅された。
『……や、やりました!渦雷の厄災、迎撃成功です!司令官のお留守を守ることができました……!』
副司令官アリシアのアナウンスと共に、前線基地のあちこちから歓喜が爆発する。
司令官不在故に、大陸一の頭脳はなかった。
だから今回は、アリシアの依頼でレイのサイコランチャーによる正面から力押しでの討滅に至ったのだ。
もちろん、前線基地を守るためにレイも断るなんてあり得なかった。
「やったぁ!おにーちゃん!厄災倒したよ……!」
レイがパワードスーツを収納して前線基地の屋根から門の下へと下りてくると、ヒマリも大喜びで股間を熱く滾らせたレイの肉体へ抱き着いた。
むわり、と雄臭い汗の匂いをレイの肌から嗅いで、ヒマリはふんふん鼻を鳴らす。
ヒマリの雌膣がレイの形を思い出し、彼の逞しいおちんぽを入れるためにどろりとした愛液を垂れ流し始める。
彼女のぴっちり張り付いた黒い下着の中はもうぐしょぐしょだった。
初めて彼に抱かれた日からまださほど経ってはいないが、あの日と比べて娼館の娼婦としても働くようになったヒマリの豊満な乳房はさらに膨らみ、適度に肉付いていたお尻も大きくなった。
娼婦としてお客さんとえっちをしている影響もあるのだろうが、何よりレイが朝帰りしてきた後やヒマリがお客さんの相手をした後も含めて毎日レイに抱かれているせいでどんどんスタイルが淫らに女性らしく、そしてレイ好みに変わっているのだ。
それは、彼女の心もまた同様だった。
レイのことが大大大好きだし、セックスだってたくさんしたい。
それが今でも続いていた。
彼への好意はさらに高まり続けていたのだ。
もちろんレイからヒマリの想いだって一度も揺らいだことはない。
ただ、彼はいろいろと魅力的だから、マリナやエメルダのように絆の追憶が結晶化するくらい相手を堕としてしまうこともあるだけで。
もちろん、レイも絆の追憶がデキるほどなら責任は取るつもりだ。
まぁヒマリにとってはそれはいい。
連日精力絶倫なレイとえっちしていると、自分だけじゃ身体が持たないとは実感していたし、寂しがり屋で初めて会った時は雨の日の捨て犬のようだった彼を好きな人や関係を持つ人が増えていくのは嬉しいのだから。
彼と関係を持つ人が増えても、自分とえっちしてくれる時間が減らないのもありがたい。
でも、もうすぐ彼と結婚したら、娼館では大好きなおにーちゃん専属娼婦になろうとは思っていた。
強さも大事だけど、やっぱりレイのことが一番大事だから。
「ねぇおにーちゃん?今からどうするの?」
そんなわけで、ヒマリは甘ったるい声でレイに尋ねた。
もちろん二人とも戦闘で昂っていた。
レイのデカい金玉はサイコランチャー運用でずっしり重くなり、彼のおちんぽは硬く反り返ってビキビキに血管を浮かせている。
ヒマリの柔らかいお腹に押しつけられて、我慢汁がどばどば垂れて彼女の服を汚していく。
そして、ここにいるのはヒマリだけではない。
厄災迎撃に参加したマリナやエメルダといった他の女性たちも、当然戦闘で昂ぶっていた。
「す、すまない……レイ。いつもより身体が火照ってしまって……♡」
シャノンがそう零したのを皮切りに、レイがヒマリとシャノン以外にも何人かの女性たちを抱くことに決めたのはこの場の自然な流れだった。
「いいよ。ただ今夜は予定があるから長くはできないけど、それでもいいならルディアさんに部屋借りれないか相談しようか」
激しい雷雨は止み、雨上がりの空気は涼しく爽やかだった。
前線基地から大穴方面にかけて、裂けた黒雲の隙間から光が降り注ぐ。
灰色の空の向こうから、真昼の穏やかな青空が広がりつつあった。
*****
その日の夜、レイたちは夜のマーケットを歩いていた。
マリナとヒマリがマーケットでスティーラという名前の魔石細工師のお店を見つけてくれていたからだ。
なんでも夜しかお店が空いていないらしく、探すのが大変だったようだ。
「へぇ、今度司令本部に飾られるあの魔石細工の作者さんなんですね!独占インタビューできるかなぁ」
「エメルダ。ちゃんと本人の許可は取るんだよ?」
夜のマーケットを歩くレイとマリナとヒマリの3人のすぐ後ろに、どこから聞きつけたのかエメルダもカメラを持ってついてきていた。
4人の左手の薬指にはお揃いの絆の追憶が嵌められている。
この4人は前線基地で大穴探索に背を預け合う戦友でもあり、レイとの間に愛と想いの結晶な絆の追憶を結晶化させた仲だ。
お嫁さん内定済みなレイの恋人のヒマリに、司令官のお嫁さんを狙いつつもレイの愛人予定のマリナ、司令官の穴奴隷でレイを調教師に迎えたエメルダ、そしてレイ本人の4人がこうして仲良くしている光景はなんとも微笑ましいものだ。
司令本部のエントランスには既に魔石細工の完成品が納品されているが、当の司令官が不在のためまだベールに覆われたままでお披露目が行われていない。
しかし、そんな今の段階でも素晴らしい逸品だとか天才魔石細工師の仕事なのではないかと、アリシアのような関係者やこっそりベールの中を覗き見たベリサにすら評価されるほど噂になっていた。
「ええ、他にも酒場と娼館のラウンジに最近設置されたあの魔石シャンデリアもスティーラさんの作品なんだそうです。でもルディアさんによると、魔石細工の出来に対して桁が1つ足りないくらい安かったとか。これってもしかして本人が自分の実力を過小評価してるのかもしれませんよ。わたしが間に入れば今の10倍の儲けを出せるかも〜?」
「あのシャンデリア、両方ともすごく綺麗だよね……。酒場にあるだけあって、見ていると何故か気分が高揚してくるし、娼館のほうはなんだかドキドキする……」
商魂たくましく、どうせならもっと儲けさせようというマリナと、スティーラの作る魔石細工の素晴らしさを知っているだけに、きっと本人に会えるのを楽しみにしているヒマリ。
エメルダは2人とは異なり、あくまでも彼女を記事にしたいと鼻息荒く取材チャンスを伺っていた。
4人で夜のマーケットを覗きながらゆっくり歩いていく。
「おお、レイさん!見てたよ、あの雷雨を切り裂いた流れ星!これおまけだ、持ってってくれ!」
「おお、ありがとう!」
女性が3人もいるだけあって視線も集まり、マーケットの店主達は気さくに声をかけ、サービスしてくれたりした。
そうやって賑わいのある通りから少しだけ外れた静かな場所に、その店はある。
店の軒先には陳列棚と『魔石細工工房・スティーラ』の看板が置いてあった。
「……あれ?昨日見に来た時は、ここに装飾品があったのに……」
そこには看板だけが置いてあり、臨時休業という札が掛けてあるのみで、マーケットの他の店のように並べられているはずの商品が全くなかった。
だが店の中を覗いてみると、そこには魔女のような大きな帽子を被った黒と紫の髪の女性が涙目で何やらオロオロしているのが見える。
彼女と会ったことがあるどころか既に抱いた司令官ならこれだけで気付けただろうが、残念ながら全員会うのは初めてだ。
その彼女の帽子には、喋る大きなブローチがなかった。
「やぁ。君がスティーラさん?」
「ぁ、あの……その、あぅ……」
店の中で腰を落として片膝をついたレイが目線を合わせて話しかけても、おどおどして言葉が上手く出てこない。
テレパシーの魔法使ったほうがいいかな、と考え込むより早く、マリナがスッとレイの横に出てくる。
「もしかして、おしゃべり苦手でしょうか?……その、無理に話さなくても大丈夫ですよ。何か伝えたいことがあるなら、紙に書いてくれませんか?」
マリナの申し出にスティーラは首を振る。
「ごめんなさい……わたし……あの、その、いつもはブローチが代わりにお話してくれるんです」
喋るブローチとは。
レイとヒマリの頭に疑問符が浮かんでいるのは明らかだったが、今のマリナは構わなかった。
「そのブローチはどうしました〜?」
「そ、その……実は今日、大穴で探索部隊に入れてもらって採掘していたら、厄災が出現するって聞いたから脱出したんです。でも、大穴から出たところでものすごい嵐に遭って帽子ごと飛ばされちゃって……一緒に探してもらったのに、ブローチだけは見つからなくて……!わたしの、司令官以外だとたったひとりの大切な友達なの……!」
スティーラはボロボロ泣き出した。
相当ショックなのだろう。
しゃがみこんで膝を抱えて俯いてしまった。
「とりあえず立ち上がろうか?このままじゃ汚れちゃうよ」
「そうですね。ほら、立ってください」
「ぅ、あ……」
スティーラを助け起こしてあげたのはレイとエメルダの2人だった。
マリナが彼女の背中を擦りながら慰め、ヒマリも寄り添う。
そんなスティーラに、レイは片膝をついたまま目線を合わせて話しかける。
その姿はまるでおとぎ話やミレスガルドの騎士のようだった。
「じゃあ、夜が明けたら一緒に探しに行こうか。俺はレイ。スティーラさん、君さえ良ければその行方不明になった友達を探すのを手伝わせてもらえないかな?」
「わたしも、手伝うよ……!友達と離れ離れなのは、寂しいもん……」
「ふふ。わたしからも、さっき出会ったばかりですけど、素敵な作品を作ったお礼をさせてください」
「ええ、そうです!それにこのままだと独占インタビューどころでもなさそうですしね」
彼女が酒場と娼館に納品してくれた魔石細工にとても心惹かれてしまった3人はもちろん、エメルダも取材ができるかどうかよりまずはブローチを一緒に探してくれるようだ。
全員から優しく諭されてスティーラは顔を上げる。
こんな自分のために、こんな風に誰かが心配してくれて手助けの申し出をするなんて今まで司令官くらいしか経験がなかった彼女は、久しぶりに人前で涙を見せてしまった。
「その……みんな、ありがとうございます……」
今になって、4人の左手薬指で淡く輝くお揃いの絆の追憶にスティーラの視線が向いた。
スティーラは魔石をよく見ているので分かるが、レイの絆の追憶には何の効果も込められていない。
だが、ヒマリたち3人の絆の追憶には今までスティーラが一度も見たことがないような効果が込められていた。
『【ユニーク】ヒマリの絆の追憶 紋章:情熱
ランク なし
ヒカリの権能:絆の追憶
ヒマリが装備している場合、ステータス【10%】UP。レイが同行している場合追加で【10%】UP。
ヒカリの加護:絆の追憶
ヒマリが装備している場合、自身に対する状態異常、デバフ、その他悪性効果の成功率を【0%に固定】する』
絆の追憶は、異性への想いが指輪の形に結晶化する。
なら、こんな効果を込められるのは……?
「……あ、あの、その絆の追憶の効果って……!?」
視線がレイに向けば、彼は静かに頷いた。
「あ、やっぱりスティーラさんレベルならわかるんだ。俺たちもアーデルハイトから教えてもらったけど……ばら撒くようなものでもないから、内緒にしといてね」
スティーラはコクコクと激しく頷いたのだった。
*****
次の日の早朝から、昨日の4人にソフィア、ベリサ、クルルと志願した捜索隊を加えた一行は大穴に来ていた。
渦雷の厄災の影響で大穴周辺と闇の階層では前日まで激しい嵐があったというのに、今日は快晴だ。
昨日は大穴を出たところでスティーラの帽子が飛ばされてしまい、その後ブローチが外れた帽子は昨日のうちに元々スティーラがいた砂嵐の階層で発見された。
そして、昨日砂嵐の階層には普段ならここにいない闇色のドラゴンの目撃情報がアリシアの下へと上げられていたという。
レイたちと捜索隊の半数はドラゴンを追って闇の階層へ。
ソフィア、ベリサ、マリナ、クルルも捜索隊の半数を率いて砂嵐の階層をしばらく探してから合流することになった。
闇の階層は相変わらず薄気味悪いぼんやりした緑がかった空だが、ヒマリたちによると以前の死骸だらけですぐに飢餓感に襲われていた頃よりはマシになっているらしい。
そんな闇の階層をレイたちの魔法で探し回って夕方の時間も近くなった頃、合流した一行はついにブローチの場所を見つけた。
クルルの鼻やベリサの魔法、
そこに空いた長い長い洞窟は、まるで闇の階層から別の階層へと下っていくようで。
その時点でソフィアとレイの協議により、有志の捜索隊は撤退させた。
長い洞窟を下りた先にあったのは、広大な浅い地底湖と飢餓の厄災がいなくなってから異世界から迷い込んだ、咆哮する闇色のドラゴンの巣穴。
まるでカルデラ湖のように、地底湖を囲むように高台が形成されている。
光り物が大好き……というよりは強い魔力を持ったアイテムを好んだ闇属性のドラゴンによってブローチは地底湖奥、向かい側の高台に築かれた財宝の山に転がされているようだった。
そしてもちろん、足首ほどの水深しかない地底湖には名も知れぬ理性を失った黒いドラゴンがいた。
「ドラゴンは俺が引き受けるよ。ちょっと待ってて、すぐに終わらせるから」
「あっ、できたらドラゴンは傷が少ないと助かります〜!大穴の魔物の剥製って高く売れるんですよ」
「いやいや、なんかアイツ雰囲気がヤバいですよ!こんなに離れてるのに心臓を掴まれそうな迫力があるんですけど!これ特ダネにはなるのかなぁ……」
スティーラが見る目の前で、レイは黒いドラゴンを挑発するように右サイドアーマーから切り離した2つの円筒を浮かせて光刃を伸ばし、右手には実体化した念波の刃を生み出していく。
改めて竜を見て、レイは表情を引き締めた。
「……確かに、見た感じ相当長く生きた個体みたいだ。そっちも流れ弾には気を付けて」
不遜なる者を見咎めるように閉ざされた両眼の頭部が向けられ、鋭い牙を備えた顎と空高く舞う巨大な翼が開かれた。
穴の空いた4枚翼は風など掴まずとも飛べると主張せんばかり。
地底湖に踏み込んできたレイに対して、黒曜石が如き鱗持ちし闇色のドラゴンが死の大地から瘴気と闇を喰らいながら咆哮し、炎のブレスが噴き出す。
咆哮と共に地底湖では漆黒の瘴気が噴き上がり、備え無き者を瞬きの間に深淵へと染め上げる暴威が吹き荒れた。
その間にレイが陰になったパワードスーツの左腰から咆哮した黒いドラゴンの喉元と頭上へと、切り離していなかった最後の円筒を瞬間移動させた。
そこから伸びた光の刃が上下からドラゴンの頭部に突き立つ。
だが巨体に見合わぬ俊敏さで後ろに下がった闇色のドラゴンに、プラズマの刃は瘴気と鱗に遮られて頭蓋を貫通できずとも、岩のような鱗を灼き斬って傷を負わせた。
反撃にほとんど予備動作もなく顎から白い闇のビームが放たれ、それを避けながら竜を見れば、喉元より額のほうが傷が深く見える。
「思ったより速い……!」
怒りの咆哮と共に地面から沸き上がった暗黒の人魂のような靄の誘導飛翔体を
竜の首を跨いで頭部にプラズマを突き立てるより早く、頭を振り回されたことで頭突きされる直前にまた退避した。
その間にも光刃と実体化した念波の刃で手足や尻尾を斬りつけるが、まるで攻撃が通らない。
特に念波の刃のほうが通りが悪いようだ。
さっきの暗黒の飛翔する靄にはなにか悍ましい気配があり、直接触れればどうなるかも分からなかった。
すれ違いざまに竜の額がプラズマの刃に切り裂かれ、再び傷を刻み込む。
「硬いな。頭しか通じないか……」
それを地底湖と高台の境にいくつかあった巨大水晶の陰から見守るソフィアたちは手を出すこともできずにいた。
ヒマリの手元には野生的な本能で何かを感じ取ったのか、クルルが頭を抱えて丸まって震えている。
「……どうする?誰かアレに割って入って援護できる?」
「瘴気がすごくていい写真が撮れない……!うわ、連続でビーム吐いてその軌道に沿って地面が爆発してますね……あれに弓矢で対抗は、ちょっと御免被りたいです」
「ドラゴンもドラゴンだけど、つよつよおにーさんもあんなにバンバンテレポートしながら攻撃されると、援護も難しそうね」
「あんなに瘴気まみれだと、剥製どころじゃありませんね……。もちろん、わたしはレイくんが勝つと信じていますよ」
「あのドラゴン、見た目と違って素早いから……ヒマリだとすぐ追いつかれちゃうよ……」
レイが両手を突き出し、何かを手繰り寄せるように振り下ろす。
同時に、轟音と共に地底湖の天井に広がる暗闇から鍾乳石が落下を開始した。
狙い済ましたかのように誘導された巨石が竜の頭部を直撃するより早く、ドラゴンは天仰ぎ眩い闇のビームで天井ごと爆砕する。
大きな穴が空いて岩石の雨と共に朧気な月の光が降り注ぎ、1人と1体の戦場を照らした。
その岩石の雨と月光にレイが気を取られた瞬間、崩落する岩をものともせず闇色の竜が飛びかかるように距離を詰めてきた。
「しまっ……!」
反応するより早く、レイのパワードスーツが鋭い爪で引き裂かれる。
左腕のサイコフィールド発生器を紙のように引き裂き、サッカーボールのように吹き飛んだレイは地底湖を囲む崖に激突。
そこに眩い光のような白い闇のビームが直撃し、闇色の大爆発を起こした。
「おにーちゃん!」
「ヒマリちゃん!?」
ヒマリが巨大水晶から駆け出し、崖を滑り降りながらエネルギーライフルの銃口を向ける。
即座にチャージされた『ノヴァブラスト』の4連射は狙い過たず黒き竜の頭を直撃したが、まだ致命傷には程遠い。
むしろ、それでドラゴンの気を引いたようだった。
ヒマリはトリガーを引くが、マナが足りず『ノヴァブラスト』を発射できない。
一瞬で距離を詰めてくる闇色のドラゴン相手にそれは致命的な隙になる。
「逃げてヒマリちゃんっ!」
追撃の炎を鋭い牙の隙間から漏らしながら、黒曜石の如き竜の巨大な爪が迫りきた。
「だめ、間に合わない……!」
ヒマリは目を瞑る。
しかし、恐れていたような衝撃は来なかった。
その直前に、何者かがヒマリを掴んでテレポートしたのだから。
ヒマリはゆっくりと目を開く。
そこには、前を見据える青い瞳に銀髪。
──ああ、あなたはいつだって、わたしを助けてくれる。
黒いインナースーツだけになったレイが、月光の差し込む空中を跳びながらヒマリをその右腕に抱き抱えていた。
──だって、君は地の底に射した、わたしにとっての光だから。
「……怪我はない?」
レイは涼しい顔のまま肩で息をしながら問いかける。
黒きドラゴンの爪で引き裂かれ、パワードスーツを喪失した際のダメージがあるのだろう。
インナースーツ一枚になった姿からはあちこちで血が滲み、左腕はへし折れている。
それでも彼の腕の中にあるヒマリは安堵のあまり言葉が出ない。
ただ首を縦に何度も振った。
「良かった。みんなのところまで送る……いや、先に戻ってくれ」
そう告げた途端、ヒマリの体がテレポートの光に包まれる。
気付けば彼女はソフィアたちの隠れる巨大水晶の陰に戻されていた。
──ああ、だって。
──彼女にこの姿は見せたくなかったから。
レイは
だが、彼の名前はレイ・ヒカリ。
つまり本来の素性は
ただ、あんまり光魔法は得意ではないだけで。
光魔法による幻影が解けていく。
その下から現れたのはズタズタに引き裂かれた左半身。
パワードスーツにビームが直撃する前にテレポートで脱出したため、瘴気の影響こそ受けていないが満身創痍。
だが、生きていれば負けじゃない!
「──ヒマリに手を出そうとしたなぁっ!」
瞬間、ヒマリには涼しい顔を見せていたレイが激情に表情を歪める。
異空間収納から取り出したのは
それが自ら手を伸ばすように左胸や太腿、首筋に次々と突き刺さっていく。
刺した箇所から注入された赤色の液体は脳にも作用して、痛覚や疲労感を和らげ傷口を塞ぐ新人類用の緊急投与剤であり、大量服用すると寿命が縮む代物。
しかしレイの損傷部位では即座に細胞が増殖して傷を塞いでいく。
ほとんど千切れかけていた左腕の肘から先に至るまでも再生して、すぐにヒマリに見られても問題ない程度に回復した。
機能は同じだが都市迷彩柄のない白色の予備パワードスーツを装着すれば、もう元通りだ。
そんなレイに、何かが語りかけてくる。
どこか聞き覚えのある、その声が。
──ねぇ、あなたは力が欲しい?
「生憎、縋ってもないのに声をかけてくる神様は信じていない!」
──つれないわね。せっかく
「生憎お迎えの天使ならヒマリがいるんだ。そんなプロポーズ、お断りだ!」
もうそんな声は耳に入らない。
念動力の精度が上がっていく。
心が冷えていく。
魔力を生み出す股間が熱くなる。
予備として大量に持っていたプラズマ刃を生み出す円筒を放出した。
──ああ、僕の
──どうか、僕の心を暖めて、ヒトのまま繋ぎ止めてくれ……!
月光照らす地底湖で、多数の光刃を輝かせた円筒が黒き竜に迫った。
まるで光の流星群。
レイに操作されたそれらの連撃は、まるでダンスをしているように、それでいて容赦なく竜の頭部を貫き続けている。
だが、瘴気に遮られるように決定打になりえない。
邪魔だとばかりに白い闇のビームで薙ぎ払われていく。
──ああ、分かっている。
23世紀の地球軍兵士にも多い、今更地球環境なぞ知ったことかと大気圏内で陽電子砲を放つ
──だが、それでも。
レイの右手に限界まで光が束ねられていく。
サイコパワーの出力が上がっていく。
限界を超えて、もっと。
今だけなら脳が焼き付いても修復できるから。
ヒマリを送り出してからおよそ5秒。
闇色の竜は地底湖から飛び立ち、迫りながらこちらを食い千切ろうと大口を開けていた。
さっきまでのレイと同じく、もう勝った気でいるようだが。
レイも既にチャージは終わっていた。
「愛する女の子くらい、守ってみせるさ!」
そして光線が閃き、プラズマの束が闇色の竜の頭を焼いた。
捻じれ回転する光の槍が、拡散しないまま竜の頭部を直撃する。
それはさながら、神の雷が如き一撃であった。
同時にレイが全身全霊の
そこまでやって、空中で闇色の竜の突撃とレイの魔法が拮抗して勢いが止まった。
──今だよ、ヒマリ。
──当ててみせる……!
音を超えて飛来した徹甲弾に遅れて、衝撃波が飛来する。
狙いすまして放たれた超高速弾は、レイによる攻撃と違って瘴気に軽減されることなく着弾して岩のような鱗を破砕した。
闇色の竜の頭部に見事命中し、苦悶と絶叫を上げながら竜が墜落していく。
「ナイスシュート!」
理性なき闇色の竜が全く警戒してなかった高台の上。
そこにはヘッドマウントディスプレイを装着したヒマリと、その隣で砲台に据えられたレールガン風の大口径砲。
そしてヒマリの背中に抱き着くように繋がったソフィア、ベリサ、マリナ、クルル、エメルダ、スティーラがいた。
ヒマリはVR訓練施設『鏡影の回廊』でシエナとコンビを組んで何回か使わせてもらった防衛設備による狙撃をぶっつけ本番で成功させたのだ。
「やっぱり、俺の仲間たちは最高だよ……!」
ついさっきレイがヒマリをテレポートさせた時に一緒に託したもの。
『仮称試作型ノヴァランチャー』の名がついたそれは、アーデルハイトがレイのサイコランチャーを元に開発した最新の防衛設備。
銃適正のあるルクスノヴァの誰かが装備した上で、多くの人数からマナを供給することで威力を上げ、無誘導ではあるものの最強の一撃を放ったのだ。
欠点は1発しか撃てないのと発射するルクスノヴァとマナを供給した全員がヘロヘロの戦闘不能状態に陥ること。
沈黙した仮称試作型ノヴァランチャーの周囲には全員がぐったりしている。
正真正銘の欠陥兵器だ。
「もうヘロヘロだよ〜」
「ま、万年発情期おにーさん、こんなのドカドカ撃ってたの……?」
だが、墜落して派手に上がった地底湖の水飛沫の中では、ドラゴンはまだ生きていた。
ギリギリ致命傷ではないが、如何に理性を無くしていても無視できる傷ではない。
ドラゴンの額から側頭部の鱗は大きく砕け、裂けている。
その咆哮に呼応するかのように再び地底湖から瘴気が噴き上がった。
ドラゴンが大きくバックジャンプして、着地したレイから距離を取る。
着地と共に人魂のような靄が浮かんで撃ち出され、身を捩らせれば闇色のドラゴンの顎に眩く白い闇が収束していき、巨竜が後ろ足だけで立ち上がった。
瞬間、闇色の竜から眩い白色の闇が立ち昇る。
頭上には昏き光輪が生まれ、背中に実体を持たぬ闇色の翼がゆっくりと生み出されてゆく。
理性を失っていたドラゴンは、危機を前にして目の前に吊り下げられた力への渇望に抗えなかった。
闇に侵され尽くした彼の竜に、ルクスノヴァへの
そうして闇色の竜は、今更になって自らの犯した所業を理解した。
「そんな……!ドラゴンが、ルクスノヴァに……!?」
「ちょっと!そんなのアリなんです!?」
闇を喰らい、闇に侵され、そしてついに討たれることなく約束すら忘れてこの大穴に堕ちた竜。
そうさね。
最早彼の竜は
古き竜が発する、自らも燃やし尽くすような嘆きと殺意。
すべてを闇に侵されて、何もかも忘れたまま終わらせてしまった今頃与えられた祝福に、一体何の意味があるのか。
それでも僅かに戻った理性によって使命を思い出した闇色の竜が、再び猛烈な勢いで闇を喰らう。
地底湖の瘴気を全て吸い上げ、一層力を増した眩い闇の輝きが前方を一直線に薙ぎ払えば、追従して闇色の爆発が地面から巻き起こる。
首を大きく振り回し、縦横無尽に破壊を撒き散らすビームが動きを止めたレイをついに捉えるように見えた。
「──
レイが左腕を大きく振った。
瞬間、レイを跡形もなく消し飛ばそうとした白く輝く闇のビームが軌道を捻じ曲げる。
サイコパワーの出力で先程までは逸らすのが精いっぱいだったそれが、ドラゴンの頭部正面から、大きく裂けた頭部の傷口を直撃した。
絶叫と共に名も知れぬ闇色のドラゴンが崩れ落ちる。
ルクスノヴァへの覚醒が、不完全なまま途切れて消えた。
レイがその頭部にプラズマの刃を二度叩きつければ、再び身を捩らせた古き竜は咆哮とともに力尽き、
竜の身体が霧散してゆくその場所に、彼が喰らったであろう女性らしき白い亡霊の人影が立ち上がった。
彼の竜の両眼を穿ち、その力を認めて古い約束を交わした好敵手でもあり、そして自ら手にかけた友の姿。
「……その魂が、元の世界に還れるといいね」
名も知らぬこの竜が、どこから来たのかは分からない。
ただ、せめて彼の魂が安らげることだけを祈った。
「すごい……!」
ヘロヘロなスティーラは座り込んだまま、目を輝かせてパチパチと手を叩いた。
スティーラにとっては神話の1シーンを切り抜いたような戦いだった。
そしてヒマリにとっても、月明かりの下に突き立ったその剣はヒマリの世界のとある大ヒット有名ゲームで知っているものだった。
「月光大剣……?なんで……あれはNINJAの武器か、剣の形をしたバズーカ砲のはずなのにどうしてドラゴンから……」
レイが月明かりの下で翡翠色の大剣を抜き、しばらくその場に佇んでいた間にマリナとエメルダは早くもお宝の山に駆け寄って物色している。
彼女の瞳の色と同じ、紫の魔石に金の土台。
何より喋る。
それはすぐに見つかった。
「ゴ迷惑ヲオカケシマシタ、スティーラ様。……トンデモナイ目ニアイマシタ」
「スティーラさん!よかった、あなたの大切なお友達見つけられましたよ!」
「ああ……っ!そうです、その子です!わたしの……わたしのお友達です……!無事でよかった……!おかえり……っ!」
こうして、他称天才魔石細工師スティーラのブローチは発見された。
そして、司令官とブローチが唯一の友達だと思っていたスティーラには、この日たくさんのお友達ができたのだ。
この小説がどのくらいノリと勢いで書いてるかというと、竜の出現からアイテムドロップまで、3日前にプロット外の無からいきなり生えてきたり2日前にスティーラとのR-18が6割くらい書き直しになるくらいです。
名前を出さなけりゃセーフ理論。