※この作品はR-18です。

『Fate/Desire of Thunderbolt』   作:山嵐のハイオーク

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第17話:『覇王の現臨、白濁の朝に蠢く名探偵』

完全狂化させたバーサーカー(ドゥリーヨダナ)の光の粒子としての完全消滅。そして、霊核の深奥までを少年の凄まじい雷撃と肉の杭による快楽漬けにされ,もはや戦闘不能へと調教され尽くしたアサシン(耽惑のハサン)。破格の2騎のサーヴァントの戦力を以てしてすら敗北を喫したことにより、アトラス院の魔術師アルベリヒは、オズワルド陣営を裏切って逃亡する以外に、もはや生き残る道(挽回の余地)を完全に失くしていた。

 

「……終わりだ! 俺の演算が、すべて、すべて狂わされた……ッ! 逃げる、オズワルドの連中からも、あの化け物どもから逃げるんだ……ッッ!!」

 

己の荷物もすべてを捨て去り、脂汗を流しながら、アルベリヒはただ街の外へ逃れるためだけに駅の周辺へとやってきた。だが、必死なあまりにそこがキャスターの狩場とも考えず。

 

「ひひっ、ひははは! 愚かな男だねぇ、自ら口の中(鶏脚魔屋)へと入ってくるなんてえ!」

 

逃亡間際の駅の雑踏の裏で、突如としてアルベリヒの足元の空間が、おぞましい魔力の歪み(異界)へと反転した。叫ぶ間すら用意されず、アルベリヒはバーバ・ヤーガによって異界へと誘い込まれ、自らが今までやってきたように人間の原形をとどめぬ肉塊(使い魔)へと、その場で無残に変えられたのだった。

 

◇場面は変わり、ここはオズワルドの巨大な魔術工房──。アルベリヒの敗北と敵前逃亡という最悪の一報を受け、円卓に鎮座するオズワルドとエレーナ・ラジオノワの二人は、激しい怒りにその顔を歪ませていた。

 

「おのれ……ッ! 格下の魔術師と侮っていたが、あのアルベリヒめ、これほどの醜態を晒してくれおってからに……ッ!!」

 

オズワルドは白髭を激しく震わせ、街の境界に私設魔術師の一団による包囲網を敷き、その手に残る令呪だけでも強制的に回収するように部下たちへ命じた。もはや使い物にならないアサシンは、かねてより工房の底で拍動を続けていた、ライダー召喚の陣へと乱暴に生贄として投げ打たれたのだった。どかりとオズワルドが円卓の椅子に座り直した、まさにその時、彼の右腕に刻まれた令呪が熱く鼓動するのを激しく感じた。

 

「──まもなくだ、エレーナよ! ついに、まもなくだ……ッッ!!」

 

オズワルドは、はやる気持ちを抑えきれずに肥満体を震わせ、愛人エレーナを連れてライダーの召喚陣へと急いだ。奇しくもこのタイミングで、待ちに待ったライダーの完全召喚が、今まさに現世へと叶うのだ。これまでは陣から溢れ出る異様で暴力的な魔力のみであったが、今こそ現世の天井をブチ破り、ライダーがその本物の威容を現す。オズワルドが詠唱を唱え上げた、まさにその刹那。

 

ドゴォォォォンッッッ──!!!

 

巨大な召喚陣が光を放ちながら、すべてを圧殺するような激しい大爆風が立ち上った。爆風とともに現界したのは──周囲の空間そのものを自らの重圧で圧し潰すような、恐ろしいまでの覇気を放つ一人の男であった。薄緑色の美しい髪を荒々しく流し、全身を、神々しくも禍々しい複雑な紋様が刻まれた『金の鎧』に身を包んだ圧倒的な王の体躯。オズワルドははやる気持ちを抑えつつ身なりを整え、声をかけた。

 

「貴様が私のサーヴァン──」

 

「──無礼者が」

 

フッ、と夜闇を冷たい閃光が走った。男はオズワルドに跪くのではなく、どこからともなく現れた一本の短剣で、オズワルドの右腕──令呪の刻印ごと、その手首を一瞬で綺麗に跳ね飛ばしたのだ。

 

「ぎ、あ、ああああァァァーーーーーーッッッ!!! 俺の、俺の手が、令呪がァァァーーーッッッ!!」

 

工房の床へと鮮血を撒き散らし、手首を押さえて醜い悲鳴を上げるオズワルド。そんな老魔術師の絶叫を、金の鎧を纏った男は、冷徹な深淵の瞳で見下ろしながら、低く傲然と言い放った。

 

「そうか。そなたが、我を召喚せし者(マスター)か。ふむ、いかにも我はライダー、ゴータマ・シッダールタであるが──貴様はマスターとしては、あまりにも身の程知らずが過ぎたな」

 

男は金の鎧を軋ませ、自らの足元でもがくオズワルドを冷酷に見下ろした。

 

「王の財たる、この我の召喚前に溢れていた威光の奔流に我が物顔で手を出し、あまつさえ許しも与えておらぬのに面を上げるなど……。──無礼千万。死せよ」

 

ライダーの陰から現れた存在によって、もだえるオズワルドはバラバラに切り刻まれ、命乞いをする暇すら与えられず無残に崩壊したのだった。

 

「いやぁぁぁーーーーーッッッ!!!?? オズワルド様ぁぁーーーッッッ!!!」

 

目の前で繰り広げられたあまりにも凄惨な惨状に、エレーナは淑女の仮面を完全に失くし、腰を抜かして悲鳴を上げた。だが──オズワルドを切り刻んだ存在の正体を間近で目撃した瞬間、一族乗っ取りを企む悪女の肉体は、恐怖のあまり芯から完全に凍りつくことになった。なんと、そこに佇んでいたのは──先ほど、自らの手でライダーの召喚陣へと生贄に捧げたはずの、自分自身のアサシン──『耽惑のハサン』だったからだ。だが、その姿はあまりにも異形であった。もはや、その姿態を隠す服をまとってはいない全裸の有様でありながら,その全身の皮膚には、奇怪な文様が赤黒く浮かび上がっていた。さらに、エレーナの側仕え(メイド)をさせていた頃のあの理知的で気品に満ちたお嬢様口調の面影は見る影もなく,ただ獣のような昏い眼光を闇に放っていたのである。

 

「ハ、ハサン……? あなた、一体何が、、、?」

 

恐怖のあまり、声を絞り出すエレーナ。そんな悪女に対し、金の鎧の覇王──シッダールタは、低く、絶対的な支配の格を以て語りかけた。

 

「女、頭が高いというのが聞こえぬか。まあ良い、部下の者どもを集め、これより我にもてなささせるがよい。貴様はそれで許してやる。──行け!」

 

「……っ、ひ、あぁぁ……っ!」

 

エレーナは、恐怖のあまり漏らしていることにも気づかず,バラバラになったオズワルドの死骸を背に、狂ったようにその場から全速力で走り去るしかなかった。

 

◆翌朝、刹那(せつな)はどこか下半身に尋常ならざる爽快な感覚(射精後の余韻)を覚えながら、すっきりと目を覚ました。時計の針は朝の6時を指している。夜這い続きの寝不足が嘘のように健全な起床時間に、彼はあくびを噛み締めながら布団の上に身体を起こした──が、直後、その日食の瞳を驚愕に丸くして呆然と自室を見回すことになった。

 

「え……っ、なに、これ……っ」

 

アパートの畳のそこかしこが、大量の白い粘っこい液体(精液)と、異常な熱量で漏らされた痕跡の判る黄色の液体(失禁)で汚れまくっていたのだ。

 

(おかしいな……昨日は最近では珍しく、誰も部屋に来なくて一人で寝ていたはずなのに……)

 

一番に起きた刹那は、この最悪の状況を確認すべく、部屋を仕切る襖の向こうで眠っている宗茂(むねしげ)とアイアスの方の様子を見に行った。二人は一見ずっと健やかに寝ていたようだったが、やはり本人に直接聞いて確かめてみなければ埒が明かない。刹那は二人の肩を優しく揺すって起こした。

 

「ん……む、主殿か。今日は随分と早起きだな」

 

シャッキリと力強く目を覚まし、白金髪お団子ハーフアップの手入れを整えながら、宗茂は早起きの主を嬉しそうに褒める。だが、刹那から畳の汚れの理由を問いただされると、深緑の瞳に硬派な困惑を宿した。

 

「何を言う。わしは昨夜、睡眠姦などという卑劣な真似はしておらぬぞ。主殿が静かに眠っていたゆえ、大人しく自制していたのだ」

 

その奥で起きたアイアスも、大きな瞳をおぼつかなく瞬かせながら、フルフルと首を左右に振って全く事情を知らぬ様子である。ならばと、刹那はパジャマのまま玄関のつっかけに足を通し、壁一枚隔てたジュリア宅のドアを強めに叩いた。ガチャリと戸を開けて現れたのは、霊体化した状態から実体化したヴラド三世(ランサー)だった。彼に昨夜の不審な物音について尋ねると、孤高の王は腕を組み、ふっと厳格な眉根を寄せた。

 

「我が主(ジュリア)なら昨夜はたいそう疲れたようでな、部屋に戻ってからは一晩中ずっと眠っていたぞ。……しかし、言われてみれば、我は確かに昨夜、静寂のなかで女の悲鳴にも似た、酷く激しい嬌声(喘ぎ声)などを聞いた気がするな。よくよく思い出してみると、ここにいる3人の誰とも違う、異国の女の声だったような──ゲフン」

 

王としての品格を保つようにわざとらしく咳払いをすると、ヴラド三世は不器用そうにそっぽを向いた。

 

「……余は決して、いつも隣室に聞き耳を立てていたわけではないぞ。サーヴァントは通常、睡眠が不要でな。主が寝静まっているときなどは、夜な夜な編み物に耽っているにすぎぬのだ」

 

「あ、そっ、そうだったんだ……。毎日静かにしてくれてごめんね、ありがとう」

 

思わぬ王の家庭的な趣味に驚きつつも、刹那はそそくさと謝罪をして自分の家へと戻り、再びぐちゃぐちゃに汚れた六畳一間を見渡した。よくよく畳の上を細かく見回してみると、精液の染みのなかに、見覚えのない小さな「漆黒の布切れ」が幾つも散乱していることに気づいた。???──刹那は再び頭を抱えて混乱する。さっきの不穏な話を思い出し、その破けた黒い生地を隣室のヴラド三世に見せてみると、彼はその強靭な指先で布地を検分し、鋭く目を細めた。

 

「これはストッキングや、現世のランジェリーの類に似ているが……む!? 刹那殿、ただの衣服ではない。これは礼装の類、魔術回路が編み込まれた衣類の一種だぞ」

 

事態を重く見たランサーは、そのまま壁をすり抜けてジュリア宅に戻ると、いまだベッドで爆睡していたジュリアを無理矢理叩き起こして刹那の部屋へと連れてきた。ジュリアはまだまだほつれたところのある美しい金髪をだらしなく手で梳かしながらも、その『解析魔術』の光を指先から放ち、散乱した黒い布地を調べてくれた。その驚くべき解析結果に、超乳ギャルも一瞬でトロンとした眠気を吹き飛ばした。

 

「これ、アサシンの由来として有名なイスラム教の暗殺者、ハサン・サッバーハの固有の装束……その断片(破片)ってところかな★」

 

「えっ、なんでジュリアさん、そんなことまで解るのさ」

 

「ウチだって時計塔の名門だしー☆ アサシンもウチのサーヴァントの召喚候補だったのさ★」

 

しかし、なぜそんな歴代ハサンの装束が、よりにもよって刹那の布団の周りに破き散らされているのか。謎が謎を呼ぶ不気味な沈黙が六畳一間に流れる。そんな中、お気に入りのベレー帽を頭にちょこんと被ったアイアスが、盾の乙女としてのキリリとした名探偵のような表情で、大真面目に推理を始めた。

 

「……みなさん、状況を整理してください。室内に散見される激烈な情事の跡、身に覚えのない液体の数々、ヴラド三世が昨夜耳にしたという謎の女性の嬌声、そしてハサンと思しき存在の装束の布切れ──。導き出される答えはひとつです! 犯人は、今回の聖杯戦争で敵陣営に呼ばれた『女アサシン』ですッ!!」

 

「「「「──知ってた(知ってるし)」」」」

 

ジュリアも宗茂もヴラド三世も、心の中で「誰もが分かるが、本人(刹那)の前ではあまり分かりたくない生々しすぎる真実」を突きつけられ、一斉に乾いたため息をついた。昨夜、敵の最凶の暗殺者がアパートへ夜襲に忍び込んできた結果、アロマの隙を突いたはずが、逆に刹那の最凶の杭と電撃によって脳髄までグズグズに中出し蹂躙され、服をビリビリに引き裂かれて令呪で強制送還されたのだ。

 

「……え、えっと……。汚れた畳の場所は、僕が後で責任を持って綺麗に掃除するからさ。とりあえず、みんなで朝ご飯食べてからこれからのこと考えようか?」

 

あまりにもエロティックで不条理な大問題を前にして、刹那は顔を真っ赤に染めながら、その問題を思い切り棚に上げてちゃぶ台の上へと味噌汁の椀を並べた。こうして、朝帰りの残り香と白濁の気配が微かに漂う部屋のなかで、棚上げされた修羅場の微熱を囲みながら、ちゃぶ台の5人は静かに遅めの朝食を摂り始めるのだった。

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