※この作品はR-18です。

『Fate/Desire of Thunderbolt』   作:山嵐のハイオーク

20 / 45
第19話:『夕凪の追憶、卓上の清楚なる包囲網』

アパートの廊下で、白金髪の長身の麗人──宗茂(むねしげ)は、以前ジュリアがブティックで大人の財力を以て選んでくれた、イマドキの洗練された真夏の私服を身に纏って刹那(せつな)を待っていた。衣服の上からでもその存在を爆撃する、豊かな美巨乳の膨みをシックに引き締めた装い。部屋から出てきた刹那はといえば、相変わらず半袖シャツにショートパンツという至って素朴な普段着姿だったが,宗茂の内に焦りはなかった。この街の霊脈を巡る作戦中、最愛の主人を最初から最後まで完全に独占できる千載一隅のチャンスに、武人としての油断は一切ないながらも、その胸はかつてないほどに深く躍っていたのだ。

 

「では行くぞ、主殿! わしの身体にしっかりと掴まっておれ!」

 

「う、うわっ……! 宗茂、ちょっと、お姫様抱っこは恥ずかしいよ……っ!」

 

赤面する刹那をその強靭なしなやかな両腕で軽々と横抱きにすると、宗茂はジュリアから預かった地図に記された霊脈の位置を確認し、アスファルトを力強く蹴り上げた。ゴオオッ──と真夏の熱風を置き去りにして、彼女の自慢の俊足による神速の移動が開始される。まず一行が最初に向かったのは、かつて刹那の手によってこの違法聖杯戦争の幕が開いた、あの始まりの場所──町外れの『変電所』であった。現地に残存していたオズワルド陣営の私設魔術師の残党を、宗茂は抜刀の一閃を以て一瞬で切り伏せると,変電所の奥に冷たく遺されていた親友・晃(あきら)の亡骸を、刹那と共に静かに地へと埋葬した。哀しみの残照を乗り越えるように手を合わせ、大気のマナ(魔力サンプル)を特殊な術式へと回収していく。そこからは、まさに電光のごとき速度で街の霊的要衝を巡る、二人きりの果てなき斥候デートのタイムラインとなった。緑豊かな古ぼけた『風情のあるお寺』、真夏の陽光に十字架をきらめかせる『教会』、そして山奥に轟々と水飛沫を上げる『荘厳な滝』──。各地で大気のマナを地道に収集しながら、宗茂は刹那と共に、現世の美しい四季の風景を心ゆくまで楽しんでいた。刹那の日食の瞳が少年のように輝くたび、彼女の深緑の瞳には狂おしいほどの愛おしさが満ちていく。しかし、最後に立ち回(立ち寄った)夕暮れの『海岸』で、その穏やかな空気は静かに一転した。水平線の向こう側へと、真夏の太陽がじわじわと沈んでゆく──。その血のように赤い夕日を見つめていた宗茂は、ふと、生前の最もつらく過酷だった、胸を引き裂かれるような過去の出来事を思い出していた。

 

(──ああ、誾千代の訃報を耳にして、言葉を失い喘いだあの日も……確か、このような、酷く寂しい海の見える場所であったな……)

 

一度その暗い記憶の底に囚われてしまえば、夜のアパートへと戻ってからの情事(まぐわい)は、いつになく激しく、狂おしいほどに情熱的なものとなった。隣の部屋や壁一枚隔てたお隣さんには、アイアスやジュリアが確かに息を潜めていたはずだったが,今夜の宗茂の、まるで明日には自らの霊基が消えてしまうのではないかというほどの烈しい抱擁の前に、他のメスたちが割り込む隙など一平(一ミリ)も存在しなかった。衣服を乱暴に引き剥がし、衣服の下から顕現した刹那の最凶の超肉棒(杭)を、宗茂は自らの濡れそぼった秘部へと自ら深く、根元まで突き刺させた。

 

「主殿、主殿……っ! わしを置いていかぬと誓ってくれ……っ! あ、は、ぁぁーーーッッッ!♡」

 

激しく正面から肉をぶつけ合い、白金髪お団子ハーフアップを畳に乱れ散らせながら、彼女の脳裏には生前の尽きぬ後悔の呪詛が渦巻いていた。あの天下分け目の関ヶ原合戦の前、どちらの陣営に付くべきか、互いの譲れぬ意地をぶつけ合って激しく言い合いをしてしまったこと。およびそれが、あの人との『最後の会話』になってしまったこと。さらに立花家が改易となった後、誾千代が孤独な病の中で日に日に弱りながらも、離れた地からただ一途に「宗茂の再起」を願い、神社に幾度も足を運んで血の滲むような祈願を捧げていたという事実──。手元に届いた無残な訃報に書かれていた彼女の最期の愛を知ったとき、宗茂の胸には、生涯消えない後悔が尽きなかったのだ。いつ費えるともしれない、人間の命のはかなさ。その焦りと狂おしい情念が夜のピストンへと現れ、彼女は何度も刹那の熱い種を胎内の最奥へと中出しで吸い尽くし、啼き狂ったのだった。

 

◇その過酷な夜、刹那は深い夢を見ていた。宗茂と身体を重ねる夜のたびに視るあの夢は、回を重ねるごとに、都度鮮明になって脳髄へとアップデートされていた。それは、過酷な朝鮮の戦から帰ってきた宗茂の姿を、自らの溢れんばかりの涙で出迎え、その最愛の人の無事を心の底から祝福する夢──。しかしその後、場面は一転し、関ヶ原でどちらの陣営に付くべきか、互いの正義を賭けて烈しく言い争いになってしまったところで、胸を締め付けられるような激しい焦燥感とともに、夢は唐突に目が覚めて終わってしまった。

 

「はぁ、はあ……っ。……う、あ……」

 

キィィィン、と頭の奥が魔術回路のオーバードライブで微かに鳴っている。刹那は、自身の身体を抱き枕のようにガシッと抱きしめて満足げに寝息を立てている宗茂の、白金髪の長身の麗人のぬくもりを腕の中に感じながら,ほぼ確信めいたひとつの大きな疑問を抱いて、深夜の静寂のなかで、静かに目を覚ますのだった。

 

◇一方その頃、作戦のために各地の霊脈へと出向く刹那と宗茂を、アパートの玄関で見送ったアイアス(シールダー)はといえば──。

 

「ふぅ、これでよし。……さて、現世の文明の利器というものを、私も少しお借りしましょうかね」

 

日用品のお買い物を手早く済ませて部屋に戻った彼女は、以前「現世の勉強のため」と可憐な刹那にせがんで、一緒に設定して作ってもらった自分専用のアカウントを使い、ちゃぶ台の上のノートパソコンを開いていた。アパートに顕現してからまだ大して日は経っていなかったが、元より盾の戦士としての卓越した手先の器用さを持つ彼女である、タイトなタイピングもすでに結構な速さと正確性を有していた。そんな彼女が今、その真面目な顔で一体何をしているかというと──。

 

「……はぁ、なんて素晴らしい世界なのでしょう、現世(インターネット)は……っ!」

 

アイアスは無料配信サービスを開き、画面に表示される少女漫画やラブコメ作品の数々に、ただただ全力で読みふけっていたのだった。元々は、刹那がプライベートで登録していたサブスクリプションサービスを使い、テレビ画面で現世の映画などを見ていたアイアスだったが、この前、お隣のジュリアから「画面に出てくる広告をただ眺めていれば、お金もかからずに最新の漫画が無限に読めるサービスがあるよ☆」と、現代ギャルならではの順応の知恵を教えてもらったのである。戦士としての生真面目さが災いしたのか、彼女は特に「少女漫画」の胸キュンな展開にドはまりしてしまい、危うく刹那の端末から大人の有料課金(コイン購入)を勝手にブチ込みそうになるところだった。しかし、それらの恋物語をスクロールして読んでいるうちに、アイアスの少女の脳内には、ある確かな戦術的ロジック(妄想)がムクムクと浮かび上がっていた。

 

(……よくよく考えてみれば、現在マスターを囲む包囲網において、ギャル属性のジュリア殿や、溌剌としたスポーツ女子っぽいセイバー殿(宗茂)に対して……私大アイアスは、唯一無二の『純情清楚系女子』のポジション……! 少女漫画の絶対の理に当てはめるなら、これは最終的に主人公に選ばれる、最も勝ちヒロインに近い完璧な立ち位置なのでは……っ!?)

 

「ルンルン……っ♡」と細い鼻歌を鳴らし、お気に入りのベレー帽の端を揺らしながら、乙女心をこれでもかとこじらせて大妄想を展開するシールダーの少女。

 

(あぁ、マスターと……漫画に出てくるような、あんな、あんな甘酸っぱい体験を私もたくさんしたいなぁ……っ♡)

 

ちゃぶ台の前で一人、口元の艶やかな黒子のまわりの、白い肌を真っ赤に上気させながら,アイアスはまだ見ぬ主人との等身大の恋の成就へ向けて、その妄想の盾をさらに強固に引き絞っていくのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。