『Fate/Desire of Thunderbolt』 作:山嵐のハイオーク
翌朝、宗茂(むねしげ)との過酷な斥候戦で回収されたサンプルの解析を終え、ジュリアがこの街の地下霊脈に潜む勢力図を完全に完成させた。例のごとく、朝食を終えた刹那(せつな)の部屋のちゃぶ台に広げられたのは、各陣営の魔力ノイズが色濃くマークされた完成品の地図である。
「いい★ 結論から言うと、残る中継基地を潰すために、まずはウチらのアパートから一番近い『近場の小規模な霊脈』を順に強奪(奪取)していく方針でいくし☆」
ジュリアが指先で地図を叩き、今後の明確な方針を告げると、宗茂もアイアスもヴラド三世(ランサー)も異議なしと、すぐに身支度を始めようとした──まさに、その時だった。
「──ゆうべは、お楽しみでしたね、マスター……?」
「……えっ?」
どこかのRPGの宿屋の主人のようなセリフを、しかし凍りつくような笑顔と激しい嫉妬心を剥き出しにして言い放ったのは、アイアス(シールダー)であった。現在の彼女は、戦闘を意識して肌にびっちりと張り付いた黒のボディスーツを身に纏っている。フィット感の強い漆黒の生地は、彼女の極限のハリを誇るコニカル美乳の尖端や、3人の中で最大の質量を誇るあの超巨尻の淫らな肉感のテンションを服の上から全うに浮き彫りにさせていた。刹那を囲むアパートのハーレムにおいて、一人だけ「刹那との個別デート」ができていなかった彼女の乙女心は、昨夜の宗茂と刹那の烈しすぎる中出しの声を聞かされたことで、完全に限界を迎えてこじらせていたのだ。予期せぬ清楚系ヒロインからの強烈なお気持ち表明に、驚いて固まるジュリアや宗茂たち。
「私だって、私だってマスターの役に立ちたくて、こうして一生懸命インターネットで現世の少女漫画を読んで恋愛のロジックを勉強していましたのに……っ! セイバー殿ばかりズルいです! 抜け駆けです! 万死に値しますぅっ!」
「う、うわあぁ……っ! ごめん、ごめんねアイアス……っ!」
涙目でちゃぶ台を叩くアイアスの不満の爆発に、己の不甲斐なさと夜這いでの責任を痛烈に感じた生真面目な刹那は、顔を真っ赤にしながら
「今度、絶対に二人っきりでお出かけ(デート)するって誓うから……っ!」
と必死に約束して彼女をなだめるのだった。
◇不穏な修羅場の微熱を棚上げしたまま、5人はまずアパート最寄りの最初の霊脈へと足を踏み入れた。そこは、街の喧騒から少し外れたちょっとした林の中で、中央に古ぼけた管理小屋のような建物がポツンと立っていた。宗茂とランサーが気配を探ると、幸いにも防衛している魔術師の気配は微塵も感じられなかった。中には何重もの魔術的な嫌がらせの罠(トラップ)が仕掛けられているようだったが、ジュリアは難なくこれを無力化し、一行を小屋の中へと招き入れた。
「解析さえ終わっちゃえば、手間はかかるけど、むしろこの霊脈を奪い返そうとする敵をそのままハメ殺す『迎撃の罠』に作り替えることは可能よ☆ ──たださ、ちょっと変なバグがあるわけ」
ジュリアが小屋の中央の霊脈の源流にあたる部分に手をかざし、そのクリアな青い瞳を鋭く細めた。
「つい最近……この霊脈の底から、サーヴァント、か、それ以上の存在『ひとつ分』の絶大な魔力の吸収がなされた形跡が残ってるんだよね……★」
なぜそんな膨大な魔力の完全消失が起きたのか。謎が謎を呼ぶ不気味な違和感を残しつつも、ジュリアのこの上なく便利な魔術のおかげで、その日は3つの小規模な霊脈を完璧に掌握でき、刹那たちの戦力を確実に一歩向上させることができた。さらに翌日も、一行は計5つの小規模な霊脈をスムーズに制圧することに成功。少しだけ心の余裕といつものギャルとしての笑顔が戻ってきた様子のジュリアに対し、刹那はさりげなく安全性を確認しながら、その日アパートの自室でアイアスと二人きりになったまさにそのタイミングを見計らった。
「あの……アイアス。もしよかったら、明日、僕と二人で『お出かけ(デート)』、行かないかな……っ?」
「──ッッッ!!!???」
次の瞬間、アイアスはあまりの衝撃と歓喜に、黒のボディスーツに包まれた身体を、アパートの畳から物理的に飛び上がるほど跳ね上げて喜んだ。その黒い生地の下で、極限のハリを誇るコニカル美乳──2つの意味での胸は、激しい鼓動と少女漫画の妄想が現実になる衝撃によって、ドクドクと激しく踊り狂っていた。
(つ、ついに……っ! ついにネットの少女漫画で徹夜で構築した、あの『純情清楚系勝ちヒロイン』の甘酸っぱい恋の攻略作戦(チャンス)がついに到来しました……っ!!!♡)
「はいっ……! 喜んでお供いたします、マスター……っ♡」
口元の黒子のまわりの白い肌をこれでもかと真っ赤に上気させながら、アイアスはまだ見ぬ明日のお出かけへ向けて、その妄想の盾を最大級に引き絞るのだった。