※この作品はR-18です。

『Fate/Desire of Thunderbolt』   作:山嵐のハイオーク

31 / 45
第30話:『思想の残照、深淵より響く警告』

ハサンの熱烈な口淫と、裸エプロンに身を包んだアイアスとの激烈な立ちバック。食欲とオスの体力を完膚なきまでに満たされ、至高の4Pの末に泥のように深い眠りへと就いた刹那(せつな)は、例のごとく、またしてもあの脳髄を侵食する精神の海の中で夢を見ていた。しかし──今度の夢は、これまでの過去の記憶の追体験とは、全く毛色が異なったものだった。何せ、これまでの夢の中の自分は、病床で血を吐きながらも最愛の人の復権を祈り続ける『───』という女性の視点そのものだったはずだ。それだというのに、今この精神世界に佇んでいる自分は、紛れもない現実と変わらぬ、轟刹那としての「男の姿」のままであったからだ。

 

「──ねえ。もう気づいてるんじゃない? あんたがどういう存在か」

 

静寂の闇に響いた、ひどく聞き覚えのある、けれど今の宗茂が紡ぐものよりどこか勝気で凛とした声音。刹那が思わずハッとして振り返ると、そこには、月光のような冷たい闇の中に佇む、どこか血色の悪い、豪奢な和服を纏った一人の美しい女性の姿があった。

 

「君は、一体誰──」

 

刹那がその真名を問いかけるよりも前に、血色の悪い和服の女性は、フッと切なげに、けれど不敵な笑みを口元に浮かべて自ら答えた。

 

「私は、かつての歴史において──立花宗茂の『──』だった者よ。そして……あなたは、私の『─────』とでもいうのかしら」

 

女性の口から告げられた、魂の輪廻という絶対の不条理。

 

「あっちの私の影響で、最近のあんたは少しずつ『俺』なんて言って強気になっちゃいるけれど。あなたが、轟刹那であることに変わりはないわ。……ただ、少しずつ───の私と混ざっていっているだけだもの。性別が変わろうが、風貌が変わろうが、魂の本質というものは決して変わらないものよ」

 

彼女は一歩、刹那の男の肉体へと近づくと、その深緑の瞳に烈しい愛おしさと警告の炎を滾らせて少年の胸ぐらを掴んだ。

 

「──だからこそ、次は絶対に、選択を間違えないことね。あの関ヶ原前夜のような、あんな馬鹿げた喧嘩別れなんて……もう、二度と御免だから」

 

女性の細い指先が、刹那の魂の回路へとダイレクトに戦慄を刻み込んでいく。

 

「単刀直入に言うわ、嫌な予感がするの。私の戦場における直感は、世間知らずなあのバカ(宗茂)のより何倍も当たるから……これからの戦いは、死ぬ気で警戒することね。大聖杯の深淵には、まだあんたたちの知らない理不尽が眠っているわ」

 

彼女は満足そうに刹那の姿をその瞳に焼き付けると、その身体を徐々に淡い pale blue の光の粒子へと融かし始めた。

 

「この夢を見るのも、きっと次で最後かな。──じゃあ、がんばりなさい、刹那」

 

最期に、確かに自分の本当の名前を呼んだ『────』の残照。

 

「──待って……っ!!」

 

伸ばした手が虚空を掻いた、まさにその瞬間──。

 

「──っ、は、あぁぁーーーーっっっ!!!」

 

弾かれるようにして、刹那は昼下がりのアパートの畳の上で目を覚ました。部屋の窓からは、未だにギラギラとした真夏の太陽の光が差し込んでおり、横ではデザートとしての役目を完全に果たし終えたアイアスが、裸エプロンのまま幸せそうに添い寝をして深く眠っている。自身の右腕に刻まれた令呪が、まるで夢の中の警告と共鳴するように、 pale blue の青白い火花を微かにパチパチと爆発させて熱を帯びていた。(魂の本質は、変わらない──)刹那は激しく上下する胸を押さえ、夢の中で血色の悪い女性が遺していった「嫌な予感がする」という最悪の直感を脳髄に刻み、次なる第3の重要拠点──魔術科学者チンイの罠が待つ奈落へと向けて、その瞳を鋭く強気に据え直すのだった。

 

◇

「──宗茂えぇぇーーーーっっっ!!!!」

 

それは、少年としての可憐な喉から絞り出されたものとは思えぬ、激しい血の慟哭であった。刹那(せつな)の肉体から、 pale blue の領域を遥かに超越した、禍々しくも神々しい黄金の「神鳴りの閃光」が爆発的に吹き上がる。その光の奔流のなかで、彼の衣服はメリメリと引きちぎれ、その姿を完全へと変貌させていく──。雷雲の紋様が刻まれた、神代の威光を放つ漆黒の「陣羽織と荘厳な甲冑」をその身に纏った、苛烈なる若武者の姿へ。時は夕刻、茜色に染まる血の黄昏。場は、技術者チンイが霊脈の巣床(中継基地)としていた漆黒の『廃病院』。慢心はなかった。油断など、断じてなかった。そのはずだったのだ。しかし、大聖杯の深淵が放ったその狂気の女の前に、俺たちは文字通り、なす術もなく完膚なきまでに蹂躙された。

 

◇数時間前──。拠点を強襲する直前、ジュリアが車内から廃病院の構造を100%完全にハッキング・解析し、敵の正確な位置を割り出して突撃の火蓋を切った。狭い閉鎖空間での戦闘に備え、先陣を切ったのは黒のボディスーツを纏ったアイアスと、新衣装のメイドマイクロビキニをきしませるハサンの二騎。けれど──遅れて刹那たちがその奥へと駆け抜けた時には、すでにすべてが手遅れだった。暗い手術室の床の上、アイアスとハサンの二人は、その真っ白な卵肌や艶やかな褐色肌に、無数の凄まじい「連続殴打による裂傷と打撲痕」を残され、無残に折り重なって倒れていた。さらに異常なのは、二人の額に、奇怪な東洋の呪術式がびっしりと書かれた『赤黒い札』がベッタリと貼り付けられていることだった。二騎の強靭なサーヴァントは、霊基の神経をハッキングされたかのように、ただ白目を剥いてピクピクと床の上で痙攣し続けている。

 

「アイアス! アサシンッ! 嘘だろ、なんで──」

 

刹那がパニックを起こして駆け寄ろうとした、まさにその瞬間だった。

 

ガガァァァァンッッッ!!!

 

「──しまっ、主殿、下がれェッッッ!!!!」

 

暗闇の死角から放たれた、大気を爆破するような超高速の奇襲。それにいち早く気づいた宗茂が、決死の形相で割って入り、神速の一閃『雷切』の刀身を以て、目に見えぬ敵の強烈な「拳」を真っ向から受け止めた。激しい雷光の火花が散る。敵の姿は依然として空間に痕跡(霞)のように見えない。だが、耳元のすぐ真横で、

 

フフ……

 

と、女の不気味な嘲笑が聞こえた気がした──その刹那だった。

 

ドサリ、

 

と。背後で、誰かが力なく崩れ落ちる音がした。

 

「──え? ジュリア、……?」

 

振り返った刹那の網膜が、絶望に灼かれる。

 

「あ、れ……? ダーリン、ウチ、なんで……っ」

 

背中を袈裟斬りに深く切り裂かれ、ドロドロとした鮮血をブチ撒けながら、ジュリアが床へと倒れ込んでいく。

 

「おのれェェェッッッ!!! 異端の怪異め、余の槍衾の錆びにしてくれるわッッッ!!」

 

ヴラド三世(ランサー)が怒髪天を衝いて闇夜に実体化し、その強靭な両腕で槍を激しく突き出し、見えざる暗闇の敵と烈しい金属音を響かせて斬り合った。だが──王の猛攻すらも、敵の掌の上だった。

 

グサァァァァッッッ!!!

 

「が、はっ……っ!? ──そ、んな……、背後、から……もう一騎……っ」

 

激しい乱戦の最中、ヴラド三世の背後の空間がグニャリと思想鍵紋のノイズで反転し、現れた更なる敵の手によって、その背中を巨大な『三日月状の刃』で深く、容赦なく穿たれていた。高潔な王の霊基が、メリメリと内部から音を立てて崩壊していく。

 

「ランサーーーーッッッ!!! 嫌だ、みんな、なんでこんな──」

 

刹那が狂ったように叫ぶ間もなかった。自身のすぐ後ろで、

 

グサリ、

 

と。肉体が内側から完全に破壊される、最悪の嫌な音が室内に重く響き渡った。恐る恐る、首を後ろへと回す。そこにいたのは──世界を泰平へ導いた金の化け物の武を真っ向から受け止めた、あの無敗の雷切の刀身を、木端微塵に真っ二つに叩き折られた宗茂の姿だった。折れた刃の向こう側、彼女の引き締まった腹部は、見えざる敵の強烈な『手刀』によって、前後を完全に貫通するように深く、無残にブチ抜かれていた。

 

「あ、か……はっ、あ……」

 

口から大量の鮮血を溢れさせ、その深緑の瞳の光を急速に失っていく宗茂。

 

「そんな……っ、嘘だろ、嫌だよ……宗茂ッ!! 死ぬな、死んじゃダメだよっ!! こんな、こんな地獄みたいなところで、お前までいなくなるなんて絶対に嫌だァァァーーーーッッッ!!!」

 

刹那は涙をボロボロと流し、血塗れの彼女の身体を抱きしめて激しく絶叫した。宗茂は消え入りそうな最後の魔力の声を絞り出し、

 

「あるじ……どの……。……すま、ぬ……っ」

 

己を強く抱き締める刹那の濡れた顔に、血塗れの震える手をそっと添え、守り抜けなかった無念の謝罪を遺したまま──ガクリと首を落として事切れた。その肉体が、音もなく冷たい光の粒子へと融け始めていく。──こんなの、現実なわけがない。──こんな理不尽な惨劇、絶対に許していいはずがない。

 

「……てめえら、全員……一匹残らず、生かして置いてやるものかァァァッッッ!!!!」

 

刹那の身体中の血液が、大聖杯のバグを遥かに凌駕する怒りで燃えるように煮えたぎる。血潮が激しく騒ぎ、全身の神経を神代の荒々しい「金色の稲妻」が、バリバリと凄まじい轟音を立てて駆け巡った。ああ、そうだ。俺は今、完全に思い出した。前世の夢なんて生易しいものじゃない。この胸の内に眠っていた、本当の気持ちを、本当の心を。俺は──今度こそ、あの不器用なバカと現世で最後まで添い遂げるために、この時代に、この肉体へと再誕したのだということを!

 

「──こんな虚構の隔離魔術なぞ、我が神鳴りの雷で、塵芥に等しくブチ砕いてくれるわッッッ!!!!」

 

轟音とともに廃病院全体を巨大な黄金の雷柱が貫く。鎧をきしませ、折れた雷切の残照を虚空から掴み取った刹那──否、神格をその身へと降臨させた若武者は、日食の瞳を烈しい神威にぎらつかせ、空間そのものを怒鳴りつけた。「我こそは建御雷神(タケミカヅチ)の荒御魂──“雷神”の子にして雷神の転身、立花誾千代(たちばな ぎんちよ)なりッッッ!!!! 怨敵よ、その小賢しい正体を今すぐ俺の前に現せッ!!」 魂の最奥に眠る真名を完全開放し、愛する者たちの骸を背負った誾千代の、シッダールタ陣営の頭脳チンイに対する、絶対の反撃の戦いの幕が上がった。

 

◇凄まじい黄金の雷霆が廃病院の天井を粉砕して激しく落ちる。その刹那、刹那(誾千代)の視界を覆っていた不気味な隔離魔術の歪みは一気にブチ砕かれ、世界はその隠されていた真の姿を現した。凄惨に両断されたはずの宗茂も、血を流して倒れていたジュリアやヴラド三世の姿も、そこには一切存在しない。先ほどまでの仲間たちの無惨な死の惨状はすべて、刹那を精神の底から蹂躙するために仕掛けられた、チンイの思想鍵紋による「最悪の幻術(不気味な虚構)」にすぎなかったのだ。暗い手術室のなかに存在するのは、最初から、隔離されて一人行動を余儀なくされていた刹那と、目の前の女の二人きりであった。爆炎のノイズが晴れ上がった空間の中心。そこに現れたのは──腰のあたりまで長く伸ばした黒髪を妖しく揺らし、妖艶な紫色の瞳をぎらつかせた一人の女であった。その顔には不釣り合いなゴーグルを嵌め、なんと衣服は極小のビキニのみ、その上から乱暴に白衣を羽織っただけの、あまりにも不条理で異様な姿態を晒している。

 

「フッフーン、思った通りね! 私の擬似千里眼、この極東の世界でもバグることなく100%機能してるみたいで良きかな、良きかな♪」

 

白衣の女は最高に上機嫌な笑い声を響かせた。覚醒した誾千代の情熱をその身へと宿した刹那は、黄金の神鳴りの稲妻をパチパチと爆発させ、日食の瞳を烈しい神威に据えて冷酷に問う。

 

「お前が、あの変態黒豚暗殺者をいじくり回した技術者──チンイだな? 不快な虚構を見せやがって。……五体満足で切り刻まれる準備は、もうできてるんだろうな?」

 

「まあ、そうあせんなさんなって☆ 偉大なる王様(シッダールタ)を満足させるための下ごしらえのお仕事は、これにて100%完了ってなわけでさ。……こっからは、私のプライベートな実験(じかん)なんだからねっ!」

 

女が楽しげに指パッチンを鳴らした、その瞬間だった。廃病院のコンクリートの景色がメリメリと音を立てて崩壊し、周囲は一面、きらびやかで広大な『古代のインドや中国の王宮』を思わせる不条理な大広間へと変貌を遂げた。空間の位相が書き換わったその凄まじい魔力波動のなかで、気が付けば、両者の身を包んでいた甲冑も白衣もすべてが跡形もなく取り去られ、完全な『全裸』の有様で床の上に対峙させられていた。

 

「一体……どういうつもりだッ!?」

 

剥き出しになった少年の股間では、マーラの因縁に呼応して最凶の超肉棒(杭)がメリメリと猛烈に反り上がる。それを見た全裸の女は、自慢の豊かな乳房を堂々と誇示するように仁王立ちになり、そのぷっくりとした唇を最高に淫らに歪めて高らかに自らの真名を告げた。

 

「フッフッフ♪ 私こそはシッダールタ帝第7妃、チンイ。──賜名は玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)。いざ尋常に、お相手つかまつるわ♡」

 

──そうして、一物の衣服も纏わぬ極限の密室のなか、凄まじい『裸の格闘戦』の火蓋が切って落とされた。前世の誾千代の記憶があろうとも、刹那自身には生前も今生でもまともな体術・格闘の経験など一切ない。彼は自らの全身に pale blue の金雷の電流を爆発させ、神経の反応速度を極限まで加速(オーバードライブ)させることで、眼前からのチンイの苛烈な体術(拳法)に必死に応戦した。

 

「いゃ〜☆ 私があれほど徹底的に魔改造したハサンちゃんを、まさか現世のまぐわいだけで返り討ちにしちゃうなんてさ、ただの人間なわけないと思ってたけど……。まさか雷神の生まれ変わりだったとはね! 良かったじゃん、これならウチの王相手でも、少しは勝ち目があるかもよっ!」

 

チンイは肉欲をそそる全裸の肢体を躍動させ、その見た目からはおよそ想像を絶するほどの不条理な威力の『正拳突き』を真っ向から放ってきた。

 

ドゴォォォッッッ!!!

 

まともに防御が間に合わず、強烈な一撃が刹那のみぞおちへと深々と突き刺さる。衝撃に少年の口からドロドロとした血反吐が床へと爆発的にブチ撒けられた。

 

「お褒めに預かり……はいどうも、とでも、言うと思ったかよォッッッ!!!!」

 

刹那は血を拭う間もなく、雷撃粒子による加速を最大値まで高めた烈しい『回し蹴り』をお返しとばかりに叩き込んだ。

 

ドバァァァンッッッ!!!

 

まともに喰らったチンイの全裸の身体が、王宮の柱の向こう側へと派手に吹っ飛んで床のタイルを転がった。

 

「あはっ! いいねー、楽しくなってきたじゃん!」

 

体感にして、実に1時間── 。互いの剥き出しの肉体が激しくぶつかり合い、肉と肉が爆音を立てて弾ける凄まじい肉弾戦が繰り広げられた。だが、徐々に技術者としての、正式な妃としての三蔵の圧倒的な格闘センスの前に、刹那の身体はボコボコに打ちのめされていった。

 

「……う、あ……っ」

 

「甘やかすつもりじゃないけど、これじゃちょっと、まともな勝負にならないね」

 

全身を打撲痕で汚され、呼吸を荒くして床へと仰向けに倒れ込んだ刹那。その無防備な少年の体めがけて、全裸のチンイはフワリと跳躍すると、その吸い付くように柔らかい安産型の股ぐらを、刹那の顔面と胸元へ向かって思いっきりダイレクトに叩き落として圧し潰した。

 

「──さ、こっからは『床勝負』といこうっか♡ ホテル洋館であんなおかしなデカさの肉棒を見せつけられちゃったら、ウチだって女だし、気になっちゃうに決まってるじゃん?」

 

顔面に押し付けられたチンイの秘部から、ドロドロとした粘性の高い愛液の匂いが溢れ出す。あの凄惨な惨劇がすべて「チンイが仕掛けた不条理な幻術」であったという安堵と怒りのなか,この全裸の魔術科学者玄奘三蔵の色欲の領域のなかで、刹那の杭は、より獰猛なオスの野生を滾らせて狂い咲くのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。