※この作品はR-18です。

『Fate/Desire of Thunderbolt』   作:山嵐のハイオーク

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第34話:『不条理の王座、永久の誓いが紡ぐ黄金の覇道』

「──いよいよなのだな、主殿。すべての元凶たるライダーを倒し、大聖杯を手に入れる」

 

朝風がカーテンを揺らすアパートの六畳一間。ジュリアから提示された【大聖杯・最終決戦の地】の座標を睨み据えながら,至高の銀髪を煌めかせた宗茂(むねしげ)が静かに、けれど激しい闘志を瞳に宿して呟いた。その張り詰めた空気のなか、沙悟浄との死闘で失った片腕に痛々しい包帯を巻きつつも、王としての気高き威厳を崩さないヴラド三世(ランサー)が,腕を組んだまま刹那(せつな)へと真っ直ぐな視線を向けた。

 

「その決戦の前に、ひとつ聞いておきたいことがある。……刹那殿は、聖杯を手にした際、一体何を願われるおつもりか? 汝が悪人でないことはこの数週間の共同戦線で深く理解しているが、我はそもそもジュリアのサーヴァント。事前にうちらの間で示し合わせていた固有の願望というものがあるのだよ」

 

「俺の願い、か……」

 

腰のあたりまで長く伸びた黒髪を凛々しく一本にまとめた若武者(刹那)は,自らの手のひらを見つめ、それから部屋にいる大切な最愛の女たちの顔を順番に見つめ回した。一人称「俺」としての強気な芯を通した声音のまま、けれどこの上なく優しく、彼は微笑む。

 

「──俺の願いはさ。俺が、俺を心の底から愛してくれた人と……この先もずっと、幸せに永く活(い)きることだよ」

 

ドクン、と。その一切の私欲なき、ただ純粋な愛の独占を意味するあまりにも真っ直ぐな言葉に、布団の片隅でまだ白濁や母乳の余韻を微かに漂わせていた宗茂、アイアス、ハサン,そしてお腹の中に新たな命(二本線)を授かったばかりのジュリアの4人の乙女たちの胸が,一斉に

 

「キュン……ッ♡」

 

と激しく狂おしく高鳴り、顔をチェリーのように真っ赤に染め上げた。しかし、ヴラド三世だけは至極冷静に首を振り、至高の王としてのロジックを返した。

 

「ふむ……。実にもっともで、美しい願いだとは思うが。……いささか抽象的すぎるのではないか、刹那殿? 聖杯が万能の願望器とはいえ、あのような呪われた欠陥システムだ、世界を根底から書き換えるような願いには、必ず何かしらの歪み(限度)が生じるであろう」

 

「あはは、それなら全く問題ないよ、ランサー」

 

刹那は気負うことなく、溌剌とした笑顔で応える。

 

「俺が求めているのは、世界をどうこうするような大層なことじゃないんだ。細々とでも、みんなといつまでもこんな感じで、アパートで楽しく笑いながら暮らすこと。それだけが、俺の掴み取りたい唯一の現実だからさ」

 

「だーりーん……っ!!!♡(Kカップ爆乳を圧し付けながら大号泣)」

 

ジュリアが涙をボロボロと流して刹那の首にしがみつき、そのままたしなめるようにヴラド三世を振り返った。

 

「ほーらランサー、心配いらないって言ったでしょ☆ ウチはこの身にオズワルドから受けた過去の屈辱(乳首ピアスの呪縛)をダーリンの金雷で完璧に雪いでもらったし、これからは自慢のお婿さんと楽しく現世で暮らすこと。……あんたとの事前にやってた意見のすり合わせでも、最終的なゴールは『両人の名誉復権』が願望だったんだから。これで大丈夫だよ☆」

 

「それに、なのだよ。ランサー」

 

ジュリアの言葉に、銀髪の宗茂がさらに力強く言葉を付け加えた。

 

「ランサー、お前が主殿(誾千代)のことをそれなりに好いてくれているのは、これまでの戦いを見ていれば痛いほどよく分かっている。……お前ほどの高潔な王だ、大聖杯に歪んだ形で願いを委ねるのではなく、戦いが終わって現世に受肉した後に、自らのその強靭な両腕で願いを叶えればいいだけのこと。名誉なんていうものはな、結局のところ、他人が勝手に言っているだけの無責任な評価に過ぎないのだよ」

 

宗茂の、かつて国を失い、それでも己の義を貫いて柳川を自力でもぎ取った英雄としての言葉には,圧倒的なまでの人生の説得力が満ち満ちていた。

 

「良い奴にだって難癖をつける不条理な奴はいくらでもいるし、逆に悪い奴にだって金で誉めそやす汚い連中はゴロゴロいる。……お前の言う『ドラキュラとしての名誉の復権』はな、大聖杯に縋るのではなく、受肉した後にこの現世の無知な市民どもに、お前自身の王としての高潔な背中を以て、根気強く啓発し続けることでこそ完璧に叶えられるのだよ」

 

「…………。フ、そうだな。確かに、おぬしらの言う通りだ」

 

宗茂の正論、そして刹那の揺るぎない覚醒のトーンを前に,ヴラド三世は深いため息のあと、かつてないほど清々しく、男らしい柔らかな笑みをその厳格な唇に浮かべた。

 

「我も……。我が愛しきマスター(ジュリア)の腹の中で、これからすくすくと育ってゆくであろう、刹那殿との新たな命(チビスケ)の姿を、特等席で見守ってやりたいからな。……轟刹那殿。汝のその優しくも強き願い、何としてでも、我が折れぬ槍のすべてを賭して聖杯に叶えてもらうとしようぞ!」

 

「うん……! ありがとう、ランサー!!」

 

こうして、これまでのまぐわいによる因果のすべてが一本の鎖に繋がり,アパート陣営の6人は、誰一人として揺らぐことのない絶対の絆を以て心を一つに統合し,金の鎧を纏って待つ絶対の覇王ライダー・ゴータマ・シッダールタとの【神域の最終決戦】へと向けて,堂々とその逆襲の扉を押し開くのだった。

 

◇

「よし──これより、大聖杯の本拠地へのハッキングを開始するし!」

 

地下深くへと続く奈落の入り口に到着するや否や、ジュリアはその豊かなKカップの胸元で解呪された乳首ピアスの痕跡を誇らしく震わせ、魔術回路を最大出力で駆動させた。前回のホテル洋館での『思想鍵紋』による分断という手痛い反省から,アパート陣営に慢心は一切なかった。ジュリアは本拠地の入り口から自らの解析魔術をフル稼働させ、敵の防衛陣地が構築されるよりも前に、大聖杯の内部構造そのものを上書き・書き換える先制攻撃を完璧に済ませたのだ。これによって、かつてハサンを凄惨な生贄へと捧げた悪女──エレーナ・ラジオノワによる魔術的な妨害や空間遮断のシステムを完全に阻止しつつ,これまでにない圧倒的な優位を確保することに成功したのである。

 

「──行くぞ、みんな。一直線に最深部へ突撃だッ!!」

 

「「「おうッッッ!!!!」」」

 

刹那(せつな)の一人称「俺」の毅然たる号令が響く。6人は出発前の作戦会議で打ち合わせた通り、ジュリアがハッキングで暴き出した安全な最短ルートを、一糸乱れぬ完璧な連携で一直線に最深部へと向かって猛然と突撃した。通路の各所に配置されていたオズワルド陣営の魔術師の残党たちが、パニックを起こして迎撃の呪文を唱えようとするが、もはや「俺」として急成長を遂げ、神代の金雷の出力を倍化させている刹那たちの敵ではなかった。銀髪を煌めかせる宗茂(むねしげ)の『波游兼光』の神速の一閃と、アイアスの可変盾による強烈な撃力によって、残党どもは文字通り塵芥の如く難なく蹴散らされていく。──そして、最深部の扉を押し開けるよりも前に、通路の陰には、すでに勝負を決した一人の戦闘メスが佇んでいた。

 

「ふふ♡ ご主人様、お邪魔虫の片付け(お掃除)は完了いたしましたわ」

 

先回りしていたハサン(アサシン)の足元には、喉元からドロドロとした鮮血を流し、冷たい床の上でピクピクと痙攣しながら地に伏しているエレーナ・ラジオノワの無惨な死体があった。その死に顔を見たところ、自らがかつて生贄に捧げ、雌として壊したはずのハサンが、刹那の濃厚な種によって霊基をパッチワークされてストーカーの如き狂信の肉奴隷として逆襲してきたことに,驚き、断末魔の悲鳴を上げる暇すら与えられないまま、一瞬で息の根を止められたのだろう。かつての不条理な因縁のすべてに血の終止符を打ち、6人はついに、かつてオズワルドたちの円卓が置かれていた大聖杯の中枢の間へと難なくたどり着いた。しかし──かつての陰謀の円卓は跡形もなく破壊し尽くされ、広大な空間の奥には、もはや一人の絶対的な『王』が座す、禍々しくも神々しい金の玉座があるのみだった。

 

「──ふふふ。ついに来たな、待った甲斐があったというものよ。童──いや、我が宿願の大敵(とも)よッ!!」

 

金の玉座からゆっくりと立ち上がったその男の肉体から、空間そのものをメリメリと圧し潰すような、凄まじい「覇気」と「武威」の暴風がどくどくと溢れ出す。薄緑色の美しい髪を荒々しく流し、全身を複雑な紋様が刻まれた『金の鎧』に身を包んだ絶対の覇王は、不敵な王の笑みをその唇に歪め、大聖杯の深淵を震わせる聲音で今一度高らかに名乗りを上げた。

 

「──我が名はゴータマ・シッダールタッ!!! 世界統一国家『釈迦大帝国』が君主であり、あの超常の彗星のアルティメットワンをも撃滅せし、異世界の王であるッッッ!!!!」

 

その絶対の覇王の威圧の前に、刹那は一歩も退くことなく、折れた雷切を金雷の鞘へと反転させた至高の業物を引き抜き、日食の瞳を烈しい神威にぎらつかせて真っ向から叫び返した。

 

「──俺は轟刹那ッ!!! 雷神の縁(えにし)の元、俺を心の底から愛してくれた我が最愛の『俺の女たち』と出会い、俺たちの掴み取りたい唯一の幸せな願いのため、貴様を完膚なきまでに打ち倒す者だッッッ!!!!」

 

「ハハハハッ! 征くぞ、刹那ッ!!」

 

「──いくぞッ!! 来い、シッダールタァァァッッッ!!!!」

 

魂の真名を響かせ合い、ついに日常のアパートの境界線を越えた刹那と、異世界の絶対王シッダールタとの、世界の命運を賭けた【神域の最終決戦(第1ラウンド)】の火蓋が、今まさに猛烈に、そして圧倒的な黄金の金雷の爆音とともに切って落とされた!

 

◇激しい黄金の閃光が幾重にも瞬き、火花が激しく空間を舞う。先ほどまでの本拠地の薄暗さが嘘のように、最深部の空間は戦いの光によって、まるで真夏の太陽が南中するが如き苛烈な輝きを抱いていた。大聖杯の深淵で繰り広げられるのは、異世界の絶対王シッダールタ(ライダー)と、刹那(せつな)、そして宗茂(むねしげ)の三者による、目にも留まらぬ高速の斬り合いであった。シッダールタの神域に達した格闘センスと、その『金の鎧』に裏付けられた超常のフィジカルから放たれる重い斬撃。対する刹那と銀髪の宗茂は、互いの呼吸を完全に同調させ、軽やかな身のこなしで音速を超える神速のカウンターを幾度も突き立てていく。背後で見守るジュリアの瞳からは、両者の武威は完全に拮抗しているように見えた。だが、実際のところ、刹那と宗茂の二人はシッダールタの底知れぬ膂力の前に、ジリジリと足元を削られるように押されていた。

 

「さあ──ッ! これほどの格を宿しながら、王たる我を前にして、貴様らの刃はこんなものかッッッ!!!!」

 

「まだまだ──ッ! 舐めるなァァァッッッ!!!!」

 

刹那は「俺」の咆哮とともに雷切を逆手に構え、宗茂の『波游兼光』の軌跡と交差するように、荒御魂の金雷を最大出力で解放した。

 

──【『乱流嵐曇乱舞(らんりゅうらんどんらんぶ)』】──

 

──【『雷切・神断ち(らいきり・かみだち)』】──

 

黄金と pale blue の電光が渦巻く、神代の二連撃。迎え撃つシッダールタは、金の鎧の文様を脈動させ、その背後に浮かぶ無数の法輪を烈しく駆動させた。

 

「宝具──【『律剣・シャーリプトラ(りつけん・しゃーりぷとら)』】ッッッ!!!!」

 

神格と神格、絶対の宝具同士が真っ正面から激突し、大聖杯の間を消し飛ばさんばかりの莫大な魔力熱が炸裂する。凄まじい衝撃波の暴風のなか、刹那たちの命懸けの連携が、ついにあの絶対の王の肉体を力任せに数メートル後方へと弾き返した。

 

「──今よ、ランサーッ!!★」

 

「おうとも! 我が槍衾の錆びとなるがいい──【『カズィクル・ベイ(串刺城塞)』】ッッッ!!!!」

 

ジュリアの鋭い叫びを皮切りに、影から躍り出たヴラド三世(ランサー)が残された片腕で至高の魔槍を突き立てる。さらに、気絶から目覚めて執念で潜伏していたハサンの暗殺刃、そしてアイアスの突撃が重なる、怒濤の『宝具3連撃』が炸裂した。凄まじい衝撃とともに、シッダールタの無敗を誇った肉体の右半身が、骨ごと跡形もなく消し飛ばされた。

 

「──やったっ!?」

 

ジュリアが歓喜の声を上げかけた、まさにその次の瞬間だった。消し飛ばされたはずの王の右半身から、金の魔力がドクドクと噴き出し、肉眼では捉えきれぬほどの神速で瞬時に完全再生していったのだ。

 

「フハハハハハッ! 驚くのは今更だろう! ──これもまた、生死を奪い合う『戦争』故な!」

 

不敵に笑うシッダールタが、自らの霊基の深奥から取り出したのは、空間を強制的に切り裂く二つの光り輝く円盤──『チャクラ(輪宝)』であった。王は容赦なく、その一撃必殺のチャクラを、後方で戦況を解析していた最弱のマスター──ジュリアめがけて超高速で投擲した。

 

「──させない、でありますッッッ!!!!」

 

刹那の叫びと同時に、アイアスが朝の乱交で刹那に引き裂かれた痕跡を残す黒のボディスーツをきしませ、新調された「7つの花弁型可変青銅盾」をジュリアの前へと全力で展開した。凄まじい火花が散る。だが、そのチャクラは意思を持つ怪異のように、アイアスの大盾に何度弾き返されようとも、軌道を変えて執拗にジュリアの頭部へと向かって飛来し続ける。そう瞬時に判断したアイアスは、覚悟を決めて自らの白い卵肌の片腕を真っ正面から突き出した。鮮血をブチ撒けながら、アイアスの片腕の肉へと一枚のチャクラが深く突き刺さる。アイアスは絶痛に歯を食いしばりながらも、その戦士としての恐るべき怪力を以て、手に刺さったチャクラを力任せに引き抜き、盾に変形させて残るもう一枚のチャクラを真っ向から粉砕。さらに、引き抜いたチャクラをもその剛腕で床へと叩きつけ、木端微塵に破壊してみせた。

 

「──っ、今のうちに、いくしッッッ!!!!」

 

アイアスが命懸けで稼いだ一瞬の隙。ジュリアは大聖杯の本体へと死に物狂いで駆け寄った。自らのお腹の中に宿ったダーリン(刹那)の新たな命の胎動を感じながら、大聖杯をリアルタイムで解析し、ライダーとの魔力パス(接続)を完全に切り離すことができれば、あの不条理な即時再生能力を無力化し、勝利へと一気に近づけるからだ。しかし、そのジュリアの前に、大聖杯の防衛システムが自動生成した、鷹(タカ)の見た目をした不気味な機械のガーディアンが立ち塞がった。

 

「──ご主人様の女(おんな)には、指一本触れさせませんわッッッ!!!!」

 

ジュリアと並走していたハサンが、漆黒の黒装束を激しく翻して前に躍り出た。ハサンは指先から無数の魔術糸と投げナイフを放ち、縦横無尽に空中を舞う機械の鷹へと応戦する。機械の鷹が放つ高熱レーザーによって、ハサンの黒い糸は次々と焼きちぎられ、投げナイフの多くを木端微塵に砕かれながらも、彼女の暗殺者としての執念は勝った。

 

「──これで、墜ちなさいなァッッッ!!!!」

 

ハサンの放った最後の一撃が、機械の鷹の動力核へと正確に突き刺さり、見事に破壊に成功した。これほどの耐久力を持つガーディアンをアサシンの刃で強引に圧殺できたのは、他でもない──朝にいたるまでの過激な4Pのなかで、刹那の馬の如き超肉棒から子宮の最奥へと直接与えられていた、あの pale blue の絶大な雷の力が、ハサンの霊基の刃へと完璧に功を奏した結果であった。

 

「ダーリン、パスのハッキング、今いくからね──っ!!★」

 

ジュリアの指先が大聖杯の演算回路へと触れ、因果を書き換える改ざんの光が激しく明滅を始める。いよいよ絶対王ゴータマ・シッダールタの不死の牙城が、アパート陣営の愛と執念の連携によって、内側からメリメリと崩壊を始めるのだった──。

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