※この作品はR-18です。

『Fate/Desire of Thunderbolt』   作:山嵐のハイオーク

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第5話:『解析の工房、彷徨える黄金の盾を救い出せ』

商店街での奇妙な邂逅を経て、刹那(せつな)と宗茂(むねしげ)の二人は、ジュリアがこの街に偽装構築した私設魔術工房へと足を踏み入れ、対等に戦力を確かめ合うための真摯な会議の席に着いていた。

 

「へえ……ここが、君の工房なんだ」

 

真夏の熱気が遮断されたひんやりとした空間を見回し、刹那は呟く。その際、耳元で滑らかに揺れた、女性のように艶やかな黒髪のショートボブと、それを縁取る少女のように長い睫毛。その男にあるまじき可憐な少年のルックスを間近で見つめるうち、出迎えたジュリアの豊満な肉体はドクリと跳ね上がり、ギャルの仮面の裏側で、股下が熱い愛液でわずかに濡れるのを自覚して密かに息を呑んでいた。しかし、刹那の視線もまた、目の前のジュリアの暴力的なまでに豊満な双丘へと、抗いようもなく奪われていた。黒のタイトなレザースカートに対し、今朝のジュリアは真夏の熱気のせいで、上着である黒のシアーブルゾンを肩からだらしなくはだけさせていた。彼女の有するリング型ピアスの呪いは、ブラジャー、下着、上着という『3層の衣類』までを完全に透過して浮き彫りにする。本来なら4層目にあたるシアーブルゾンを正しく羽織っていれば隠し通せるはずのそれが、今、はだけて実質2層のみとなった薄手の生地の向こう側で、完全な存在感を放って衣服を内側からメリメリと押し上げていたのだ。その最尖端にあるピアスの硬質な突起と乳首の膨らみが、くっきりと丸裸に浮き彫りになっている圧倒的なエロティシズムを前に、刹那にはそれが呪いの影響など知る由もなかったが、ただ言葉を失って呆然と見とれてしまう。

 

「――ようこそ、我が主(マスター)の同盟者よ。我はランサー。此度、この槍を以て貴殿らの盾となろう」

 

刹那がドギマギとする間もなく、工房の冷たい空気のなかから、ジュリアのサーヴァントであるランサーが威風堂々たる姿を現臨させた。その凛烈な武人としてのオーラに、刹那の日常が神秘の側へと急激に引きずり込まれていく。ジュリアは一方的に情報を盗み取るような解析をあえて控え、4人で面と向かって車座になり、対等に戦力を確かめ合う。戦いを知らなかった刹那であっても不信感を抱くことなく、これからの命がけの戦場での連携を高めるための、真摯な対話が重ねられていった。

 

「ウチらは基本、ランサーの槍による近距離から中距離の白兵戦がメインかな☆ セイバーちゃんは、近接戦での突破力はどのくらい? 遠距離攻撃の手段とか、何か持っていそう?★」

 

「ふむ、私はセイバーのクラスに違わぬ白兵の近接戦闘を得意とする。遠距離を穿つ手段は持たぬが、電光のごとき神速の踏み込みによる一閃であれば、いかなる間合いの敵であっても一瞬で間を詰め、その首を落としてみせよう」

 

お団子ハーフアップの白金髪を揺らし、宗茂が傲然と不敵に微笑む。互いに面と向かって遠距離攻撃や近距離攻撃の得意手段を確かめ合い、4人がひとしきり話し終えたその時、ジュリアはギャルの笑みをふっと引き締め、昨夜自らの使い魔が目撃した深山での壮絶な死闘について、静かに明かし始めた。

 

「……戦力確認のついでに、一つ超ヘビーな情報を共有しとくね。実は昨日の夜、ウチの使い魔が山奥で、別のマスターのサーヴァント同士が激突してるのを視ちゃってさ。一方はおそらくバーサーカーで、君らの話からするとこいつのマスターが刹那クンの友達を泥の贄にしたやつで間違い無いよ」

 

ジュリアの言葉に、刹那の瞳が鋭く引き締まる。

 

「で、もう一方は、シールダーのクラス。マスターを失いながらも、最期の令呪の命令縛りで現界を維持してる、黄金の盾を抱えた悲壮な女の子の英霊。バーサーカーの巨大な棍棒の猛撃を、盾を巨大な黄金の岩塊に変形させて叩き潰して、一時的に撃退してみせたんだけど……そのシールダー、もう魔力が完全に底を突いてるの。もしあのバーサーカーが執念深く追撃して、彼女の居場所を特定しちゃったら――」

 

ジュリアがその最悪の予測を口にした、まさにその瞬間だった。工房の防壁を同期させていた彼女の使い魔の術式回路が、空間の強烈な魔力の歪みをリアルタイムで感知したのは。

 

「ちょっと待って、嘘でしょ……!? ――山の近くの町と、ウチの工房があるこの町の境界線にある空き家。そこで、あのバーサーカーの魔力暴発を検知したし★」

 

「なんだって……っ!? 晃をあんな目に遭わせた奴のサーヴァントが、街のすぐ近くで暴れてるのか!?」

 

情報のタイムラインが一本に繋がり、刹那の内に激しい義憤の火が爆発した。友人の仇であるバーサーカーの暴虐をこれ以上野放しにはできない。そして、主を失って独り戦い続けるその英霊を、黙って見殺しにすることなど、彼の理性が絶対に許さなかった。

 

「あいつらを……っ、これ以上好き勝手にさせるもんか! 宗茂、行くぞ!」

 

「御意っ! 主殿!」

 

「ちょっ、待ってよマスターくん! まだ話し合いが終わったばっかなのに、何突っ走ってんの無知な素人くん!?」

 

ジュリアの制止を置き去りにし、刹那は魔法使い直伝の操作によって指先から青白い微弱電流を爆発させ、宗茂と共に猛然と工房を飛び出した。その可憐な見た目からは想像もつかない野生の片鱗を剥き出しにして。

 

◇真夏の夜の闇が迫る、町外れの古い空き家。かつての主ユーリが遺した『戦場をめちゃくちゃに引っ掻き回せ』という執念の命令(令呪の縛り)だけで辛うじて現界を維持していた大アイアスは、空き家の瓦礫の中で大粒の涙を流して慟哭しながら、黄金の盾を掲げていた。山を降り、ユーリの遺品から拝借したわずかなお金でささやかな食料を買い、飢えを凌いでいたその場所を、ついに覇王ドゥリーヨダナに特定され、再び凄惨な急襲を受けたのだ。

 

「マスターが言うので来てみれば、ハッ、したたかにもこんなみすぼらしい小屋に隠れておったとはな。今度こそその盾を砕いてやろう、トロイアの戦士よ」

 

ドゥリーヨダナの理不尽な巨大な棍棒(ガダ)が、逆境のなかに瞳を閉じかけたアイアスの頭上へと無慈悲に振り下ろされる。

 

バチチチチィィィーーーーーーッッッ!!!

 

その瞬間、夜闇を真っ白に染め上げるほどの青白い落雷が空間を割り、閃光のごとき神速の踏み込みと共に、刹那と宗茂が空き家の瓦礫のなかへと猛然と割って入った。宗茂の名刀の一振りが、ドゥリーヨダナの巨大な棍棒の猛撃を真っ向からメリメリと力任せに弾き返す! 火花が真夏の夜空に烈しく散り、空間が激しく明滅した。

 

「なに!? 2体目のサーヴァントだと!?」

 

驚愕するドゥリーヨダナ。電光の煙が渦巻くなか、宗茂は神速の剣戟を以てドゥリーヨダナの猛撃を鮮やかに凌ぎ、強欲の覇王を一時的に後退せしめる。しかし、生まれながらの王たるバーサーカーもただでは退かない。彼は自らの固有の宝具を駆動させ、空間の歪みから数多の『百兄弟(カウラヴァ)』の軍勢を呼び出し、数的な暴力によって宗茂を圧殺せんと一斉に襲いかからせた。

 

「――そこまでだよ、バーサーカー! ランサー、やっちゃって!★」

 

「応ッ! 我が槍の一撃、受けてみよ――ッ!!」

 

そこへ、刹那たちの後を猛スピードで追いついてきたジュリアの鋭い戦術命令が飛んだ。刹那たちとの事前の戦力確認で近接・遠隔の間合いを完全に共有していたランサーが、百兄弟の出現と同時に自らの必殺の宝具を完全解放。閃光を放つ無数の槍衾が空間を埋め尽くし、呼び出された百兄弟の軍勢を一瞬で串刺しにして、またたく間に消滅せしめたのだった。

 

「チッ……万全ではない体躯で、2騎の英霊を相手にするのは分が悪いか」

 

形勢不利と悟った背後のアルベリヒが即座に令呪を以て撤退を命じ、ドゥリーヨダナはその黄金の霊基を夜の闇へと融かして完全に撤退し、空き家での激闘は一旦の終結を迎えた。

 

◇荒い呼吸のなか、電光の煙が静かに晴れていく。だが、強敵を退けた安堵に浸る暇はなかった。クレーターの底で、黄金の盾の少女の身体は魔力枯渇の臨界点を超え、ほのかに光の粒子となって霧散しかけていたのだ。

 

「大丈夫か……っ!? 諦めるな、君の盾は、まだここで終わらせない!」

 

刹那はなりふり構わず彼女の元へと駆け寄り、その崩れゆく儚い身体を両腕で抱きとめた。その瞬間、彼の少年の脳裏を突き抜けたのは、さっき工房でジュリアが口にしていた魔術の理屈だった。『ウチらは体液交換によって回路を繋ぎ、魔力供給を爆発的に効率化させている』――。(ジュリアさんが教えてくれたんだ、僕と宗茂が愛を求め合うのは、それくらい魔力を求めているからなんだって! だったら、この娘にだって同じことをしてやれば、繋ぎ止められるはずだ……っ!)未知の焦燥とオスの野生の衝動に背中を押されるまま、刹那は自身の唇を、彼女の青白い唇へと強く重ね合わせた。

 

「――っ!?」

 

「え……っ、ちょっと、マスターくん……っ!? ――いや、確かにさっき体液交換は魔力供給を効率化できるとは教えたけど……いくらなんでも思い切りがよすぎでしょ!?」

 

あまりにも大胆で迷いのない、けれど魔術的に正解すぎる濃厚な口付け。その生々しい背徳の神秘を目の当たりにして、見守るジュリアは、自分が教えた理屈をその場で120%実行してみせた少年の思い切りの良さに顔を真っ赤に染め、嫉妬と動揺の混ざった声を漏らして息を呑むことしかできなかった。隣に立つ宗茂やランサーもまた、その凄まじい決断力に呆然と立ち尽くす。刹那は魔法使い直伝の回路を烈しく駆動させ、舌と唇の粘膜の境界を融かすような深い接吻を介して、自身の熱い魔力の奔流をアイアスの胎内へとダイレクトに流し込んでいった。注ぎ込まれる濃厚な魔力によって、霧散しかけていたアイアスの黄金の霊基はみるみるうちに安定を取り戻し、確かな実体を取り戻していく。

 

「……ん、ぅ……っ、は、ぁ……」

 

やがて、吸い上げられる快感と熱いぬくもりに、アイアスはうっすらと、夢見心地のままその美しい瞳を開いた。思考も朦朧とするなかで、視界に映ったのは、自分を必死に救ってくれた少年の姿。女の子と見紛うほどに最高に可憐な、黒髪ショートボブと日食のような瞳。しかし、その深いキスの肉感と、服の上からでも微かに伝わる並の男を超える凶悪なまでに雄々しい性の凶器の威圧感。

 

(おお……この少年こそが。わが盾を預けるにふさわしい、新たなる主人――)

 

ユーリが遺した命令を果たすため、そしてこの狂おしいほど愛しい少年のため。アイアスは上気した肌を真っ赤に染め、消え入りそうな、けれど確かな熱を帯びた声で、刹那を見上げて囁いた。

 

「……少年。……私の、マスターになって……くれませんか……っ」

 

「――ああ。喜んで、君の盾を引き受けるよ」

 

刹那の手の甲に刻まれた赤い令呪のラインが眩く呼応し、異常共鳴の閃光のなかで、二人の間に『新たなる主従契約』の楔が烈しく結ばれたのだった。主を失った黄金の盾が、世界一可愛い容姿に最凶の杭を隠し持った新たな主人と真の巡り逢いを果たし、聖杯戦争という名の残酷な不条理は、予測不能な狂瀾の渦を巻き起こしながら、着実に加速し始めていた。




ランサー登場です。描写不足が不安ですね。すまねえランサー、君もキャラ崩壊させてしまう。
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