ゆるく生きたい貞操逆転モノ 作:ロリ巨乳最高
ルミに婚姻を申し込まれ、それを受け入れたゴウシは体を洗ったり洗われたりをし、ドライヤーでしっかり髪を乾かした後、ようやくホテルの室内に戻って来た。
露天風呂はこのホテルの最上階のみにあるらしく、内風呂とは別で脱衣所が設けられている贅の尽くしっぷり。
前世でもこんな高級なホテルに泊まった覚えはないなとゴウシは今更になって唖然とした。
「旦那様の髪を乾かせる日が来るなんて♡」
この世界の男は基本的に髪が長い者が多い。
これだけ長く手入れをした髪を維持できるほどうちは大事に男を扱っている、と言う囲った女たちの意地の証明みたいなものだ。
肌艶なんかも意識したりする所だが、髪と言うのは一番わかりやすいポイントだ。
また未婚の男性の髪は短めで、既婚者になると伸ばし始める。
長ければ長いほど婚姻歴が長い証明となり、その輪に加わるのが難しいと判断されるとかなんとか。
クリーニングに回された着物ではなく、浴衣を身に纏うとルミはべったりと右腕に絡みついた。
年一で計測する身体検査では180を越え始めたゴウシに比べ、15を迎える目前のルミは小柄に見える。
この世界の性差として男は自宅で守られるものと扱われるため前世より平均身長は少し小さめ。
運動の有無の違いだろう。
かと言って女性がバコンと背がデカい訳ではなく、165前後が多いらしい。
ルミもその平均並み。
成長期に関して“如何に子供を身ごもるか”と言う進化を果たした結果、若年による出産にも耐えられるほどあっという間に女性は成長する……らしいと言うのを通信教育で受けた。
前世に比べて成長痛に悩む女性は多いとか。
そんな成長過程を経る関係か、出産に耐えられる骨盤や子に母乳を飲ませるための乳房など大きめになる傾向があるらしい。
また童貞オークションに入札者として挑むための健康な体を得るため、25以下の女性は特に体型に留意するらしく、グラビアアイドルみたいな容姿の女性が多くなるとか。
前世の男であればこの世界に来るだけでニッコリ。
だが、この世界に偶然来てしまったゴウシは結構えり好みが激しかった。
そのえり好みっぷりはある意味男性として当然のものだとこの世界の女性は受け取るなどとゴウシは思っていない訳ではあるが。
「さ、国の物流を担う水無瀬の誇る能力をもって用意した全国津々浦々の名産を取りそろえた食事です」
「……話してもらわんと食べられない」
「……?」
室内には食事が用意されており、二人分の食事と言うのはあまりにも量がすごかった。
いつの間にやら運び込まれた8人掛け程度の広さの机にはみっしりと料理が並べられていた。
机の前に腰を下ろしてもルミは右腕を放そうとはしなかった。
「婚姻後の初食は妻が夫に食べさせるものですよ?」
「そう……なのか?」
「ええ、水無瀬の伝統となっています」
……所謂ファーストバイト*1の文化みたいなものだろうか。
前世の知識から現状の行為を当てはめればあまり可笑しくないかと言う思考の癖があるため、一般人以上にゴウシは受け入れ態勢と言うものが広かった。
「先ずは汁物で口を潤しましょう」
幸いにしてファーストバイトのひとすくいの量=愛情の大きさ、なんてことはなく標準的なサイズの匙にすくわれて口元に運ばれる。
なお、水無瀬の系譜においては食べさせる品目の多さ=愛情の大きさであると信じられている。
「お、お口に合いませんでしたか?」
「いや、少し沁みただけだ。味は問題ない」
口に含んだ直後、ゴウシは少し眉をひそめた。
先ほどの水無瀬流の宣誓、もといマーキングによる口内の切り傷に少しばかり沁みたためだ。
「気にするな、続けてくれ」
「……♡」
もはや全肯定モードに入りつつあるルミはあっさりと受け入れられたことにまた一つ何かのゲージが溜まった。
ゴウシは日々の食事も悪くはないが、たまにこうして“如何にも”といった雰囲気の料理に心躍っているだけなのだが。
ルミは餌付けするように匙を運ぶ。
自身の庇護下に彼がいるのだとルミは庇護欲を覚えつつ“でもベッドの上ではなすすべなく負けてしまうんですよね”と守るべきものに敗北することに快楽に似た何かを見出し始めていた。
〇 ▼ 〇
「水無瀬家当主に本家次女である水無瀬ルミは桜田ゴウシ殿に婚姻を申し入れ受けて頂いたことをご報告します」
「成った、か」
水無瀬家当主のマナは娘の情事のあったその翌日、陽が昇る少し前にその様子を伺いに再びホテルへ足を運んだ。
ホテルの支配人から娘は無事契りその晩ホテルに泊まったと聞いていた。
もとよりこれが成功しようが失敗しようがマナは気にはしなかったが、吉報とも言えるそれに安堵を覚えたのもまた事実。
こうして座敷の談話室で顔を合わせた娘から縁が結ばれたと聞いて一つ肩の荷が下りたようにも思えた。
「昨日の今頃はしかめっ面をしていたというのに」
「お忘れください。生涯の恥です」
何処か生真面目でどこか抜けてしまっている娘をマナは心配していた。
家のことばかりに気を回し、生き様に我が見えなかったからだ。
だが、今目の前にいる娘は“成った”
婚姻が成ったのもそうだが、女としても。
水無瀬の血筋を聡明するかのように蛟竜は龍へ。
まだまだ幼いが酷く面倒な水無瀬の女らしく成ったのが一目見て分かった。
「それでどうすると決めた?」
「私はこの生涯を桜田ゴウシ殿に捧げることを決めました。無い様に努めますが万が一水無瀬と対する場合私は彼を取ります」
「ん、それでこそ水無瀬の女だ」
それを聞いてマナは怒るでもなく一人前の女の片鱗を見せる娘を誇らしく頷いた。
水無瀬の女たる者家よりも自身で定めた番を生涯大事にするものだと。
「彼がどうするかは分からないが旗を上げると言うのであれば支え、庇護に回ると言うのならば己の身で守れ」
「はい、心得ております」
「ならば良し。水無瀬家現当主水無瀬マナはその婚姻を認める」
「ありがとうございます」
マナは深く頭を下げる娘の頭を撫でた。
「アレも奇縁を運んできたものだ」
「それだけは同意します」
だが、舐めたことをした落とし前だけはつけさせねばならない。
「ですが私の“夫”にちょっかいを掛けられたらもっと悲惨な目に合わせてしまいそうなので……しっかり処してくださいね?」
「……ああ」
顔を上げた娘のその面が自身の母がキレて有無を言わせない時のそれに重なって見えたのを幻視してしまった。
〇 ▲ 〇
婚姻。
書類上同じ籍に入ること。
一般家庭であれば純粋に嫁入りか婿入りかでことが済む。
だが国有保証男児はちょっと毛色が違う。
義務とされる教育機関への進学の際、一定水準以上の成績を残すと新たに“家”を興すことが認められている。
現在の苗字は国有保証男児管理区画の地名を取っているだけに過ぎない。
家を興すことが決まれば自由に姓を定められるのだ。
それには色々と厳格な決まりがあるのでよほどのことが起きなければまずないし、婿入りがベターである。
18歳の成人前に籍を入れても男は元の苗字のまま。
家を興すか、そのまま家に入るかが明確に定められるまでの措置である。
「字の練習をしておくべきだった」
「これからいくらでも教えて差し上げます」
なのでこれは私だけの特別ですね、と副音声が聞こえてきそう。
目を覚ましたホテルの一室に食事の際の机とはまた変わって別の机が運び込まれ、ゴウシは目の前に用意された書類に必要事項を記載し、血判を捺す。
シンプルな婚姻届けのフォーマットに並ぶ夫になる人、妻になる人の文字の下に書かれた左右それぞれ違う文字。
左の夫の欄にはゴウシの固い角ばった文字が書かれ、その隣の妻の欄には大変読みやすい綺麗な字が並んでいる。
「……これ、昨日会った水無瀬家の当主が作った物、だよな」
「ええ、婚姻届けの用紙を作るのも親の務めだと言って」
前世においてもそうだが婚姻届けは基本的に必要事項さえ押さえられていればデザインに自由が許されている。
雑誌の付録で付いてくるような可愛らしいデザインのそれが有名だろう。
現在ゴウシが記載し終わったA3程の大きさの少し厚手の紙にはすべて墨で書かれた様な記載が起こされていた。
その圧に書き損じることを許さないとの圧さえ感じた。
「一対の状態で己の名を書ける日が来ようとは思ってもいませんでした」
一夫多妻が前提のこの世界では一夫一妻の表記で役所にその書類を提出することは女の一つのあこがれらしい。
一番最初に自分がこの相手の伴侶になったのだと言う悦があるとか。
場合によっては同時婚で妻の欄がとんでもない並びになることも珍しくなく、A3で収まっている現状は大変レアなのだ。
「……承認の欄の方には後ほど挨拶に伺わないと、か?」
「新年のあいさつで嫌でも顔を合わせることになりますので」
左は婚姻を行う者、右にはその婚姻の証人として水無瀬家の人間と思われる人の名が4つ並んでいた。
『ふたりとも結婚の意思があり、合意のもとに婚姻をする』その証人だ。
「こちらが母、その次が父、姉、そして母の寄騎筆頭で水無瀬の分家筆頭家系当主の名前となっています」
右に載せられた文字をなぞりながらその名前がどこの誰を指しているのかルミは説明した。
昨日のアレから早朝に合うまでに用意し終えているのが母らしいとルミは苦笑する。
「時期的には盆の集まりが一番近いのですが……新生活の準備が忙しくなりますので」
夏休みで良かったです。
ルミにそう言われ現在が8月2日一般的には夏季休暇に入っていることを思い出した。
新生活の準備、それは婚姻したことで国の庇護から外れ個人の家にその庇護が映ると言うことだ。
そのため今まで使用していたマンションは婚姻が成立してから一月以内に退去しなければならなくなる。
「こちらで代筆できることは行いますがゴウシさんに書いていただかなければならないものも多々発生することをご了承ください」
「そのくらいはする」
もとより私物などあってないようなものだ。
国有保証男児は搾性を熟すことで報奨金として一定の金銭が与えられる。
それは生活費など国に保証されていること以外に仕える金銭で主に娯楽費として使用される。
「あと2日程こちらのホテルに滞在して頂き、その間に水無瀬の屋敷の一つを整えます。住居に求めるものがあれば仰ってください、何でも用意しますよ」
「……贅沢な話だが今使っているパソコンを運び入れる部屋とトレーニングできる環境があるとありがたい」
「その程度でよろしいのでしょうか?」
「それなりに贅沢言っているつもりなのだが」
「その程度なんの問題もありませんよ。ゴウシさんが現在住まわれている環境……国の定めた国有保証男児に配備された環境よりも上等な環境を用意するのは前提ですので」
通ればうれしいな、位の気持ちでゴウシが口にすれば要望らしい要望はないのかとルミは首を傾げた。
「そう言われると……後は君を抱くベッド、だろうか」
「……キングサイズの上等なものを既に発注させて頂いてます」
「そうか」
後必要なもの、と言われれば標準として用意されたシングルベッドよりも大きめの寝床が欲しかったくらい。
ルミからすれば気まぐれに抱いてもらえればうれしいと自身の入り込む隙間が少しでもできるようにとベッドの用意もまた前提であった。
そんな考えであったルミは抱くことが前向きな事項として存在していることを聴かされ顔を赤く染めた。
「あと、専任官はどうされますか?」
「任せる」
国有保証男児に就く男児専任官の雇用について、それもまた婚姻を行う女性側の悩みの種である。
「私は引きこもりで外出の回数自体片手で数える程度、食事を用意してもらう際も顔を合わせることなかったしな」
「彼女たちを女性として想っている、と言う訳ではないのですね?」
「ひどい話だが業務を熟してもらっていたとは思うが特段の思い入れはない」
言葉の通りゴウシは引きこもりで活動範囲は管理区画のマンション内のみ。
容姿が容姿であったことから向こうから積極的に関わってこようともしなかった覚えがあった。
あくまで彼女らとは事務的な関りだった、と思う。
特にゴウシの記憶にある護衛の男児専任官と久方ぶりに顔を合わせた時の狼狽えっぷりは笑ったが。
仕事をするにしても最低限取り繕える人であってほしいのが本音だ。
「承知しました。一応彼女らと面接を行い雇用の是非は問わせてもらいますね」
「ああ」
僅かながらに眉をひそめたのをルミは見逃さなかった。
男児専任官の任期は3年であるため、有無を言わせず振るいにかけるにはちょうどいい時期ではあるとも考える。
家の繋がりどうこうはひとまず置いておくにしても彼の守りはしっかりとしておきたいルミとしては“護”の緋淀と“緑”の森羅から人を集めることも視野に入れることにした。
「それでは身支度を整え一度役所に提出に行きましょう」
晩のうちにクリーニングされた着物と、自身の趣味で用意したスーツを並べながらルミは次の行動を促した。