女友達がパパ活やってるらしいのでダメ元で頼んでみたら 作:東雲(しののめ)
女友達がいるのは素晴らしいことだ。
学校生活を楽しく送れるのはもちろんとして。
性別が違うだけで物の見方が結構違うので、一緒にいると自分の視野や価値観が広がる気がするから。
……なんて言うと真面目ぶっているみたいだが。
僕は平凡な高校二年生だが、性欲ありあまる十代男子でもある。
女友達がいると素晴らしいと思うのには、実はもっと大きな理由があって――
「――はよーっす。オタクくん元気―?」
早朝の教室に一番乗り。
自分の席で本を読んでいると、クラスメイトの軽快な挨拶が飛んできた。
「あ。おはようございます。
「はよはよー。てか今日めちゃ暑くね? まだ梅雨明けたばっかりなのに」
彼女の名前は早瀬セナ。
特徴としては長い金髪やキラキラの爪――
緩めにしたネクタイは谷間をのぞかせ、スカートはパンツが見えそうなくい短い……と、彼女を一言で表すなら『ギャル』がふさわしい。
見た目は若干クール風なものの、中身は明るくてノリの良い美少女だ。
そして同時に――僕の隣の席の人物でもある。
「で、オタクくん、朝からなに読んでんのー?」
身をよせて、横から覗き込んでくる。
その際に金髪がさらりと揺れて、ほんのり香水の匂いと、女性特有の甘いフェロモンが鼻腔をつく。
これだけでもう男心がくすぐられるわけだが。
――
これが、女友達がいると素晴らしいと言った最大の理由。
――エッチなイベントを、ときどき味わえること!
友人として会話をするだけでも楽しいに。
その上さらに、偶然とはいえ、今のようにおっぱいも味わえる。
ちなみに早瀬さんはパンチラも多く、隣の席になってから何回Tバックを見せてもらったことか……。
そういうわけで、僕は真面目でも達観している人間でもない。
女友達は、己の視野を広げてくれると同時に、こういう役得イベントを生じさせてくれるから素晴らしいのだ。
これは相当キモい考えだと自覚しているので、もちろん人には言わないが……。
「あ! これ今日発売の『グラッフラーズ
「は、早瀬さん、声が大き……まだ他の人はいないけど……」
「ごめごめ。学校に漫画持ってくるのはマズイもんね」
「うん。ただコンビニで見つけて、どうしても早く読みたい欲が抑えられなくて――」
「分かるよー。今の刃鬼は特に良いとこだし。黙っとくから後であたしにも貸してよ?」
もちろんだと頷く。
なにせ正反対な僕と彼女、日陰者とギャルが友人になれたのも――お互い大の漫画好きだったから。
昨今みんなの趣味は、切り抜き動画を観るとか、SNSで暇潰しとかばかり。
僕たちのようなガチの漫画好きは減っているのが現実で、隣席になってすぐ意気投合したものだ。
「校則でダメだと分かってても、漫画への愛ゆえに漫画を持ってきちゃう。オタクくんのそういう時々ぶっ飛んでるとこマジ好きだわー」
それから早瀬さんは席につくや、鞄をゴソゴソと漁る。
そして中から取りだしたのは一冊の本で――
「友達なんだから、もらいっぱなしは良くないよね」
「そ、その本って、まさか先週発売の復刻版『超・
「声でかいってー」
「す、すいません……でも書店でもネットでも即完売。僕も買えなくて……」
「ふふーん。二つ隣の県まで探しに行ったんだよー?」
そう言って早瀬さんは、その本を渡してくる。
どうやら僕が本を貸すので、そのお返しとしてこれを貸してくれるらしい。
「ありがとうございます。でもそんな遠くまで行って大変じゃなかったですか?」
「時間はそんなに。新幹線とタクシーをガンガン使ったから」
「し、新幹線……タクシー……?」
漫画への愛すごいな、ギャルのノリの良さってすごいな、と思いつつ。
そうなってくると、僕に簡単に貸してくれたこの一冊のために、一体いくら使ったんだろうと申し訳なさを感じてしまう。
「もしかして、早瀬さんちって大富豪なんですか……?」
「あはは。んなわけ。全然ふつーだよ」
「それなら尚更お財布事情が……しばらく大変では?」
この学校はバイト禁止だし。今月はもう他の漫画は買えないのではと心配する。
「よゆーよゆー。あたしパパ活してるし」
「え。パパ活……?」
「あ――――」
気が緩んで言ってはいけないことを言ってしまった。
そんな表情をして、早瀬さんが慌てて口を押さえる。
しかしもう遅い。僕は既にその秘密を知ってしまったのだから。
「「…………………」」
微妙な空気になって、無言の時間が数秒続く。
――早瀬セナはビッチである。
実は、そういう噂を周りから何度も聞いていた。
僕は陰が薄いがボッチではない。
数は少ないものの、学校内に他にもちゃんと友人はいるのだ。
彼らの中に早瀬さんと同じ中学の人がいて、彼女に経験豊富な過去があったとは教わっている。
「えっとね、そのぉ……なんというかぁ……」
早瀬さんが髪先を弄りながら、気まずそうに言い訳を探すが。
「僕は気にしません。今聞いたことを誰かに言ったりもしませんよ」
「え」
「なので、これまで通り仲良くしてもらえると嬉しい……です」
僕は身の程を
ギャルな美少女と恋人関係になりたいなんて、微塵も夢見ていないし。
ビッチな秘密を知った程度のことで、貴重な漫画仲間を失いたくはない。
「やばいねオタクくん……」
「なにがです?」
「ふつードン引きする場面じゃない?」
でも自分は親でも先生でもなければ、警察官や裁判官でもない。
あくまでクラスメイトで、あくまでただの友達。
そんな僕が上から目線で、偉そうに注意するのはお門違いってものだろう。
「そりゃ驚きはしましたけど……」
「あれか。前からあたしがそういうヤツって知ってはいた感じか」
「まぁ……早瀬さんは目立ちますからね……」
「あちゃー。でもそれを知ってて仲良くしてくれてたんだ。あんがとね」
僕は苦笑いして場を収めようと努める。
早瀬さんも納得しつつ、まだどうしても難しい顔をしているので。
「…………いっそ、しっかり打ち明けた方が楽だったりします?」
臭い物に蓋をするなんて格言があるが、それは一番良くない。
問題を先延ばしにしているだけで、根本が何も解決していなから。
中途半端に秘密を明かしてどうしようというぐらいなら、ぶちまけてスッキリした方がお互い楽だろうと思ったのだ。
「一理あるね。でもしっかり打ち明けるって言われてもなー……」
何を話せばいいものか、と彼女は首を傾げる。
「じゃあオタクくんが何か質問してよ。それにしっかり答えるからさ」
「僕から質問……うぅん。第一にパパ活ってなにするんです?」
「おじさんとデートしたりご飯食べたりしてお金をもらう!」
「ほ、本当にしっかり答えてくれますね……。ではパパ活する目的は?」
「効率よく稼ぐためだね。JKはたくさんお金かかるの」
それから僕も、未知のパパ活世界に興味が湧いてきて、色々質問。
彼女は素直に全部教えてくれて――
「……ちなみに、その……いわゆる……あの……」
「抜きまでしてるかって話?」
「…………で、です」
「してるよ」
し、してるんだ……!
頭ではそうだろうなと予想していたけども……。
「でもあたしはプチのみ。一番多いのは口での奉仕かな。あとは手コキかパイズリかだね。いくらお金積まれても本番はぜーったいにしないよ」
「本番はしない……極論ですけど百万とか積まれても……?」
「一億でも無理だね。とにかく
お金を貰う以上プロとして仕事はする、とカラカラ笑う。
実際彼女は、抱えていたものを吐き出せた感じで、とてもスッキリした雰囲気になった。
ただそれに対し、話をじっと聞いている僕の股間は――
「あ、あくまで興味本位で訊きたいんですけど……」
「んー?」
「その、プチとやら……手とか口とかでするのって、どれぐらいの料金で……?」
「一万だよ」
「い、いい、一万!?」
僕は学生で、風俗など行ったことないから相場は知らないけど。
現役JKのギャル美少女が、一万で抜いてくれるって……これ、だいぶお得なのでは? そんなことないのかな?
「ちな、おっぱいやお尻も自由にお触りもオッケーだよ。キスは……あんましたくないんだけど、渋々応じるって感じ?」
絶句しているところ、僕の質問にちゃんと答えようと、詳しく解説してくれる。
しかしその半分以上は耳に入ってこない。
己の胸中を支配していた感情は一つ。
――僕も一万払ったら、彼女はしてくれるんだろうか?
友達としてそんなことを頼んでいいのかという迷いもあるが。
そもそもの問題として、高校生の僕は、一万円をポンと出せたりしない。
会社で働き、たくさん稼いでいる大人たちとは、資金力が違いすぎる。
――貯金をかき集めれば、今後買い物をしなければ、なんとか数回はできるか?
遊びも漫画もやめれば、一ヶ月に一回ぐらいは相手してもらえるかも。
いやいや、それじゃあ漫画を読むことができない。
早瀬さんと趣味の会話することも難しくなっていくだろう。
「――黙ってどーしたん?」
彼女は前屈みになって、長い谷間を見せつけながら身を寄せる。
「やっぱビッチだって引いた? 変に気をつかわなくてもいいよ?」
「い、いえ! そういうわけじゃ……ただ……」
「あー。もしかしてオタクくんもパパ活してみたくなっちゃったとかー?」
「………………」
「あはは。なーんてね。冗談だよ」
冗談でなく僕は真剣に考えていた。
一万、友情、一万、友情……。
ここで身を引くのがもっとも安牌な選択、それは分かっている。
しかし、それでも――ここで勇気を出さなかったら一生後悔する気がした。
「早瀬さん。僕も……抜きって、お願い……でき、ますか?」
一生分の勇気を使って、ダメ元でお願いしてみる。
ただ僕が本当に頼むと思わなかったのが、早瀬さんは鳩に豆鉄砲という表情に。
「……マジで、言ってる?」
「は、はいっ!」
「でもあたしら友達だし――」
やはり断られるかと覚悟した。
ただ彼女は、ここに来て、ようやく僕の股間の変化に気づく。
さっきから話を聞いてガン勃ち、ズボンに大きなテントを張っていた。
「これは本気だね」
「ほ、本気です!」
「うーんどうしよ……それほっとくのは可哀想だし、普段仲良くさせてもらってるし…………ここで断るのはノリ悪い、か」
「と、ということは?」
「いーよ! やったげる!」
やったああああああああああああああああ!
と、声には出ささないが、心の中でそう叫ぶ。
「そうと決まれば……旧校舎のトイレとか、
「え。それってつまりこれから……」
「うん。ホームルームまで結構時間に余裕あるからね。つかオタクくんの顔に『早くヤリてー!』って書いてあるもん」
「ぅ…………」
「恥ずかしがんなくていいよー。男ってそういうもんでしょー?」
思わず俯いたところ、彼女は快活に笑ってくれる。
それから僕の耳元に近づくや、甘く吐息をかけて小さく囁く。
「――オタクくんのガチガチのそれ、あたしがスッキリさせたげるね」