※この作品はR-18です。

TS獣人の吟遊詩人お姉さんが主人公っぽい少年を襲ってしまった話。     作:ソイレント・グリーン

1 / 3


おねショタ…ではない…?




TS獣人の吟遊詩人お姉さんが主人公っぽい少年を襲ってしまった話。

 

 月明かりさえ届かぬ森。僕はその木々の間くぐり抜けるように駆けていた。

 

 もう二時間は全力疾走している。流石に息が上がってきた。けれど止まるわけにはいかなかった。

 

「■■■■■ッッ!!!!」

 

 背後からは闇そのものが形を成したような魔獣が、咆哮を上げながら追いかけてきている。

 

 ちょっと近道して、街道から外れてしまったのが運の尽きだったかな。

 

「はっ…はっ…君〜ちょっとしつこすぎなぁい…?」

 

 僕これでも逃げ足には自信あるんだけどな〜。

 

 せっかくだし、逃げている間に軽く自己紹介しよう。

 

 僕の名前は「エラ」

  おっと、魚のえらの事じゃあないよ。僕の故郷の言葉で、旅人という意味さ。

 

 僕はちょっとばかり特別で、転生者ってやつだ。

 

 前世ではゲーマーモヤシ男だったけど、今世は猫の獣人娘!

 この白金色のショートヘア!猫耳猫しっぽ!出るとこ出て、締まるとこ締まったプロポーション!う〜ん!僕ってば超美人!!

 

 前世のことは性別とか性格、家族の顔くらいしか覚えていない。その他は虫食いされたみたいに曖昧だった。

 

 けれどゲームやオタク趣味だけは別。人生賭けるレベルでハマってたから、結構はっきりと覚えていた。

 だからファンタジーの世界に転生した事に気づいたとき、すごく感動した。

 しかも獣人だよ!?いかにもじゃないか!テンション上がるじゃないか!!

 

 ただ、転生者である事はデメリットでもあった。

 

 価値観とか当然のように周りとズレてたし、女の子なのに男みたいな行動ばかりしていたから、変人扱いされていた。

 

 獣人は他の亜人種より身体能力に優れている。だから、ほとんどが肉弾戦を主とする戦士だ。

 それは理にかなっている。だが僕は、MMOでは決まってバード──吟遊詩人が好きだった。

 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから…やりたいことをやってみよう!そう思い、僕は獣人でありながら吟遊詩人を目指したのだ。

 

 その結果、やんわりと村から追放された。

 

 元々変だった奴が、戦士にもならず…家の仕事もせず…ただ詩を歌って過ごしていたのだから、当然だ。

 裕福な村でもなかったので、そんなプー太郎を住まわしている余裕もなかったんだろう。

 

 そんなわけで僕は、旅の吟遊詩人として世界を放浪しているのだ。

 

 まあ、その旅も今、幕が閉じようとしているのですが…。

 

「♪……♩♪~♬、♪~~」

 

 リュートを弾き、詩を紡ぐ。

 何度目かのバフの重ねがけで、脚の痛みを無くした。そろそろ魔力が底をつく。

 

 走っている方向も自信なくなってきたなぁ…。城塞都市に向かっていたはずなんだけど一向に着かないし。

 

 途方に暮れていると、獣人の優れた五感が水の流れる音を捉えた。

 

 川…? この近くで川ってドゥアト川くらいしかない…ってことは、都市とは全くの逆方向に走ってたってことじゃないか!我ながら方向音痴にも程があるね…。

 

 だけどこれは僥倖だ。水があれば分身を作れる…!

 分身を囮にすれば、なんとか逃げられる時間は稼げるだろう。その隙をついて、川を下って街道へ戻る…! そうすれば、もしかしたら他に冒険者がいるかもしれない…!

 

 かなり運任せな作戦だけど…これしかない。全力を尽くして川へダッシュするのみ…!

 僕はリュートを構え、分身ぶんの魔力だけ残し、自身へバフをかけた。

 

「♫〜♪!♬〜〜…!!」

 

 数秒しか持たないけど、防御と速度全振り…!木に正面衝突さえしなければ、障害物なんて無視して最短距離で川へ向かえる…!

 

 加速する。身体中に枝葉が当たるが、気にする必要は無い。

 

 あと少し…!

 

 奴の唸り声が、すぐ背後まで迫ってきている。

 

 ばっ…!と視界が開けた。

 

 川だ!到着した!

 

 分身を作るため、リュートに手を添えたが──。

 

「わぴゃあ…!?!?」

 

 思いっきりコケた。ちょうどバフが解けたのだ。

 

 加速後の急減速…当然と言えば当然である。だがその衝撃で集中が切れ、痛覚遮断のバフを解いてしまった。

 

「っ…!!?! っ…たぁ〜〜〜…!!」

 

 脚部に激痛が走る。

 二時間走り続けたダメージが一気に襲いかかってきた。

 これでは動けない。

 

 くそ〜…川は目と鼻の先なのに。

 

 大地が揺れ、重い音が響き渡る。奴が追いついたんだ。

 

「やあ…さっきぶり〜…調子は…悪くなさそうだねぇ…?」

 

 苦し紛れの軽口。心の中は恐怖でいっぱいだ。

 でも冒険者の最期なんて、こんなものなのかもしれない…。

 

 奴の鋭い爪が迫る。

 僕はせめてもの抵抗として、残った魔力で防御バフを展開した。

 

 思わず目をぎゅっと閉じる。

 

 鮮血が舞う。

 

 …ただし、その血は僕のではない。

 

 奴の血だった。

 

「へっ…!?」

 

 奴の体が脳天から真っ二つに分かれ、左右へと開くように倒れる。

 

 月明かりに照らされ、その向こうに奴を両断した人物が姿を現した。

 

「おぅ!大丈夫か?」

 

 小柄な…少年だった。

 

 僕よりも背が低い。灰色で、何故か斜め上にツンツン跳ねた髪。

 青い瞳は月光を反射して、キラキラしている。

 

 血まみれだっていうのに……纏ってるオーラがどう見たって……。

 

「しゅ…主人公……だ……」

 

「何言ってんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ!助かったよ少年!」

 

「いきなりテンション高っ…! 意外と元気だな、あんた」

 

 僕は痛みに震える足を無理やり立たせ、できる限り堂々とした態度をとった。

 

「しかし僕を助けるとはセンスがいいね君!」

 

「いや…襲われてたら助けるだろ…」

 

「今ならこの吟遊詩人である僕が! 君を吟じてあげるけれど!?」

 

「別にいいって」

 

 くぅ~少年からの呆れた視線が痛いねぇ!

 

 少年は両手に持っていた双剣を鞘に収めた。

 

 双剣使いなのか。うんうん、ますます主人公っぽいよ。

 

「じゃあ俺、行くからな」

 

 えっ!?

 

「待ち給え少年…!」

 

「なんだよ」

 

「自慢じゃないが僕は戦闘能力が全くない。このまま置いていかれると死んじゃうぞ!」

 

 今だって立ってるのが精一杯だしね!

 彼は面倒くさそうな顔をして、小さくため息をついた。

 

「わかったよ…確かにせっかく助けたのに死なれたら寝覚め悪いしな」

 

「感謝しよう…! ではおんぶしてくれ!実はもう歩けないのさ!」

 

「堂々と言う事じゃねぇだろ…」

 

 そう言いながらも彼は僕を背負ってくれた。

 

 結構体格差あるのに、ひょいと持ち上げられてしまう。さっきの一刀両断といい、やはり中々の強者らしい。

 

 後頭部におっぱいが押し付けられて結構苦しいけど、まあ役得と思ってくれ。

 

 街へ向かう道中、僕たちは色々な話をした。

 

 名前は「クライ」

 ずっと北西方から一人で旅をしているらしい。

 

 北西かぁ…あそこら辺はここ数年戦争続きだから、近寄らないようにしていたんだよね。

 

「もしかして、戦火から逃れてきたのかい?」

 

「そういうのじゃないんだ」

 

 それ以上彼は語らなかった。

 

 踏み込まれたくない事なのかな。

 

 凄く気になったけど、他の話題へ切り替えた。

 

「そういえば、あの魔獣を斬った一撃、実に見事だったよ!有名な流派とかだったり?」

 

「戦い方は独学なんだが…そんなに良かったか?」

 

 こっちからは表情が見えなかったが、声色は明るい。

 戦闘の腕を褒められるのは嬉しいようだ。男の子だねぇ。

 

 街へ着いたのは数時間後だった。

 

 少年はまだまだ余裕そうだったけど、正直申し訳ない気持ちでいっぱいだったからすぐ降りたよ。

 さすがに数時間も経てば、歩けるくらいには回復してたしね。

 

「じゃあなエラ!もう変な寄り道すんなよ?」

 

「肝に銘じるとも!そして君の旅路に、風の祝福がありますように」

 

 そう言って僕たちは別れた。

 

 

 

 少しあとに宿屋で再会したけど…。

 

 なんでや。

 

 

 

 

 

 街ではしばらくフリーランスの探索者として行動していたんだけど…すぐにパーティを組むことはできなかった。

 

 獣人だから肉弾戦を期待されるんだけど…戦闘は一切できない吟遊詩人とか、まともなパーティからしたらお荷物でしかないしね。

 

 だから戦闘以外の依頼をこなしつつ、街で詩を歌って日銭を稼いでいた。

 

 そんなある日、宿に泊まっていた彼を見つけ、パーティを組んでくれないか頼み込んだんだ。

 

 恥を捨てて足にしがみつきながら頼み込むと、彼はしぶしぶ了承してくれた。ゴネ得ってやつだね…!

 

 彼は単独でも強い…!

 強めの魔獣でもサクサク倒してしまう。

 

 そこに僕のバフが合わさると、もはや無双シリーズみたいに敵が蹴散らされていく。

 

「これ…すげぇな、相当力が上昇してる気がする」

 

「ふふふ…だろう? 詩を紡がなければならない分、そこらのバッファーなんかより強力なバフを掛けられるのさ!」

 

 それに加えて、僕は回避性能が非常に高い。獣人の優れた身体能力と五感をすべて逃げに振っているからね。

 

 少年が戦って、僕がバフをかけながら逃げ回る!実に良いコンビじゃないか!?

 

「いっそずっとパーティを組んでくれても良いんだけどねぇ!」

 

「旅してるから流石に無理だって」

 

 うーん無理かあ。

 と言いつつも、彼はこの街にいる間僕と行動を共にしていた。

 

 依頼中何度も助けられたし、逆に助けたこともあった。

 

 依頼が終われば一緒にご飯を食べたりもして、彼も少しずつ僕を信用してくれたみたいで、少しずつ自分自身のことについても教えてくれるようになった。

 

 亡国から来たとか、どこに向かっているとか。

 相変わらず肝心なところは教えてくれなかったけど…まあそれはおいおいね。

 

 一緒に村の祭りを邪魔する強力な魔獣を退けた事もあった。

 

 かなり苦戦はしたけれど、誰一人犠牲者を出さずに依頼を達成できたし、彼の方は村長の娘から惚れられていた。本人はまったく気づいてなかったけど。

 

 彼はやはり主人公力が高い。

 

 魅力的だ。

 遠巻きでいいから彼のストーリーを見届けたい。

 今さらながら吟遊詩人らしい…いや、オタクとしての興味が出てきてしまった、かな?

 

 

 

 

 

 数ヶ月後。

 

 結局僕は彼の旅について行く事にした。

 勝手にだけどね。

 

 ポジションとしては…毎度、章の終わりにひょっこり現れて、締めの言葉を紡ぐ役、的な…?

 

 いやっ…!手助けはするよ…? 適当なタイミングで遠くからバフを掛けたりとかね。

 

 最初こそ彼は鬱陶しそうにしていたけど、ある時から慣れてしまったのか、普通に受け入れてくれた。

 

 僕の粘り勝ちだ。

 

 長いこと一緒に旅(ストーカー)をしていると、流石に彼の目的も何となく分かってきた。

 

 邪教の打倒?もっと正確に言えば、復讐だね。

 うん、それも主人公っぽい。

 

 僕も殆ど知らなかったんだけど、この邪教ってのが案外世界中で暗躍してるらしい。

 大体の戦争の発端には、奴らが噛んでいるみたいだ。

 直接聞いたわけじゃないけど、多分彼の国も唆され、その結果亡国になったのだろう。

 

 彼の旅路では、同じ境遇の復讐者と出会うことも多かった。

 

 元聖職者の男は、自国民すべてを寿命に変えた国王に復讐しようとしていた。

 真っ赤な長髪を揺らす暗殺者の女性は、姉を喰らった、美に執着する女帝を討とうとしていた。

 邪教に洗脳されていた聖女は、彼らの実験の犠牲になった人々の意思を継ぎ、組織を壊そうとしていた。

 

 案外ダークファンタジーなのかもしれない。

 

 彼ら彼女らは皆、暗い怨嗟の炎を瞳の奥に燻ぶらせていた。

 

 だからこそ、少年…クライは異質だった。

 

 彼の目的は復讐であると同時に、邪教に取り込まれた父への介錯でもある。

 

 心を覆う怨嗟の炎を振り払い、あくまで己の正義に従って剣を振るう。

 

 特別明るいわけではない。けれど、彼の放つ淡い光は、他の復讐者の心をも照らしていった。

 

 今では彼ら三人、クライのパーティメンバーだ。

 

 こういうのでいいんだよ、こういうので。

 主人公ってのはこうでなくちゃあね。

 

 あと、ラブコメ展開が全然発生しないのも僕的高評価ポイントだよ。

 

 暗殺者ちゃんは精神がクソガキすぎるし、聖女ちゃんは真面目すぎるから、恋愛には発展する気配がまるでない。

 僕は冒険ファンタジーには恋愛要素は要らない派閥の人間だからねっ!

 

 特に彼のような活発主人公には、最後まで純粋であってほしい(過激派)

 

 僕の中の良くないオタクがちょっと顔を出しつつも、非常に充実した生活を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 古代都市が邪教の拠点になっている──そんな情報が入ってきた。

 

 なんと国主導の制圧作戦が行われるらしい。

 正規軍に加え、依頼を受けた探索者部隊まで投入される大規模作戦だ。

 

 もはや小規模な戦争じゃないか…!

 これはすごいことになるぞぉ!

 

 僕はすかさずに少年たちに情報を流した。

 もちろん参加するらしい。

 

 え?僕も参加するよ?

 だって、彼らの活躍を一番近いところで見ていたいからね。

 

 

 

 当日。

 

 設営された仮拠点は、大勢の人でごった返していた。

 

 こんなに騒がしくて大丈夫なのかなぁ…?

 隠された拠点とはいえ、流石にバレるんじゃ………おっ、いたいた。

 

「やあ少年!奇遇だねぇ」

 

「エラ…! お前また…今回はマジで逃げとけよ!」

 

「何故? こんな盛り上がるイベントで僕だけ仲間ハズレ?」

 

 僕はわざとらしく自分の身体を抱き、悲しそうな表情を作る。

 

 そんな面倒くさそうな顔しないでくれよ。

 

「他の参加者は報酬目当てだから自己責任だけどさ…仮にも知り合いで、俺たちに着いてきてるだけの奴が危ない目に遭ったら、ちょっと嫌だぞ…」

 

「おや〜…??? “ちょっと”…??? ちょっとだけなのか〜い???? 悲しいねぇ涙がでちゃうねぇ…」

 

「あーっ!!面倒くせぇ!! わかったよ! 勝手にすれば良いよもう!!」

 

 頭をガシガシ掻きながら、彼は肩を怒らせて行ってしまった。

 

 ちょろいね。

 

 

 

 しばらくして夜になり、作戦が開始された。

 

 事前の作戦説明通り、正規軍も探索者たちも連携して動き、実に手際よく邪教徒を制圧していく。

 

 拠点というだけあって数はかなり多い。けれど、一人ひとりの質が悪い。素人から毛が生えた程度の魔法使いばかりだ。

 

 少年たちのパーティは、かなり前線で戦っていた。

 相変わらず凄まじい強さだ。これは夜が明ける前にかたが付きそうだね。

 

 その時だった。

 

 邪教徒たちの焦ったやり取りが、たまたま耳に入る。

 

「このままでは…!」

 

「魔教導師様の魔本を使え!そうすればコイツラを一人一人やれるはずだ!」

 

「我々だけでは発動まで時間が…!」

 

「マグスは何処に!マグスがいればあんな奴らッ!」

 

 魔教導師…魔本…マグス…?

 全部聞いたことのない単語だ。

 

 でも、『一人一人やる』ってことは、つまり分断するつもりなのかな?

 

 だったら僕がやることは一つ。一人一人を一騎当千にすることだ。

 

 リュートを弾く。

 

 紡ぎ上げたのは、戦士王の英雄譚。

 

「♪~~♪……♪♬~~!!!」

 

 味方たちが、赤く燃え上がるようなオーラに包まれていく。

 

「おっ!?なんだこりゃ!身体の底から力が沸き立つみてぇな…!」

 

「す、すごっ…これならいくらでも…!!」

 

 効果は永続ではないものの、かなりの魔力を使った。少なくとも一時間は切れないはず。

 

 僕だって成長したのさ! 近接戦闘は未だにからっきしだけど……。

 

 その場にいる皆が勝利を確信し、邪教徒の切り札を発動さえさせずに終わるはずだった。

 

 たった一人の魔導師が現れるまでは。

 

「なるほど。実に優秀な強化付与術師がいるようですね」

 

 深淵の底から這い上がってくるような、背筋が粟立つ声。

 空気そのものが重くなったような圧迫感

 

 さっきまで余裕を失っていた邪教徒たちが、一斉に歓喜し、崇め始める。

 

「マグス!マグスよ…!帰ってきて下さったのですね…!」

 

「おお…! 魔神様のご加護が今ここに…」

 

「我らを…お救いください…マグス…!」

 

 現れたそいつは、身体は人間のそれであるというのに、本来頭がある場所には天球儀のような構造体が浮かんでいた。

 その異形はどこからともなく本を取り出し、静かに詠唱を始める。

 

 それを阻止しようと、元聖職者──モンクさんが飛び出した。

 

「魔導師ッ…! ここで仕留める…!!」

 

「一手遅い」

 

 魔力が爆発する。

 地が割れ、紫炎が噴き出した。

 

 これ…結界か…!

 

 紫炎を纏った亀裂が空中へと伝播し、空間そのものを切り離していく。

 

 逃げられない…! 分断ってこれのこと!?

 っていうか僕一人…!? やばい、戦闘できないのに。

 

 完全に分断される──その瞬間だった。

 

「エラ!!」

 

 紫炎の防壁をこじ開けるように、クライが飛び込んできた。

 

 た、助かるけど…僕の所に来てしまって大丈夫なのか…!?

 奴を倒すなら、仲間と一緒にいた方が良かったんじゃ……。

 

 クライは戦力としてかなり大きい。なのに、こんなところに閉じ込められるなんた、あまりにも勿体ない。

 

 だがその心配は、杞憂に終わった。

 

 空間が歪む。

 

 まるで壁紙を破るように、異形の頭部がこちらへ侵入してきたのだ。

 

 マグスと呼ばれていた魔導師…どう見ても強キャラ感だし…。

 僕と少年二人だけでやれるのか…? いや…僕は足手まといかな。

 

 奴はキリキリと駆動音を鳴らしながら、僕へ視線を向けた。

 

「貴方、魂と肉体がズレていますね」

 

 少年は僕の前に出て、剣を構える。

 守ってくれているのだろう。けれど僕は、その言葉に動揺して戦闘態勢を解いてしまった。

 

 魂と、ズレてる…?

 それはやはり、転生者だからか…?

 

「そのズレ、私が直して差し上げましょう」

 

 魔本が紫色の光を放つ。

 同時に、僕の身体を燃え上がるような激痛が襲った。

 

「ぐっ…! あぁぁ……!!」

 

「お前、何を…!」

 

「魂の形が肉体に合うよう変形しているのですよ。かなり苦しいでしょうね」

 

 クライが奴へ斬りかかる。

 しかし、ひらりひらりと躱され、紫色の外套が揺れるだけだった

 

 頭の奥で、外しちゃいけないストッパーみたいな何かが壊れていく。

 頭痛がする。

 

 これ…これが、魂が変形する痛みなのか…?

 

「少々細工をさせていただきました。獣人としての本来の姿を取り戻せるようにね」

 

 身体が勝手に動き始めた。

 普段使わない筋肉が無理やり活性化していくような感覚。

 

 あーなんか、イライラする。

 動くもの全部が、自分の敵に見える。

 

 自分自身を止められない。

 気付けば、一番近くにいたクライへ攻撃を仕掛けていた。

 

「うおっ!? 何すんだ!!」

 

「では私はこれで」

 

「おい!エラを元に戻してけよ!」

 

「私としては、彼女をここに閉じ込めておければそれで良いのです。後はお二人でお好きに過ごしなさい」

 

 再び空間が裂け、奴は姿を消した。

 

「マジかよ…! 目ぇ覚ませ!」

 

 クライの声は届かない。

 

 獣人本来の武器である爪を振るい、目の前の動くものを排除するために攻撃を繰り返す。

 

「すまん!落とすぞ!」

 

 クライは背後へ回り込み、腕で首を締めて意識を落とそうとした。

 

「ぐぎっ…!!ガッ……!!」

 

「大人しくしててくれ!」

 

 意識が遠のく。

 

 視界がぼやけ、ゆっくりと暗転していく。

 

 そして僕は、深い眠りへ落ちた。

 

 

 

 

 

 

「あれ…僕、何してたんだっけ…」

 

「起きたか…」

 

 目を開けると、警戒マックスのクライがそこにいた。

 

 な、なんでそんな危険物を見るような目で僕を……?

 いや……だんだん思い出してきたぞ…。

 

 そうだ…僕、理性を失ってたんだ。

 

 あいつが僕のズレを直すとか何とか言って、魔法を掛けて……そのあと、クライに襲いかかってしまった。

 

 でも今はもう大丈夫だ。痛みもないし、理性だってちゃんとある。

 

「ご、ごめんごめん、迷惑をかけてしまったみたいだ」

 

「……もう大丈夫なんだな?」

 

 僕はリュートを軽く弾いてみせた。

 理性なかったらこんなことできないだろうし、証明になったかな?

 

 クライはじっと僕の様子を見つめたあと、止めていた呼吸をようやく思い出したみたいに、大きく息を吐いた。

 

「はぁぁ〜〜……良かったぜ、本当に…あのままだったらどうしようかと…」

 

「いや〜面目ない…」

 

 気を失ってからどれくらい経ったのか分からないけど、瞬間的な狂化を掛けられていたんだろう。

 

「………身体とのズレが直ったって…どういうことなんだろう…?」

 

「今から近接職に転向したりしてな」

 

 お前の攻撃めちゃくちゃ軽かったけど。そう言って、クライはニヤッと笑った。

 しょうがないだろう?戦い方なんて分かんないんだし。

 

「しかし…閉じ込められてしまったね…どうしようか」

 

「お前が寝てる間も色々やってみたんだけどさ、何も効かねぇんだよこの炎の壁」

 

 困ったね…。

 

 僕を隔離したってことは、それだけ僕のバフを脅威だと判断したってことだ

 僕が戦線に戻れば勝率がぐんと上がるはず。逆に言えば、僕がいなければ向こうが勝つ可能性もある。

 それに、ここにはクライまでいる。

 早く戻らないとまずい。

 

「せめてあの野郎が戻ってくればな…」

 

「それは無いだろうね…ここまで無力化したんだ。放置安定だよ…」

 

「くっそ〜!!」

 

 拳で地面を叩き、悔しがるクライ。

 

「兎に角、脱出方法をもっと探ってみようじゃないか、二人なら何か見つかるかもしれないよ」

 

「だな。俺あっちの方見てくる!」

 

 色々調べてみたけど、結局ここから出る方法は見つからなかった。

 

 このまま外のみんながやられたら、僕たちも一生ここから出られないのか?

 

「こっちはだめっぽいね…何もないや」

 

「助けが来るのを待つしかないってことかよ」

 

 そうなるのかな。

 

 心配じゃないと言えば嘘になる。

 でも、モンクさんも、暗殺者ちゃんも、聖女ちゃんも、皆実力者だ。

 信じよう。

 

 歩き出そうとすると、まだ万全じゃなかったのか、足元がふらついて転んでしまった。

 

「痛てて…」

 

「おいおい…まだ寝てたほうがいいんじゃねぇか?」

 

 差し伸べられたクライの手を取り、立ち上がろうとした──その時だった。

 

 

 キュンッ…♡♡

 

 

「はぇ………!?!??!♡♡」

 

 彼の手に触れた瞬間だ。

 

 僕の下腹部。

 その奥の方に、突然快感が走った。

 

 っは……!♡ なん、だこれ…なにこれ…♡♡

 

 汗が噴き出る。体温が上がる。

 

 これ、これって…まさか───。

 

「エ、エラ…? どうしたんだよ」

 

 不安そうなクライの声が、いつもと違う聞こえ方をした。

 

 耳から入ったその音は、脳の奥を直接痺れさせ、背骨を通り抜けて腹の底で弾けた。

 

 ふーっ♡ ふーっ♡

 

 息が荒くなって体の奥がむずむずする。虫でもいるみたいだ。

 それに、何故か理由もなくイライラしている。

 

 思わず頭を地面に向けて、うずくまってしまった。

 

「ちょっ…! おい…エラ!?」

 

 その声…♡ その声やめろ…♡

 

 僕は、おそらくこの熱の原因である少年に顔を向けた。

 

 クライの顔がわかりやすく赤く染まり、ゴクリと喉を鳴らした。

 今僕はどんな顔をしているのだろうか。

 

 僕は我慢することができずに、クライに飛びかかり、仰向けになった彼の上に馬乗りになった。

 

「う、うわっ…!」

 

「はぁ…♡ はぁ…♡ あのさ…君、ふざけてるのかなぁ…♡♡ こんな匂い、目の前で撒き散らしてさ……♡♡」

 

 さっきの暴走とはまた違う。

 口が自然と言葉を吐く。

 

 状況が飲み込めず困惑するクライの首元へ顔を寄せ、すうっとその肌の匂いを吸い込む。

 

「お゙っ…♡♡ 強いオスのフェロモン…♡♡ やっば……♡♡」

 

 あ゙ぁ~…これ…♡ 脳内麻薬っていうのかな? 頭がどうにかなりそう。

 

「お、お前、おかしいって…ま、待てよ…」

 

 顔を真っ赤にしたクライが、両手で顔を覆い隠す。

 

 ──あれ…僕、何をしているんだろう。

 

 

 後でわかったが、これが『身体とのズレ』が直った影響だった。

 

 僕は、真に『メスの獣人』となった。

 

 今まで全く気にしていなかったけど、獣人ってやつには発情期があったり、強い者に惹かれる性質があるらしい。

 

 僕はクライに戦闘を仕掛けた結果、圧倒的な敗北を喫した。

 理性を失った状況だったとはいえ、その経験は肉体に刻まれている。

 

 身体は、クライの子種を求めていた。

 

 自分を屈服させた、強いオスの子種を。

 

 

 着ている服を破るように脱ぎ捨てる。

 

「っ……!」

 

 さっきまで困惑していたクライも、目の前に現れた僕の裸身を見て息を呑んだ。

 

 あ……♡

 

「おっきくなった……♡♡」

 

 僕はクライのズボンを乱暴に引き下ろし、熱く脈打つ肉棒を露出させた。

 

 小柄な身体には不釣り合いな大きさ。

 やっぱり、このオスを選んで正解だった…♡

 

 

 待て、何を考えているんだ僕は。

 

 

 クライとこんな事をするなんて、絶対に間違っている。

 そもそも僕は中身が男、男……なんだ、ぞ…?

 

 あれ……? 僕…男……だったっけ…??

 

「前戯とか、いらないよね……♡♡」

 

 思考がブレる間もなく、僕はクライのおちんぽを己の秘部にあてがった。

 

 いや…だめだ、だめだ。

 

 クライに……主人公に性を感じさせるなんて、僕自身が一番嫌っていたことだろう。

 彼には…恋愛や性愛とは離れたところで…冒険を──。

 

 

「じゃ、挿れるね……♡♡」

 

 

 ずにゅぅううっ♡♡♡

 

 っと、彼のなっがー…い♡おちんぽが、僕の膣壁をぞりぞりと擦り上げながら入ってくる。

 

「お゙ぉ゙おぉぉ゙〜〜〜っ……♡♡♡ なっ……がぁ…♡♡♡」

 

「っ………はぁっ!はぁっ!」

 

 経験したことのないあまりの快感に、全身が痺れて動けない。

思えばこの身体になってから、自慰行為すらしたことがなかったっけ。

 

 つー…と、裂けた肉芽から血が伝う。

 

 余裕のなさそうなクライだったが、それに気づいて瞬時に顔を青くした。

 

「それっ、て……!!」

 

「ごめんごめんごめん返事っ……余裕っ…ないぃっ…♡♡」

 

 頭おかしくなる♡♡ 脳細胞全部死んじゃってるかも♡♡

 

 挿れただけだ、挿れただけで…卵巣が全力で卵子を排出し始めている。

 

 

 産むっ♡ 産むっ♡ このオスの子どもっ、絶対産むっ♡♡

 

 

 快楽で麻痺しかけた身体を、本能のまま無理やりに動かす。

 

 ばちゅんっ♡ ばちゅんっ♡

 

「お゙ぉっ…♡ ほお゙ぉっ♡♡ やっばぃ…♡ これっ…♡♡」

 

 もはや詩を紡いでいた吟遊詩人の面影など微塵もない。汚い喘ぎ声しか吐き出せない。

 

 クライは必死に快感に耐えようと歯を食いしばり、その目にはうっすらと涙すら浮かんでいた。

 

 ああ…もう……♡♡

 

「少年っ…♡♡ 我慢っ…しなくて、良いんだよっ…♡♡」

 

「だ、だけど……!」

 

 僕は腰をゆっくり動かしながら、彼の耳元で甘く囁いた。

 

「君…♡ いいの…?♡♡ 目の前に、自由に孕ませて良い……都合のいいメスがいるのに…♡♡」

 

 そんなんじゃ…別のオスに取られちゃうよ…♡♡

 

 

 ずんっ…!!♡♡

 

 

「お゙っほ…っ!!♡♡♡」

 

 

 容赦のない深い一撃が、僕の奥を突く。

 

 彼は僕の言葉にしっかりと焚き付けられ、下から僕を強く突き上げてきた。

 

「い、いいんだな…!ほんとに…!!」

 

 口ではそう確認しながらも、腰の動きは止まらず猛烈なピストンを繰り返す。

 子宮口をぼっこぼこにされている僕は、彼の身体を力いっぱい抱きしめ、しっぽを彼の脚に絡めることでしか返事ができなかった。

 

 ずんずんずんずんっ♡♡

 

 とまんにゃいっ♡♡ ぢぬっ!♡♡ ころしゃれちゃうっ♡♡♡

 

 僕のお尻が、ぎゅっ…♡♡ と掴まれた。

 

 あ゙っ…!!♡♡♡ これっ……♡ くるっ…!!♡♡♡

 

「もうっ……出るっ…!!」

 

 熱く脈打つ先端から、大量の精液が僕の膣内へと吐き出された。

 

 どぽんどぽん♡ と終わらない射精の感触。

 

 中に出されるって、こんな感じなんだ…♡

 

「……っはあ、!! はあ…はあ…」

 

 長い射精が終わり、彼は深く疲弊した顔でその場に倒れ伏した。

 

「め、めちゃくちゃ出た……頭んなか真っ白だ………」

 

 一息ついているところ申し訳ないが、僕の肉体はまだまだ満足していない。

 

「もう終わった、なんて…言わないよね?♡♡ まだできるでしょ…♡♡ 続きしよっか…するぞ、ほら♡♡」

 

「す、少し休ませて……」

 

 ふにゃふにゃになった彼のおちんぽを咥え込む。

 

 精液の味が口内に広がる。ちょっと苦いけど…思ったよりはクセがない。

 

 舌で転がすように舐め上げる。

 

「ぅ、あ…ぐぅっ……!」

 

 とぎれとぎれの情けない声が聞こえる。

 

 猫科のざらざらとした舌の感触は、人間相手とは違う刺激になっているはずだ。

 

「っぷはっ……♡♡♡」

 

 おちんぽから口を離す。

 

 ふふ…♡ すぐおっきくなっちゃったね…♡♡

 

「じゃあ、もう一回しようか……♡♡」

 

 再び挿入しようとすると、彼の手が僕を制した。

 

「待ってくれ…」

 

「待つわけないだろう?♡ ここで終わりなんて絶対許さないよ?♡♡」

 

 絶対に孕んだと確信するまで、やめないから♡

 

 

 

 

 

 

 ぱんっ!♡ ぱんっ!♡

 

「あっ♡ はぁっ♡ がんばれっ♡ がんばれっ♡」

 

 四つん這いになった僕の後ろから、彼が一生懸命に腰を振っている。

 

 自分よりずっと強いオスなのに、どこか愛らしく思えてしまう……♡

 

「もうっ…♡ 疲れちゃったのかいっ♡♡」

 

「くそっ……!」

 

 あ……早くなった♡♡

 

 バックの体勢で貫かれていると、獣になったみたいな強烈な興奮が脳を焼き尽くしていった。

 

 腰を強く掴む彼の腕にしっぽを巻き付け、お尻をぐりぐり♡と擦りつける。

 

 もっともっと♡ どちゅどちゅして欲しい…♡♡

 

 だんだん快楽の波に乗ってきた、まさにその時。

 

 たまたま、本当に偶然だったのだろう。

 彼が僕の腰椎の辺りに片手を置き、ぐっ…と押した。

 

「ふにゃ……!?!?♡♡♡」

 

 脳天を突き破るような凄まじい快楽が駆け抜けた。

 

 なに…いまの…♡♡♡

 

「そそ、それいま…♡ にゃにして……♡♡」

 

 しかしクライは必死に腰を振るばかりで、僕の声など微塵も届いていない。

 

 まずい…今の感覚は耐えられない…♡♡

 

 まだ彼の片手は、僕の腰の上に添えられたままだ。

 

 あ゙っ…!♡♡ やばっ……♡♡♡

 

「み゙ぅ゙ゔぅぅ〜……!♡♡♡ ふぅ゙〜〜っっ!!♡♡♡」

 

 おぉ゙お゙ぉ〜〜〜っ……♡♡♡

 まじゅいっ…♡♡ ほんとにとめにゃきゃ……♡♡♡

 

 ピストンの振動に合わせて腰を押されるたび、視界がチカチカと明滅する。

 

 あー……なるほど、今さら思い出した。これってアレだ、猫の「腰トントン」ってやつだね。

 

「ま゙ぅ゙ゔぅ゙ぅ゙〜〜……!♡♡ ん゙ぃい゙ぃ゙ぃ゙〜っ…♡♡♡ 」

 

「エラっ…!エラっ…!」

 

 これじゃ、獣“みたい”じゃなくて、完全にただの野良猫じゃないか…♡♡

 

 不意にクライの体勢が変わり、後ろから僕を力強く抱きしめる形になった。

 

「出すっ…!出すぞエラ…!」

 

「らひてっ♡♡ せいえきっ♡♡ いっぱいちょうらいっ♡♡」

 

 イグイグイッ…グッ…!♡♡♡

 

 僕の絶頂と、ほぼ同時だった。

 一番深い場所で、先ほどよりもずっと濃く、大量の精液が注ぎ込まれていく。

 

 おちんぽが引き抜かれても溢れ出てこないほど、ぷりぷりに詰まった熱い精液。

 

 けど、まだまだ…♡♡

 

 もっと、お腹重くなるくらい欲しいよ…♡♡

 

 僕は瞳孔を縦に細め、未だ荒い息を吐いている獲物を逃すまいと、妖しく舌なめずりをしたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「あぁぁ〜〜〜……やっちまった……」

 

 クライが頭を抱えて悶えている。

 

 あの後、クライが干からびるまで搾り取った僕は、満足して勝手に眠りに落ちた。

 

 目が覚めたときにはもうこの状況だ。

 うん、その気持ちめっちゃわかる…。

 

「いや……本当にすまない……僕もちょっと…いや、かなり頭がおかしくなっていたっていうか……」

 

 僕の心の中はぐちゃぐちゃだ。

 

 強いオスの子種を貰えたメスとしての歓喜。

 オタクとして自分の信念を曲げてしまった絶望。

 

 やっちまったのはどちらかと言うと僕の方なのだ。

 

「と、とりあえずさ…俺の上着着とけよ…!マントだけで中が裸とか…流石にやばいだろ…!」

 

 そういえばそうだった。

 

 僕はクライの上着を借りて、とりあえず隠すべきところを隠した。………ぱつぱつだけど…。

 

 思えば、まだ何も解決してないんだよね。

 ここから出ることも出来てないし…。

 

「あ、あのさ……」

 

「?…なんだい?」

 

 どこか固くなった様子で彼が切り出してきた。

 

「マジで出来てたら…その、俺責任取るから…」

 

 !?!?

 

「い、いやいやいやいや!!! だ、大丈夫だって! 責任なんてそんな…!」

 

 この世界にも、事後の対処が可能な医療機関や魔法使い事務所はそれなりに存在する。

 

 僕のことなんて気にせず、彼には主人公として冒険を続けてほしいのだ。

 

 ………けれど、ここだけの話。責任を取ると言われて子宮が疼いてしまった。

 この身体は、既に彼のものになってしまっているということなのだろう。

 

 そんなやり取りをしていると、空間を塞いでいた紫炎の防壁がゆっくりと消滅していった。

 

 これは…! 外の皆がやってくれたのか…!?

 

「クライ…!エラ…! 大丈夫ですか…!!」

 

 モンクさんの声だ。

 

 仲間たちの姿が視界に入り、クライの表情が一気に安堵へと変わる。

 

「すごい格好…戦い、激しかっタ…?」

 

 暗殺者ちゃんもひょっこりと姿を現した。

 

 格好のことはできるだけ触れないでほしいな。確かに、ある意味ではものすごく激しい戦いだったけれど。

 

 周りを見渡すと、聖女ちゃんや他の作戦参加者たちが駆け寄ってくるのが見えた。

 皆ボロボロだ。かなりの激戦だったのだろう。

 

 やばい…冷や汗が止まらない。

 

 みんなが頑張っている間、僕らえっちしかしてないよ…!

 

 思わずぎこちない笑みのまま顔が引きつり、ふとクライを見ると、彼も全く同じ顔をしていた。

 

 僕たちは無言で視線を交わし、中で起きた出来事は墓場まで持っていこうと固く誓い合うのだった。

 

 クライが呼吸を整え、改めて皆に問いかける。

 

「あの魔導師はやったのか?」

 

「逃げられました…魔本の方は破壊できたんですが…」

 

 本が壊されたから結界が消滅したのだろうか。

 

 しかし…逃げられたのか。確かにあの異形頭は一筋縄ではいかなそうだった。

 

 だが他の邪教徒は全滅させ、この拠点の制圧には成功したようだ。やはり彼らを信頼していて正解だったね。

 

 そして僕は、己の旅の目的を明確に再設定した。

 

 僕の信念を踏みにじり、あんなケダモノみたいなえっちをさせた張本人…。

 

 あのクソ異形頭野郎をぶっ潰す!!

 

「少年っ!!いや、クライっ!!」

 

「びっくりした! 何だよ…!」

 

「僕を、正式にパーティに加入させてくれないか!?」

 

「このタイミングで!?いきなり過ぎるって…!」

 

 僕は押しに押した。

 

「あいつに…!あのマグスとかいう奴に一発入れてやらないと、安心して眠れないんだよ…!」

 

「わ、わかったよ……」

 

 かくして僕は、パーティの五人目のメンバーとして正式に迎え入れられたのだった。

 

 …………出会ったのは一番最初だけどね!

 

 

 

 この後、作戦成功の宴で酒が入った僕は、もう一回クライとえっちしてしまうのでした。

 

 

 






 エラ→20代前半くらい
 クライ→15〜16歳くらい(元王族)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。