※この作品はR-18です。

陸仁王物語―異伝―   作:fire-cat

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外伝 恵梨子のとある世界の観察日記③

 恐る恐る振り替える香織、霧葉、貴美の視線の先には寛奈、沙織、歌乃と里緒の姿が……。

 香織、霧葉、貴美が冷や汗を拭いながら胸を撫で下ろした。

 背後から現れたのは、絶望と快楽の奔流に呑み込まれていたはずの寛奈、沙織、そして歌乃と里緒の四人だった。

 

「どうしたの? こんなところで」

 

 きょとんと無垢な首をかしげる寛奈の瞳には、かつての誇り高い気品と、それを内側から完全に塗り替えた京極宮の熱が奇妙な調和を見せて宿っている。沙織もまた、どこか潤んだ艶やかな肌艶のまま、不敵で余裕のある微笑みを浮かべていた。

 

「あ、おいしいお菓子手に入れたから食べよ。御茶会してたんだ」

 

 そう言って何食わぬ顔で友人たちの手を引き、囲い込むようにしてサロンへと歩みを進める四人。その足取りは一見するとただの仲睦まじいお嬢様たちのティーパーティーのようでありながら、その実、一度足を踏み入れたら二度と引き返せない「新しい秩序」へ外界の人間を引きずり込むための、優美な罠そのものであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 四人の姿が完全に廊下の曲がり角へ消え、その気配が遠ざかったのを見計らったかのように、音もなく重厚な大扉が閉じられる。

 廊下の玄関に通じる唯一の入り口──その堅牢な真鍮の鍵が、冷徹な光を放つ照仁と法仁の手によって、静かに、そして確りと下ろされた。

 外の世界とは完全に遮断された宮邸。そこはもはや、華族としての自由や社会的な体面が通用する空間ではなく、若き猛獣たちの完全な支配下にある「甘美な巣窟」であった。

 

 陽光が差し込む優雅なサロンの中央で、銀色の産毛を纏った最高級茶葉「マカイバリ茶園のシルバーニードルズ」が、ガラスのポットの中で静かに黄金色の雫を湛えていく。立ち上る繊細な香りは、部屋に満ちる微かな甘い熱気と混ざり合い、異常なまでのリアリティを演出していた。

 純白の皿に美しく並べられた和三盆の落雁「長生殿」は、口に含むと形を保ったまま儚く溶け、極上の甘味を舌の上に残す。

 

「ねえ、美味しい? ──これ、若宮様たちが用意してくださったのよ」

 

 少し潤んだ声でそう微笑む寛奈の指先には、昨夜刻まれた消えない痕跡がさりげなく、しかし誇らしげに覗いている。

 香織、霧葉、貴美は、目の前で繰り広げられるあまりにも優雅で、しかし底知れぬ狂気と従属に満ちたティーパーティーを前に、自分たちもまた、あの閉ざされた鍵の向こう側から二度と逃れられなくなる未来を、静かに予感するしかなかった。

 

「──すごく美味しいわよ。これ、本当に特別な茶葉なんだから」

 

 沙織は微笑みながら長生殿を一口含み、蕩けるような甘みに瞳を細めた。数日前まで「助けて」と怯えていたはずの彼女たちの姿は微塵もなく、そこにあるのは、完全に京極宮の血統に調教され、その支配の心地よさに溺れきった優雅な淑女たちの姿だった。

 

「ほら、あなたたちも早く飲んで。外の冷たい空気になんて戻れなくなるくらい、ここは心地いいんだから……ねえ?」

 

 歌乃と里緒も、どこか夢心地のような、しかし抗えない熱を帯びた瞳で友人たちを見つめる。その首筋や手首には、隠しきれない真新しい「証」が微かに覗いていた。

 

 背後でガチャリ、と重厚な玄関の錠がしっかりと下ろされる音が、奇妙なまでの静けさの中で全員の耳に鮮烈に残響した。

 逃げ道はもう、どこにもない。

 最高級の茶と伝統の銘菓に彩られたサロンで、外の世界から完全に隔離された彼女たちの「新しい日常」のティータイムが、静かに幕を開けた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 鍵が下ろされたその瞬間から、北翼は外界の法も倫理も届かない異界へと変貌した。

 重厚な真鍮の錠が下ろされた音は、逃げ場のない現実を告げる鐘のようだった。

 

「っ、嘘……開けてよ、冗談でしょ……!」

 

 香織が必死にドアノブにしがみつくが、その細い指は、背後から伸びてきた冷徹な手に軽々と引き剥がされる。

 

「冗談に見えるかい? ……自分から足を踏み入れておいて、今さら引き返せると思うなよ」

 

 法仁の甘く冷たい声が耳元で囁き、香織の背筋を戦慄が駆け抜ける。その傍らでは、霧葉と貴美が、足元から這い上がる恐怖に震えながら身をすくめていた。二人を前にした照仁は、冷たい黒髪の瞳に圧倒的な独占欲を宿し、静かに一歩を踏み出す。

 

「私たちを、どうするつもり……離して……!」

 

 霧葉の掠れた抗議の声を遮るように、照仁の長身が二人の退路を完全に塞いだ。

 法仁が「じゃあ、僕はこの元気のいい彼女を連れて行くよ。今度はいつまで持つかなぁ」と微笑みながら香織の腰を抱き寄せ、隣の個室へと連れ去っていく。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 重厚な扉が内側から固く閉ざされ、外の世界の喧騒や光が完全に遮断された静寂の中で、香織は冷たいシーツの上に身を投げ出すように押し倒されていた。

 法仁の下に組み敷かれた香織は、その整った、あまりにも冷ややかな少年の顔立ちと、その奥底に潜む底知れぬ狂気の光に直面し、恐怖で全身の血が凍りつくような感覚を覚えていた。華族令嬢として厳格なしつけを受け、将来の良き伴侶のためにと、誰にも触れさせずに大切に、ひそやかに守り続けてきた絶対不可侵の領域──そのすべてが、いまや逃げ場のない密室の中で剥ぎ取られようとしている。

 

「や、待って……! こんなの、やだ! 私、まだ……っ!」

 

 震える声を必死に絞り出し、香織は恐怖に身を縮こまらせて身動きを図った。しかし、その抵抗はあまりにも無力だった。法仁は甘く、それでいて底知れぬ冷たさを帯びた微笑みを美しい唇にたたえたまま、抵抗する香織の両足を軽々と、しかし容赦のない力で力強くこじ開けた。

 

「知っているよ。……君が今までどれほど大切に自分を守ってきたか、そんなこと全部調べてある。だからこそ、一番最初に僕の色に染めてあげたいと思ったんだ。他の誰でもなく、僕の熱だけで君のすべてを塗りつぶしたかった」

 

 少年のあどけなさを残す声でありながら、そこに宿っているのは大人の男を凌駕する圧倒的な独占欲と執着だった。法仁の重みが香織の未熟な身体の全体を押し潰すように覆いかぶさり、逃げ道を完全に断ち切る。

 恐怖と緊張で硬く強ばった香織の身体に、容赦ない現実が突き刺さった。

 ──経験したことのない、鋭く引き裂くような痛みが走った瞬間。

 香織の喉からは、悲鳴すらまともに形にならないほどの、息が詰まるような絶望的な喘ぎが漏れた。

 初体験の生々しい恐怖と、予想を遥かに超える深く熱い質量が、未熟な肉体を内側から押し広げ、容赦なく踏みにじっていく。目頭から熱い涙が溢れ出し、頬を伝って冷たいシーツを濡らした。あまりの痛みに意識が遠のきそうになりながら、香織は震える両手で法仁の肩を必死に押し返し、遠ざけようとあがいた。

 

「っ……いたいっ……もう、やめて……っ!」

 

 だが、法仁はその細い抵抗をあざ笑うかのように、容赦なくその唇を自らのもので深く塞いだ。

 逃げ場を失った呼吸と、掠れた泣き声が法仁の口内に吸い取られていく。逃げることを許されない密室の中で、法仁は未経験の痛みに震える身体をじっくりと、それでいて執拗に慈しむように──あるいは、自らのものとして完全に喰らい尽くすように、ゆっくりと、しかし確実に奥まで貫き通していった。

 動くたびに走る衝撃に、香織は何度も白目を剥きそうになりながら、頭を左右に激しく振って拒絶を示そうとした。しかし、耳元で囁かれる法仁の甘い声が、その理性の糸を容赦なく削ぎ落としていく。

 

「ほら、力が抜けてきたよ。……そんなに泣かなくても、もっと気持ちよくしてあげるからさ」

 

 その言葉の通り、恐怖と痛みだけだった感覚が、法仁の執拗で絶妙な手管によって、徐々に別の色へと塗り替えられ始めていた。

 荒々しかった動きが、次第に香織の身体の奥深くまで熱を浸透させるような、ねっとりと絡みつくような愛撫へと変わっていく。痛みは痺れるような熱い疼きへと変質し、拒絶しようとしていたはずの身体の芯から、得体の知れない快楽の波が沸き起こってきた。

 

「あ、っ……、ぁっ……!」

 

 自分の意思とは裏腹に、甘い喘ぎ声が喉から零れ落ちる。抵抗しようとシーツを鷲掴みにしていた指先は、いつしか法仁の背中に絡みつき、その熱を逃すまいとすがるようにしがみついていた。

 痛みが強烈な快楽へと完全に書き換えられていく悪夢のような流れの果てで、香織の人生初たる純潔の証は、若き猛獣の容赦ない執着の中に溶け出し、跡形もなく消え去っていた。

 戻れない一線を越えたその場所で、香織は自らの意志と誇りを失い、ただ法仁の腕の中で甘美な快楽の奴隷へと完全に堕ちていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 法仁が香織の細い腕を引いて隣の個室へと消えていった一方、照仁は残された霧葉と貴美の二人を静かに従えるように、冷徹な足取りで広大な寝室の中央へと足を踏み入れた。

 

「ふたりまとめて相手をしてほしいということか。……欲張りだな、お前たちは」

 

 低く響く照仁の声音には、迷いも躊躇いもない。

 

「私たちを、どうするつもり……離して……!」

 

 霧葉の抗議の声を遮るように、照仁は無言のまま彼女の腕を引いた。その黒い瞳には、獲物を逃がさない猛獣の絶対的な独占欲が宿っている。

 抵抗する間もなく、三人はそれぞれの個室へと引きずり込まれ、冷たいシーツの上へと投げ出された。

 広大なベッドの前に立ちはだかる照仁と法仁。その美しい顔立ちに似合わない、容赦のない支配欲が部屋の空気を重く歪めていく。

 

「助けて……っ!」

「助けを呼んでも無駄だ。ここにはお前たちを救う人間などいない。……自分たちで確かめに来たのだろう? 京極宮の男がどんなものか……身体の奥まで染み込ませてやる」

 

 逃げ場のない広大なベッドの上に突き飛ばされるように投げ出された霧葉と貴美は、恐怖に震えながら身を寄せ合った。

 

「こ、来ないで……! 二人同時になんて、そんなの……っ!」

 

 貴美が叫びながら這い上がろうとした瞬間、照仁の長身が覆いかぶさるように迫った。その冷徹な黒髪の美貌が目の前に迫り、彼女の細い肩を片手で軽々と押さえつけてシーツに縫い付ける。もう一人、逃げ出そうと背後へ退いた霧葉の足首を、照仁のもう片方の大きな手が正確に捉え、一気に引き戻した。

 

 広いシーツの中央、左右に引き裂かれるように投げ出された二人の上に、照仁はそびえ立つように覆い被さる。一人の人間が、二人の成熟した女性を同時に統べるなど常軌を逸している──理性がそう叫ぶ間にも、宮家の血統に刻まれた異常なまでの熱量と、鍛え上げられた肉体の圧倒的なスタミナが容赦なく現実を突きつけていた。

 

「いや、離して……っ! 」

 

 貴美が震える声で拒絶の意を示そうとしたが、照仁の左手がその唇を塞ぎ、深い接吻をもって声を飲み込ませる。

 

「静かにしろ。お前たちのその無垢な身勝手さも、くだらない好奇心も……いまここで全て私が踏みにじり、我が色に染め上げてやる」

 

 冷徹な低音が響いた直後、衣服を引き裂かれる鋭い音が部屋にこだました。

 右手が霧葉の衣服の合わせ目に滑り込み、引き裂くようにボタンを弾き飛ばした。肌が剥き出しにされる冷気と、照仁の体温がもたらす熱狂的なまでのプレッシャーが同時に二人を襲う。

 霧葉の肩に、貴美の胸元に、容赦ない愛撫が叩き込まれる。

 抵抗の言葉は、執拗に耳朶を食む熱い息と、一切の隙を与えない深い接吻によって、容易く甘い悲鳴へと変えられていった。

 

「二人まとめて、貫通式だ」

 

 冷徹な一言とともに、容赦のない現実が叩きつけられる。まず霧葉の身構える細い肢体の上に照仁の体重が乗り、一線を越える鋭い衝撃が走った。

 

「っあ……っ!?」

 

 人生で一度も経験したことのない、引き裂かれるような痛みに霧葉が白目を剥きかけ、爪を立ててシーツを引っ掻く。その絶叫が消えぬうちに、照仁の左手がもう一人の処女である貴美の秘められた場所を容赦なく捉え、準備のないまま一気に踏み込み、貫いた。

 

「ひぁっ……!?」

 

 貴美の背中が激しく弓なりにしなり、喉から掠れた悲鳴が搾り出される。

 

 二人の女性の「初めて」を同時に、それも寸分の狂いもない手管で支配していく照仁の圧倒的な技量。未熟な処女膜を破り、それぞれの最奥の深くまで自身の熱を注ぎ込んでいくその行為は、冷徹さすら漂わせていた。

 照仁の技術は、二人を相手にしていることすら忘れてしまうほどに完璧だった。右側の霧葉に対しては、その敏感な胸元や首筋を執拗なまでの舌使いと歯使いで責め立て、思考を焼き切るような快楽の奔流を送り込む。左側の貴美に対しては、絡み合う指先で最奥の秘められた場所を容赦なくかき回し、拒絶しようとする足を強引にこじ開けて固定する。

 

「ああっ、ダメ……! 狂う、こんなの同時に弄られたら……っ!」

 

 霧葉が頭を振り乱してシーツに爪を立てれば、その反動で貴美の身体が再び弓なりにしなり、甘ったるい絶叫が天井へと吸い込まれていく。痛みに顔を歪め、涙を流しながらも、照仁の重厚な突き上げと執拗な舌使いによって、二人は強制的に快楽の底へと叩き落とされる。どちらか一人が意識を失いそうになると、照仁は絶妙な加減でその者の意識を引き戻し、もう一方の身体へとより深い衝撃を叩き込む。一つの個室の中で、二人の女性が同時に同じ男の手管によって狂わされ、快楽の奴隷へと堕ちていく光景は、もはや人倫の枠を超えた絶対的な支配の儀式であった。

 

「あ、あっ、だめ……っ! こんなの、若宮様たち、狂ってるわ……っ!」

「それがどうした? どうせお前たちもよがり狂うのだ。男と女の終わりなき愉しみに溺れ、共に地獄へ堕ちようぞ」

 

 誰に触れられることもなく、純潔のまま守られるはずだった彼女たちの身体は、京極宮の長男という絶対的な強者の手によって、初夜の痛みごと、脳髄まで痺れる快楽の奴隷へと強制的に調教されてしまったのだった。何度目の絶頂を迎えたかすら分からない。瞳を潤ませ、焦点の合わない目で天井を見上げる霧葉と貴美の耳元に、照仁の冷ややかな吐息が落ちる。

 

「どうだ。お前たちの浅知恵など、この手の中では一網打尽にされる運命でしかなかったということだ」

 

 二人の身体には、照仁の指先や唇が刻んだ無数の紅い痕が、消えない所有の証として生々しく焼き付けられていた。抵抗の意志は完全に砕かれ、彼女たちはただ重なり合う体温と底知れぬ疲労感の中で、この男の手のひらの上でしか呼吸ができない肉体へと完全に書き換えられていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 そして数日後──。

 

 マカイバリ茶園のシルバーニードルズから立ち上る芳醇な香りと、長生殿の口に含めば雪のように消える上品な甘さが、サロンの優美な空気と奇妙な緊張感を同時に引き立てていた。

 

「……ねえ、本当にこれでいいの?」

 

 香織はシルバーニードルズの黄金色の液体を見つめながら、震える手でカップを持ち上げた。その隣で、霧葉と貴美もまた、何食わぬ顔でティーポットを傾ける寛奈たちの様子に言葉を失っている。

 

「何が? ──すごく美味しいわよ。これ、本当に特別な茶葉んだから」

「……っ。こんなお茶、喉を通るわけ……」

 

 香織がカップを置こうとしたその瞬間、サロンの開け放たれたテラス側のアーチから、静かに足音が響いた。

 そこに立っていたのは、上着を脱ぎ、シャツの袖をまくり上げた照仁と法仁だった。冷徹な美しさを湛えた若き猛獣たちは、まるで当然のようにサロンの中へと足を踏み入れ、それぞれの恋人──寛奈と沙織の背後へと回り込む。

 

「おや、歓迎されていないようだね」

 

 法仁はクスクスと笑いながら沙織の肩に手を置き、その首筋に軽く唇を落とした。沙織はビクリと身体を震わせながらも、嫌がるどころか、とろけるような笑みを浮かべて法仁の手のひらに頬を預けた。

 照仁は無言のまま寛奈の背後に立ち、その細い肩を包み込むように大きな手を置いた。

 

「……ねえ、私たちをどうするつもりよ……!」

 

 震える声で問う霧葉に対し、照仁は冷徹で、しかし抗えない魔力を秘めた黒髪の瞳をゆっくりと向けた。

 

「どうするも何も、お前たちは自分からこの宮邸の門をくぐったのだろう。……それに、外の世界に戻ったところで、もう他の男の退屈な戯れに耐えられる体か?」

「なっ……!」

 

 図星を突かれ、霧葉も貴美も言葉を失う。

 照仁の指先が寛奈の髪を優しく、精神的にも物理的にも完全に所有した手つきで梳りながら、低く囁いた。

 

「ここでお前たちが学ぶべきことは一つだ。私達以外の存在では、二度と心が満たされないという事実だけだ」

 

 マカイバリ茶園のシルバーニードルズの芳醇な香りが空間に漂う中、逃げ場を完全に失ったサロンの扉の向こうで、新たな「甘美な囚人たち」の終わりなき日常が、静かに、そして熱を帯びて動き出していった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

後書き代わりの座談会

 

香織

「ちょっと……っ! ドアノブにしがみついた私の腕を軽々と引き剥がして『自分から足を踏み入れておいて今更引き返せると思うなよ』なんて耳元で囁く法仁様、冷酷すぎて心臓止まるかと思ったじゃないの……!

今まで華族の令嬢として誰にも触れさせずに守ってきたものを、あんな逃げ場のない密室で容赦なく全部暴かれて、一番最初の色に染め上げられるなんて……っ。最初は痛くて泣き叫ぶことしかできなかったのに、法仁様のあの執拗で甘い手管で『痛みが熱い疼きに書き換えられていく』感覚……思い出すだけで顔から火が出そうよ!

結局、シーツにしがみついて『逃がすまい』とすがってたのは私の方だったじゃない……。もう外の世界の男なんて退屈すぎて、絶対に満足できない身体にされちゃったわよ……!」

 

霧葉

「……ふふ、『二人まとめて貫通式だ』なんて冷酷な一言で、私と貴美の二人が同時にシーツの上へ引き裂かれるように固定されるだなんて……理論的にも物理的にも正気の沙汰ではないわ。

照仁様のあの圧倒的な技量とスタミナ……右手で私の胸元や首筋を執拗に責め立てて思考を焼き切りながら、同時に左手で貴美の最奥を完璧にかき回すなんて、もはや一人で二人を同時に支配する『絶対的な調教の儀式』ね。

『お前たちの浅知恵など一網打尽にされる運命だった』と囁かれた瞬間、私が今まで培ってきた誇りも理性もすべて崩れ去ったわ。……認めたくはないけれど、あの圧倒的な熱量と支配の前に屈服する心地よさを知ってしまった以上、私はもうこの宮邸の鍵の向こう側から逃げ出すつもりなんて、最初からなかったのかもしれないわね」

 

貴美

「うう……っ! 霧葉ちゃんと二人まとめて照仁様に覆いかぶさらされた時、恐怖で声も出なかったのに……照仁様のあの冷徹な黒髪の瞳に見つめられて唇を塞がれた瞬間、身体が完全に固まっちゃって……。

準備もないまま一気に奥まで貫かれた時のあの衝撃と痛み……っ! なのに、照仁様の絡み合う指先と執拗な愛撫で、痛みが一瞬で『脳髄まで痺れる快楽』に変えられていくの……っ。私、霧葉ちゃんと一緒に何度も声を上げてよがり狂っちゃって……自分がどんな恥ずかしい顔をしてたのかと思うと、もうサロンでみんなの顔をま直視できないよ……。

首筋や手首に残されたこの真っ赤なキスマーク……隠したいのに、照仁様に『私の所有物だ』って焼き付けられたみたいで、どこか誇らしく思っちゃう自分が一番怖いわ……っ」

 

歌乃

「あはは! 香織も霧葉も貴美も、最初はあんなに『返してよ!』って叫んでたのに、朝になったら全員とろけた目でシルバーニードルズ飲んでて最高に最高だね!

『外の冷たい空気になんて戻れなくなるくらい、ここは心地いいんだから』って寛奈たちが言ってたの、嘘じゃなかったでしょ? 昼は女官見習いとしてしごかれて、夜は若宮様たちの愛玩情人として朝まで骨抜きにされる……最初はホラー映画の監禁エンドかと思ったけど、この猛獣たちに心も身体も完全に食い潰されるの、一度味わったら病みつきになっちゃうもんね!

ほら香織、そんなにプルプル震えてないで長生殿食べなよ? 口の中で溶ける甘さと、首筋の熱い痕が混ざり合って、すっごく幸せな気分になれるからさ!」

 

里緒

「……ふふ、香織さん、霧葉さん、貴美さん。戸惑うお気持ちはよく分かりますよ。私たちも最初は、この北翼の異界のような熱気に圧倒されてしまいましたから。

でも、重厚な真鍮の錠が下ろされたあの音は、私たちが外の世界のくだらない体面や規則から解放された合図でもあったのです。照仁様や法仁様のあの凄まじい執着と深い愛覚悟を受け止められるのは、私たちしかおりません。

寛奈さんや沙織さんが見せてくださるあの誇り高くも艶やかな微笑み……あれこそが、私たちがたどり着いた『新しい秩序』の姿なのです。さあ、冷めないうちにマカイバリのお茶を召し上がってください。ここは外の世界よりもずっと暖かくて、甘美な場所に満ちていますから……」

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