※この作品はR-18です。

敵亡き世界   作:山崎 響

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 書き溜めていた分がなくなりました。今回は少なめです。
 次回が最終回です。次の投稿は二三日後になると思います。


第4話

カールスラント対リベリオン

「ハイデマリー隊を再編成します。ハンナ隊二千は右翼へ。トゥルーデ隊二千は左翼へ。ハイデマリーは千の兵で私のバックアップをお願い。残りの兵は私と正面を叩きます」ミーナは指示を出した。

「ミーナには空間が見えている。司令官としてこれほどの適任者はいない」

 ハンナはニヤリと笑い両手に武器を構えた。

「違いない」バルクホルンが頷き飛び立った。

 

 空を埋め尽くすほどのリベリオン・ブリタニア連合軍の爆撃機。

これ以上私たちの祖国を蹂躙させるわけにはいかない。

 

 両翼からマルセイユとバルクホルンが爆撃機を次々と破壊していく。

華麗にマルセイユが攻撃をし、力強くバルクホルンが叩く。

「対空砲前へ!」ミーナの指令が飛ぶ。

「撃てぇ!」

 一撃も外すことなく爆撃機に命中する。次々黒煙を上げ墜落していった。

逃げようとする爆撃機をバルクホルンとマルセイユが次々と落としていく。

もはや敵機は逃げるのみとなっていた。

「ハイデマリー、敵地上部隊の排除を!」

 ハイデマリーは千の兵士を率い地上すれすれを飛ぶ。ハイデマリーの通った

跡には破壊された戦車と敵兵の死体だけが残った。

 圧勝だった。リベリオン・ブリタニア連合軍は何も出来ず

ただ逃げ惑うだけだった。

「見ろ、バルクホルン。敵の空母が退却していくぞ」ハンナが言った。

「追うか?ミーナ」バルクホルンがミーナの元に降りてきた。

「これ以上は、無理ね。兵の疲労も激しいし、私たちの魔力も

そろそろ限界でしょう」ミーナが双眼鏡を覗きながら言った。

「ここからは政治的な戦いよ。なんとかリベリオンと有利な条件で

講和を結ばないと」

「ミーナは政治家より軍人の方が似合ってるんだけどな」

マルセイユが肩をすくめた。

「あら、私どっちもやってるんだけど……」

 四人は少しだけ笑った。安堵の入り混じったそんな笑いだった。

 

 ドゥンと大砲の音がした。沖の方へ退却していったリベリオンの

空母からだった。砲弾はふらふらと陸地に程近い海中へ落ちた。

「どういうつもりだ?あんな遠くから撃ったんじゃなんの意味も

ないじゃないか」バルクホルンが言った。

「お、おい……あれ」マルセイユが海岸を指差した。

 砲弾が落ちた海の辺りからぶわっと大量の羽虫のようなものが

湧き上がって来た。ぶぅんと音を立てまるで蝗の大群のように

彼女たちに迫ってきた。

「ひとつひとつは小さいが……赤いコアが見える……ネウロイだ!」

 マルセイユが後ずさる。

「シールドを展開! 隊列を崩さないで。迎え撃ちます。

私とハイデマリーは地上から、トゥルーデとハンナは空からお願い。

あんなのが街に入ってきたらカールスラントは壊滅します。」ミーナが叫ぶ。

 ミーナ達はシールドを張った。三センチほどの黒い塊は隕石のように

激しくシールドにぶつかってきた。幾千も幾万も。

「数が多すぎる。このままじゃいずれやられる」バルクホルンが

シールドを支えて歯を食いしばる。

 黒い塊は無差別に襲う。カールスラント兵は成す術もなく絶叫をあげていた。

「ここまでなのか? リベリオンのやつらなんて物を作りやがる……」

 マルセイユもシールドで羽虫のような黒い塊を防ぐのが精一杯だった。

 

「え……。な、何なの?」

 シールドを張るミーナは後ろから何かに胸を掴まれた。

「え?」

 手だ。男の腕だ。それは二本、三本、四本と増えていく。

その手は無造作にミーナのズボンに滑り込んでいく。

「あっ」ミーナは声を漏らした。

「ミーナ!」バルクホルンがシールドを張りながら振り返り叫んだ。

「なんでカールスラント兵がミーナに群がってるんだ……」

マルセイユの顔がこわばった。

 ミーナは服とズボンを破られ、ストライカーを剥ぎ取られた。

「や、やめ……」抵抗するが強い力で背中を押さえつけられる。

シールドを解除することも出来ない。解除すればたちまち羽虫たちの

餌食になってしまうだろう。ミーナはシールドを張ったまま、

兵士たちの成すがままになるしかなった。

 ミーナの白い腰がごつごつとした兵士の手にわしづかみにされている。

「ミーナ総統!」ハイデマリーもなんとかミーナに近づこうとするが、

羽虫を防ぐことで精一杯だった。

 ミーナは両手を前にシールドを張る。背中を押さえつけられているので

尻をつきだすような格好になっていた。無造作に兵士のぬめっとした

黒いものがミーナを襲う。「入ってくる……」

 長い。どこまで入ってくるの。だめ……これ以上は……

 とてつもなく長い。それは一メートルにも二メートルにも感じた。

 このままでは破れてしまう。

 

「羽虫の勢いが少し収まってきたようだ。ハンナ、ハイデマリー

私の後ろを守ってくれ」バルクホルンが叫んだ。

「わかった」「わかりました」

 バルクホルンは急降下し、ミーナの元へ降りる。

「このっ」銃を逆手に持ち、バルクホルンは力任せにミーナに群がる

兵士たちを殴りつけた。

 

 兵士たちの体があっけなくはじけ飛んだ。だがミーナに突き刺さった

黒いものだけが、まだびちびちと音を立て少しずつミーナの中に侵入していた。

「あぐっ、あふぁ、あうん」

 ミーナは既にシールドを張ることもできず、尻をつきだしたままの状態で

それの侵入を許していた。

「くそっ」バルクホルンはミーナに突き刺さった黒い棒を掴みミーナから

抜こうとする。しかしヌルヌルとしていて掴みきれない。うなぎのようだ。ぎゅぽっとバルクホルンの手から離れた。

「ぐぎゃぁぁぁ」ミーナの絶叫が響いた。その黒い棒だけが

完全にミーナの体の中に入っていった。ミーナの中からボタボタと

どろっとしたものが垂れ落ちた。

「ミーナ……ミーナ、ミーナ!」バルクホルンは叫んだが

ミーナは四つん這いのまま動かなかった。

 

「バルクホルン、どうやら羽虫の攻撃は終わったようだ。」マルセイユが言った。

 辺りは静まり返っていた。カールスラントの兵士もリベリオンの兵士も

誰も生きてはいなかった。空は赤く血のような夕焼けが荒んだ地を照らしていた。

 

「ぐあぁぁぁっ」突然バルクホルンが悲鳴をあげる。

ミーナの白い指がバルクホルンの額に食い込んでいた。

 

「え? ミーナ……?」マルセイユは一瞬固まった。

「トゥゥルゥゥゥデェ? 何してくれてんのよぉぅぅ。

もうちょっとでイけそうだったのにぃぃぃ」

 ギラリとミーナの左目が赤く光っていた。

「ミーナ……お前……一体……」マルセイユの頬に汗が流れる。

「ハァァンナァァ、ハァィデマリィィィ」

ギロリとミーナの赤い瞳は二人を睨む。

「いぃぃぃますぐに美緒を連れてこい。今すぐにだぁぁ」

ミーナはバルクホルンの額をつかんだまま言った。

「美緒って……坂本少佐のことですか?」ハイデマリーが聞きかえす。

「ミーナ、坂本少佐がどこにいるのかわからないぞ」ハンナがやっと応える。

「いぃぃぃから、すぐに連れてこぉぉい。

それまでトゥルーデは預かっておくぅぅ。たっぷり遊んでやるぅからなぁぁ……」

 ミーナは強い力でバルクホルンを押さえつけストライカーを剥ぎ取る。バルクホルンの痛々しい両足が見えた。左手でバルクホルンの額を掴んだまま

ミーナの右手はバルクホルンの胸を鷲掴みにする。

「はぁぁやくしないとトゥルーデがこぉわれちゃぅよぉぉぉ……

ひひゃひゃひゃ」ミーナは口元を歪ませ笑う。

 いつの間にか数万の兵士の屍たちが異臭を放ちながら

マルセイユたちの周りを取り囲んでいた。

 

 ガガガガガガガガ………。機銃の音がした。ミーナの頭が吹き飛び、

脳漿が地面に飛び散った。

「マルセイユさん……」ハイデマリーがマルセイユの方に振り向く。

 脳漿の中にふらふらと動く赤い石があった。マルセイユは無言のまま

その石を機銃で破壊した。すると取り囲んでいた数万の死体は一斉に

べちゃっと地面に倒れこみ、じわじわと溶け出した。

 

「無事か? バルクホルン」マルセイユがバルクホルンの所に飛んできた。

「ハンナ……。お前……」バルクホルンが呆然とハンナを見つめた。

「すまない。私は総統を……カールスラントの希望を壊してしまった。」

「いや、私はお前に礼を言うべきだろう。お前がミーナを撃たなければ

数万の死体たちがカールスラントの街を襲い、オラーシャのような

ことになっていたのだろうからな」

「くそっ……リベリオンめ……」マルセイユはくやしそうに拳を握り締める。

「リベリオンはネウロイを兵器として使ったんですね……」

ハイデマリーは悲しげに目を伏せた。

「前にシャーリーに聞いたことがある。リベリオンは原爆よりも恐ろしい

兵器を開発していると。私がオラーシャで戦った連中は皆死体だった。

やつらもこの兵器の被害者だったのだ。リベリオンはオラーシャで実験が

したかったのか、それとも最初からカールスラントと争わせることが

目的だったのか……」バルクホルンは無い足を投げ出し、地面に座り込む。

「どちらにしろ、もう私たちには為す術はない。リベリオンに蹂躙されることを待つだけだ」マルセイユは地面に膝をついた。

「終わったんですか。こんな終わり方って……」ハイデマリーも二人の隣に座る。

 

 三人は夕焼けの中、数万の死体の真ん中で座っていた。

バルクホルンがちらりと顔の無いミーナを見た。

裸で転がっているミーナにバルクホルンは自分の軍服をかけてやった。

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