四年目の春
薄暗い地下室で、三人の生活はまるで家族のようだった
朝、“あなた”が起きると同時に、アスナとミトが両側から抱きついてくる
アスナは体をぶつけるように遠慮なしに
ミトはおずおずと、だがしっかり絡みつくように
「おはようございます、団長」
「おはようございます…」
暗く寒い地下室も二人のぬくもりがあれば温かかった
朝食の準備は三人の共同作業だ
アスナが調理を担当し、ミトが皿を並べる
“あなた”は何をすればいいか分からず無意味にうろうろしている
どこにでもある温かい家庭の光景だった
「団長、味見していただけますか?」
アスナが慎重に差し出す小皿
その目には愛情と期待が浮かんでいる
「うん、美味い!わいの好きな料理ばっかりや!」
「ありがとうございます!」
「今度あれ作ってもらおかな、わいの行きつけの店のメニューなんやけど…」
「ふふ…団長のお好きなもの、もっと教えて下さいね」
満面の笑みを浮かべるアスナ
「アスナ、こっちのサラダも見てもらったら?」
ミトが優しく声をかける
「これも美味いな、お前も手伝ったんやろ?ミト」
「う、うん」
褒められると顔を赤らめてそっぽを向いた
昼になると三人は狩場へと向かう
ずっと一緒に過ごしているこのパーティーの連携は完璧だった
戦闘中の三人の動きはまるで一個の生命体のようだ
もう何年も3階層の同じ場所で同じ事を繰り返している為
それは戦闘というよりただの生活の一部と化していた
“あなた”もアスナも犯罪者になっているため
街の買い物と情報収集はミトに任せていたが
噂によると攻略している連中は90階層まで行ったらしい
いまだにこんな世界の片隅でずっと低レベルな事をしている三人を
気に掛ける者など誰も居なかった
夕食後、リビングに甘い空気が流れ始める
「団長……よろしいでしょうか?」
アスナが淫蕩な顔で声をかけてくる
その瞳は潤みきって、発情した甘いメスの匂いをぷんぷんと漂わせていた
「構わんが、深澄はどうや?」
ミトの方を見る
彼女も赤い顔をして小さく頷いた
「お願い……します……」
三人がベッドに向かう
それは欲望のぶつけ合いだけではなかった
互いの存在を確かめ、睦合い、明日も生き延びることを誓う交合だった
排泄に特に決まった時間はない
二人がしたい時に“あなた”に許可を求めるのだ
「団長、おトイレいいですか?」
アスナが頬を染めて上目遣いで尋ねる
その仕草は主人に媚びるペットのようであった
「ええで、深澄も行くんやろ?」
「はい……私もしたいです…」
恥ずかしそうにミトも同意する
二人は並んでシャワー室に向かう
ここは二人専用のトイレと化しており
数えきれない程の排泄の甘い匂いが染み着いていた
床に尻を付けると、二人は“あなた”に向かってよく見えるように股を開き
指で尿道口を広げて許可を待つ
「おう、出してええで」
その言葉を聞いた直後、アスナは勢いよく放尿を始めた
しゃああああああ
よほど溜まっていたのか濃い色のおしっこが噴水のように飛び出してくる
それは大きくアーチを描き、黄色い雫を辺りに散らしながら大きな水たまりを作った
何度も体を震わせながら最後の一滴まで出し切る
放尿にすっかり性的な快楽を感じているアスナの陰部は愛液で濡れそぼっていた
欲情した目を“あなた”に向けるアスナ、そこには恥じらいは微塵も感じられなかった
一方、ミトは少し遅れて放尿を始めていた
まだ恥ずかしさが残る彼女は毎回アスナに紛れるように始めるのだ
ちょろろろろ
アスナと同じくらい溜まっているはずだが、勢いはそれほどではない
羞恥心による抑制が働いていたが、それはアスナより時間がかかる事を意味していた
“あなた”と出し終わったアスナに見られながら放尿を続ける
耳まで真っ赤にして全てを出し終わったミトをアスナが微笑ましそうに見ていた
二人は今度は四つ這いになって“あなた”に尻を向けた
自分たちが作った水たまりに足をついているが二人とも気にした様子はない
肛門を指で広げ、よく見えるように腰を高く突き出す
しばらくすると、二人の肛門から勢いよく大便がぬるりと這い出てきた
アスナから出てきたものは太く臭いもキツく量も多い
それは途中で切れずに床にキスをするように着地し、そのままとぐろを巻く
ミトは量が少なくアスナほどの臭いはしない
途中で何度も切れて積み重なったり、散らばったりしていた
出し終わるとアスナの体がブルっと震え、なんと陰裂から潮を噴き出した
“あなた”にアナルセックスを仕込まれた為、肛門の刺激で簡単にイクようになっていたのだ
ミトもアスナほどではないが感じてしまっていて、陰裂から愛液が垂れている
二人は上気した顔を“あなた”に向けて言葉を待つ
「終わったか?二人ともえらい気持ちよさそうやったな」
「これからもしたくなった時はわいに言うんやで」
「「はい…」」
アスナは発情しきった目で、ミトは恥ずかしそうに返事をした
二人の大便を処理した後、ついでに体を洗ってやる
柔らかいブラシにたっぷりの石鹸をつけてやって全身くまなく愛撫するように
特に尿道口と肛門を念入りに優しく擦ってやると
アスナは嬌声をあげ、ミトは恥ずかしさと心地良さの混ざった表情で甘い声をあげる
「今日もゴシゴシありがとうございましたぁ」
「ありがとうございました…」
よだれを垂らしながらへたりこみアスナが礼を言う
ミトもうっとりとした目でこちらを見上げる
しばらくすると二人は立ち上がり、潤んだ目で“あなた”を見つめる
「今度は団長を綺麗にしてあげます」
お互いの体を洗いっこするかのように石鹸で泡立てる
“あなた”の服を脱がせると、前からアスナ、後ろからミトが抱き着いてくる
「んっ…んっ…んっ…」
肌全体をぴったり密着させるかのようにくっつき、体を上下に揺らす
しっとりしたアスナの肌が吸い付くかのように“あなた”に奉仕する
数えきれない程繰り返されてきたそれは円熟の極みだ
「団長、痒い所はありませんか?」
石鹸の泡に包まれながら、アスナが優しく尋ねる
「大丈夫や。お前の肌、気持ちええなぁ」
褒められたアスナは嬉しそうに笑う
ミトも同様に“あなた”の背中を流している
こちらは一生懸命さが感じられる動きだ
やや強い力で艶やかで弾力のある肌と胸が押し付けられる
「深澄、そのくらいの強さで丁度ええで」
「分かりました……」
頬を染めながら泡立った体を擦りつけるミト
どうやったら“あなた”に喜んでもらえるかだけを考えて動いていた
二人は納得いくまで“あなた”の体を磨き上げていた
毎日繰り返される三人の時間によって
アスナとミトのわだかまりは溶けてなくなってしまっていた
初めは信頼を裏切って街で不意打ちを仕掛け
えげつない調教をしてきたアスナを忌避していたが
毎日毎日、どれだけ拒んでも顔を合わせる度に
熱烈に心と体両方で好意をぶつけてくるアスナに
抵抗するのがだんだんアホらしくなり
ついに根負けしてその気持ちを受け入れてしまった
その後、改めてどうしてこんな事をしたのかを聞いてみた
「大好きな深澄が自分を責め続けるのが見ていられなかったの」
「だから、深澄を団長の奴隷にしてもらったんだよ」
「は?どういうこと!?」
何度か聞きなおすと、どうやら荒療治的な事を考えていたらしい
とても正気とは思えないが、明日奈なりの自分を想った行動であり
助けられなかった罪悪感をまだ持っているとまた奇行に走られかねないので
これ以上悩むのはもはや人生の無駄だと悟った
誘拐犯とその被害者とさらにその被害者という三人の異常な生活も
慣れてしまえば思いの外楽しく快適だった
異常な怪物に見えた男も、何年も見ているとただの弱い小心者だという事が分かり
長い間一緒に過ごすにつれて、しょうがない人だなぁという気持ちになった
(そもそも団長が明日奈を攫うからこうなったんだけど)
(今は二人でイチャイチャしてるし、その中にあたしも引きずり込まれたし、もうわけわかんない)
(もういいや、この二人に全部責任取ってもらおうっと)
ミトはもう開き直っていた
「団長、現実に戻ったらどうしましょう?」
就寝前にベッドの中でミトが問いかける
この話題はここ最近何度も繰り返されていた
二人とも何かを予感しているのかもしれなかった
「現実に戻ってもまだわいに関わりたいんか?」
「お前ら、ええとこのお嬢さんやろ」
「はい」
アスナが即座に答える
「だって、団長はもう私の一部ですから」
「深澄もそうなんか?」
「……はい」
彼女たちは現実世界での再会が当然のものと思っていた
「絶対に迎えに来てくださいね。私は結城明日奈…世田谷区宮坂…」
「私は兎沢深澄、私立エテルナ女子学院中等科3年生…」
毎夜毎夜、現実世界の自分の情報を唱える二人
“あなた”が自分たちを絶対に忘れないように
自分たちを壊したひどい男をけして逃がさないように……
本当なら“あなた”の個人情報を押さえておきたいのだが
頑として口を割らないので一旦諦めた…フリをした
だがもし、“あなた”が迎えに来ないような事があれば…
(その時は家の力でも何でも使って捕まえます)
(捕まえたら…その時は……ひどいですからね…!)
本人の口から決定的な情報が出なくとも
こうして何年も一緒に居れば、漏れ出てくるものや
おおよそ見当がつく事がある
ましてや自分たちはもうそのつもりで毎日探りを入れたり観察したりしているのだ
“あなた”の断片的な情報はもうかなり集まっていた
そこに明日奈の執念深さと深澄の明晰な頭脳が加われば
どういう結果になるか火を見るより明らかだった……
ただ、“あなた”から迎えに来てくれた方が少女たちにとっては嬉しいので
あえて主導権を握らせたままにしているに過ぎない
現実世界では明日奈たちの方がずっと狡猾でしたたかだった
明日奈たちが従順な奴隷だと軽く見ている愚かな男は
脳天気に笑いながら言った
「まぁ、心配すんなや」
現実に帰る事が見えてきて、支配と被支配の関係が逆転しつつある事に気付いていない
明日奈と深澄は着々と現実に戻った後の戦いの準備を進めていた
その日は唐突に訪れた
夜半過ぎ、突然部屋全体が青白い光に包まれた
「これは……」
「ログアウト現象やな、誰かがクリアしたんやな」
“あなた”の冷静な声が響く
彼だけがこの状況を冷静に受け止めていた
「イヤっ!!離れたくない!!」
アスナが必死に“あなた”にしがみつく
ミトもまた、涙を流しながら彼の腕を握りしめた
「大丈夫や。また会える」
二人を優しく抱き寄せながら、口づけを交わす
空間が徐々に分解していく中
三人は抱き合ったまま最後の時間を過ごす
「きっと来てくださいね、あんまり待たせたらイヤですよ」
アスナの囁きにミトが無言で頷く
「こらぁ逃げられんな」
軽口に二人は怖い笑みを浮かべたが
男はアホなので全く気付かなかった
そして完全に分解が始まるその瞬間、三人は一つになった
それぞれの意識が混ざり合い
そして永遠の別れとなるはずだった現実世界への旅立ちが
まるで天国への門出のように輝いていた