異世界で、好き勝手して、生きていく 作:瑜伽
「それでは、条件に合う方に声をかけてみますが、あまり期待はしないでくださいね」
ミラに抜いて貰ったあと、お互いに身形を整え、俺たちは再びソファーに腰掛け、向かい合っていた。
「本命は職業斡旋所なので、声をかけて下さるだけで助かります」
俺は不安そうにしているミラに対し、明るく言った。
実際に話を聞いた感じ、所属する層が違うのがわかった。
ダメで元々と言うやつだ。
「それに伝言の件もありますし、またちょくちょく顔を出します」
俺の求める条件とは、10代から20代の女性で、ある程度長期で働ける人。
そして喫茶店の仕事に前向きで、特定のパートナーがいない事。
今は裏メニューなんてやってる場合じゃないからな。
相手がいない人間は通常メニューで身体を提供してもらおう。
俺が思い付きで決めたルールだが、なるべく守って行きたい。
「かしこまりました、本日は冒険者ギルドにお越しいただきありがとうございました」
ミラが俺に対し頭を下げた。
「…………」
その姿を見て、俺の中で少しの悪戯心が湧き上がった。
「あ、ちょっとの間だけ制服をまくりあげて下さい」
俺の言葉に顔をあげたミラは不思議そうな顔をした。
「はぁ……?かしこまりました」
言いながら自分のベストとシャツを持ち上げるミラ。
大人っぽい黒色のブラジャーがあらわになる。
俺がそれを胸から外すようにずらすと、少しだけ大きい桃色の乳首がまろび出て来た。
それに対し、俺は口元を近づけた。
「あの、いったいな……っ〜〜!?♥」
ミラの疑問の声は俺が思い切り彼女の乳首を吸った事でかき消された。
「っ〜〜〜〜〜♥」
声にならない声をあげるミラ。
客からの用件も片付き、職員としての対応も終わりだと油断していたはずだ。
その状態から突然乳首を強烈に吸われ、驚きもひとしおだろう。
先ほどは散々手のひらで弄ばれたのだ、文字通り。
これくらいのお返しはいいだろう。
右と左、しっかり両方とも吸い終わった俺は彼女の胸から口を離した。
「……ふぅ…………もう大丈夫です」
俺が離れると、下着や制服を整え始めたミラ。
こちらを軽く睨んでいるがその頬は赤く染まっていた。
「……♥あの……驚きますので、急に胸を吸うのはやめてください♥」
制服の乱れをなおし、隙なく着こなしたミラがこちらに文句を言う。
行為自体では無く、突然やられた事に対し怒っているのが、この力の強さを再認識させてくれる。
満足したし今日はもういいな。
「次からは気を付けます。それじゃあ今日はこれで帰りますね」
俺が軽く言うと反省していない事が伝わったのか、彼女は軽くため息をついた。
言っても仕方が無いと感じたのだろう、気を取り直すように挨拶を返して来た。
「……本日はありがとうございました」
*
俺が冒険者ギルドから出た時には、既に日は落ち、街灯が灯っていた。
どうやら思ったより時間が経っていたらしい。
急ぎ足でリディアのいる喫茶店に帰って来た。
すでに営業時間は過ぎていたようで、看板にはクローズの文字。
俺はそのドアを開き、カウンターに立って料理をしていたらしいリディアに挨拶をした。
「ただいま」
ドアが開く音と、俺の声に気が付いたリディアがこちらに顔を向けた。
「あっ、おかえりなさい、クルスさん」
既に仕事着から普段着らしき服装に着替えていた。
今は完全にプライベートな時間なのだろう、簡素な白のワンピースが眩しい。
「今日の晩ご飯を作ってくれてるの?」
俺の疑問に笑顔で返すリディア。
「はい、もうすぐ出来上がりますので少々お待ちください」
彼女の言葉を受けてさらにお腹がすいてきた。
まずは買ってきたものを部屋に置いてこよう。
「わかった、部屋に戻ってるね」
俺はリディアに声をかけつつ、自分の部屋に向かうため、階段を上って行った。
その背に彼女の「わかりましたー」と言う返事を受けながら。
*
「それで、明日時間は作れそうかな?」
リディアの手料理に舌鼓をうったあと、1階のテーブル席で俺は彼女に相談していた。
内容は今日出歩いて疑問に感じた事と、職業斡旋所へ一緒に行ってほしいというモノだ。
「そうですね。こういうことは早い方がいいと思いますし…………明日は午後からの営業にして、午前中に済ませちゃいましょうか」
テーブル席の対面に腰かけたリディアは、少し悩みながらも承諾の返事をくれた。
職業斡旋所について聞いてみたところ、彼女自身は一切利用したことがなく、そこまで大きい場所でも無いそうだ。
リディア曰く、こちらでは基本的に家業を継ぐ人が一般的で、実家が無理なら親戚。
それもダメなら顔見知りのご近所さん、といった形で、いわゆる縁故採用で働く、という場合が多いらしい。
日本ではあまりいいイメージは無かったが、全く知らない人間を採用するより、そちらの方が安心なのだろう。
道理でこの街に訪れた初日、店の前で求人募集の張り紙なんてのを見かけなかったはずだ。
そうなると気になってしまうのが、職業斡旋所の人材だ。
本当に大丈夫なんだろうか。
「そこを利用する人っていうのは、問題がある人が多かったりする?」
リディアが知ってるかは分からないが、聞いてみよう。
俺の疑問に彼女は自身の指を顎に当てながら、小首をかしげつつ教えてくれた。
「……私も詳しいわけでは無いですが――」
彼女が言うには、職業斡旋所に登録する際、勤め先で問題を起こせば違約金を払う契約を行うらしい、もちろん募集する側にも、雇った人間に不当な扱いをすれば罰則がある。
その為、そこまで心配する必要は薄いようだ。
あくまでも働く場所が無くなってしまった人や、身の回りの職種と合わなかった人ばかりらしい。
それを聞いて俺は少し安心していた。
「そう言えば、斡旋所を利用するには住民票がいるって聞いたけど、リディアは持ってるの?」
多分持っているだろうが、念のため聞いておかねば。
「……? あぁ、もちろん持ってますよ。この街でお店を開く際には、住民票が無いとかなり税金が取られちゃいますので」
リディアは何故そんな事を聞くのかと、一瞬不思議そうな顔をしたが、俺が田舎から出て来たと言っていた事を思い出したのだろう、すぐに教えてくれた。
どうやらクラヴェルの街では、店を開く際に住民票が無い場合、とんでもない税金がかかってしまうようだ。
他所から来たばかりの商人が好き放題しないよう、地元の商売を守るという側面もあるのかもしれない。
「そうだったんだ、ところでリディアは家業を継ごうとは思わなかったの?」
先ほどの家業の話を考えると、少しだけ不思議だった。
喫茶店が子供の頃から憧れとは聞いていたが、何か理由があるんだろうか。
俺の問いかけに対し、リディアは何故そんな事を聞くのか、といった顔をしながら口を開いた。
「思わなかったですね、両親も好きにしなさいって言ってくれましたし。喫茶店に憧れがあったので」
リディアはあっさりと答えた。
反対なんかはされなかったらしい、理解のあるご両親なんだろう。
俺は自分の両親の事を思い出して、少しだけ複雑な気持ちになった。
この世界で好き勝手に生きる事で、俺は何かになれるだろうか。
ギルドでミラに相手をしてもらった後、弟とあの子に少しだけ向き合えたように。
「…………」
ミラの事を思い出していたら、彼女の裸体まで蘇ってきた。
あの子にそっくりの顔、桃色の髪、桃色の瞳、濃い桃色の乳首。
同時に大きく快楽を与えられた手のひらの感覚すらも。
朝にオナニーで出し、夕方にはミラに手でイカされた。
歩き回って疲れているし、実際性欲もそこまで湧いていない。
「……?どうかしましたか?」
俺が無言になったのを見て不思議そうにするリディア、彼女も今日は朝早くから起きているせいで、疲れているはずだ。
明日は午前中のうちに職業斡旋所に行かないといけないし、さっさと寝ておきたい気持ちもある。
ブラック企業勤めの頃のように、健康を切り売りするような生活はしたく無い。
そう考え、俺は決断した。
「何でもないよ。リディア、この家にマスターキーみたいなものはあるかい?」
俺の唐突過ぎる話題の転換に、目を丸くしたリディアだったが、すぐに答えてくれた。
「……はい。こちらの店を買い取った時に、防犯のため全ての鍵を取り換える必要があったので。その際にマスターキ―も作ってあります」
どうしてそんな事を聞くのだろう、といった表情をしているリディア。
なるほど、考えてみれば当然か。
前オーナー時代に作られた鍵で勝手に侵入し放題、となると安全も何もない。
それに鍵のかけられる個室を客にレンタルする予定だったのだから、何かあった時のためにマスターキーくらいは作っておくか。
「そっか、それじゃお願いがあるんだけど――」
俺は内心の興奮を隠しながら、彼女に一つお願いごとをすることにした。
明日が楽しみになって来た、今日は早めに眠るとしよう。