※この作品はR-18です。

冷血無表情な保健室の先生に、事務的に性処理してもらう話。   作:東雲(しののめ)

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第1話

「――ここにクラスと名前を書いてください」

 

 俺は体育の授業で膝に怪我をして保健室を訪れていた。

 対面する養護教諭の女性から、診察のための用紙が渡される。

 

「症状の欄は私が記入するのでそのままで結構です」

 

 渡された紙に言われたとおり書き込んでいく。

 

「二年B組、三橋英太(みはしえいた)さんですね」

 

 先生は確認するように、俺の名前を淡々と読み上げた。

 怪我といっても、転んで足をすりむいただけで、大した傷ではない。

 しかし流血していたこともあって、体育の授業を抜けて今ここに来ることになった。

 

「処置をするので動かないでください」

 

 消毒液の匂いが充満する保健室。

 俺は椅子に座ったまま頷く。

 養護教諭のその女性はまるでロボットのように、無駄のない事務的会話を交わすと、的確に消毒とテーピングをしてくれる。

 

(とっつきにくいけど、悪い人ではなさそうなんだよな)

 

 彼女は末原怜子(すえはられいこ)先生。

 生徒たちからは密かに『保健室の機械人形(マシンドール)』なんて異名で呼ばれている。

 年齢は二六歳。

 長い黒髪をおさげ風に一本にまとめていて、大きな胸に細い腰といったモデルのような容姿が特徴の人だ。

 

 しかし生徒からの人気は正直ない。

 というのは、『機械人形』という異名通り、とても冷たいからだ。

 かつては数多くの男たちが、彼女にアプローチをしたようだが全部玉砕、というか無視。

 仕事に関わることであっても常に言動が冷淡で、皆が妄想するような甘いイベントは一切発生しないのである。

 優れた容姿の女性でも、そこに夢がないのなら、当然ながら男たちの興味関心はなくなっていく。今ではむしろ忌避されているようになっていた。

 

「処置が完了しました。なにか違和感はありますか?」

「い、いえ。大丈夫だと思います」

 

 普通のことを訊かれているはずなのに、なんだか緊張して、ついこちらの口調も硬くなってしまう。

 

(でも本当に美人だよな……)

 

 その切れ長の瞳で見つめられると、やっぱり怖いけれど。

 服装も鉄壁であり、薄いセーターにピッチリとしたスラックス、その上に白衣を纏っている。胸チラやパンチラのチャンスは皆無である格好だ。 

 

「ではお大事に」

 

 末原先生は呆気ないほど簡潔に、自身の仕事が終わったと告げた。

 これまで噂で聞いていた通り、雑談の一つも生じないらしい。

 

「……ありがとうございました」

 

 俺は素直にお礼を言って立ち上がった。

 しかし膝を怪我していたこともあって、その瞬間に痛みが走りふらついてしまう。 

 前に倒れる――そう思った。

 

「あっ」

 

 だが頭を床にぶつけることにはならなかった。

 むしろとても柔らかいなにかが頭部を包んでいる。

 

(末原先生の――おっぱい!?)

 

 その正体は先生の双房だった。

 倒れそうなところを、身体で受け止めてくれたのである。

 

「気をつけてください」

 

 胸が生徒に当たっているのに、彼女の鉄面皮はピクリとも動かない。機械的に受け答えをするままだ。

 

「三橋さん?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいね」

 

 まだ上手くバランスが取れなくてと言うと、彼女は分かりましたと言った。

 俺はそのまま一秒でも長く、先生の胸を感じていたいと思ってしまっていたのである。

 

(良い匂い……)

 

 胸元を深く吸い込むと、柔軟剤と女性の香りが混ざった、なんとも甘美な匂いが鼻腔をくすぐった。

 機械だ人形だと呼ばれても、末原先生はやっぱり女なのである。

 

「三橋さん、大丈夫ですか?」

「も、もう少しだけ……」

「一応確認させてもらいますが」

 

 先生は一呼吸置いて。

 

「セクハラ――しているわけではないですよね?」

 

 俺はその言葉で我に返った。

 そうだ、自分は今あきらかにセクハラをしていた。

 あまりにストレートに指摘されたので、俺は驚いてすぐに顔をあげ距離を取る。

 もはやその動きは足に痛みがある人間ではないだろう。

 

(ま、まずい。もしかして怒られる……いや訴えられるとかも……)

 

 最悪のケースが脳裏に浮かぶ。

 なにせ相手は『機械人形』と呼ばれる先生、温情なしに処罰を下す可能性は大いにある。

 俺は欲望に身を任せたことを、今さらながらに後悔した。

 

「もうしっかり立てますね」

「え」

「なんですか?」

「い、いえ、しっかり立てますし、歩くこともできそうです」

「そうですか。もし時間が経ってもまだ足下がふらつくようであれば、念のため医療機関を受診してみてもいいかもしれません」

「わ、分かりました」

 

 ……。

 …………。

 ………………特に怒っていない?

 

(俺が胸の感触を楽しんでいたことぐらい、やられている本人が一番気づいているはずだろうに)

 

 この先生は何も言わなかった。

 いつも通り、喜怒哀楽のない顔で目の前にいる。

 

「では、お大事に」

 

 彼女は軽く会釈をすると、俺がまだ退出していないにもかかわらず、机に向かって書類作業を始めて

しまう。

 本当に、まるで何も起きなかったかのようにだ。

 俺は唖然としていた。

 

「お、お世話になりました」

 

 なんとかお礼を口にし、壊れた機械みたいな変な足取りで保健室を出た。そして壁に背をつけずるずると床に座り込む。

 

「痛い」

 

 怪我をした膝よりも、股間がずっと痛かった。

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