冷血無表情な保健室の先生に、事務的に性処理してもらう話。 作:東雲(しののめ)
「いたた……」
「どうしたよ三橋」
末原先生とのことがあって数日。
教室で一緒に昼食を食べていた、友人の斉藤が首を傾げた。
「朝から頭痛がして……」
「風邪か?」
「偏頭痛だと思う」
「あらら、かわいそーに」
斉藤は一年生時から同じクラスで、高校では一番親しくしている男子生徒だった。
付き合いがある程度長いこともあり、からかうように笑っている。
「保健室で頭痛薬でももらってきたらどうだ?」
「保健室ね……」
彼の助言に、俺は難しい顔をしてしまう。
「行きたくない気持ちは分かるぜ。末原怖いもんな」
「怖いって言うか……」
確かに先日までそう思っていた。
しかし処置は完璧だし、倒れそうなところを受け止めもしてくれた。
一概に畏怖すべき人だとは言い切れなかった。
「いや怖いだろー」
斉藤は笑いながら、自分が所属しているサッカー部で起きたことを話してくれた。
「チームメイトが練習中に怪我してさ、ものすごい大出血したことあったんだよ。女子マネなんか大絶叫。俺たち男子も正直ドン引き」
「へぇ」
「でも末原は眉を一ミリだって動かさずに黙々と手当てしてさ、終わると『ではお大事に』なーんて一言だけ言って去ってたんだぜ」
斉藤の物真似が若干似ていたせいなのか、その時のことが容易に想像することができた。
「普通なにか顔に出るよな」
あの人なら血ごときで動揺したりしないだろう。
なんだったら地球が滅亡する時だって平然としている気がする。
「ほんとロボットみたいな教師だよな」
「まぁ……」
「あれじゃあ男も女も寄りつかんわ」
彼はまたからかうようにそんなことを述べる。
「というのはさておきだ、辛いなら大人しく薬もらってこいよ」
「ああ」
「安心しろ、骨は拾ってやるから」
「俺は戦場に行くわけじゃないんだけど……」
あくまで行くのは保健室である。
だけど彼の言う通り、頭痛ごときで躊躇うなら、今後の学生生活で保健室に行くことは一切できそうもない。
「昼休みはあと三〇分、急いで行ってこい」
斉藤は頑張れよと送り出してくれた。
それから教室を出て保健室に向かう。
到着するとノックしてから扉を開けた。
「……失礼します」
保健室には末原先生が一人でいた。
前回とまったく同じ鉄壁の格好で、姿勢良く書類作業をしている。
二つあるベッドも空いており、他に生徒はいなく閑散としていた。
「あの、末原先生――」
「こちらにクラスと名前を書いてください」
「えっと、」
「症状の欄は私が記入するのでそのままで結構です」
以前来た時とまったく同じやり取りである。
「規則ですので」
彼女はそう言うと、俺が用紙に記入を終えるのをじっと待つ。
「二年B組、三橋英太さんですね」
やっぱり同じように確認される。
末原先生は、俺のことを覚えていないのだろうか。
「六日と二時間三七分ぶりですね。今日はどうされましたか?」
いや逆だった。
むしろ覚えてすぎている。
これは確かに怖いかもしれない。
「偏頭痛が少しあって……」
「偏頭痛ですね」
症状を伝えると、アレルギーや現在服用している薬などについて尋ねられる。
俺がそれに答えると、彼女は戸棚の中から錠剤を取りだした。
「ご自宅に薬はありますか?」
「いえ」
「それでは今夜分も併せてお出しします。食後一時間以内に服用をしてください。もし身体に異常があればすぐに医療機関へ」
「は、はい」
あまりにテキパキと動かれるので、答える俺の方も大変だ。
水の入ったコップを手渡されたので、それで錠剤を急いで飲み込む。
「ではお大事に」
この間およそ一〇分。
あまりに仕事ができすぎる人だ。
(でも……)
俺が保健室に行くのを躊躇ったのは、斉藤の言う通り末原先生がやりにくい人だという理由もある。
しかし自分にとって重要だったのは、もう一つの理由の方なのだ。
それが――
「……先生」
正直、俺はこの部屋に来てから頭痛が消えていた。
その代わりに下半身が、熱を持った痛みを全身に走らせている。
率直に述べるに、俺は先生に欲情していたのだ。
「他になにか?」
彼女は再び視線をこちらに向ける。
「あの、実はですね、」
俺は立ち上がった。
そして座っている彼女に、それを視認させる。
「どうしても、勃起が収まらなくて……」
今度こそセクハラで訴えられてもおかしくない。
しかし活路がないわけでもなく、あくまで症状として、つまり処置してもらうべき生理現象としてお願いすれば、もしかしたらと思ったのだ。
リスクの高すぎる賭けだが、もう我慢ができなかったのである。
「…………」
末原先生は、無言でそれを見つめた。
制服の奥で一物が隆起し、布地を山のように押し上げている。
「お願い、できませんか?」
固唾を飲んで、破裂しそうな心臓を抑え、そう口にする。
「この状態だと授業も受けられなくて……周りに見つかったらもう学校も来れないですし……」
もっともらしいことのように、俺は言い訳を重ねる。
末原先生は、数拍置いて、いつもの口調で言葉を紡ぎ出す。
「お願いとはつまり、私にそれを処置してほしいと?」
「はい……」
やはりダメなのだろうか。
不安で緊張が強まる中、末原先生はなぜか時計を確認した。
「次の授業まで約二〇分しかありません」
「? そ、そうですね」
「それまでに射精、できますか?」
「――!」
心臓が一段と高鳴った。
「遅漏の場合ですと難しいかもしれません」
「い、いえ! すぐに出ます!」
この機会を逃すわけにはいかない。
俺はプライドなんか気にせず、必死に早漏だと声を張った。
我ながら情けない言動である。
「分かりました」
末原先生は席を立つと、扉の鍵を閉めてしまう。静閑な空間にがちゃりと音が響く。
「ズボンと下着を脱いでください」
「は、はい!」
言われるがままに、慌てた手つきで制服を下におろす。
パンツを脱ぐと、勃起しすぎていたせいか、もわっとした蒸気が部屋に漏れた。
「包茎――ですか」
向かい会う先生が、冷めた目で一物を見下ろしている。
生徒のものを見ても何も動じない。
いわば彼女は無の状態である。
「真性包茎と仮性包茎、どちらでしょう?」
末原先生は喋りながらも、棚の中からゴム手袋を取り出した。
手術に使うような、手に隙間なくピッチリと張り付くタイプのやつだ。
どうやら処置だけあって、生ではしてくれないようである。
「か、仮性包茎です」
「では手で皮をむいてしまって問題ありませんね」
さらりとそう言われたが、俺はその言い方に少し引っかかる。
「真性だと、何か処置のやり方が違うんですか……?」
「真性包茎は様々な要因から、皮と亀頭が固く癒着してしまっているケースが多いとされます。なのでその場合、私は舌を使いゆっくりと時間をかけながら皮をむいていきます」
「ゆっくりってどれくらい……」
「患者によって個人差はあるでしょうが、平均的に一時間はかけます」
「…………」
や、やってもらいたいッ。
想像しただけでも勃起の痛みが増してくる。
「今なら手術で皮自体を切除する方法もありますが、高校生では難しいでしょうね」
こちらの欲望などつゆ知らず、先生は律儀にそんな補足をしてくれる。
「先生、俺も真性の――」
「あなたは仮性包茎なのでしょう。それに今は時間がありません」
バッサリと断れられる。
「触りますよ」
先生はそう告げると、立って向かい会った状態のまま、その右手を俺の男根へと滑り込ませた。
生の手とは違う、ゴムのツルツルとした感触が伝わってくる。
「あぁ……」
「皮、むきますね」
ゴム手袋の感触に浸る暇もなく、輪っかにした指で亀頭の下あたりを握られる。
そしてスローに根本へと皮が引っ張られた。
皮がむけていく部分から、カウパーが漏れてぐちゃーっという小さな音を立てる。
「先生……!」
「慌てない。もうすぐです」
輪っか状の指が根本まで到達する。
そして赤く充血し、自身の我慢汁で濡れた亀頭が現れた。
(これだけで、もう……!)
遅漏かどうかなんて心配されたが、それは彼女の杞憂である。
「では、しごきます」
先生は竿を握ると、まずはカウパーを全体に馴染ませるように手コキを始めた。
表情や言動とは打って変わり、優しい手つきである。
「痛くありませんか?」
にちゃ、にちゃ、にちゃと音を鳴らしながら。
目の前で淡々と案じられることに、俺はとても興奮していた。
「すごく、気持ち、いいです」
「そうですか」
初体験ながら、ゴム手袋の感触がちょうどよくて――
「というかもう、やばいかも、です……」
「まだ始めたばかりですが?」
「いや、でも、耐え……ますっ」
末原先生は、機械のように同じペースのまま手淫運動をする。
「耐えないでください。これは処置なのですから」
先生の手つきが変わる。
正確には右手で竿をしごいたまま、余っていた左手で亀頭を愛撫し始めたのだ。
「うあッ」
左手は優しく亀頭を握り込み、掌でこすったり、指でぐにぐにと圧をかけたりと絶え間なく刺激を送ってくる。
本気の搾精――すぐにでも射精させる気なんだと、そう感じた。
「先生、俺、童貞で……」
「そうですか」
「だから手加減……」
「しません」
次の授業がありますという目が語っていた。
「そもそも私はあなたの恋人ではありません」
ごもっとも。
こんなお願いをすること自体が間違いなのである。
「もうすぐですね」
「っぐ……」
先生は容赦ないテクニックで、一気に絶頂へと導こうとする。
「ですから我慢しないでください」
「でも……」
俺はこの機会が惜しかった。
やっぱり我慢しようとしたところを見透かされる。
「処置とは言え、射精するなら気持ちよく射精すべきです」
「う……」
それでも踏ん切りがつかない俺を見て、
「何か要望があれば聞きますから」
先生は無表情だけれど、どこか仕方ないというような雰囲気で、そんな提案をしてくれる。
「き――」
俺はそれに乗る。
いや乗るしかなかった。
既に我慢などできる状態ではなかったのだ。
「キスしながら、出したいです」
なんとか絞り出したその言葉。
彼女は分かりましたと頷き、一歩前進して身を近づけてくれた。
「ン――」
軽く顔をあげた先生に、唇を重ねる。
舌と唾液が混じり合い、お互いの喉を鳴らした。
これが俺の、ファーストキスである。
「んあ……」
「っ、す、末原先生……」
「口を離さないでください。キスしながら射精するのでしょう」
「ッ」
俺は両手で先生の身体を抱いた。
そして口をぴったりと当て、必死に舌を突き出し、唾液を送り込む。彼女はそれを平然と受け入れ、下半身に絶え間ない快楽を送り続けてくれる。
「――射精してください」
耳元でそう告げられた瞬間、俺は臨界点を越えた。
臀部から背中にビリッと電流のようなものが走り、全ての感覚が鈴口へと集中する。
そして一気に、白く濁った精液が吐き出された。
ゴム手袋の中に、どくんどくんと脈打ちながら排出していく。
「せんせ――」
「もう少しです」
先生の舌がぐっと一つ奥に入ってくる。
甘い唾液が俺の喉を潤していく。
彼女は手コキを続け、溜め込んだ精子を完璧に搾り取った。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
完全に出し切ると、俺は机によりかかった。
自力で立っていられなかったのだ。
「これで処置は完了です」
末原先生は、両手にこびりついた大量のザーメンを見た。
そして手袋を丁寧に外し、中のものが零れないように口元を縛ってしまう。
特に飲んだり舐めたりしてくれる様子はない。
「使ってください」
ウェットティッシュを渡され、自分で拭くように促される。
俺は脱力感から何も言えず、素直にそれに従った。
「次の授業まであと五分、間に合いましたね」
「末原せん――」
「三橋さん」
俺の言葉を遮って、彼女は一言で今日のことを片付けた。
「ではお大事に」