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この一年、朝来玲の日々は穏やかなものだった。
法律事務所の事務員として働きながら、妹の莉乃と送る日々は幸福だ。さらに玲には恋人もでき、彼女も交えた三人での暮らしは順調そのものだ。
金曜日の夜は映画を観る。玲を真ん中に、右側は莉乃、左側は恋人の鳥羽美沙希(とば・みさき)に挟まれて観る映画は思った以上にベッドシーンが多いものだった。
「……ね、玲……?」
ベッドシーンの間中そわそわしていた美沙希は、映画が終わるや否や玲の袖を引き、二人の私室へと誘う。
「……そうね。じゃあ、莉乃。おやすみなさい」
「え、もう行っちゃうの?」
莉乃はまだまだ三人で過ごすつもりだったのだろう、立ち上がって寝室に戻ろうとする二人をぽかんと見上げている。
「ええ。莉乃も早く寝るのよ」
「えー……」
渋る莉乃に、美沙希も微笑みかけて。
「ごめんね、莉乃ちゃん。……おやすみなさい」
そう言って、二人は寝室へ。
――玲が後ろ手にドアを閉めると同時に美沙希は玲を抱きしめた。
「……美沙希……」
薄暗い室内、抱き合う二人のシルエットがほのかに浮かび上がる。
勢いよく抱きついたせいか、美沙希のウェーブヘアが大きく揺れる。玲は半年ほど前に、長かった髪を肩より上で切り揃えていた――それでも短い毛先はわずかに揺れて、玲が美沙希に身体をすりつけていることが分かる。
「玲、……玲……」
美沙希の手が、玲のTシャツの内側を潜ってブラジャーを脱がせる。
映画のベッドシーンですっかり気持ちが盛り上がった美沙希の求めに玲は応じる。唇を何度も重ねるキスはすぐに深く変わって、二人は互いの身体をまさぐりながらベッドに倒れ込んだ。
「ん……」
口づけの間も、美沙希は玲を見つめたまま。
ベッドでもつれ合ううち、美沙希が玲を押し倒す格好になっていた。自然なカールを描く美沙希の黒髪が玲の顔をくすぐり、思わず漏れた吐息も美沙希に吸われる――あれよという間に二人の手は互いの素肌を撫で回し、潤んだ場所に指は沈みだす。
「……ぁ……」
うっとりと声を漏らす玲に、美沙希は目を細めて笑む。
「玲、もうこんなに濡れてる」
「ん……」
美沙希の指が玲の膣口をまさぐるだけで、ピチャピチャと豊かな水音が響き渡る。
「すぐ濡れちゃうのね。どうして?」
「――」
微笑まじりの美沙希の問いかけに、玲は答えられない。
――攫われた莉乃を救い出してからも続いた忌まわしい出来事の余波か、玲の身体は人並み以上の感度になっていた。
出会い、愛を育み、同じ家で暮らすようになった今も、玲はあの出来事を美沙希には語っていなかった。自分の感度の高さに後ろめたさを覚えてしまうのは秘密を抱えたままでいるせいか――などという考えも、美沙希の指が膣内をさすり始めると霧散する。
「……っ、ん……そこ……」
「ここ、好きだものね?」
数え切れないほど愛を交わし、美沙希は玲の弱点を知り尽くしていた。
濡れきった膣内を泳ぐ美沙希の指先はゆるやかな往復運動を繰り返す。
「ん……っ、……好き……美沙希……」
ぬぷぬぷと出し入れが続くだけで玲は身体の髄まで溶けてしまいそう。
玲の指も美沙希の膣内。やさしく指を旋回させれば美沙希はもどかしそうに腰を揺らし、玲の頬や唇に何度もキスしながら指を抜き取る。
「……ぁ……」
指が抜ける瞬間、腰を跳ねさせる玲。
「玲、見て」
囁く美沙希は、玲の前に抜いたばかりの指先を突き出す。
挿入っていた人差し指は付け根までテラテラと濡れ輝いていた。照明を絞った室内、薄明かりに煌めく蜜液をたっぷり見せつけた美沙希は、その指を自分の口元へ持っていく。
「……ふふ」
微笑をこぼす唇が、糖蜜に濡れる。
濡れた唇が玲の唇をついばむ。自分の愛液が唇に触れた不快感はまったくなく、玲は美沙希とのキスの歓びに浸るのみ。
「ん……美沙希、もっと……」
唇を交わす合間に呟く玲は、腰を浮かせて美沙希の秘所に淫裂を押し付けている。
行為を重ねるたびに符号は増える。仰向けになった玲が腰を浮かせて秘所を擦り付けだすと美沙希はクスリと微笑み、玲のヒップに手を回す。
「こっちも欲しいの?」
分かっているだろうに尋ねる美沙希。
「……ん……」
薄暗がりでも分かるほど玲の顔は赤くなっていた――玲が小さく頷くと見るや、美沙希は笑みを深めて尻割れを寛げる。
「玲、ここでも気持ち良くなるものね」
笑みを含んで囁きながら、玲の肛門の皺をなぞりだす美沙希。
「っは――ぁ、……ん……」
美沙希の膣内をゆるく探っていた玲も指を抜くと、濡れた指で美沙希のアヌスをなぞる。
「……っあ……」
すると、美沙希は玲以上に顔を赤らめて動きを止めてしまう。
豊かな丸みをたたえた美臀がそわそわと動きだす……玲を責めていた時とは打って変わって羞じらいを強めた美沙希は、薄闇の中で玲を見つめて。
「……そこ、するの……?」
探るように、玲に問いかける。
――玲と出会う前から年相応の性経験はあった美沙希だが、後ろ穴は経験どころか触れたことすらなかった。
玲とのまぐわいを経てアヌスを責めることを覚えはしたものの、自分のものに触れられることには抵抗があるらしい。しばらく玲に窺うような視線を向けてから、美沙希は玲の菊門に指先を挿れて。
「……優しくしてね?」
囁きながら、見本を示すかのように玲の裏穴を探り始めた。
アナルセックスの経験もある玲からすれば物足りないくらいの優しさだが、美沙希に触れられているのだと思えば心地よい。目を細めた玲は、美沙希の指遣いに倣ってゆっくりと彼女の菊門に指を沈め始める。
「……ぅ、ん……」
美沙希が漏らすあえかな声には、確かに歓びの色がある。
「美沙希も感じてる」
「もう……玲のせいよ」
恋人同士の睦言を交わしながら、二人の指は互いの菊肉を進んでいく。
深く沈むことは目的ではなかった。膣とも違う粘膜の連なりを確かめ、素肌から直腸まであらゆる場所の温度を味わうことで愛を交わすこと――それが、二人にとってのセックスだった。
「ん……ねえ、こっちも……」
アヌスの刺激だけでは物足りなくなった美沙希の声は甘い。
互いの恥丘を押し付け合えば、濡れきった淫裂が綻ぶ。粘膜が触れ合えば二人はもう止まれず、腰も指も止まらない。
「っあ……ああッ、玲……っ!」
玲の上、高い声を上げる美沙希は玲の割れ目に淫裂を押し付けて腰をグラインド。
短く揃えた陰毛越しに蜜部がこすれると、玲の腰は震えだす。美沙希の菊座を思いきりえぐりたくなる気持ちは抑えられるも声は止まらず、美沙希の嬌声より一段低い喘ぎがこぼれ出る。
「ん……う、っは……はあっ……!」
互いの喘ぎに呼応して嬌声は高まる。
性のボルテージが上がるほど寝室の湿度も上がるような気がする――愛する恋人しか目に入らない二人は、壁を隔てた隣に莉乃がいることすら忘れて声を上げてしまった時。
二人の情交を遮るように、寝室のドアが叩かれる。
「――お姉ちゃん、美沙希さん!」
ドアを隔てた向こうから聞こえる莉乃の声は、拗ねと怒りが混ざったもの。
「声! 声聞こえてるから!」
声を張る莉乃だが、二人の世界に没入してしまった玲と美沙希のまぐわいは続く。
溢れて止まらない淫蜜に恥丘全体が濡れていた。火照った裸身で絡み合う玲と美沙希は舌を絡めるのに忙しく、莉乃に返事をする余裕はない。
「っは……ん――ぁあ……っ!!」
「ふ……ぅ……――あぁっ、あぁあ……っ!!」
エクスタシーの時が迫って、喘ぎに焦燥感が交じる。
美沙希の乳房は重力に従って玲の乳を上から押し潰しにかかっている。豊かな乳肉に対して小粒な乳首はすっかり尖り、コリコリとこすれ合っては爆ぜるような美悦を互いにもたらす。
「あ――玲、玲、玲っ……!!」
「んんっ……ん、んぅ……っ!!」
甲高い喘ぎを響かせながら、二人はオーガズムへ。
「あぁあ……っ!!」
「あっ――あぁ……!!」
淫靡に彩られた歓びの声が上がる――愛を交わす多幸感に打ち震える恋人同士の交わりは、まだまだ続きそうだった。
●
二人が絶頂に至る声を前に何度も抗議する莉乃だが、寝室にこもった恋人たちからは返事どころか反応もない。
諦めて自室に戻った後も、二人の声は聞こえていた。
「もう……!」
セックスを始めた玲と美沙希の声は大きいうえ、夢中になってしまえばノックの音も耳に届かない。いつものことながら莉乃の文句は聞き入れられず、むくれた莉乃は一人でベッドに潜り込む。
(するのくらい良いけど、ちょっとは気を使ってよ……)
壁の向こうからはくぐもった甘い声が伝わって、達した二人の行為はまだ続くらしい。
(……別に良いけど……)
姉の玲に恋人が出来て、莉乃からすれば姉が増えたようなもの。
玲より柔らかな雰囲気の美沙希は好ましく、三人暮らしになってますます生活は楽しくなった。
何より、玲に恋人が出来たことが喜ばしい。
――攫われ性奴隷となった莉乃を救い出すため、玲は自ら性奴隷に堕ちることを選んだ。
玲が受けた恥辱は想像を絶するもの。あの屋敷から解放された後も大変な目に遭わされた玲に恋人が出来たのは心の傷を乗り越えた証拠。
(でも、わたしのお姉ちゃんなのに)
玲と美沙希が仲良くしているのは嬉しいものの、隣室から聞こえる玲の喘ぎに複雑な気持ちは消えない。
(……わたしとさせられた時は、こんなに大きい声じゃなかったのに)
性奴隷だった頃、姉妹での責め合いにも加担させられた。
玲がどんな声でヨガるかは知っていたはずなのに、美沙希との行為に漏れ聞こえる玲の声はあの時とはまったく違う。あの時の行為よりずっと幸せそうな玲の喘ぎを聞くにつれ、莉乃は壁の向こうで行われている営みの想像が膨らんで。
「……」
こみ上げる衝動に従って、下半身に手を伸ばす。
コットン地のワンピースの裾を胸の上までめくり上げ、疼きが止まらない場所を布団の中であらわにする。ショーツの中に手を入れるとすでに潤いは充分で、莉乃は慣れた手つきで自分の性感帯をまさぐりだす。
「……ん……」
隣室から聞こえる玲と美沙希の嬌声に応えるように、莉乃も喘ぎを漏らす。
ラビアをかき分けた指は豊かな水気に沈む。クチュクチュと響き出す水音も甘い声も、隣室の交合にかき消されてしまう。
「っは……ぁあ……んん……っ」
隣の部屋では、玲と美沙希が何度目かのオーガズムを迎えたところ。
二人の甲高い叫びにつられた莉乃は細かく痙攣して、密かな悦びに震えるのだった。