新連載の次回作の募集で九尾さんのアイディアを元に今回の作品では、漫画家を目指す主人公たちの成長や、編集者との打ち合わせ、作品同士の競争といった『バクマン。』ならではの魅力を大切にしながら、原作とは異なる角度から漫画制作の世界を描いていきたいと考えています。
物語の中心となるのは、週刊少年ジャンプではなく、18歳以上の読者を対象とした架空の漫画雑誌『ジャンプBLACK』です。
長期連載や掲載順を巡る競争ではなく、一本ごとに題材や登場人物が変わる「読み切り作品」を積み重ね、その完成度を漫画家同士が競い合う構成を予定しています。
同じ題材を異なる作家がどう描くのか。限られたページ数の中で、どのようにキャラクターを立たせ、物語を完結させるのか。料理対決作品のように、それぞれの発想や作風がぶつかり合う展開を目指します。
主人公である綴木想真は、日常の小さな出来事から着想を広げ、キャラクターの性格と物語の流れに矛盾が生まれないことを重視する漫画家です。
普段は調子がよく、締切前でも余裕を見せるような人物ですが、作品へ向き合う場面では、登場人物がその行動を選ぶ理由に強くこだわります。そんな想真が、異なる才能を持つ漫画家たちと読み切り作品で競いながら、自分にしか描けない漫画を見つけていく物語となります。
漫画を題材とした作品だからこそ、作中漫画の内容や制作過程、編集者との意見の違い、読者からの評価まで、できる限り具体的に描いていく予定です。
原作の魅力を尊重しながら、この作品ならではの試みにも挑戦していきます。
最後まで楽しんでいただける作品を目指して執筆してまいりますので、これからよろしくお願いいたします。
こちらで様々な募集をしております。皆様の応募、お待ちしています。
https://h.syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=343390&uid=45956
漫画雑誌での連載というのは、かなり厳しい。
雑誌の数は多くあるが、そこで連載を勝ち取る事は困難である。
「綴木。お前の漫画、方向性が見えてきたな」
編集部の来客用ソファに深く腰掛けた担当編集の服部が、そう言ってネームをテーブルに置いた。その声には、 praise(称賛)というよりも、分類を完了した際の冷静な結論が含まれていた。
俺――綴木想真は、その言葉に思わず身を乗り出した。
「マジで!? 今回のバトル漫画、やっぱり刺さったか! 主人公の能力設定、三日三晩考えて勝負の地下鉄の模型使って……」
「いや。バトル漫画としての評価は、並ってところだ」
服部は眼鏡の位置を中指で直しながら、俺の熱量を物理的に遮断するように言った。
「……は?」
「お前は何でも描ける。コメディも、恋愛も、バトルも、今回のような日常ミステリーも。それ自体は才能だ。だがな、綴木。少年誌において『何でも描ける』というのは、『どこにも特化していない』と同義なんだよ」
胸に刺さる言葉だった。しかも、抜いた刃みたいにスパッと言ってくれる。
「読者は、作家に一つの強い骨を求めている。熱血バトルを極めるか、 笑いを極めるか。だがお前の作品は、毎回ジャンルが変わる上に、どれも七十点で終わる。面白いんだが、記憶に残らないんだ」
(五十点じゃなくて七十点なのが、逆に腹立つんだよな……)
俺はソファに背を預け、天井を見上げた。確かに、表彰台の真ん中あたりに常にいる男子生徒みたいなポジションだ。目立たないわけじゃない。だが、ファンが「次は何を描いてくれるんだ!」と待ちわびる感じではない。
「それに、お前の課題はもう一つある」
服部はネームの最後のページを開いた。そこには、主人公が絆を信じて敵を説得し、皆で手を取り合って夕日を見るコマが描かれていた。
「長期連載の耐性がない。設定は凝っているが、三話目には新しい展開のアイデアが枯渇している。それに……お前、暗い展開が嫌いだろ」
「だって、読んでて辛いだろ? 悲しいのは」
「分かる。だが少年漫画の連載は、泥臭い試練を読者に積み上げてこそ、クライマックスのカタルシスが生まれる。お前は途中で読者が傷つくのを恐れて、すぐにハッピーエンドへ逃げ込む。それじゃあ、連載戦争を勝ち抜けない」
俺は反論しようと口を開きかけたが、言葉が出てこなかった。図星すぎたのだ。
俺はハッピーエンドが好きだ。誰も死なず、誰も悲しまず、最後はみんなで笑い合える結末。それが漫画の醍醐味だと思っている。でも、この『週刊少年ジャンプ』という戦場では、それだけでは生き残れないらしい。
「結論から言おう。綴木、お前は少年誌向きではない」
服部は断定的に言った。
「は、はい……」
「だが、お前の発想力と、多様なジャンルへの適応力は本物だ。それを活かせる場所がある」
服部はカバンから一冊の雑誌を取り出した。表紙には女性の唇のアップと、血の滴が洒落たフォントで描かれていた。
『ジャンプBLACK』
「大人向けの漫画雑誌だ。長期連載ではなく、読み切りをメインにしている。お前の『一発勝負の思い切り』と『多様なジャンルへの適応力』、そして『短期間で物語をまとめる力』は、むしろこっちの方が生きる」
「……ブラック、ねえ」
俺は雑誌を受け取った。ずしりと重い。中をパラパラとめくると、暴力、犯罪、そして露骨な性描写。少年誌では絶対に通らないラインが、当たり前のように刷られている。
「大人向けって、これ……エロとかグロとか、そういう刺激だけの雑誌なんですか?」
「勿論、刺激は売りの一つだ。だが、本質はそこじゃない」
服部は眼鏡越しに俺を見た。
「恋愛、欲望、人間関係、犯罪、社会問題。少年誌では描けない『大人の事情』を漫画にする場所だ。一つの読み切りが一回の勝負だ。お前のやり方に合っていると思うぞ」
「……で、だ」
服部はまたしてもネームをテーブルに置いた。今度は、過去のデータをまとめたプリントの束だ。
「お前の過去作品のアンケート結果を見てみろ。最高順位を叩き出したのは、どの作品だ?」
俺はプリントの山をざっと見渡した。バトル、コメディ、ミステリー。いろいろ描いてきたが、ぶっちぎりで一位を取ったのは……。
「……『ミス・ハニートラップ』、ですか」
口の中でモゴモゴと答える。それは、三ヶ月前に掲載した読み切りだった。
「そうだ。怪盗のヒロインが、ターゲットの弱点を探るために潛入し、身体を張った(物理的にも精神的にも)末に機密データを盗み出す……という話だ」
服部が淡々とあらすじを語るたび、俺の顔面はカーッと熱くなっていく。
(な、なんで今になってその話を! あれは! あれはその、ギャグの延長線上にあるコメディであって!)
「綴木。正直に言え。お前、この作品を描いていて楽しかったろう?」
「えっ」
図星だった。
『ミス・ハニートラップ』のヒロインは、任務のためなら際どい衣装も恥じらいもポイ捨てする性格に設定していた。服が破れる理屈も、風の精霊の仕業とかじゃなく、敵の罠にかかった結果とか、リアルな不運として描いていたのだ。
「お前の描く女性キャラクターは、可愛らしいというより、艶かしい。無自覚に男を誘惑する動作や、湿った空気感の描き方が、妙に生々しいんだよ」
「い、生々しいって……」
「褒め言葉だ。少年誌の読者は、そういう『背徳感』に飢えている連中も少なくない。だが、同時にツッコミを入れられればセーフという空気もある。お前の漫画は、そのギリギリのラインを攻めている時が一番生き生きとしている」
服部はプリントを指差した。
『To LOVEる -とらぶる-』や『食戟のソーマ』。
どちらも少年誌の歴史に残る名作だが、同時に「エロティックな要素」をシステムとして組み込み、大成功させた作品でもある。
「お前の作風は、ラブコメの王道というより、彼らの系譜に近い。食欲も性欲も、人間の根源的な欲望をテンポ良く、かつ刺激的に描く才能がある」
「……それって、要するに俺はエロ漫画家に向いてるってことですか」
俺は少し拗ねたように言った。ペンを回す手が止まる。
「違うな。『男のロマンと欲望を、嫌味なく描ける作家』だ。そして残念ながら、今の『週刊少年ジャンプ』の編集方針では、お前のその毒気は少し抑えられすぎる。過剰な露出や、欲望に忠実なキャラクターの動機付けに、どうしても慎みが生まれてしまう」
服部は一拍置き、俺の目を真っ直ぐに見た。
「だから、新雑誌だ。『ジャンプBLACK』」
あのずっしりと重い雑誌が、再び視界に入る。
「そこなら、抑える必要がない。服が破ければ肌を描けばいい。欲望に忠実なキャラクターを、『そういうものだ』と肯定して描ける。お前の持ち味である、オールジャンルへの適応力も、読み切りという形式なら武器になる」
俺は黙り込んだ。
言われなくても分かっていた。『ミス・ハニートラップ』を描いている時、コマの隅々にまで息を吹き込む感覚があった。ヒロインの唇の描き方一つ、太もものライン一本で、ページ全体の空気が湿り気を帯びる。そのコントロールを、俺は無意識に楽しんでいたのだ。
「……服部さん」
俺は覚悟を決めて顔を上げた。
「俺がもしBLACKに行ったら、ただのエロ描き屋で終わるつもりはありませんよ。エロはあくまでスパイスです。物語の根底にあるのは、やっぱりハッピーエンドへの渇望ですから」
「分かっている。お前に足りないのは長期連載の構成力だが、読み切りなら一本勝負の勝負師になれる。審美眼は鍛えてやるから、とことんやれ」
服部はニヤリと笑った。上司の笑顔としては、かなり食えない類のものだったが、今の俺には何よりの頼もしさに見えた。
「……よし!」
俺はテーブルをバンと叩いた。
「いいですか服部さん。俺の描くエロは、ただ肌を出せばいいってもんじゃないです。そこに至るまでの心理描写、行動の必然性、そして最後のカタルシス! 全てが揃って初めて、真のハッピーエンドが生まれるんです!」
「口だけは立派だな。なら、最初の読み切りはどうする? 企画はまだだろ」
「うっ……」
痛いところを突かれた。移籍が決まった途端、頭の中はハッピーエンドの妄想でいっぱいだが、具体的な「題材」がまだ浮かんでいない。
(やべぇ、調子乗ってた。とりあえずエロいお姉さんが……いや、それだけじゃダメだって服部さんに言われたばっかだろ!)
「来週の会議までには、叩き台を持ってこい。いいな?」
「は、はいっ!」
俺は慌てて荷物をまとめた。新たな戦場『ジャンプBLACK』。そこで勝つための武器、それは俺の中の「欲望」と「物語」の融合だ。
さあ、仕事仕事! と自分を奮い立たせ、編集部を飛び出したのだった。
ジャンプBLACKのアンソロジーになる作品は?
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HUNTER×HUNTER
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NARUTO
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ONE PIECE
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鬼滅の刃
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ダイの大冒険
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チェンソーマン
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ドラゴンボール
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魔都精兵のスレイブ
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僕のヒーローアカデミア