その日、俺は、自分の中にある妄想を考えていた。
次の妄想を実現する為に。
編集部の個室。
ドアを閉めると外の雑音が消えて静寂が戻ってきた。狭い空間には日向さんの微かな香水の匂いとコーヒーの香りが混じっている。
「で、ここなんだけど」
日向さんは俺のネームをテーブルに広げた。赤ペンでいくつも修正が入っている。彼女の言う通り、羽良嶋さんの「セオリー」を意識しすぎたせいか、どこか矯正されたような動きになっていた。
「主人公が動くのはいいんだけど、動機が綺麗すぎるのよ。『彼女を救うため』『重荷を肩代わりするため』……それは編集者ウケのいい正論であって、男のドロドロした欲望じゃない」
「ドロドロした、欲望……」
俺はネームを見つめたまま呟く。でも正直なところ、日向さんの言葉半分しか頭に入っていなかった。
視線が、どうしても下に流れるのだ。
ノースリーブの胸元が大きく開いている。彼女が前かがみになってネームを指差すたびに、布地の隙間から深い谷間が覗く。柔らかな肌の曲面が、薄暗い照明の下でほんのりと影を落としている。俺の理性は、その影の深さに少しずつ削り取られていく。
(やべぇ……すげぇ、形いい……)
「聞いてる?」
「は、はい! 聞いてます!」
「嘘ね。目、完全に泳いでるわよ」
日向さんはふぅとため息をつき、ネームを伏せた。眼鏡の位置を中指で直しながら、俺の股間をチラリと一瞥した。俺のズボンの前が、どうにもならないほど膨らんでいるのを確認して、彼女はニヤリと笑った。
「あんたね、羽良嶋ちゃんに『欲望を描け』って言われてたけど、肝心のアンタ自身の欲望がこんなにあるじゃない。それを作品に注ぎ込まないでどうするの?」
彼女はスッと立ち上がり、俺の椅子の横に回り込んだ。香水の甘い香りが近づき、首筋が熱くなる。
「教育指導が必要ね」
日向さんは俺のベルトに手をかけた。指先が腹に触れた瞬間、腹筋がビクンと跳ねた。彼女の手つきには迷いがなかった。ボタンを外し、ジッパーを下ろす。ズボンと下着が一気に足首まで引き下ろされ、硬直した俺のモノが露わになる。外気に触れた先端が、熱を放って脈打っていた。
「元気ね。いいことだわ」
彼女は俺の膝の上に覆いかぶさるようにして、それを掌で包み込んだ。指先がゆっくりと根本から先端へ滑り上がる。その間、彼女は俺の目を見ていた。青緑色の瞳が、眼鏡の奥から落ち着いた光を放っている。俺の呼吸が浅くなるのを確認してから、彼女は顔を伏せた。
温かい吐息が先端にかかる。その距離、数センチ。唇が触れるか触れないかの境界で、彼女は一瞬止まった。その一拍の間に、俺の腰が勝手に少し浮いた。
唇が触れた瞬間、電流が背骨を駆け上がった。柔らかい唇が亀頭を包み込み、舌先が裏筋をなぞる。ゆっくりと、なぞるように。唾液の温もりが、皮膚の上を滑っていく。
羽良嶋さんから受けていたプレッシャーも、二位の悔しさも、全てが下半身に集中する快感に溶けていった。
「んっ……っぁ……」
日向さんの頭が上下する。艶やかな黒髪が揺れ、ポニーテールの先が俺の太ももをくすぐる。眼鏡が少しずれ、その奥の瞳が俺を見上げている。大人の女性の余裕と、少しの悪戯心が混じった表情。舌が先端の窪みを円を描くように弄ぶたび、腰が痙攣するのを抑えられなかった。
俺は椅子の背もたれを握りしめ、爪が革に食い込むほど力を込めた。だが、長くは続かなかった。
「あ、日向さん、もう……ッ!」
俺は彼女の頭に手を添えそうになり、慌てて引っ込める。その躊躇いを見た日向さんは、かえって深く口を沈めた。喉の奥まで先端が触れた感触に、全ての理性が崩壊した。腰が勝手に跳ね、彼女の口の奥へと吐き出した。
脈打つ先端から放出される熱を、彼女は喉を動かして受け止めた。俺の呼吸が荒く、肩が上下する。視界が白く明滅する。
「っ……はぁ、はぁ……」
俺は力が抜け、椅子に沈み込んだ。
日向さんはゆっくりと顔を上げた。唇が離れる時、先端と唇の間に薄い糸が引いた。彼女はゴクリと喉を鳴らし、口の端に残った白い雫を指で拭い、ペロリと舐めた。
「……す、すみません! 俺、何てことを……!」
「いいのよ。これも『指導』の一環だから」
彼女はティッシュで口元を拭い、いつもの明るい笑顔に戻った。まるで仕事の合間にコーヒーを飲んだかのような軽さだ。
「で、どう? 少しは頭クリアになった?」
「はい。なりました」
「ならお願いがあるんだけど」彼女はネームを指差した。「これ書き直して。羽良嶋ちゃんの顔色じゃなく、自分の股間に正直になりなさい。明日の夕方まで持ってきてくれたら、続きをしてあげるわよ」
「続き……?」
「次はもっと気持ちいいこと。約束するから」
日向さんはウインクをして、個室を出ていった。俺は呆然と、まだ熱の残る自分の下半身と、赤ペンだらけのネームを交互に見つめていた。
翌日。
俺は徹夜でネームを描き直した。羽良嶋さんの「セオリー」を捨てた。主人公の欲望を、もっとエゴイスティックに、もっと粘着質にした。俺自身の性癖を、隠さずに叩きつけた。
「これ、持ってきました!」
日向さんの待つ個室に駆け込むと、彼女は俺のネームを一瞥して、満足げに頷いた。
「よし。いい顔してるわね」
彼女は静かに立ち上がり、ブラウスのボタンを一つずつ外し始めた。パタン、と布が落ちる音。二つ目、三つ目。指先がボタンを弾くたびに、白い肌が少しずつ広がっていく。露わになったのは、布面積の極端に少ない黒いランジェリー。豊満な胸が食い込む布に押し上げられ、柔らかな肉が上下にはみ出している。
「ご褒美よ」
日向さんは俺のズボンを下ろし、自慢の巨乳で俺のモノを挟み込んだ。二つの豊かな肉塊に包まれた瞬間、全身の血が下半身に集中する。柔らかく、そして圧倒的に温かい。乳腺の温もりが直接、先端の皮膚を伝って染み渡ってくる。
彼女は胸を両手で押し合わせ、ゆっくりと上下に動かした。肉の摩擦が生み出す熱が、先端から脳天へ突き抜ける。
「うおっ……!?」
手や口とは全く違う、圧倒的な質量の快感。肉に埋もれた俺のモノは、先端が谷間から顔を出すたびに外気に触れ、その温度差がさらなる刺激を呼んだ。俺は呆気なく彼女の胸を白濁で汚してしまった。
熱い飛沫が彼女の鎖骨の上に散る。日向さんはそれを気にする素振りも見せず、胸の谷間を指で拭いながら、満足げに微笑んだ。
その後も、日向さんの指導は続いた。ネームを直すたびに「ご褒美」として、授乳手コキをしてもらったり、素股で先端を弄ってもらったりした。
授乳手コキの時、彼女の乳首を口に含むと、舌の上に微かな甘さが広がった。その間、彼女の手はゆっくりと俺のモノを上下に扱き、指先が先端を円を描くように擦る。俺が腰を動かすと、彼女は「慌てなくていいのよ」と耳元で囁き、手の速度を緩めた。その声の振動が鼓膜から全身に伝わり、背筋がゾクゾクと震えた。
素股の時は、彼女の濡れた秘裂が俺のモノの腹の上を滑る。直接ではないが、互いの体温が皮膚一枚隔てただけの距離で混ざり合う。彼女の太ももの内側は驚くほど熱く、柔らかかった。先端が彼女の入口を掠めるたびに、二人の呼吸が同時に止まった。その一瞬の沈黙が、何よりも雄弁だった。
俺の欲望は、原稿と共に肥大化していき、ついに掲載会議を通過した。
だが、結果は芳しくなかった。読者アンケートは下位。結局、羽良嶋さんの評価を失ったわけではないが、俺の「エゴ」は読者に届ききらなかったらしい。
「まあ、そう焦らないの」
日向さんは冷静だった。そして、ある夜、俺の前にコンドームを取り出した。どこから出したかというと、彼女の深い谷間からだ。豊かな胸に挟まれた銀色のパッケージが、照明を反射して光った。
「次の作品。アンケートで一位を取れたら、本番、してあげるわよ」
ニッコリと笑う日向さん。その手の中で揺れるコンドームのパッケージが、俺には勲章に見えた。
俺は狂ったように描いた。ご褒美のためじゃない。彼女が見せてくれた「頂上」へ行くために。
そして、次の号。俺の作品は、読者アンケートで見事一位を獲得した。
「約束ね」
夜のホテル。日向さんはベッドの上で全てを晒していた。圧倒的なプロポーション。大人の女性の色気。ポニーテールを解いた黒髪が、白い肩の上に散っている。眼鏡だけは外さなかった。そのことが、逆に彼女の普段の「編集者としての顔」を残し、背徳感を際立たせていた。
彼女の上に覆いかぶさる。手でも、胸でもない。真の結合。
先端が彼女の濡れた入口に触れた瞬間、二人の息が同時に止まった。彼女の太ももが微かに震える。俺は彼女の目を見た。眼鏡の奥の青緑色の瞳が、静かに、しかし確かに頷いた。
ゆっくりと沈んでいく。きつい。熱い。そして、とろけるようだ。内壁がひだひだとなり、俺を飲み込んでいく。その感触は、これまでのどんな刺激とも違った。
「んっ……いいわよ、動いて……」
日向さんの声が、いつもの編集者のトーンではなく、女の声に変わる。その落差が、俺の背の背髄を痺れさせた。
俺は腰を動かし始めた。ゆっくりと、深く。抜く時は内壁が吸い付いて離れがたく、入れる時は熱い肉が押し返してくる。その繰り返しが、俺の理性を削り取っていく。
手や口とは違う、根本的な快感が背筋を駆け上がる。コンドームのゴム感なんて、すぐにどうでもよくなった。
「あっ……そこ、いい……」
彼女の声が高くなる。腰が俺に合わせて動き、豊かな胸が波打つ。俺はその胸に顔を埋め、乳首を口に含みながら腰の動きを加速させた。彼女の指が俺の背中に食い込み、爪が皮膚を掠める。その痛みが快楽を増幅させた。
「はぁっ……いい子、ねぇ……」
日向さんの息が耳にかかる。その吐息の熱さに、俺は何度も限界を迎えた。コンドームの中に精を放つたび、彼女は俺の髪を撫で「いい子」と褒めた。だが俺の性欲は枯れなかった。
コンドームがなくなった時、俺は躊躇した。ゴムの箱を空にして、彼女を見る。日向さんは俺を引き寄せ、耳元で囁いた。
「私が許すって言ってるのよ。……全部、出しなさい」
その言葉に後押しされ、俺は再び彼女の中へ沈んだ。ゴムの隔たりがない生の感触。内壁のひだが、直接俺の皮膚を擦る。その温もりと湿り気は、これまで体験したどんな快感よりも深く、脳の芯を溶かした。
若い男の精力を、彼女は貪るように搾り取った。豊満な胸を揺らし、快楽に溺れる表情を見せながら。いつもの明るい笑顔は消え、女の顔だけが残る。でも、その眼鏡の奥の瞳だけは、変わらず俺を真っ直ぐに見つめていた。
俺は彼女の中に、全てを注ぎ込んだ。欲望も、野心も、全てを。
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