以下が指定された条件に基づいた小説本文です。
「次号のテーマですが」
羽良嶋さんが言った。彼女はいつものように冷静な声で、しかし何か特別な響きを含ませていた。テーブルの上のファイルを人差し指でトントンと叩く。そのリズムが、俺の心臓の鼓動と同期した気がした。
「シスターです」
その二文字が、部屋の空気を一瞬で変えた。
俺の脳裏に、漆黒の修道服が浮かんだ。
首元まで覆われた黒い布地。その中に潛む白い肌。頭髪を隠すベールの下から漏れる一筋の金髪、あるいは黒髪。十字架のロザリオが胸元で揺れる。
神への奉仕。禁欲。純潔。
それらが約束された清浄な象徴。
だが、だからこそ。
「シスター…」
俺は思わず呟いた。咽喉が渇く。脳内のイメージが反転する。
白の上に黒を重ねるのではない。黒の下に白が隠されている。その布を一枚一枚剥がしていく行為。禁じられた肉の重みを、神の御許で晒す背徳。
「BLACKでシスター、ですか」
「はい。宗教的象徴としてのシスター。禁欲の極地。それを題材にした時、読者が何を求めるか。何を期待するか。それは想像に難くないでしょう」
羽良嶋さんは眼鏡の奥の瞳を細めた。その視線は、俺の反応を試すように冷ややかだ。
「神に捧げられた体が、俗世の欲望に染まる。その落差。その許されざる交わり。シスターというモチーフが持つ背徳の可能性は、計り知れません」
俺の掌が汗ばむのが分かった。ペンを握る指先に力がこもる。黒と白。聖と俗。その境界線を踏み越えるスリルが、背筋を駆け上がった。
「自由度が高い、と編集長はおっしゃっていました」
羽良嶋さんが補足する。
「純愛も、陵辱も、狂気も。シスターという器は、どんな欲望も飲み込みます。あなたがそこに何を注ぐか。それが勝負です」
自由度が高い。つまり、何でもありだ。だが、安易なエロに逃げれば、久我山の毒にも新人之介の静謐にも勝てないことは、身をもって知っている。
「シスターですね。やります」
俺は短く答えた。脳内にはまだ黒い修道服と白い肌のコントラストが焼き付いている。それをどう料理するか。答えはまだ出ていない。だが、このテーマが俺の琴線に触れたのは間違いなかった。
「シスターのキャラクターなんですが、ちょっと変な案を思いつきました」
俺はスケッチブックに描いたラフをテーブルの上で回して羽良嶋さんに向けた。修道服を着た女性の全身画。ただし、顔は意図的にぼかしてある。
「変な案、というのは?」
羽良嶋さんがラフを覗き込む。眼鏡の奥の灰色の瞳が、描き込まれた修道服のラインを追う。
「口調なんです。おっとりのんびりした、おばあちゃんみたいな喋り方をするシスターはどうだろうか、と」
「おばあちゃん口調のシスター」
羽良嶋さんがオウム返しにした。その声に含まれる感情は、否定ではない。試すような響きだ。
「ええ。例えば『おやおや、また迷い込んできたのかい?』とか『無理は禁物だよ、若いんだから』みたいな。神への奉仕と禁欲の象徴っていうと、どうしても厳格で近寄りがたいイメージになりがちじゃないですか。でも、おばあちゃん口調だと、そこに独特の親しみやすさが生まれる。読者が安心してこのキャラクターに感情移入できる入り口になるかなって」
俺はペン先をラフの修道服の袖口でカチカチと叩きながら説明した。
「面白いかもしれません」羽良嶋さんが顎に手を当てた。「ただ、先生。これ、絵としてのギャップをどう処理しますか?」
「ギャップ?」
「あなたが描いたこのラフ。フードで顔以外を完全に隠した修道服でしょう。首元まで覆われて、肌の露出は手首と顔だけ。非常に清楚で、神秘的なビジュアルです。そこへおばあちゃん口調が来る。確かに違和感は面白いのですが、絵としての情報量が少なすぎる。地味になる恐れがあります」
俺はペンを止めた。図星だ。
フードで顔以外を隠す。その清楚さと、おばあちゃん口調の温和さ。雰囲気としては合う。だが、BLACKの読者がページをめくった時、インパクトが弱い。修道服の黒一色の中に埋もれてしまう。
「確かに、このままだと地味ですね。でも、修道服なんだから露出を増やすわけにもいかないし」
「服を脱ぐわけではないけれど、何かを『外す』ことはできるかもしれません」
羽良嶋さんがラフのフードの部分を指先でなぞった。
「フード。これを取ってみては?」
「フードを?」
「ええ。普段はフードを被って、清楚で神秘的なシスターとして振る舞う。でも、フードを取った瞬間。そこに現れるのが、おばあちゃん口調の素顔だとしたら?」
俺の脳内で何かが弾けた。
フードを取る。
その一動作で、キャラクターの印象を反転させる。
俺は新しいページを開き、ペンを走らせた。フードを被った状態のシスター。そして、その隣に、フードを取り払った姿。
フードの下から現れたのは、軽やかなショート金髪だった。
「これだ…!」
声が上擦った。
フードを被っている時は、顔面だけが覗く清楚で神秘的な大人の女性。だが、フードを取ると、ショート金髪が弾け、印象が一気に若返る。清楚な大人から、どこか現代っ子のような軽やかさへ。その落差。この二つの顔を持つキャラクターなら、おばあちゃん口調の違和感も、単なる奇抜さではなく、キャラクターの奥行きとして機能する。
「フードを被っている時は、静かで穏やかなシスター。でもフードを取ると、ショート金髪が揺れて、急に親しみやすくなる。この視覚的ギャップが、口調のギャップと重なる。これなら、ページをめくった読者の目も惹きつけられる」
俺は描き上がったラフを羽良嶋さんに見せた。
フードあり。フードなし。
二つの顔。二つの印象。
羽良嶋さんはラフを一瞥し、ゆっくりと頷いた。
「いいですね。この『フードの有無』による印象の急変。これがこのキャラクターの核になる。フードを被っている時と取っている時で、読者の受ける印象が変わる。それを物語の中でどう活かすか。それが次の課題です」
俺はスケッチブックを抱え直した。キャラクターの外見と口調の設定は固まった。次は、この二つの顔を持つシスターが、どんな物語の中で何を欲望するのか。そこを突き詰めなければならない。
ジャンプBLACKのアンソロジーになる作品は?
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HUNTER×HUNTER
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NARUTO
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ONE PIECE
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鬼滅の刃
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ダイの大冒険
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チェンソーマン
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ドラゴンボール
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魔都精兵のスレイブ
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僕のヒーローアカデミア