「プロット、修正してきました」
俺はルーズリーフをテーブルの上で滑らせた。羽良嶋さんの指がそれを受け止める。
「読ませてください」
彼女の視線が紙の上を走る。俺はコーヒーの紙コップを握りしめ、その反応を伺った。
「……彼女が目を覚まし、暴漢だと誤解されビンタされる。ここまではいいとして」
羽良嶋さんが顔を上げた。
「誤解が解けた後の展開が弱いです。彼女はシスターのオルソラだと名乗る。記憶喪失。主人公は警察に通報しようとするが、彼女は『警察はダメだ』と言う。なし崩し的に同居が始まる。これ、説得力がありますか?」
「主人公は人を信じない男です。警察に通報すれば自分が疑われるというトラウマがあります。だから彼女の『警察はダメ』という言葉に、安易に乗ってしまう。自分を守るために」
「それは分かります。でも、読者は納得しますか? 奇跡的な出会い、ありきたりな記憶喪失、都合の良い同居。これをどう料理するかが勝負でしょう? 先生、この作品の方向性はどうするつもりですか?」
「ラブコメです」
俺は即答した。羽良嶋さんの眉がピクリと動く。
「ラブコメ? BLACKで?」
「はい。シスターのオルソラと、人嫌いの主人公。この奇妙な同居生活を、ラブコメとして描くんです。重い設定だけど、彼女のおっとりした口調と家事の腕前で、日常は明るくて温かいものになる。そこに、フードを取った時の金髪のギャップとか、修道服越しの胸の豊かさとか、エロティックな要素をスパイスとして効かせる」
「スパイス、ですか」
「ええ。メインはあくまで二人の距離が縮まっていく過程です。彼女が作ったご飯を彼が食べる。彼が風呂に入っている時に彼女が間違えて入ってくる。そんなベタな展開の中で、彼のトラウマが少しずつ溶けていく。それがこの作品の芯です」
羽良嶋さんは腕を組み、しばらく沈黙した。
「……ベタな展開。それをBLACKの読者が受け入れると?」
「受け入れさせます。笑いの中に、切なさを滲ませる。彼女がなぜ警察を避けるのか、その理由が記憶の奥に潛んでいる。それが時折、影を落とす。でも基本的には、二人の掛け合いでページを埋める。それが一番、彼女のキャラクターを活かせる」
「なるほど。ラブコメとしての密度を上げることで、設定の甘さをカバーする。……いいでしょう。では、そのラブコメの核となる場面を具体的にしてください」
「台所でのシーンです」
俺はルーズリーフの裏面を指差した。
「彼女が料理を作っている。修道服のまま。布地が胸の豊かさで張り詰めている。彼はその背中を見ながら、ご飯を待っている。彼女が味見をして、『あら、ちょっと塩が足りないね』って言う。その仕草がいじらしくて、彼は思わず笑う。そこで彼女が振り返り、フードを取る。金髪が揺れる。『何かついてるかい?』って。彼は『いや、何も』って言って、また笑う。その笑いが、彼の中の氷を溶かす最初の一滴なんです」
「……笑い。それが救いの入り口ですね」
羽良嶋さんの声が、少しだけ柔らかくなった。
「はい。笑えるからこそ、その先のシリアスな展開が効いてくる。彼女の記憶が戻り始めた時、その笑いが泣き声に変わる。その落差こそが、この作品のエロティシズムであり、ドラマです」
「分かりました。その方向性で、ネームを入れてください。ただし、ラブコメだからといって、油断はしないように。笑いの中にも、確かな欲望の引力を描くこと。それがBLACKのラブコメです」
「承知しました」
俺はルーズリーフを抱え、席を立った。ラブコメ。それがこの作品の武器になる。オルソラの笑顔と、修道服の下の豊かな曲線。その二つを共存させる場所が、彼の台所だ。
ジャンプBLACKのアンソロジーになる作品は?
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HUNTER×HUNTER
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NARUTO
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ONE PIECE
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鬼滅の刃
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ダイの大冒険
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チェンソーマン
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ドラゴンボール
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魔都精兵のスレイブ
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僕のヒーローアカデミア