※この作品はR-18です。

読み切り漫画家・綴木想真は連載したい   作:ボルメテウスさん

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ページ分配

「同居生活の描写を詰めていきます」

 

俺はルーズリーフを指差した。そこには「風呂」「着替え」「料理」と文字が並んでいる。

 

「着替えや風呂に出くわすハプニング。これをやらないとラブコメとして物足りない。でも、ただのラッキースケベじゃダメだ。彼女の無自覚さと、彼の戸惑いが描けて初めて笑える。そして、その笑いが彼の凍り付いた心を溶かす前段になる」

 

「具体的なシーンは?」羽良嶋さんが問う。

 

「風呂場です。彼が入っていると、彼女が入ってくる。修道服を脱いでる最中かもしれないし、タオル一枚かもしれない。彼が『出ていけ!』と叫ぶが、彼女は『あら、お湯加減どうだい?』と呑気に背中を流そうとする。彼女に悪気はない。修道院では共同浴場だったのかもしれない。でも、彼にはたまらない。豊かな胸が視界に入る寸前で、彼は目を背ける。この『見そうになって見ない』っていうもどかしさが、エロティシズムになる」

 

「わかりました。それで、彼の心が救われる過程は?」

 

「家事です。彼女は料理も掃除も洗濯も完璧にこなす。彼が帰宅すると、部屋は綺麗になり、温かい飯が待っている。彼は最初、毒が入ってるんじゃないかと疑う。でも一口食べれば、その味は間違いなく母さんのそれに近い。荒んだ心が、その温かさに少しずつ解けていく。ハプニングで盛り上げて、日常で落とす。この交互撃がリズムになります」

 

羽良嶋さんは指を組み替え、冷静に指摘した。

 

「先生、ページが足りません」

 

「え?」

 

「四十ページです。ハプニングの導入に四ページ、日常の描写に八ページ。それでは彼のトラウマが溶ける説得力が出ますか? 料理を二回食べて、人嫌いが直るほど甘くはないでしょう」

 

俺は言葉に詰まった。確かにページが足りない。短編の魔物だ。描きたいことは山ほどあるが、尺が限られている。

 

「…じゃあ、どうすればいいんですか? ハプニングを削る?」

 

「いいえ。ハプニングは視覚的なフックになります。削るべきではありません。削るなら『説明』です。彼女が家事をしている描写をダラダラと描くのではなく、一つの場面に集約する。例えば、風呂場のハプニングの直後、彼が彼女の背中を見て、そこに残る古い傷跡に気づく。それが彼女の過去の暗部を初めて示唆する。そして、その夜、彼女が作った料理を食べる。傷跡が気になりながらも、飯は美味い。その複雑な心境を一枚のコマに詰め込む。ページを節約しつつ、情報密度を上げるんです」

 

俺はペンを握りしめた。羽良嶋さんの言う通りだ。短編は引き算だ。

 

「ハプニングと日常を分けるんじゃなくて、繋げる。風呂場で背中の傷を見て、それをご飯の時に反芻する。…そうすれば、八ページでも描けるかもしれない」

 

「ええ。彼が彼女に惹かれる理由は、家事の上手さだけじゃない。彼女の背中にある傷が、自分の傷と重なるからです。そこを一つのシークエンスにまとめれば、ページ配分は六ページで済みます。浮いた二ページは、彼のトラウマの開示に回せます」

 

「…わかりました。構成、練り直します」

 

俺はルーズリーフに×印を書き、新たな数字を書き込んだ。風呂場のハプニングから背中の傷、そして食卓。この流れ一つで、彼の心の動きと彼女の謎を同時に描く。それが短編の技だ。

ジャンプBLACKのアンソロジーになる作品は?

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  • チェンソーマン
  • ドラゴンボール
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