ダウナー系JKの妹が、平然とエッチさせてくれる話。 作:東雲(しののめ)
――楓とセックスがしたい。
実の兄が妹にそんな欲望を抱くのは間違っている。
しかしそうと分かっていても。
今さらこの気持ちを無にできない所まで、自分は来てしまっていた。
――楓は受け入れてくれるだろうか?
そもそも妹がなぜ平然と性処理をしてくれるのか。
その答えは未だに明らかになっていない。
自分の内で考えていると、いつも脳裏に浮かぶのは一つのよくない答えだ。
――楓は誰にでも股を開く女なのではないか?
平然と性処理してくれるのは、それがもう彼女にとって日常的なことだから。
……いいや違う。
そんなはずがない。
だって楓だぞ、俺の妹だぞ。
本当は認めたくない話ではあるけれど。
もしかしたら過去に彼氏の一人ぐらいはいたかもしれない。
あれだけ容姿が良いのだ、既に処女でない可能性だって……現実的にはありえる。それぐらいのことは俺だって理解しているさ。
でもあいつは誰でも彼でもに股を開くような人間じゃない。
そう、仮に経験があったとしてもそれは過去の恋人とだけ。
人並みのお付き合いをして、その結果としてごく自然にエッチをしたのだ。
つまり見知らぬ他人のチンコをくわえ込んでいたことは一度としてないはずなのである。
では、なぜ恋人でもない兄の一物を扱えるのか。
もしここまでの俺の推測が正しいのなら――
「俺のことを異性として好き……とか?」
それなら性処理をしてくれることだって頷ける。
そうなると俺と楓は、もしかしたら恋人になることだって――……
「……虚しいな」
結局、俺は俺の頭の中で、勝手に悩んで勝手に自己解決をする。
しかも解決したと思ったら、また同じことで悩みだしたりするのだ。
いつまでこんな堂々巡りをしなくてはいけない?
「楓と、エッチがしたい」
これはもう真っ直ぐに本人ぶつけるのしかないのだろう。
でも勇気がない。
とっくに兄妹の線を越えているのに、最後の一歩が踏み出せないのだ。
どうする、どうすると悩んで何日も経っていた。
このまま手や口で満足してもいいんじゃないか、そんな諦めも生まれだした時に。
――転機は訪れた。
「オフ会?」
夏休みも終盤に差し掛かった頃である。
リビングのソファに寝転がる楓が、そういえばと唐突に告げた。
「それって、お前がよくやってるゲームの?」
「うん。パーティー組んでる人たちで集まろって」
その間にも、楓の指は忙しそうにスマホの画面を動いている。
前々からそのゲームに嵌まっていて、夏休み中にハイスコアを目指しているということも以前聞いたことがあった。
なぜその話を覚えているかといえば……それは俺が初めて性処理をお願いしたのが、彼女がゲーム中の時であったからだ。
強烈な体験のせいでそんな些細なことまで記憶してしまっている。
「参加するのか?」
「一応」
楓はこれまでオフ会に行ったことはないという。
「初対面の相手だと緊張するだろ」
「うーん……でもゲームで喋ってるし」
流石というか、緊張をしている素振りがまったくない。
しかし兄からしてみれば心配が募るばかりだった。
楓は態度はともかく、容姿はいいし、女子高生だし、なにより自分の妹だ。
「面子は? 男もいるじゃないのか?」
「そりゃね」
「…………」
「今回来るのは五人で、私入れて女の子は二人だってさ」
……他にも女子はいるわけか。
割合的には男が勝るが、だとしても三対二なら妥当と言えば妥当。
(それに、楓は純粋にゲームを楽しんでいるわけだし)
自分の器量の狭さで、彼女に行動の制限をかけるのは間違っているだろう。
他の男に会わせたくないのなら、今の共学の高校に通うことさえ止めなくてはいけない。
「……お酒とか飲まないよな」
「はぁ? 私未成年なんだけど?」
「……そうなんだけどさ」
「カラオケ行って、その後ファミレスでご飯食べて解散、それだけ」
話を聞くにごく普通な流れだった。
確かにお互い初対面かつ集団で動く以上、そういった公の施設や店がチョイスされるのが一般的である。
「……分かった。楽しんでこいよ」
「うん」
なにも心配することはない。
喉まで出かかった不安をぐっと呑み込んで頷いた。
我慢。ここは兄の度量の見せ所である。
楓はただゲームのオフ会に行くだけだ。
俺が考えているような最悪の事態は起きるはずがないのである。
――後日。
楓が参加するオフ会の日がやってきた。
「夕方には帰ってくる予定」
玄関で靴を履く妹。
今日は部活ではないので、着ているのはジャージでも、ましてや制服でもない。
ミニ丈の黒のショートパンツに、七分袖の白いパフスリーブをインして、なんとも今時の女子高生らしい私服姿だった。
スカートでないことに一安心はしたのも束の間、太股からむき出しになった白磁のような足が目を惹きつけてやまない。
「き、気をつけろよ」
「?」
「……ほら、何があるか分からないからさ」
「何があるか分からないのに、何に気をつければいいわけ?」
「…………」
兄の助言は空っぽだ。
妹にそう指摘されると返す言葉もない。
「ま、なる早で帰ってくるよ」
「……! そ、そうか!」
こちらの消沈を察したかどうなのか、楓は兄を安心させるような一言を告げる。
「なんか急に嬉しそうな反応」
「そんなことはない……も、もし悪い男に絡まれたら遠慮なくお兄ちゃんを頼るんだぞ」
「なにそれ」
ガラでもないことを言って、と楓が鼻で笑った。
笑った顔……久しぶりに見たな。
「じゃ、行ってくる」
彼女はマイペースでも意外としっかりしている性格だ。
あまり過保護にしても、相手も自分も疲れるだけなのかもしれない。
俺は気持ちを切り替え、軽く手を上げて楓を送り出した。
楽しんでこい、と。
しかし。
俺はもっと自分の直感を信じてよかったのかもしれない。
変にかっこつけず、内にある不安をそのまま吐き出せば良かった。
そしてあの時、止めることはできなくても、少しでもマシな助言をできていたら。
こんな後悔を、しなくて済んだのに。
――妹がオフ会に行って二時間くらい経った頃だった。
自室のベッドで休んでいた俺に、楓から突然メッセージが飛んで来たのである。
(あいつから連絡なんて珍しい)
家にいる楓から、あれを買ってきて、これを買ってきて、とパシリのような扱いされることはごく偶にある。
しかし外出中、しかも遊びの最中で連絡が来たのは初めてだった。
『ちょっと面倒なことになったかも』
プッシュ通知が来た瞬間すぐにタッチし、メッセージ画面を開く。
表示された一言目がそれだった。
面倒なこと? 何が面倒なのだ?
「あれか、帰りが遅くなる的な」
場が盛り上がっていれば三次会四次会だってある。
早く帰宅すると宣言して出て行ったものの、そういうのに参加せざるを得なってしまった。
それを面倒だと言っているのだろうか――色々と考えを巡らすが、実際に聞いてみないことには分からない。
『いまどこにいるんだ?』
キーを入力をし、メッセージを送る。
一瞬で既読がついたのも束の間、すぐに返信も返ってくる。
『トイレにいる』
トイレ?
トイレ……?
『悪い、よく理解できないんだけど』
まさかトイレットペーパーがないとかそんな話か。
馬鹿な兄だ、そんなことで妹が連絡するわけがないのに。
『どういう状況で面倒なんだ?』
電話と違って、曖昧なことばかり言っていては真意が伝わらない。
俺はストレートに妹の現状を確かめようとした。
やはり既読はすぐにつく。
しかし返ってきたのはメッセージでなく、一枚の写真だった。
「な……」
写真に写っていたのは楓と――見知らぬ男だった。
男の表情は見えないが、日焼けした肌で金髪、ガッシリした体躯をしている。
パッと見でもチャラそうな人物だ。
問題なのはその男の太い腕が、妹のシャツの中に突っ込まれていることだった。
楓は、狭い個室トイレの中で、自分が胸を揉みしだかれる姿を兄に送ってきたのである。
『トイレに連れ込まれた』
簡潔な一文。
だが俺の胸を貫くには十分すぎるほど鋭い。
しかしその質素な文面に違わず、写真に写る楓自身もいつも通り平然としている。
「な、なんなんだよこれ……」
この写真は状況を手っ取り早く伝えるために、胸を揉まれながら自撮りをしたのだと分かった。
見せつけてやろうなどという意図が、彼女にないことぐらいは分かる。
ただただ事務的に、伝達効率を鑑み、状況説明のためだけに自撮り写真を送信してきたにすぎない。
だが楓が送ってきた、たった一枚、たった数メガバイトしかないそのデータは――俺を絶望の淵に落とすには十分だった。
写真に写る楓を見て、ただ固まることしかできない自分。
しかしそんな兄のことなどお構いなしに、妹は問いかける。
『――どうすればいい、お兄ちゃん』