※この作品はR-18です。

夢獄のレクイエム   作:ガンダムラザーニャ

3 / 3
すみません、遅くなりましたが最新話です。

それと補足ですが、登場するヒロインは皆何かしらの後悔を抱えているキャラです。後悔が罪の形となったキャラでお願いします。


沈黙の森

階段を上る。その先は。

 

「ここは」

 

「うへぇ〜、絵本であるような幻想的なところだねぇ〜」

 

人工物がほとんどない、幻想的な森林と沼地だ。とても監獄の中とは思えない。

 

「透くん、あれ」

 

「あ…」

 

木の根元、沼地の近くに一人、少女が蹲る。

 

「どうする?話しかける?」

 

「…そうするしか、ないよな」

 

俺は少女に近づく。すると彼女はビクリとして、俺と目が合う。

 

芸術品かと疑うほどの美少女だ。だがその目には涙の跡があった。

 

「…誰?」

 

「君はここの囚人かな?」

 

「…そうだよ」

 

少女は睨むような目でこちらをみる。

 

「名前は?」

 

「……名前」

 

少女は悩む素振りを見せる。そして、

 

「メ、メリュジーヌ」

 

「メリュジーヌか、俺は白鐘透だ」

 

「おじさんは小鳥遊ホシノだよ、よろしく〜」

 

「おじさん!?」

 

「だよね、これでおじさんとか何言ってるんだって思うよね。…と、君はここの囚人だとするなら、何の罪なの?」

 

「…怠惰」

 

「怠惰?君が?」

 

少女、メリュジーヌは頷いた。

 

「…私には、私を私たらしめてくれた人がいたんだ。この沼地で、ただの肉塊だった私を引き揚げてくれた人が」

 

ちらりと彼女は見る。森林と沼地の向こう。綺麗な屋敷があった。おそらくその人がいるということだろう。

 

「私は、あの人のためなら、何でもしようと思った。それが、私たらしめてくれたあの人への恩返しだったから。…でも、それが間違いだったんだ」

 

「……」

 

メリュジーヌは膝を抱え、震える声で続けた。

 

「ある日、あの人は私に命じたんだ」

 

彼女は屋敷へ視線を向けたまま、小さく息を吐く。

 

「『あの者たちを始末してきなさい』って。」

 

「……誰を?」

 

俺が尋ねると、メリュジーヌは目を閉じた。

 

「私の故郷を守ってくれた人たち。」

 

「え……」

 

思わず声が漏れる。

 

「その人たちは、私に優しくしてくれた。

 

化け物だと恐れる人もいたけど、それでも手を差し伸べてくれた人がいた。

 

笑ってくれた人がいた。

 

一緒に食事をしてくれた人がいた。

 

……なのに。」

 

彼女の拳がぎゅっと握られる。

 

「私は剣を向けた」

 

風が止んだ、森が静まり返る。

 

「…止めようとは思わなかったのか?」

 

俺の問いに、メリュジーヌは静かに頷いた。

 

「…思ったさ。こんなことおかしいって。

 

どうしてあの人たちを殺さなきゃいけないのかって。」

 

「だったら!」

 

思わず俺は声を荒げていた。

 

「どうして止めなかったんだ!」

 

メリュジーヌの肩が震える。

 

その問いは、きっと何度も自分自身に投げかけてきたものだったのだろう。

 

「……怖かった。」

 

消え入りそうな声だった。

 

「嫌われるのが、捨てられるのが。

 

せっかく私を見つけてくれた人に、いらないと言われるのが」

 

彼女は俯いたまま続ける。

 

「だから私は、自分に言い聞かせた」

 

 

 

「きっと理由がある、あの人は間違えない、私は従えばいいって。

 

そうして……考えることを、やめた。」

 

その一言が、胸に重く落ちる。

 

「…それが私の怠惰。

 

自分で考えることを放棄して、間違っていると分かっていたのに、止めることを怠った。」

 

俺は何も言えなかった。

 

責めることは簡単だ。

 

だけど、目の前にいる少女は、誰よりも自分を責め続けている。

 

そんなことは、その表情を見れば分かった。

 

「全部終わった後……」

 

メリュジーヌは震える声で続ける。

 

「私は、褒めてもらえると思ってた」

 

「よくやったって、ありがとうって」

 

しかし、彼女は力なく笑った。

 

「でも、何もなかった。

 

ただ……、ただ、遠回しにっ」

 

彼女は唇を噛む。

 

「私は醜いって、あなたは美しくないって。

 

そんな私を引き合いに出して、あの人は自分の美しさを語った」

 

涙が一滴、沼へ落ちる。

 

「私は、あの人のために全てを失ったのに。

 

故郷も、恩人も、自分自身も。

 

それでも私は、あの人を止められなかった。」

 

静寂が辺りを包む。

 

ホシノは小さく呟いた。

 

「……似てるねぇ」

 

メリュジーヌが顔を上げる。

 

「え?」

 

「おじさんもさ。」

 

ホシノは遠くを見るような目をした。

 

「あの時、こうしてれば、って何度も思った。

 

怒らなきゃよかった。

 

ちゃんと話せばよかった。

 

そんなことばっかり考えてた」

 

ホシノは少しだけ笑う。

 

「でもね、後悔って、何度思い返しても過去は変わらないんだ。

 

だから、おじさんは今を歩くことにした。」

 

メリュジーヌは目を丸くする。

 

「……歩く?」

 

「うん」

 

ホシノは俺を親指で指した。

 

「この変な人に引っ張られてねぇ」

 

「誰が変な人だ」

 

「否定しないんだ」

 

「否定しても聞かないだろ」

 

「分かってるじゃん」

 

ホシノはくすっと笑った。

 

その笑顔につられたのか、メリュジーヌの口元もほんの少しだけ緩む。

 

俺はメリュジーヌの前にしゃがみ込んだ。

 

「メリュジーヌ」

 

「……何?」

 

「君は今でも、あの人の命令なら従うか?」

 

彼女は驚いたように目を見開いた。

 

そして、長い沈黙のあと、小さく首を横に振る。

 

「……ううん」

 

「じゃあ」

 

俺はゆっくりと立ち上がり、屋敷を見据えた。

 

「あの屋敷へ行こう」

 

「え……?」

 

「君が止められなかったものを」

 

「今度は君自身の意思で、止めに行こう」

 

メリュジーヌは震えていた。

 

恐怖なのか、決意なのか。

 

そのどちらもだったのかもしれない。

 

彼女はゆっくりと立ち上がる。

 

そして、自分の胸に手を当てた。

 

「……今度は」

 

その瞳には、先ほどまでとは違う光が宿っていた。

 

「今度は、私が決めるよ」

 

その言葉と同時に、静まり返っていた森に風が吹き抜けた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【R18】プリキュアが生まれる街~彼女達と過ごす愛しき日々~(作者:天野蒼夜)(原作:プリキュア)

オルスタ市。“プリキュアが生まれる街”という別名を持つこの街に住む流宙夢(ながれひろむ)もまたプリキュアである。これは、一夫多妻制が認められているこの街で彼は甘く、エッチな日常を過ごす物語である。▼サブタイトルの後ろに☆マークがついているのは本作における重要回です。▼リクエストはこちらから→https://h.syosetu.org/?mode=kappo_…


総合評価:104/評価:-.--/連載:7話/更新日時:2026年08月19日(水) 05:50 小説情報

【R18】Piexランドにようこそ‼️(作者:若山羊)(原作:よろず)

二次元作品の女性キャラが登場する水龍敬ランドっぽいなにかのお話です


総合評価:40/評価:-.--/連載:11話/更新日時:2026年10月21日(水) 22:49 小説情報

【R18】スケベな忍が送る女神達とのハーレムライフ(作者:天野蒼夜)(原作:超次元ゲイムネプテューヌ)

ゲイムギョウ界。守護女神によって統治されているこの世界には忍の力を宿す者がいた。名はコウガ。忍の力によって不老となった彼は自他共に認めるスケベ男。これはそんな彼がネプテューヌ達と送るエッチなハーレムライフを描いたものである。▼リクエスト掲示板→ https://h.syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=345536&…


総合評価:20/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年09月27日(日) 05:50 小説情報

【R18】ポケモン世界に転生したらハーレムができていた件(作者:天野蒼夜)(原作:ポケットモンスター)

男は車に轢かれそうになった子供を庇ったことで命を落とした。男は特典によってポケモントレーナー“レム”としてポケモン世界に転生することになるが、事あるごとに女の子と出会いを重ねた末、ひとつ屋根の下で暮らすことに!?▼男1人に女の子複数、これはどう見ても男が一度は夢見るハーレムそのもの。そんな状況で何も起こらないわけなく……レムは女の子達とエッチな第2の人生を送…


総合評価:442/評価:8.4/連載:15話/更新日時:2026年10月14日(水) 05:50 小説情報

【R18】僕のヒーローアカデミア  ─MEGADILE─(作者:餅米蒟蒻)(原作:僕のヒーローアカデミア)

オーストラリア生まれの戦闘狂。▼「リジオラ・ストーン」が、この世で最も凶暴なヒーロー「メガダイル」となり最強のヒーローを目指す物語です。▼【挿絵表示】▼


総合評価:28/評価:-.--/連載:11話/更新日時:2026年10月15日(木) 13:52 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>