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全52話となります最終話投稿は2026.9/19(土)19:00投稿となります
よろしければ最後までお付き合い頂ければ幸いです
※この作品はR-18作品です、18歳未満の方は閲覧をお断りします。
※この作品はフィクションであり、登場する人物や団体は架空であり、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。
※本作に登場する人名及び地名、サイト名やアプリ名及び店名は全て作者の創作であり、実在の人物・店舗及び社名とは一切関係ありません。
※登場するキャラクターは物語上で作られた創作物の設定です、実際の年齢ではありません。
※本作は全てフィクションです。現実で行うことは法律で禁じられています。
「え?え?ひぐれ?どうしたの?」
胸ぐらを掴まれるような経験はあまり無いすみれは驚き、目を丸くする
「おうすみれ~昨日の夜の事は覚えてんのか?」
「え?何?私何かした?」
「ひぐれ!」
俺はすみれを離すように踏み出そうとするが…。
さくらが俺の前に立ちはだかり、それを制した
「ごめん、まって、おじさん」
「…さくら」
いつにない真剣な眼差しのさくらに俺は気圧され、そのまま踏みとどまった。
そしてすみれ達を見る…今の状態だと嫌な想像しかできない、大丈夫なのか?
「覚えてねぇ~んだな?」
「ごめん…本当になんのことか分からない…どうしたの?ひぐれ?」
「昨日聞いたんだけどよぉ~小学ん頃、吉川の鉛筆とかをアタシの筆箱に突っ込んだのオメェらしいな?」
それを聞いたすみれは目を見開き、小さく震えだした…
「…どうして…それを…」
「アタシの親友が教えてくれたんだよ…その反応だとマジなんだなコレ?」
「親友…ルカちゃん?」
「ルカぁ関係ねーし、アイツぁ今ナントカってアイドルグループ追っかけてて、連絡取ってもアタシをライブに連れて行こうと勧誘に必死だからよぉ、殆ど連絡取ってねぇわ」
「じゃあ…直美?」
「アイツぁ小学校からの仲じゃねぇ~し、アタシの過去知られてたらハズいっつぅの!そんなことぁお前も分かってんだろ!」
「じゃあ…」
「これはなぁ~アタシの大親友からのタレコミなんだよ…アタシの一番の友達よ」
「……そうなんだ」
すみれは悲しそうに微笑む
「……やっぱりひぐれは凄いね…いっぱいの友達がいて…」
「…そうだな…アタシの中じゃ触れ合った人の数が、ソイツの人の厚みだと思ってっからな…」
ひぐれの言葉にハッとし、すみれは俯きながら答える
「じゃあ…私は薄っぺらい人間だね…」
「ああ…ペラッペラの紙みたいなヤツだな、だけどそれでよかったんだろ?お前はそうなりたくてなったんだろ?ルカも、直美も、アタシに盗られたけど?自分の手元から離れていったからまぁいいやって思ってんだろ?」
その言葉に少し苛立ちを覚えながらキッとひぐれを見据えるすみれ
「そんなワケないじゃない…それにルカちゃんも直美ちゃんも、あなたが好きだからあなたと仲良くしてる、私がどうこうできる問題じゃないわ」
「ほぅ…じゃあオッサンがアタシに惚れたら譲ってくれんだね?オマエがどうこうできる問題じゃぁねぇもんな?」
すみれの逆鱗を、まるでハイタッチで触れるようなひぐれ。
見る見る内にすみれは昨夜と同じ目でひぐれを睨みつける
「なんですって?」
「だから言ってんだろが!オッサンがアタシに惚れたらアンタは尻尾巻いて逃げるんだろ?って聞いたんだよ!」
すみれもひぐれと同じようにひぐれの胸ぐらを掴み返しながら叫ぶ
「ふざけないで!また私から大切な人を奪う気?そんなの許さない!」
「おいおい…こっちがふざけんなだよ、オッサンがアタシに惚れてもオマエがどうこうできる問題じゃあねぇって、さっきテメェが言った言葉だろうか!」
「それによぉ~大切な人を奪うって言ってっけど、その大切な人を何もしねぇで置いといても?無条件で私のことを好きでいてくれるだろうから?盗られたのならもういいやって?…ハハっ!ずいぶんとまぁ被害者ぶったお嬢様思考だなぁ…そらみんな離れていくわ!」
今度はひぐれが掴んでいた腕に力を込める…。
腕力ではひぐれに敵わず、ソファーに押し戻される
「ハっ!チカラでアタシに勝てると思ってんのかよ!お行儀の良いお嬢様がよ!」
「くっ…!」
全力でひぐれに対抗するがジワジワと押され続け、すみれは再びソファーに座らされる形となった
「ほらな?オマエじゃアタシに何一つ勝てないんだよ!力も!顔も!胸も!性格も!オマエには何一つ負けねぇ!オマエが吉川を送り込んでくれたお陰でな!あれからアタシぁアタシなりに努力してきた!磨いてきた!筋トレ!化粧!会話!じゃあオマエは何してきたんだ?ペラッペラの紙人間が!?」
「~~~~~…」
返す言葉がないとはこのことだろう…。
すみれは涙を浮かべながら、唸ることしかできなかった
「そんな紙っ切れにオッサンが惚れるワケぁないわなぁ!じゃあアタシが盗ってやるよ!アタシが高校卒業した頃にゃ晴れてママだ!そのままテメェの指か他の男のチンポでもくわえて、アタシのでけぇ腹でも眺めてろよ!人を直接イジメる度胸もねぇ悪の黒幕モドキのテメェにゃそれがお似合いだ!」
すみれはひぐれの頬を引っぱたく。
負けじとひぐれもすみれの頬を引っぱたく。
もみ合いになり、互いに唸り声を上げながらソファーから床へとなだれ落ちた…。
まさに修羅場と化したこの部屋。
俺は止めに入りたいが、さくらが2人を見つめながらまだ俺を止める。
何故だ?俺にはこれ以上は泥沼にしか見えないのに…。
さくらにはここから事態が好転するように見えるのか?
「ご主人様があなたなんかを選ぶわけがない!そうですよね?ご主人様!」
床に頭を押し付けられながらも俺に声をかけるすみれ。
だが馬乗りになっていたひぐれが直ぐにすみれの頬を掴み、自分の方を向かせながら言う
「人とお話しする時ぁ、人の目ぇ見て話せって天国のママから教わらなかったのかぁ?コミュ障が!そんなんだからアタシに何もかも盗られるんだよ!マヌケが!」
「うるさい!うるさい!そうやっていつも上から目線で物を言ってくるのが気に入らなかったのよ!」
母親のことまで言われて本気でブチ切れるすみれ。
まるでわざとすみれの地雷を踏んで歩いているようなひぐれが少し怖くなった
「じゃあ一つでもアタシの上に立ってから物言ってみろよ!どうせオッサンのことも大して好きでもなんでもねぇんだろが!アタシに盗られても『まぁいいか~アタシがどうこうできる問題じゃないわよね~』って涼しい顔して諦めんだろ?誰も好きになったことねぇんじゃねぇか!ペラッペラの紙人間が!」
その言葉にすみれは絶叫にも似た声で返す
「お前なんかに何が分かるのよ!私が何年あの人の背中を見続けてきたと思ってんの!あの大きな手にどれだけ救われてきたと思ってんのよ!お前なんかに絶対渡さない!どんな形でもいい!借金のカタでも!例え首輪で繋がれても!私はあの人の背中を見続けて生きたい!お前なんかに!お前…っ!」
泣きじゃくる子供のように叫ぶすみれに馬乗りの状態ですみれに抱きつくひぐれ…咄嗟の事に困惑するすみれ
「なっ…なによ…!」
「…れだよ…」
上体を起こすとひぐれは涙を流していた。
そしてポタポタとすみれの頬にこぼれ落ちる涙がすみれの頬を伝う…。
そしてひぐれはすみれの額と自分の額を合わせながらすみれに諭すように言う
「それだよ…すみれ…アタシよりオッサンへの思いは大きいんだろ?…アタシより上なんだろ?…あんじゃん、アタシより上のものがよ?…そのオッサンへの思いの一部でもいいから、他のヤツらとの繋がりに使ってみろよ…」
「お前昔からそうじゃん…自分は人と深く関わろうとしないのに、そのクセ人との繋がりを妬む…でも自分から変えようとしねぇ…ホント面倒臭ぇヤツだ…」
「っ…ん…そんなこと…ない…」
互いに汗だくで、ゼェゼェと呼吸を整えながら話す2人
「ルカだってそうだ、どうせ何年も連絡とってねぇんだろうが…この間連絡した時にすみれの事も言ってたぞ?今からでも繋がれよ…ナントカってグループのライブに付き合ってやれよ…アイツの話を聞いてやれよ…」
「……そんなこと言われても……そういうひぐれはルカと…連絡取って無いって言ってたのに?」
「……だってアイツも面倒臭ェんだもん…分かんだろうが?何かにハマった時のアイツの面倒臭ささはよ?ヤバいぞ?」
「…………確かに…面倒臭いね」
「……だろ?」
額を突き合わせて…目を合わせる…。
キスするぐらいの距離で、同時に微笑み合う2人…
「人と人の縁の綱が結ばれるから繋がるって言うんだって…すみれママから教えてもらった言葉だ…アタシはこの言葉が好きだ、今ではアタシの中の根っこみてぇな言葉の1つだ…」
「お母さんが?」
「あぁ…昔教えてもらったんだ…」
「私……教えてもらってない…」
「いーや、すみれママは絶対言ってたハズだ…それと、こうも言ってたぜ?同じ言葉でも、いつ、誰が、どこで話したかによって受け取る人の心に残るかどうかは違ってくるってよ…」
「アタシは自分の母さんからの言葉はロクに覚えてねぇけど、すみれママの言葉はしっかりと残ったってみてぇにさ…すみれには、すみれママからの言葉はすり抜けてったけど…アタシの言葉ならすみれの心に響くってことがあんじゃねぇの?」
「ひぐれ…」
「だからアタシからもう一回言うわ、人と人の縁の綱が結ばれるから繋がるって言うんだ…ルカも直美も、お前との縁の綱が緩んでいるだけだ…」
「なら誰でもねぇ、テメェで動いてテメェでその綱を締めるんだよ…オッサンとの縁の綱がおかしな結び方だっていいんじゃねぇか?それでもガッチリと結ばれているんならよ……っと…」
すみれの上に馬乗りになっていたひぐれはそのまま横にゴロンと転がり床に大の字になって寝転び、天井を眺める
「あぁ~疲っかれた~」
「なんだか…昔の青春ドラマみたいで恥ずかしいわ…」
「あははは!あるある!校舎裏で友達同士でタイマン張って『お前…なかなかやるじゃねぇか…』、『ふ…お前こそな』みたいなこと言ってよ~……あれ?」
「もしかして…校舎裏以外は…まんまそうじゃない?」
「うわ!うわ!ヤだ!ハズい!死ぬ!」
そう言いながらひぐれは顔を手で覆い、足をバタバタさせた。
その姿を見つめるすみれ…。
自慢のブロンドヘアーもぐっしゃぐしゃ、制服もヨレヨレ、顔を覆っている手の指のネイルチップも殆ど剥がれ落ちている…。
でもそんな姿のひぐれが堪らなく美しく、大切な存在に感じた…
「私…怖かったの…最初は私の友達だったルカちゃんが、あなたと急に仲良くなって…悔しくてあんなことをしてしまった…吉川さんのイジメがだんだんエスカレートしていって…でも怖くて誰にも言い出せなくなって…」
すみれはゆっくりと起き上がると床に正座して話を続ける
「私のせいでこんなことになったんだから、責任を取らなきゃって思って、吉川さんの前に立った。私の好きな人達が傷つぐらいなら自分が傷ついた方がましだったから…」
「痛かったけどあの時は自分なりに責任は取れたと思ってた…みんなの心と体にキズをつけておいて、勝手に解決したことにしてた…なによりもあなたに本当の事を言う勇気がなかった…」
「ごめんなさい、ひぐれ…」
すみれはそのまま伏してひぐれに謝罪する…。
しかしひぐれは顔を覆ったまま今度はゴロゴロと左右に回り始めた
「んだよ~まだやんのかよこれ…終わったことだろ?もういいんだよ~、ハズいんだよ~」
「ふふふ…じゃあ仲直りの握手でもする?二人の熱い友情にって」
「やめろよ!仲直りもなにもアタシら友達だろうが!大体いつもそうだがオメェはメソメソ考え過ぎなんだよ~…ウダウダ考えてねぇでドーンと行きゃなんとかなる時だってあるっしょ?」
「恥ずかしいのは私だって同じよ…それこそひぐれは考え無さすぎなのよ…いつだって行き当たりばったりで…一昨日だって直美ちゃんが止めとこうって言ってたのに、あんなお店に入って…」
すみれの一言にひぐれは驚いて飛び起きる
「一昨日…?一昨日だって?あ…あのエロい店入った時のことか?」
「そうだよ…みんな凄く恥ずかしかったんだからね?」
エロい店ってなんだろうと俺は思ったが…とてもじゃないが聞ける雰囲気ではなく沈黙を貫いた
「あれって…3ヶ月ぐらい前のことじゃねぇか…」
「ええ?一昨日のことじゃない、何言ってるの?」
ひぐれは驚きを隠せなかったが、少し悲しそうな笑顔になる
「そっか…本当に記憶がスッポリ抜け落ちてるんだな…」
「私の記憶が?」
「あぁ…いや…でももういいんだ…」
そう言うとひぐれはすみれのほっぺにキスをする
「な?なによ、ひぐれ」
「いつぞやのお返しな、これでおあいこだ…ビンタの代わり!」
「……代わりって…さっき思いっきり引っ叩いてきたじゃないのよ…」
「オメェだってそうじゃねぇか…ってぇ!口ん中切ってんじゃん!鉄臭ぇ〜!」
「あっ、ごめんなさい…すぐに消毒しなくっちゃ…」
よろよろと起き上がろうとするすみれを制して立ち上がるひぐれ
「ああ~いいっていいって、それよりアタシらも学校行ってくっから、お前も準備して病院行って来い、さくらぁ~アレ持ってきて」
ひぐれのその一言でようやくさくらは俺の制止を解き、すみれの前まで来ると、ランドセルから小さな紙袋を手渡す
「これは?」
「さっきお姉ちゃんとこの学校で預かったの、直美おねえちゃんから、お姉ちゃんに渡してって」
「直美が?」
「さくらがアタシを探しに学校へ乗り込んで来ててな、そん時登校してきた直美に預かったんだ」
「すみれお姉ちゃん…よく聞いて、記憶が無くなっちゃったと思うから、今のお姉ちゃんには分からないことかもしれない…でもちゃんと聞いて」
さくらの真剣な顔に無言で頷くすみれ
「直美おねえちゃんはこの間まで風邪ひいて何日か学校お休みしてたんだって、その間の授業のノートをすみれお姉ちゃんが写させてくれたお礼にこれをって…本当は自分で渡したかったけど、お姉ちゃんが病気で暫く学校休むかもしれないって言ったら代わりに渡して欲しいって」
「……そうなんだ…直美が」
「自分だけではお姉ちゃんの好みの色とか分からなかったから、お姉ちゃんに内緒でひぐれお姉ちゃんに頼んで一緒に選んでもらったんだって、だからひぐれおねえちゃんはすみれお姉ちゃんの友達を盗ってなんかない…いい加減な思い込みでひぐれおねえちゃんを悪く言わないで!」
涙ぐみながら必死に訴えるさくら、すかさずひぐれがさくらの頭にポンと手を乗せて
「オメェつまんねぇこと言ってんじゃねぇよ…さ、学校いくぞ」
「…うん」
ひぐれにそう促されて、ランドセルを背負い直して玄関へと向かうひぐれとさくら
「あぁ〜そうだ、思い出した」
と言いながらひぐれは立ち止まり、すみれの方に振り返る
「このことタレコんだヤツの名前はなぁ…水蛭谷すみれってんだ…」
「え?…私?」
「あぁ、アタシの一番の友達だ…ソイツは今ちょっとメンタルやられて、記憶とかがゴッチャになってるみてぇだけど、必ず元気になって戻ってくるって…アタシぁ信じてる…」
「…まさかひぐれ…私があなたに?」
ひぐれは再び前を向き、すみれに背を向けながら
「もしこのことを忘れちまってもよ…アタシぁチャラにした…第2ラウンドは、もうナシだ…友達ぶちのめすなんて事ぁ二度もしたくねぇ…だからお前も、もう気にせずに前を向けよ…」
自分の記憶がないが、自分が何をしたのが、おおよその察しがついたすみれはボロボロと涙を流しながらひぐれに向かい頭を下げた。
玄関に向うひぐれ達、その途中に俺と目が合うと
「すみれを頼んだぞ…オッサン」
と、ひぐれが一言だけ語りかけて玄関を後にした。
水蛭谷家から学校に向うひぐれとさくら…。
先にさくらの小学校へ送り届けることにしたひぐれは、さくらと一緒に話しながら通学路を歩く…。
「いやぁ〜すみれのヤツもなかなか良いビンタ持ってんなぁ〜不覚にも避けられんかったわ〜」
「ひぐれおねえちゃん…」
「あ?なんだ?」
「今日のほーかご、買いもの付き合ってほしいの」
「あぁ〜いいぜ?確かなんも予定なかったような気がするわ…たぶん…何買うの?」
「ルーズソックス!」
「なんでまたJSがルーズなんて買うんだ?クラスで流行ってんのか?」
「しらない、しらないけど…わたし、ギャルになる、ひぐれおねえちゃんみたいなカッコいいギャルになる!」
その言葉を聞いたひぐれは、さくらと一緒に歩きながら上を向き、髪を掻き上げる
「なんだそりゃ?…今どき…こんなカッコ…ゴロゴロいんだろうが…目指す程の…もんでもねぇよ…」
降り注ぐ太陽の光でひぐれの表情は、さくらからは見えなかった。
だが震える声で答え、鼻をすするひぐれの姿が、降り注ぐ太陽の光ように眩しく見えたさくら。
「それでもなりたいと思ったんだ…ひぐれおねえちゃんみたいに…」
「そっか…」
ひぐれはさくらの頭にポンと手を乗せた…。
お付き合い頂きありがとうございます
すみれとひぐれのガチ喧嘩と過去エピ回収回でした
ここら辺りから個人的にけっこう精神的に、構成的にキツくて暫く書けなかったことが記憶にあります
人と人の縁の綱が結ばれるから繋がる…良い言葉ですね……所説ありますw