冒険者になったけど仲間がいないので元S級でムチムチ爆乳の友ママにパーティ組んでもらった。 作:ユリイカ
窓から吹き抜ける風が、部屋の中にこもった熱気と男女の淫香を押し流し新鮮な空気へと入れ替える。その爽やかさとは裏腹に、室内は極寒の雰囲気に支配されていた。
ベッドの上でシーツに包まり、顔だけを覗かせたセリア。仁王立ちでそれを見下ろす金髪の美女は、彼女の元パーティメンバーであり"紅の翼"の魔法使い、ローザであった。
「な、なんでローザがこんなところにぃ」
知人どころか旧友にあられもない姿を見られたセリアは、すっかり弱ってしまっている。初な少女のように赤面し、今にも地面に埋まりそうな顔である。
「言ったでしょ、心配だから迎えに来たって」
凍えるような空気の発生源となっているローザは冷たく返す。その一言で、それまで頼もしく思えていたS級冒険者はひんと弱々しく泣いた。
「Fランクの子とパーティを組んで二人で町に来るなんて、馬鹿なことするわね。大人しく行商人を待ってればよかったでしょうに」
「だ、だって……」
「どうせ可愛い子に先輩風吹かせたかったんでしょう。それとも、最初からこうなることを狙ってた?」
「違うわよ!」
リュートはそっちのけで言い合う二人。その隙に、と青年は床に脱ぎ捨てた服を着直す。セリアはシーツで隠しているが、ひとりだけ裸というのも居た堪れない。
どうやらローザは、リュートとセリアが二人だけでラスレオの町を目指すのは無謀であると考えたようだった。
「俺たちが向かうことを、知ってた……?」
違和感を抱き首を捻るリュートに、振り返った美魔女は首肯する。
「"共振の水晶"があるから、連絡は取れるのよ」
そう言ってローブの下から取り出したのは、手のひらに収まる程度の赤い宝玉だ。銀の装飾が施され、首にさげられるように細い鎖がつながっている。同じものを、セリアも荷物の中に入れているのをリュートは思い出した。
「魔道具か。そんなのあるなら、言ってくれればよかったのに」
「この子は魔力がほとんどないから、月に一度何分か使うのが限度なの。おかげでほとんど状況も分からないまま飛び出すことになったんだから」
どうやらセリアは事前に出立の事実だけを伝えていたらしい。それを聞いたローザは居ても立っても居られず、わざわざ町から出向いてきたという。それにしては、ずいぶんと早い。リュートとセリアは一週間見積もった旅程の二日目で、まだ折り返してすらいない。
「あんまり魔法使いを舐めちゃダメよ。本気を出せば空くらい飛べるんだから」
「じゃあ、それで会いに来てくれればよかったのでは?」
セリアは今回の旅が、パーティメンバーと会える最後の機会だと言っていたはずだ。彼女の思いつめた表情を見てしまった以上、リュートの語気も荒くなる。しかし魔法使いは余裕を崩すこともなく、腕を組んだまま青年に顔を近づけた。
「世間知らずも甚だしいわね。本気を出せばって言ったでしょ」
ローザが腕を動かすたび、持ち上がった胸が大きく揺れる。全身を隙間なく覆い隠す分厚い濃紺のローブ越しにも、その悠然とした存在感はありありと感じ取れた。
彼女は常人と比べて圧倒的な魔力量を誇り、操作精度も卓越している。それでも飛翔魔法は非常に高度なものであり、そう気軽に使えるものではないという。秘蔵の魔法薬をいくつも服用し、高級な魔装具を身につけて、なんとかこの村まで来るだけで精一杯。その日一日は使いものにならず、以降の十日以上も魔力が回復し切らない。本当に非常事態の時にだけ使える、最後の切り札なのである。――と力説していた。
「実際そうなのよ。現役の時は、何度ローザに助けられたことか」
「そのせいでどれだけの稼ぎを失ったと思ってるの。それだけでもう五軒くらい店ができるわよ」
現役時代から優秀な魔法使いとして名を馳せていたローザだが、今はラスレオの町でも有名な魔法薬店を営んでいるという。起業から十年も経たない新興ながら、複数の店舗を構える急成長ぶりで、彼女には商才もあったらしい。
そんな息つく暇もないほど多忙なローザが、十日以上も使いものにならなくなる飛翔魔法を使ってまで駆けつけたと知れば、リュートの抱く印象も変わってくる。
「あれ、じゃあローザってその下――」
「今すぐひん剥いてあげましょうか?」
「ご、ごめんなさい!」
何かに気付いたようなセリアが口を開きかけた瞬間、ギロリと眼鏡の奥の瞳が光る。それだけで蛇に睨まれた蛙のように縮こまるセリアは、すっかり力関係を決められてしまっていた。
やり取りの意味が分からずきょとんとする青年に、説明してくれる者はいなかった。
「ローザさんが疲れて見えるのは、飛翔魔法を使ったから?」
「そういうこと。今日一日はゆっくり休もうと思って一番いい部屋を思い切って取ったのに、壁の向こうでキャンキャンと。改めて説明してもらいましょうか」
「ひん」
事情を知ってから見てみれば、背筋を伸ばして凛としているローザの目元に疲労の色が濃いことに気付く。強気な勢いに気押され、眼鏡の縁に紛れて目立たなかっただけだ。そう思うと、リュートも徐々に申し訳なさが膨らんでくる。
彼の一言で自分に矛先が戻ってきたセリアがまたか弱く泣いた。
「共振の水晶っで話した時は、近所の子って聞いた気がするんだけど。新しい彼氏だったわけ?」
今度は徹底的に追及するようで、ローザは部屋に備え付けられた椅子を引っ張って腰を下ろす。乾いた木のスツールがたっぷりとした尻の重量を全て受けて、ギシ、と乾いた悲鳴を漏らした。
「か、彼氏ってわけじゃ。これには深い理由があって……」
シーツを被ったまま、セリアは否定する。その即答ぶりに一抹の寂しさを覚えながらも、当然のことだとリュートは思い直した。自分たちはあくまで臨時のパーティにすぎない。これは、ただの過ちなのだ、と。
「どんな訳があったらこんな歳の離れた子とよろしくヤるのよ」
ギシシ、と椅子が再び悲鳴を上げる。
ローザが長い足を組んだのだ。はらりと垂れたローブの裾から、何か白いものが一瞬見えたような……。リュートが目をこらそうとした矢先、ローザの白い手が裾の隙間を隠してしまう。
セリアとリュートが一線を越えた理由を説明すると長大に過ぎるが、そのきっかけならば明白だ。詰問されるセリアが可哀想に思えて、リュートは思わず手をあげる。
「セリアさんは悪くないんだ。お、俺の方が迫ったというか、我慢できなくて」
「我慢って、昔から知ってるんでしょうに」
幼い頃から母親同然に育ててくれた女性。確かに、そんな彼女に品もなく欲情する方がおかしい。ローザの言葉はどこまでも正論だった。
しかし、セリアの知らぬ一面を見せられた。凛然と魔獣に立ち向かい、傷一つなく討ち倒す、あの姿。憧憬と、それを超える想いが湧き上がるのは、むしろ必然と言える。
リュートはその時に湧き上がった想いの強さを表現しようと苦心する。
「セリアさんは本当にかっこよくて、素敵なんだ。それにあの時は、魔獣の肉も――」
「あっ、ちょ、リュート君!」
「……あなた、まさかまた」
根本的な原因となるのは、やはりあの魔獣の肉であろう。新鮮なうちにとセリアに勧められ、リュートが口にした肉。滋養強壮の激しい作用が青年を昂らせ、勢い付かせた。
思わず口が滑ったリュート。シーツを脱ぎ捨て飛び上がったセリアが止めようとするも、時すでに遅し。ローザの目が、ナイフのような鋭さで美熟女を射竦める。
次の瞬間、宿の薄い壁を容易く貫通した魔女の怒号が村中に響き渡った。