冒険者になったけど仲間がいないので元S級でムチムチ爆乳の友ママにパーティ組んでもらった。 作:ユリイカ
小都市カポラまで辿り着けば、ラスレオまではもう一息である。立派な防壁でぐるりと取り囲まれた城塞都市は小さいながらも重厚で、遠くからでもよく見える。リュートたち一行もその姿を遠目に捉えた時から歩みが加速し、日没まで余裕を持って門をくぐることができた。
「すごい……。これで小都市なのか!」
大通りに軒を連ねる店々と、活気のある往来。石造りの年季の入った街並みに青年はあからさまに浮き足立つ。立ち寄った村とは一線を画する賑わいは彼を感動させ、また胸を高鳴らせた。ラスレオを支える穀倉地帯の中心にある地方都市でこの規模ならば、大都市と呼ばれる町はどれほど輝いているのだろうか、と。
「カポラ程度でこんなになってると、ラスレオを見たら気絶するんじゃないの?」
「ウチの村を考えれば仕方ないわよ。お店が二軒以上あるなんて考えられないもの」
興奮しっぱなしの青年をローザはどこか優しい目で見ている。セリアもまた青年を庇いつつ、微笑ましそうな表情だ。
「とりあえず今日泊まる所を探さないといけないわね。馴染みの宿があるならそこでもいいけど」
「いつもは雑魚寝の大部屋で泊まってるけど、そこは女性専用なのよねぇ」
先の予定を考えるローザに、セリアははっとする。隣で聞いていたリュートは、複数の宿が存在するという事実と、女性専用の宿という新しい概念に衝撃を受けてそれどころではなかった。
「私もたまにカポラには来るし、その時に使ってる宿なら案内できるわよ?」
「甘えてもいいかしら」
仕方ないわね、と美魔女はすらりとした腰に手を添える。やり手の経営者とはいえ倹約家でもあるローザの常宿は、セリアたちでも十分に手が届く程度の価格帯であった。
「ただし、一番大きな部屋でも二人部屋までよ。二部屋借りて二人ずつになるけど」
「し、しかたないわね……♡」
緩む頬を押さえながら、あくまで仕方なくと繰り返すセリア。
「じゃあミルラ、セリアを頼んだわよ」
「ええっ!? わ、私とリュート君が一緒じゃないの!?」
当たり前に部屋割りを考えていたセリアは、澄ました顔で青年と同室になろうとするローザに目を丸くする。見逃されなかった魔女は小さく舌打ちをしつつ、抜かりなく練っていた論法を繰り出す。
「あなた、またリュートに手を出すつもりじゃないでしょうね? 冷静になりなさいよ」
「うぐっ。そ、そんなつもりは……。彼は小さい頃から見てる子だし……」
露骨に目が泳ぐ未亡人。それ見たことかと勝ち誇る美魔女。どちらも同じ穴の狢であった。
「大丈夫! 問題ないわ! 私、大人だもの。と、というかローザだってなんだかリュート君との距離感近くなってない?」
「そ、そんなことないわよ。多少は魔力があるから、手解きしてやってもいいとは思ってるけど」
「ローザがそんなこと思うなんて、おかしいわ」
「私を何だと思ってるのよ!」
しつこく食い下がってくるビキニアーマーの未亡人に、ローザは思わず舌打ちをする。いっそ四人分の個室を取るプランの方がよかったかと後悔するもすでに遅い。そもそも、それこそ無駄遣いであると糾弾されることは必至であった。
納得のいかないセリアはローザに詰め寄ったまま、隣の青年に意見を求める。
「リュート君はどっちと一緒に寝たい?」
「ええっ!? そ、それは……」
二つの視線が突き刺さり、リュートは狼狽える。昨日のこともありローザと同室になるのは正直気まずい。しかしセリアと夜を過ごすとなれば、我慢できる気がしない。健全なパーティに戻ろうという決意も揺らいでしまいかねない。
言い淀む彼をどう受け取ったか、セリアとローザはずいと迫る。
「私にしなさい。夜は魔法について特別に手解きしてあげるわ」
「そ、それなら私だって身体を鍛えて……。えへっ」
年上とはいえ目の覚めるような美女ふたりに密着されて、リュートの思考はショートする。どちらを選んでも大変な夜になることは分かっていた。
「えっと……」
「それなら私と同じ部屋にしますか」
困り果てた青年に助け舟を出したのは、静観を保っていたむっちり神官ミルラであった。寡黙で滅多に意見することのない彼女が口を開いたことに、仲間二人が特に驚く。
「リュートさんも歩き通しでお疲れの様子。治癒の祈祷術で疲労を軽減することもできますよ」
白い法衣をゆったりと揺らして、聖職者らしい清らかな雰囲気を放つ彼女に、ドスケベビキニアーマー熟女も、ローブの下に女児ドレスを纏った美魔女も、二の句を継ぐことができない。
結局反論の意見は出されず、部屋割りは決まった。
「……安心してください、リュートさん」
宿へ向かう道すがら、あからさまに肩を落とす二人から離れた後ろを歩くミルラがそっとリュートに囁いた。彼女のもっちりとした長い胸が肩に載せられ、青年は思わず背筋を伸ばす。
「私はカポラの教会で過ごしますから。部屋はお一人で使ってください」
「ええっ? そんな、いいんですか?」
予想外の提案だった。リュートが思わず振り返ると、白い清らかな布地に包まれたボリュームのある胸が鼻先を掠める。
「聖職者としての務めもありますので。――二人には内密にした方がいいでしょう。ゆっくりと眠れる機会は少ないでしょうから」
「そ、それは」
耳打ちされた意味深長な言葉に狼狽える。ミルラは寡黙ではあるが、どこまで知っているのかと背筋を冷やす。だが当人は涼やかな目元に笑みを浮かべて、リュートの肩に指先で揺れる。そのまま二の腕へと滑らせ、彼をぞくぞくと震わせる。
「まだラスレオの町までは数日かかります。英気と体力を養ってください」
「ありがとうございます」
取付きにくい雰囲気のあったミルラへの印象が、氷解していくのを感じていた。リュートが感謝を述べると、聖女は柔らかな表情で頷いた。
そして、彼女はその言葉通り、宿に荷物を置いて早々に部屋を出た。
「明日の早朝には戻りますので」
そう言い残し、音を殺して去っていく。隣の部屋からは壁越しにセリアとローザの楽しげな会話も聞こえてくる。なんだかんだと言って、二人も久しぶりの時間を楽しんでいるようだった。
ベッドが二つ並んだ部屋にひとり残されたリュートは、久々の自由な時間に浸る。ラスレオへの期待も高まりながら、カポラの町で食べた夕食の余韻にひたり、少しずつ眠気が溢れてくる。そのまま横になろうかと思ったその時、ふと部屋の隅に置かれたままの荷物に気が付いた。
どうやらミルラが置いていったものらしい。その中には法衣と聖具、更に小ぶりな聖典もあった。しかし彼女は教会での務めがあると言っていた。これらはそれに必要なものではないのだろうか。
リュートは再び身を起こし、思案をめぐらせる。
「とりあえず持っていくか。違ったらそのままちょっと観光しよう」
夜の町もまた、昼間とは違う魅力に溢れていることだろう。
浮き足立った彼の足取りは軽い。見た目よりもずっしりと重たい荷物を抱えて、彼はこっそりと日没の町へと繰り出した。
教会はどの町でも中心地に近い場所にあり一際背の高い尖塔を有するため、初めてこの町に訪れたリュートでも迷わず向かえる。聖職者の荷物を抱えた彼を、教会の老シスターも快く迎え入れた。
「ミルラはこの奥の個室で休んでおりますよ。ええ、旅先でも祈りを欠かさない、立派な神官です。ええ、ええ」
ほとんど目が隠れるほど瞼の下がった老女は関心しきりで廊下の奥を示す。その先に、旅の神官のために用意された宿泊用の部屋があるという。リュートは恐る恐る部屋の前まで辿り着き、その戸を叩く。
しかし、返答はない。
「ミルラさん、忘れ物を持ってきましたよ」
やはり声は帰ってこない。
リュートは意を決してドアノブを押し開けた。
「ばぶううううっっ! ううううっ! ばぁぶ♡ うあああうっ♡ ぶぶうっ♡」
その瞬間、部屋に施されていた防音の法陣が破綻し、成年をはるかに超えた女性の声が飛び出してきた。