冒険者になったけど仲間がいないので元S級でムチムチ爆乳の友ママにパーティ組んでもらった。 作:ユリイカ
セリアがなんとか身を縮めようと画策するほどに、この十年手放しにしていたボディは溢れる。苦労してベルトを締めると柔らかな白い駄肉が余計に強調され、その窮屈さも羞恥心を掻き立てる。
「セリアさん、もう着替えられた?」
ドアの向こう、廊下で待っているリュートが期待の声をかけてくる。
「もうちょっと待って! 絶対開けちゃダメだからね!」
セリアは顔から火を噴きそうな恥ずかしさに耐えながら、ちらりと部屋の隅の鏡に目を向けた。そこに写っていたのは、全盛期からはかけ離れ、堕落しきった己の醜い肉体だ。
「あの、リュート君。その、やっぱりなしで――」
「開けていい? 開けるね?」
「ちょっ」
身を縮めていたセリアは一歩遅れる。手を伸ばした時にはすでに遅く、扉は無慈悲に開かれる。S級冒険者の勇姿に興奮を隠せない青年が、その姿を目の当たりにする。
「う、ううう……。見ないでぇ……」
恥ずかしさと悔しさが入り混じり、涙目になりながら身を捩るセリア。丈の短いスカートはほとんど用を成しておらず、むっちりとした臀肉のまろやかな曲線は半分以上も曝け出されている。まっしろな太ももに食い込む黒いハイソックスはパツパツと張り詰めている。何よりも窮屈そうなのは、二児を育て上げた立派な乳房。爆発寸前のそれをなんとか抑えているのは、細い紐で繋がった鱗の胸当て。
ムチムチ、ギチギチ、と油断ならない緊張感が音になって聞こえてくるような、痛々しいほどのミニスカビキニアーマーであった。
「も、もともとはサイズも合ってたのよ。でも十五年も経てば仕方ないでしょ。オーダーメイドだからほとんど調節もできないし」
言い訳がましく捲し立てるほかなかった。目を見開いて立ち尽くすリュートを前にして、後悔が膨らんでいた。強気に断って、跳ね除けるべきだった。何がS級冒険者だ。今や太るに任せ、年齢も重ね、だらしない身体である。失望されるのは当然だ。
それでもついクローゼットの奥にしまい込んでいた装備品を出してしまったのは、彼の憧憬の視線を無視しきれなかったからだ。
「ごめんね……。分かったでしょ。おばさんなのよ」
「――か、かっこいい!」
しょぼしょぼと項垂れるセリアの予想に反した声だった。耳を疑い、ゆっくりと頭を上げるセリアに、リュートは慌ただしく駆け寄り手を掴む。
「ひゃっ」
「かっこいいよ、セリアさん! これ、ドラゴンの鱗? すげえ、やっぱり全然色褪せないんだ。深い緑色だけど、光の加減でちょっとずつ変わって……。綺麗だ」
セリアが仲間たちと長い戦いの果てに討ち倒した竜の鱗。ギリギリ乳輪の赤みを覆い隠す程度しかないが、それが内包する魔力は絶大だ。むしろそれ以外の素材を組み合わせれば邪魔になるほどの力を持ち、これだけであらゆる攻撃を跳ね除ける。
冒険者にとって竜鱗鎧は羨望の的である。幼い頃から冒険譚に憧れてきたリュートにとっても例外ではない。
「こ、このスカートもすごい魔力があるよね!」
「こらっ、引っ張らないの!」
興奮のあまり鼻息を荒くして真紅のスカートを引っ張る青年。慌ててその手を掴み、尊厳を保つ元冒険者。龍鱗のビキニアーマーに匹敵する、とは言えないがそれでも最上級に等しい逸品に違いはない。それを目敏く看破したリュートに、感心さえ覚える。
「クリムゾンアラクネーの糸を使ったものよ。軽くて柔らかいけど、防御力も高い優れものなんだから」
紅蓮の溶岩が噴き荒れる火山の火口に巣食う凶悪な魔獣である。その糸は非常に希少で、ミニスカートにする程度の量しか持ち帰ることはできなかったが、それでも騎士の重装をはるかに凌駕する。
純粋無垢な青年の視線に、セリアの身に張り付いていた羞恥心は解きほぐれていく。彼は一流の冒険者がその人生を賭して掴み取ってきた戦いの証を前にして、ただ尊敬と憧憬の念を抱いていた。その姿を見ていると、だんだんセリアの背筋も伸びてくる。
凛とした立ち姿で胸を張り、ゆっさゆっさと揺らしながらかっこよくポージングまで決めていく。さっきまでの耳まで赤くして狼狽えていた姿が嘘だったかのようである。
「そういえばおばさん、職業はなんだったの?」
冒険者と一口に言っても、その内実は様々である。各々が自身の技術と適性を見極めて、スタイルを確立していく。"紅の翼"というパーティに所属していたセリアならばなおさら、何か一つのことに特化していたはずだ。
とはいえ、彼女自身が絶大な魔力を宿しているわけではく、神の奇跡を代行する身にあるようにも見えない。そもそもセリアが着ている、胸や太もも、腹回りの肉にぎっちりと食い込んでいる装備品は近接戦闘を前提としたものだ。
リュートの率直な疑問にセリアは神妙な顔で頷くとクローゼットの奥に手を伸ばす。四つん這いになってゴソゴソと衣服の奥を探っているようだ。息子たちに見つからないようにするためか、ずいぶんと奥にしまい込んでいる。
「んー、と。この辺に」
がこん、と何か音がする。どうやら二重底の下にあるらしい。
リュートは頭をクローゼットに突っ込んで尻を揺らす姿を見下ろしながら、ごくりと喉を鳴らす。輝かしい装備に意識を向けて忘れていたが、熟れきった肉体の艶やかな女性が、なんとも大胆な格好をしているのだ。幼馴染の母親なのだと自分に言い聞かせるが、背徳感が余計に心臓を掻きむしる。
「あったっ!」
そんな年頃の青年の熱い視線も露とも知らず、ノリに乗った未亡人は何かを探し当てる。よいしょ、と年齢を感じさせる声と共に出てきた彼女が持っていたのは、物々しい得物であった。
「嘘だろ……」
リュートはそれを見上げ、絶句する。
いったい、このクローゼットのどこに収まっていたのかと首を捻るほどに巨大で、重々しく、重厚な金属の塊。一目でただの鉄ではないと分かる。洗練された魔力を宿し、無数の傷が百戦錬磨を、艶やかな刃紋が丹念な手入れを証明する。
「私、元々は重戦士だったのよ」
にっこりと笑みを浮かべ、誇らしげに大剣を掲げるセリア。
S級冒険者としての彼女が、今この瞬間に復活した。