六花アカネ夢芽が「あなた」とラブラブエッチする短編集 作:前野へーた
夕方のメイド喫茶。ユウは一番奥の席で帽子を目深にかぶっていた。メニュー表で顔を半分隠しながら、フロアを歩く一人のメイドを目で追う。
『ごめんねユウ。今日は遅番だから会えない。埋め合わせはちゃんとするから』
恋人の夢芽だ。今日は会えないと言われて、なのにさっきSNSにあげられた出勤の自撮りを見て、こうして様子を見に来てしまった。我ながら未練がましい。
夢芽は細い体を黒のワンピースと白いエプロンに包んでいる。栗色の髪を高い位置でまとめ、うなじがむき出しだ。
トレイを片手に身をかがめて皿を置くたび短いスカートがふわりと揺れて黒いニーソの上の白い太ももがちらっとのぞく。バニラみたいに甘い匂いがその動きに乗って流れてきた。
天井から下がるピンクの安っぽいシャンデリアがアーモンド形の緑の瞳とグロスで濡れた唇を照らす。
「ご主人様ぁ、お待たせしましたぁ♡」
作りものの甘ったるい高い声だ。甘い声を出すたび夢芽の睫毛が可愛らしく伏せられる。それも接客用の作りものの仕草だろう。
テーブルの男が鼻の下を伸ばして夢芽の胸を見ている。隣の客も通りすがりの夢芽を目で追う。この店で夢芽目当ての客は多い。みんなこの笑顔を見に来るのだ。
ユウの奥歯がぎりっと鳴った。
あの唇もうなじも太ももも全部知ってるのに。夢芽はユウの恋人なのに。他の男に笑いかける横顔を見ていると胸の奥がむかむかしてくる。
夢芽が別の客の肩に軽く手を添えて笑った。
「もぉご主人様ったら♡ うれしいこと言ってくれちゃって♪」
むかつく。なのに――ズボンの下が勝手にじんと重くなってくる。妬いてるのに反応するとか自分でも意味が分からない。
その夢芽の視線がフロアをぐるっと回って――ユウのところでぴたりと止まった。緑の瞳がまんまるに見開かれる。あざとい笑顔が口の端で固まった。
夢芽は皿を置き終えるとつんと澄まして背を向ける。でも接客の合間を縫ってつかつかとユウの席まで来た。そして腕をぎゅっと掴む。
「……ちょっと。こっち来て。店の裏、バレたら困るからさりげなく」
喉を絞った低い声だ。清楚なメイド服には似合わない凄みがあった。
夢芽はユウを引っ張ってフロアの奥のドアをくぐる。
そこは従業員用のバックヤードだった。狭い通路にモップとバケツ洗剤のボトルが寄せてある。その脇にチェキのフィルムやペンライトを詰めた段ボールが積んであった。ドア一枚の向こうから客の声とアップテンポなボカロのポップスがくぐもって聞こえる。
「っ──あのさぁ、なんで来ちゃったわけ。今日は会えないって言ったよね」
ユウはうまく答えられない。他の男に笑う夢芽を見ていたらいても立ってもいられなかった。……なんて言えるわけがない。
夢芽がユウの顔をのぞき込む。それからくすっと鼻で笑った。
「……なに。妬いてるんだユウ」
夢芽がユウのシャツの襟をぐいと掴んで、冷たいロッカーへ背中を押し当てた。逃がさないとばかりに距離を詰める。
「毎回そう。あたしが可愛いから妬くんでしょ。……もう慣れたけど」
細い膝がユウの脚のあいだにぬるりと割り込んでくる。太ももがズボンの上から股間をぐっと押し上げた。狭い通路に逃げ場はなく、ドア一枚向こうの客の声だけが近い。
やばい。心臓がいやに速い。口の中がからからに渇いていく。
「そんなに不安なら……安心させてあげる」
夢芽の指がベルトにかかった。金具を片方ずつ焦らすみたいにゆっくり外していく。かちゃかちゃと小さな音が鳴る。
ジッパーを歯をひとつずつ下ろす。少しずつ少しずつだ。
その間もう片方の手がズボンの上から膨らみをすりすりと撫でている。
「もうこんなにして。単純だよねユウは」
まだかよと思う。焦らされるほど下腹に甘い痺れが溜まっていく。早く直に触ってほしくてたまらない。こんなの生殺しだ。
やがて夢芽は下着をずらしてペニスを外へ引っぱり出した。
「ヤバ、もうガチガチ。あたしの彼氏って変態だ」
夢芽が勃起し続けるものを根元からねっとりと握った。ゆっくりと手を上から下に、そして下から上に滑らせ……根元からカリへ、カリから先端へ。先端まで来ると親指の腹で丸いくびれをくりくりと撫でた。
「ンふ、ここ弱いでしょ」
うっと喉の奥で声が詰まった。甘い痺れが背骨を駆け上がる。触られているところから電流みたいな熱が全身に散った。
たまらない。頭の中が真っ白になる。気持ちよすぎて情けないと思う。なのに頭のどこかでもっとという声だけが膨らんでいった。
夢芽がユウの耳元に唇を寄せた。グロスを塗った唇が耳たぶをかすめる。栗色の後れ毛が頬をくすぐり、バニラの匂いが濃くなった。
「さっき、他の男に笑うあたし見て、イラっとした? えー? あたしはユウのなのに? ……ばーか♡」
囁く声は落ち着いて手慣れている。それでもユウの息が耳にかかると、興奮を確認できたからか、語尾がふっと鼻にかかって甘く溶けた。
夢芽がユウの手を取ってメイド服越しの胸へ押し当てた。迷いのない手つきだ。
「ユウ、あたしのおっぱい揉むの好きだもんね。知ってる」
手のひらに控えめなふくらみが収まる。小さめのそれが指のあいだでぷにっとかたちを変えた。
「このおっぱいね……触らせたの、ユウだけなんだよ? 気持ちいいって感度も……ぜんぶユウ専用♡」
揉まれるたび夢芽の息がふっふっと乱れる。緑の瞳がとろりと潤んだ。
メイド服の胸元が小さくつんと尖って浮いている。ユウの指がその布越しの乳首をきゅっと摘んだ。こりっと硬い芯が指の腹でころころ転がる。
「ほら硬くなった。ユウに触られてるからだよ。他の男の前じゃこうならない……っ」
夢芽の白いうなじにヒククと鳥肌が立つ。喉の奥でこらえきれない声がか細く鳴りかけて、また飲み込まれた。言葉の隙間に甘い喘ぎがひとつ混じり込んだ。声がだんだん湿っていく。
「ああっ、そこ、すごくシビれてるっ」
夢芽がユウの手を取ってスカートの中へ導いた。ためらいもなく奥へ。裾がめくれ黒いニーソの上の白い太ももがあらわになる。
ユウの指が黒いニーソの上のほっそりした内ももをたどる。火照った肌がしっとり汗ばんでいた。指が奥へ進むと薄い下着に触れる。その中心はもうぐっしょり湿って指の腹にぬるっと張りついた。布の色がそこだけ濃く染みている。
「濡れてるでしょ。ユウが来たから……こういうの、久しぶりだもんね。この前、朝までしたとき……すごかったの、覚えてる?」
指の動きひとつで夢芽の声が上ずった。攻めているはずなのに、腰がもどかしそうにゆらゆらと揺れる。
「あたしのここユウの形に馴染んでるの。ユウ専用に作り変えられちゃった。だから浮気なんてできない。身体がユウ以外受け付けないの」
夢芽が少し体を離した。緑の瞳がまばたきもせずユウを見つめる。慕うようなすがるような目だ。
「……あたしの方が不安なんだけど。ユウはどうなの。六花さんとかアカネさんとか」
早口だった。言葉の切れ目で息が浅く途切れる。ふと震える吐息が漏れ、瞳のふちに涙の膜が張った。
「あたしのこと好き?」
声が泣くように揺れ、ひくひく引きつれた。夢芽が下唇をきゅっと噛んだ。眉を寄せてうつむきかける。
「あたしはユウだけ。ユウは……あたしが好きだよね? 言って」
最後の「言って」はぼそっと小さかった。そのまま夢芽は息を止める。
抱きしめて「好きだよ」と告げると腕の中で細い体がかっと熱くなる。汗ばんだ首筋の火照りが伝わってきた。
夢芽の肩からふっと力が抜けた。それからユウの背に回した手にぎゅっとしがみつく。ユウの匂いを深く吸い込むように大きく息をした。
「ほんと? もし嘘だったらキッチンから包丁持ってきちゃうけど」
物騒な言葉だ。だけどユウの胸に押し当てた頬がじんわり赤い。
それから夢芽は鼻からふっと笑いの息を漏らした。
「……ばか。もっと好きになっちゃうじゃん。あたしユウのこういうまっすぐなとこ好きなんだから。ばか」
夢芽の指がユウのものに這う。だが握らない。熱い指先で輪郭をつうっとなぞるだけだ。
見上げてくる緑の瞳がいたずらっぽく細まる。夢芽の舌先が、焦らすみたいに、自分の唇をゆっくりなぞった。
「ぴくぴくしてる。早くしてほしいの? ……まだダメ。もうちょっと我慢して」
挑発する囁きは艶っぽく手慣れている。
夢芽はユウを見上げグロスの唇を舌先でちろりと舐めた。
「おしゃぶりしてほしいでしょ?」
誘う声に熱い吐息が混じっていた。
夢芽がユウの足元にそっと膝をついた。白いエプロンの裾が狭い床に広がる。黒いニーソの膝が硬い床に沈んだ。
ユウの見下ろす視界いっぱいに白いカチューシャと栗色のつむじが広がり、それが夢芽の顔に変わる。栗色の髪をかき上げて、緑の瞳で下からユウを見上げた。
グロスの唇が濡れて光っている。
「覚えてる? 初めてクチでしたとき。あたし緊張しすぎてめちゃくちゃ下手だったよね」
夢芽がふっと笑う。舌先で自分の唇をぺろりと湿らせた。
「今はちゃんと上手にしてあげる。……初めてクチでした日と同じ順番でユウのだけ」
夢芽の小さくて赤い舌先が竿の根元にちょんと触れる。それから舌がぺたりと平らに広がって裏筋をねろねろと下から舐め上げていく。舐めた跡がつうっと濡れて光った。
まだ咥えない。柔らかくて熱い舌が竿の外側をねっとりとなぞるだけだ。
「初めてのときはすぐイっちゃったもんねユウ」
うっ……濡れた舌が這うだけで腰の奥がぞくぞく痺れる。やばいと思う。
舌先が亀頭の縁をくるっくるっと回る。それから裏筋をちろちろっちろちろっと弾いた。
鈴口には舌先をちょんちょんと軽く当てる。
背骨を甘い痺れが一気に駆け上がった。もう頭の芯がじんじんしてまともに立ってられない。
夢芽の小さな口がめいっぱい開く。グロスの唇が亀頭の丸みにぴったり吸いついてぱくっと咥えこんだ。
薄い唇がペニスの太さに負けて“O”の字に伸びる。張り付いた縁がてらてら光った。
熱い。口内はとろっとした唾液でいっぱいだ。柔らかい粘膜が亀頭をぬっぽりと包んでくる。
「ん……硬っ。あの日よりずっと大きい気がする」
脈打つ熱を夢芽の舌がねろねろと絡んで味わう。緑の瞳がうっとり細まった。
包まれた瞬間下腹から熱い波がぶわっと広がる。たまらないと内心で呻いた。
夢芽が頭をゆっくり沈めていく。咥えたまま慣れた舌が口内でくにゅくにゅと絡んでくる。
唇できゅうっと締めつける。じゅるると吸われると竿の芯から痺れが突き抜けた。
「ん……っ」
うっと声が漏れた。気持ちよすぎて膝が笑う。
夢芽が頭を前後にぐねぐねと振り始めた。じゅぷっじゅぷっと濡れた音が響く。
頭のてっぺんで白いフリルのカチューシャがこくっこくっと規則正しく上下する。清楚な白い飾りが、口でしているエロい動きに合わせてぴょこぴょこ弾んでいた。
唾液をたっぷり絡めてグロスの剥げかけた唇でしごく。竿と唇のあいだで白く泡立った唾液がぬちゃぬちゃ音を立てた。口の端からとろりと一筋こぼれて顎へ伝う。鼻からふすっふすっと、荒い息が根元に熱く吹きかかる。
頭の中が真っ白になっていく。やばい、もう出そうだ。
出そう――そう思った瞬間夢芽がちゅぽんっと口を離した。
口を離すと先端と唇のあいだに透明な唾液の糸がつうっと長く伸びた。ぷつっと切れて夢芽の顎に落ちる。赤い舌先が先端にちろちろと当たるだけでそれ以上は何もしてくれない。
「まーだ。いっぱいガマンして。キンタマ空っぽにしてあげるから」
緑の瞳がいたずらっぽく笑ってる。ずるいと思う。焦らされて頭がどうにかなりそうだ。早くもっと奥まで――そんな声だけが頭の中で暴れる。
夢芽がまた咥えた。今度はずぶっと深く。
「ん、ふ、ぅ、ユウの、あたしのっ」
しゃぶりながら夢芽が息を荒くする。鼻にかかった声が「んっんっ」とペニス越しに響いた。太ももを擦り合わせるたび鼻の奥から切羽詰まった高い声がくぐもって漏れる。奉仕しているだけなのに夢芽自身が限界に近づいているのだ。
見上げてくる緑の瞳にユウの顔だけが映っている。長いまつ毛が、頭が上下するたびヒククと震えた。とろんと潤んだ瞳のままじゅぷじゅぷと頭を速めていく。口内が熱い。とろとろの粘膜と舌が竿の裏をぴったり押し上げてくる。
もう限界だ。下腹の奥で熱がぐぐっと膨れ上がる。
ユウは思わず夢芽の栗色の髪に指を差し込んだ。フリルのカチューシャが指先で少しずれる。
夢芽は口を離さない。見上げてくる緑の瞳にユウの顔だけが映っている。じゅぷじゅぷと頭の動きを速めると白いカチューシャがふりふりと激しく揺れる。
下腹の奥で熱いかたまりがぐぐっとせり上がってきた。腰から背骨へぞわぞわっと震えが駆け上がる。背中でロッカーのドアがきしんだ。
奥のほうがどくどく脈打ちはじめる。
もう無理だ。
止まらない。
出る。
頭の中がその一言。
出る。
いっぱいになる。
声出すな――ドア一枚向こうに客がいる。ユウは奥歯を食いしばってこみ上げた「出るっ」という呻きを必死に噛み殺した。
夢芽は口を離さない。咥えたまま緑の瞳で「いいよ」って促してくる。唇がにゅきゅうっと締まった。
次の瞬間根元のもっと奥がどくんっと大きく脈打った。腰と太ももがびくびく痙攣する。
熱いかたまりがその脈に押し出されて竿の中をずずっと一気に駆け上がる。下腹から熱い波がぶわっと全身に広がった。頭が真っ白に飛ぶ。
どびゅっ。
夢芽の口内へ最初の一発。
赤い舌の上に白いのがどろっと。
じわっと広がる。
夢芽は口を離さない。注がれるたび頬が内側からぷくっぷくっと膨らんでいく。口の端に白いのがうっすら……。
「ん――……っんく」
精がこぼれそうになる。夢芽は吸いついて逃さない。緑の瞳がうっとり細まった。受け止めることに性の悦びを覚えている。
跪いて自分の精液を口で受けてるのは、メイド喫茶で男たちがこぞって指名するモデル級の美少女。白いカチューシャをつけたメイドさんは濡れた緑の瞳で自分だけを――頭の芯がぞくぞくっと痺れた。
優越感に押し上げられる。
夢芽の声が「ん゛っ」と濁った。
快感がぶわっと厚くなる。
どくっ。
また脈打つ。
どくっ。
熱い光みたいなものが体の芯から。
びゃっ。
夢芽の口内にザーメンがふきかかる音。
びゃっ。
甘い痺れが背骨に。
びゃっ。
何度も駆け上がる。
腰が抜ける。
意識がふわっと飛びかけた。
最後のひと脈をどびゅと絞り出して体からぜんぶ力が抜けた。
心臓がばくばく鳴ってる。膝がまだがくがく笑ってた。頭の中はふわふわしてなんにも考えられない。
なのに出したばっかりのそこがまだじんじん熱い。
夢芽が萎えかけたのを咥えたまま根元から先へゆっくりしごき上げた。
先っぽに残った最後の一滴までちゅうっと吸い取る。
うあっと声が漏れた。出し切ったばっかのそこに電流みたいな刺激がびりびり走る。こそばゆくて腰の奥が勝手にびくびく痺れた。
夢芽は緑の瞳で見上げたまま、口いっぱいの精を舌でねちゅねちゅと転がした。
口をしっかり閉じたままゆっくり立ち上がる。つま先立ちになって、ユウの耳元に唇を寄せてきた。
「聞いてて。ユウの精液飲む音」
こくん。
細い喉がごくっと動いた。
ごくっ。
白い喉のラインが上下する。
ごくっ。
口いっぱいの精が少しずつお腹の中に消えていく。
ドア一枚向こうの客の笑い声。そのすぐ裏で夢芽は自分のをぜんぶ飲んでる。
夢芽が「あーん」と口を大きく開けた。とろっとした赤い口の中を、これ見よがしにユウへ突き出す。
つやつやの舌をくるんと持ち上げ、裏まで見せて、頬の内側もべろりと一周なめる。「ほら」と言いたげだ。
ユウが出したはずの白いものは、もうどこにも残ってない。
まだ息が上がったままの夢芽が、自分の細い喉を指先でつうっと撫でた。ぜんぶここ通ったよというふうに……。
ヤバい。ユウの、腹の奥がまたずくずく疼く。
「ぜんぶ飲んだ。他の男のなんて飲むわけないでしょ。ユウのだけ」
濡れた緑の瞳がまっすぐユウを見上げる。
「……もう疑わないで」
夕方のバックヤード。ドア一枚の向こうで客の声とBGMがまだ続いている。
出しきった……ユウはロッカーに背中を預けたままだ。手足から、だらーっと力が抜けた。頭の芯がぼうっと熱い。腹の底が満たされて重い。妬いていた気持ちはもうどこにもなかった。
その隣で夢芽が肩ではあはあと息をしている。汗ばんだ額に栗色の髪が数本はりついていた。口の端がまだ濡れててらてら光っている。
「……はぁ。飲んじゃった」
かすれた甘ったるい声。
夢芽が濡れた唇の端を片方だけぺろりと舐める。それを見たら出したばっかりのはずのそこがまたむずむずしてきた。我ながら現金だ。
夢芽はゆっくり親指で口元をぬぐった。乱れた髪を耳にかけめくれたエプロンの裾を手のひらで撫でて直す。
背筋が伸びた。緑の瞳がすっと細くなる。挑むような目でユウを見据えた。
「勘違いしないでよね。妬いたユウが悪いんだから」
もう毒を含んだ声だ。
だけどエプロンを直す手がふと止まった。夢芽はユウの胸に鼻を寄せて匂いを一つすうっと深く吸い込む。
「ユウの匂い。あたしこれがないともう……」
言い切れずに夢芽はユウの腕へぎゅうっとしがみついた。ユウが髪を撫でるとその肩がかすかに震える。
「……ユウの女になれてよかった。ほんとに」
夢芽がドアの外へちらっと目をやる。客の声とBGMが漏れてくる。それでも腕を離さなかった。
「あと五分だけこうしてる。……五分経ったらあたしみんなのメイドに戻るから」
あと五分。夢芽はユウを誰にも渡さないで独り占めしたいらしい。
その声だけでユウのそこがまたずくずくと疼いた。夢芽はめざとく気づいたらしい。濡れた唇の端を片方だけきゅっと持ち上げる。
「帰る前にドラストでゴム買っといて。0.01ミリの極うすのやつ。今夜は美味しいものお腹いっぱい食べさせて……朝までコースだからね?」
五分きっかりで夢芽はユウから離れた。手早く髪を整えてエプロンのしわを伸ばす。胸を張って口角を上げてあの甘ったるくて高い声を出した。
「――お待たせしましたぁ♡」
ドアを開けるとフロアの光と音がどっと流れ込んでくる。夢芽は作り笑顔のままその中へ戻っていった。
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