消去法で与えられた遺伝子改造チートでどこまでやっていけるか? 作:適当でいいです
街に戻ってきた翌日から、肌を刺すような違和感がビリビリと止まらない。
【生命探知】の反応を追うと、昨日1号くんの寝床からベスター市へと引き返す道中から、ずっと俺の後をつけてきている奴がいる。
最初は「同じ方向に進むただの旅人か、獲物を探す冒険者だろう」くらいに思おうとしていた。
だが――そいつらは俺の居候先の民泊まで尾行してきた挙句、建物の外でぴたりと動きを止め、もう数時間も同じ場所で張り付いているのだ。
これはもう、尾行されていると『確定』していいだろう。
(な、なんかやらかしたぁぁぁーーーっ!?)
正直なところ、自分でも思い当たることが多すぎて絞り込めない!
まあ、具体的な詳細は自分都合で綺麗に忘れることにしているけれど!
(……いや、待て。冷静になれ俺)
俺は脳内で【生命探知】のログを高速で整理する。
もし仮に1号くんの存在(音速投擲のクレーターや死体肉塊)や、体内に隠している遊女の件がバレているのだとしたら、こんなコソコソした少人数の尾行で済むはずがない。もっと騎士団や討伐隊が大挙して押し寄せ、民泊ごと包囲されて大騒ぎになっているはずだ。
ということは、1号くん関係の致命的な露見ではない。
「じゃあ、一体どこで足がついた……? 先日のキノコ探知の目立ちすぎか? それとも深夜の馬のレンタル履歴か……?」
居候先のおばさんに怪しまれないよう平然とした顔を保ちながら、俺は【生命探知】で外の監視者の心拍数と配置を刻一刻とチェックし、冷や汗を流していた。
(来い)
俺は脳内でコマンドを発令した。
すると床下の隙間から、カサカサと音を立てて4匹のネズミが姿を現した。
こいつらは以前、あの猟師親子から教えてもらった『生捕り用の罠』を使って山で捕獲しておいた奴らだ。
生体制御の実験としてこいつらを弄ってみて分かったのだが、1号くんや2号くんのように「死にかけの肉体(意識混濁状態)」であれば、俺の髪の毛1本を刺し込むだけで簡単に操ることができる。
だが、ピンピンと元気に生きている生物相手だと、そうはいかない。
生物の脳が自発的に出している神経信号(本能や生存本能)をまず完全に相殺し、その上から俺の命令信号を『上書き』しなければならないのだ。単純計算で、2倍以上の神経細胞とバイオ回路の移植が必要になる。
(くそ……いちいち制約条件が多すぎるだろ、この能力……)
結局、俺が何日も徹夜して【遺伝子改造】を施し、こいつらの脳内に「ジール専用の外部シグナル受容回路」を直接構築するハメになった。
それだけに、この4匹は俺の貴重な労力と時間が詰まった『精密生体ドローン』なのだ。ただの尾行相手にそう簡単に捨て駒(ロスト)として差し出すわけにはいかない。
(よし……まずは1匹、外の状況を偵察してこい。もう2匹はこの家を巡回しろ。残り1匹は待機だ。)
俺は1号くん経由で培った【生体モニター(映像共有)】をネズミの視界と同調させ、民泊の外で張り付いている不審者の正体を突き止めるべく、闇の中へと走らせた。
しかし――夜を通して互いにじっと睨み合い、そのまま朝を迎えると、尾行者は何事もなかったかのように静かに姿を消して引き上げていった。
暗闇の中、ネズミの超ローアングルな視界からでは、深くローブを纏った相手の素顔までは捉えきれなかった。
「……他人に顔を見られたくなかったからか? それとも、俺の拠点を特定できたから『第一段階の目的達成』として報告に戻ったのか?」
誰もいない室内で、俺はぽつりと独り言を漏らす。
一瞬、「明日からは別の宿屋へ避難した方がいいか?」という考えが頭をよぎった。だが、即座に打ち消す。
今ここで急に宿を移動したり行動パターンを変えたりすれば、こちらが尾行に気づいていると相手に白状するようなものだ。藪をつついて蛇を出す結果になりかねない。
もう自分の脳内では記憶の彼方に追い遣ろうとしているが……あの魔族の群れだって、追い詰められて切羽詰まった末に無謀な総攻撃をかけてきたのだ。正体不明の相手を変に警戒させたり刺激したりすれば、どんな過激な行動に出てくるか分かったものではない。
「……当分は『何も気づいていない間抜けな住人』を演じて様子見だな」
俺はネズミ4匹を民泊の床下や屋根裏へ分散配置し、24時間体制の『自動監視センサー』として巡回させるよう命令を下した。
普段通りの生活を送りつつ、相手が次にどんなカードを切ってくるのか、安全圏からじっくり見極めさせてもらうとしよう。