闘う巨乳なレジスタンス娘は失うものが何もない 作:かめのこたろう
「真っすぐ正面だ。ではまたな。再会できるのを楽しみにしてるぜ?」
意味深な言葉の意味も、事前の予習で理解はしていた。
ただ、つい先ほどまで没頭させられていた感覚の余韻で、それ以上あまり考えをめぐらすこともない。
コツンコツンと、急がずに、一歩一歩確認するような慎重さで、殺風景な通路へと踏み出していく。
ただの企業ビルではありえない、まるで軍事施設と見まごうような重苦しさを感じさせる壁と床が続いていた。
下半身全体がフワフワとしたまま、慣れないヒールで足を進めるのはそれなりに努力がいった。
ともすれば、ゆらりとバランスを崩して一方に重心が傾いていきそうになる。
纏っているドレスも最低限、乱されたところをできる範囲で直しただけ。
濡れた下着の感覚は、もうあまり気にもならない。
ゆらゆらと頼りない足取りが続いたけど、時折、壁に手をつくだけで済んだ。
堅牢な電子制御扉を目前にする頃には、普通に立って身体を持ち支える程度には落ち着いていた。
『右上のすみを見たまえ』
スピーカー越しの声が響くまま、言われた通りに顔を向ける。
すると、監視カメラらしき小型の機器が銃口を向けるようにこちらを窺っていた。
『ぶふふぅっ! なるほど、素晴らしい! ……合格だよ、入り給え』
巨大な袋から空気が抜けるような音が恐らく笑い声なのだと思う間もなく、ウィーンカチリと動作音を響かせて、左右に分厚い扉が裂けて開いていく。
そしてその先に展開した光景は、先ほどまでの殺風景な通路とは一変したものだった。
一見すると、高級ホテルのスイートのような調度の広い部屋。
壁や、床の絨毯など、決して安物ではありえないものが全体の基調になってしつらえられている。
同時に、ここが普通のホテルの部屋などではありえないことを如実に証明するのが、奥一面に設置された無数のモニターと。
部屋の中央に鎮座するソファとも寝具ともつかない、巨大なオブジェクトだった。
そして溢れんばかりに、横たわり据えられた肉の塊。
「ようこそ。ガード達の案内は如何だったかな? 無礼などなければいいが。 ぶくくっ!」
醜悪さと低俗さを煮締めて練り集めたような、肥満体の笑い声。
明らかに何があったかを正確に把握したうえで、惚けたことを言い放つ。
これがようやく邂逅した私のターゲットそのもの。
自分にとって、いや、組織にとって今最も重要な人物に他ならない。
認識するものすべてを咀嚼し、浸透させながら、改めて心を奮い立たせた。
たとえ構成要素のほとんどすべてが、負の感情を齎すものであったとしても、関係などない。
今やるべきことなど、わかり切っている。
「いやという程丁重に扱ってくれて、うれしくて涙がでそうだったわ。……でもまあ、必要経費みたいなものだと思うわ。それだけの報酬は貰えるみたいだからね?」
「いや、聞いていた以上で感激だよ。……楽しい夜になりそうじゃないか。んふーっ、んふーっ!」
ねっとりとした視線が、直し切れないドレスの乱れから覗く場所、胸元や太ももを舐めるように撫でていく。
ゾッとした悪寒を感じながらも、表向きにはうっすらと微笑みを返して難なくやり過ごして見せる。
「さあ、こちらに。我らに余計な前置きは必要ないはずだね?」
肉膨れでむっちりした手で招かれると、もったいぶるような緩慢な足取りで近づいていく。
コツン……、コツン……。
ヒールの音が絨毯を踏み鳴らすくぐもった音が静かに鳴り響いた。
「ええ。もちろん、自分のやるべきことは十分承知してるつもり。……払ってくれる分はしっかりとやらせてもらうわ」
巨大なクッションと、そこに収まるぶよぶよした肉塊はもう目の前。
「ぐぷーっ、ぐぷーっ、た、堪らんな。では早速、ご自慢のサービスを堪能させてもらおうかっ」
無防備に空中へ突き出していた私の胸の膨らみへと、下からすくうようににょっきりと片手が伸ばされてきた。
ぷよんっと。
あっさりと接触され、持ち支えられるまま、モミモミと始まる動きを受け入れる。
「んっ♥ ……はいはい、慌てないで。お望み通りたっぷりこれでやってあげるから」
自分からも両手で持ち上げて、見せびらかして誇るように強調してやる。
男というのはどうやらよっぽどこれが好きらしく、このターゲットたるデブもまたご多聞に漏れないようだった。