闘う巨乳なレジスタンス娘は失うものが何もない 作:かめのこたろう
「安くみられたものね。私はそういう女じゃない」
怒りも軽蔑もさほど演じなくて済んだ。
何故ならどちらも真実、自分の中に燃え滾っていたから。
たとえこの申し出がどれだけ予定通りで、いやむしろこれを引き出すことこそが計画の一つだったとしても。
破廉恥で汚らわしい、許されざる僭越な申し出を怒り拒絶する夜の女。
そう相手に認識させるには十分なものが私を包み込んでいるはずだった。
ひざまずくように密着していた身体を、スッとはなし、半裸に脱いだドレスを引き上げながら腰を上げた。
そしてそれまでとは一転、完全に無表情になった固い顔で、さっさと後ろを向いて足を進めだす。
「ぷふぅっ、気分を悪くしたようなら申し訳ない。だが決して君を安く見たとかそういうつもりはないのだ」
一切聞こえないように無視して進む。
カッカッと音高く床を鳴らすヒール。
もうこれで終わり。
縁が無かったわねと背中で語るように。
「君がどうしてもイヤならしょうがない。最初の報酬はもちろんここまでで出そう。だが……」
もう、入ってきた電子錠がいよいよ目の前というところだった。
「5倍。例えばそれだけ別でもらえるとしたらどうかね?」
ピタリ。
ヒールの音が止まる。
「もちろんこれは只一回だけの値段だ。もし君さえよければ、継続的にこの報酬で続けることだってこちらとしては提案したい」
「……」
複数人の男たちに同時に犯され汚される。
どろどろの生臭い汚物を身体中で溢れるほど受け入れさせられる。
その報酬が見合ったものなのかどうかはわからない。
いや、私自身の価値観ではありえないし、話にならない、考慮する余地のない愚問でしかない。
だけど、問題はこれが性を売り物にしている夜の女ならばどうかということなのだ。
どれだけ、この状況と申し出に心動かされ、天秤にかけうるかという『物語』に説得力があるかという。
「……何人相手にしなくちゃいけないわけ?」
冷たく硬いまま、だけど再び意思の疎通を始めるに相応しいだけの響きを含ませようとした。
「4人。これ以上には絶対にならん」
「アンタはそれをただ見てるだけだっての?」
「そうだ、私は対象外だと思ってくれていい」
「……」
背中越しの交渉はそこでいったん途切れた。
私は答えなど決まり切っているにも関わらず、切実で真剣みに溢れた逡巡をしてみせる。
やがてシンと沈黙が続いた後。
ゆっくりと振り返って、しばらくぶりに醜い肉の塊を直視した。
「キャッシュで払ってくれるんでしょうね?」
………
『契約は為されたと思っていいのかな?』
その言葉と同時に、奥から複数の気配が近づいてくると、目の前には裸の男たちが私を囲むように佇んでいた。
皆、見覚えのある顔だった。
先ほどまで私を痴漢し、卑猥なボディチェックで蹂躙してくれた黒服。
何故かサングラスだけは外していないのが、不気味かつ滑稽で腹立たしい。
「くくく……」
腕を組んだり、腰に手をかけた気取ったポーズで、値踏みするように口元だけを歪め、無言でこちらを窺う彼ら。
さすが、肉体自体の出来は主人とは対照的なものだった。
走り、構え、闘うことを生業とする者たちの引き締まった筋肉の造形物。
荒々しいまでの力とエネルギーが揺らめいて見えるかのよう。
その残虐なまでの攻撃性と本能を誇示せんとばかりに、全員、醜悪な器官を見せつけるようにおったてていた。
「……」
私は無感情に一瞥し、やはり沈黙したまま一歩足をふみだしていく。
何も考えないように。
感じないように。
徹底して、別人を演じ切るために。
そして最寄りの一人の前でゆっくりと膝をつくと、間髪入れずに目の前に迫ったものに手を添えて、一気に唇で丸呑みした。
「んふぅぅぅぅ……っ」
「ぶほほぉぉっ! さあ諸君、愉しみたまえ! 彼女のお許しは頂戴できたらしいぞ!」
配下に褒美を気前よく提供する愉悦に満ちた主人然とした言葉が終わる前に、既にほかの男たちも動き出していた。
右手と左手両方とも、それぞれ促されるままに、突き出されたものを握って動かし始める。
そして余った一人は私の背後に回り、後ろから抱き着く形で胸や太腿を撫でまわしていく。
ご丁寧に、背中に固くなったものを押し付け、嫌という程その存在を私に主張しながら。
「ん……っ、ん……っ、んんっ! んふぅぅぅ、んふぅぅぅっ。 んお、ふぅっ! ん……っ、ん……っ、ん……っ! ん……っ!」
ぐっぷぐっぷと唇で出し入れしながら、舌を使った。
両手でシコシコと、休まず動かし続けた。
胸や尻、そして最も敏感な場所から、こちらのことなどお構いなしに絶え間なく襲ってくる刺激に、時折停止しながらも、すぐに再開した。
本来なら溢れてやまないはずの怒りも拒絶も今は不思議なくらい感じなかった。
それだけ何もかもを凍結させて、停止させることに成功しているらしかった。
こんな複数人を同時に相手するなんて、初めてなのに。
自分でも意外なほど静かに受け入れて、やりこなそうとしていた。
たとえどれだけ憎んでも足らない相手だったとしても。
最終的に打ち倒すことを至上目的としている、まごうことなき宿敵そのものに好きにされているのだとしても。
「んんっ!? 〜〜〜〜〜〜〜っ! んっ! んっ! んっ! んっ! ぷはっ、はぁっ! はぁっ! んぶぅぅぅっ!!? ……っ、んーーーーーーっ!」
激しさを増す一方の、全身を襲う手つきに悶絶を隠せなくなっていた。
ぎこちなくつっかえつっかえになる奉仕に対して、徐々に強張る身体の緊張感。
背後の男にすっかり把握され、明確な目的に従ってトドメを差されに来ているのは明らかだった。
クリクリと乳首をこねくり回しつつ、くちゅくちゅと股間のクレパスを何度もなぞり、侵入を試みる指先。
時折、思い出したかのように、お尻の穴を弄ることを挟みながら。
「ん゛……っ! ぐぅ゛……っ!」
まず、この生意気な夜の女に思い知らせようとしていると。
プライドをへし折るように、簡単に身体が屈服してしまう事実を叩きつけてやろうと。
男の浅ましい残虐な意図を、はっきりと感じて理解した。
そしてなすすべもなく、私は耐えられそうもなかった。
どれだけこの状況と人格が創り上げて偽ったものだとしても、与えられる感覚だけはどこまでも本物だった。
肉体が齎す生理反応だけはどうやっても嘘などつきようがなかった。
つまりは、私はイキそうになっていた。
切なく、狂おしいものが、やるせなく身体の奥底に充満し、はじけそうになっていた。
イク……。
もう。
駄目……。
事実を淡々と受け入れるように、それだけを想った。
たとえどんな無様な身体現象を引き起こされたとしても、何も失うものなんてないはずだと。
そう心だけは守るように。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
喉奥まで突っこまれたまま、声もなく私はイッた。
それまで努めて機械的に動かそうとしていた、舌も、手も、頭も、完全に停止して。
高いヒールを履いたまま中腰になった不安定な身体は、その瞬間すべての感覚を失くして、ただ無限の解放感に包まれた。