闘う巨乳なレジスタンス娘は失うものが何もない 作:かめのこたろう
他に方法はない。
即座にそう、判断した。
重く湿った臭いが立ち込める、巨大な機関の内部。
まるで禍々しい邪神の神殿さながらの。
私たちが今まさに破壊することを目的としているそこ。
歪んだ力を集め精錬し、この大地を死に至らしめようとしている諸悪の源泉。
配管から漏れ出るかすかな蒸気と、警報器の機械的な灯りが、暗がりの中で不気味に明滅していた。
時限式の爆破装置を設置する、作戦のパートナーの手元を見つめながら、私はそっと息を吐いた。
「あとどれくらい?」
「……まだ今しばらくはかかるかもしれない。事前に掴んでいた情報のものから、一部変更されているようだ」
少し前、まるでこの作戦のためかのように、偶然再会した幼馴染であり凄腕の元兵士。
彼は気持ちを切り替えるように、背負っていた武器の位置を直しながら言う。
「幸先が悪いにもほどがあるわね。情報屋は後でたっぷり絞ってあげないと。……できる限り急いで」
「わかってる」
それから再び彼が無機質なコンソールに向き合い始めたその時だった。
通路の奥からカツンカツンと硬質な靴音が無慈悲に響き渡ってきたのは。
「っ!」
「く……っ」
今、最も遭遇するのは避けたい存在が、近づいてくる音に他ならなかった。
何もかもご破算になりかねない、破滅への予兆そのもの。
瞬時に私は冷徹な計算を脳裏で始める。
組織に所属するようになってすっかり我が物にした、本能みたいなものだった。
(ここで大きな騒ぎになるのはまずい。ましてや実力手段に訴えて、派手な衝突になったりしたら……)
まだこちらの本当の目的は気取られていないはず。
必要なのはもう止めようがないまでに事態を進めるための時間。
ならば。
私は切羽詰まった表情で手を動かす彼に素早く耳打ちする。
「作業を続けて。何とか時間を稼ぐから」
「ああ。だがどうやって?」
「……貴方は気にしなくていい。何があっても作業に集中することだけ考えて」
「っ!」
一瞬息を呑むようなそぶりをした彼をおいて、動き出した。
作業中の場所から迂回し、逆側から姿を現したようにみえる位置へと。
そして疑い深く周囲を見回しながら歩いている兵士たちの視界に入るよう、物陰から背中を覗かせた。
「うおっ! お、おい、あれっ!」
「おまえっ! 何者だ! 侵入したテロリストだなっ!?」
不覚にも見つかってしまったという体で、ぎくりと振り向く。
そして身構えて睨みつけようとした刹那、突きつけられている銃口に怯え、たじろぐ素振りをしてみせる。
「ひぃっ!」
我ながら会心の出来だったはずだ。
下手を踏んだテロリスト一味の女。
そう認識させるのに必要十分なものになっているのを確信していた。
「ま、まって! 撃たないで!」
手に持っていた護身用の銃を、放り出す。
即座の降伏に、男たちの警戒と殺気が揺らいだのがわかった。
「……よーし、動くなよ?」
「両手を頭の後ろで組んで後ろを向きなっ」
「わ、私まだ組織に入ったばっかりで……っ、ついてきただけ、なんにもわかってないの……っ!」
「御託は後でゆっくり聞かせてもらうぜ。いいから言う通りにしろ」
すくみ上りながらも、諾諾と指示通りに動く女を完璧に演じた。
兵士たちに背中を無防備に晒しつつ、両手を頭の後ろへ。
視界の先の薄闇の向こうで今この瞬間も作戦は遂行されているはずだった。
「さっさと報告するぞ」
「おう。……へへ、でもちょっと見ろよ」
「……おい」
指導部に連絡がされ、大々的なアラートでこの構造体全体が高度警戒体制に移行されることだけは避けなくてはならなかった。
今まさに綱渡りの、運命の分かれ道を辿っている。
その危機感と共に、男たちの会話に見出した僅かな活路、その可能性に賭けるしかなかった。
「危険なテロリストにしちゃ、随分とそそられる身体してるじゃねーか」
白いショートタンクトップに黒のタイトミニ。
お臍もお腹も、肩も腋も丸出しの、必要最低限の被覆に抑えた組み合わせ。
重く大きく持て余すほど成長してしまった胸の膨らみを、さらに積極的に主張するような運動に適した薄着。
尻と太腿を、下着と共に不可抗力的にチラチラと開陳することも覚悟しなくてはいけない、際どいスカート。
着慣れたその恰好が、一体どんな意味と価値を持っているのか、私は完全に把握していた。
格闘するために最も適した、ムリなく動きやすい姿であると同時に。
“こういった”やり方で万が一の場合に非常手段に訴えるためにも便利な恰好だと。
男たちにとって、これがどういったもので何を齎すものなのか、理解するための時間は十分すぎるほど過ぎていた。
「他に武器はねえな? こっちむきな」
「やめとけって!」
一人の制止の声を聞きながら、私はゆっくりと振り返る。
そして今この時最も相応しい、最適な対応をするべく、口を開く。
「お、お願い、許して……っ」
怯え、縋る、弱弱しい女の眼差しで。
さらに何気ない動きで身じろぎして見せた。
ぶるんっと、自分の肉体の中でも最も主張の強い部分がどうなるか計算づくで。
ごくりと。
薄いタンクトップに包まれて揺れ弾む場所へと、男たちの視線が集まったのを確認できた。
あとは。
「なんでもするからっ!」
駄目押しの一声。
さあ、この負けるわけにはいかない危険な賭けの結果は?
「……上に報告したら、すぐに連れていかれてオアズケってことか」
じっと同じ場所から視線を動かさずに、呻くような声が漏れ出てきた。
さっき制止しようとした方の男だった。
そして即座に応じるもう一人の声には、他に選択肢などないと確信した響きが溢れていた。
「へへ、滅多にないこんなチャンス、むざむざ逃しちまうのは勿体なさすぎるだろ。これも手当の一つだと思おうぜ?」
配られたカードは悪くはなかったらしい。
……よし、とりあえずは勝ったかと、内心で息をつく。
ひとまず乗り越えたらしい安堵と、これから始まることへの覚悟の吐息だった。
………
「これは尋問だ。動くなよ?」
両手を頭の後ろで組んだまま立ち尽くす私に、銃口を突きつけながら近づく男の言葉。
形ばかりは未だ一切の油断なく、警戒を解かずに確認を続ける所作振る舞いのまま。
でももう、その危険な武器からは弾丸が打ち出される心配はほとんどなくなっていることを私はわかっている。
「可愛い顔して、なんでテロなんかやろうと思ったんだか。へへ、それにしてもすげえなこれ?」
今まさに右胸の先端を狙いすまして距離を縮める銃口。
もうほんの僅か、触れるか触れないかの場所。
本来ならこれ以上危機的状況はないはずにも関わらず、やはり一切物騒なものは感じなかった。
いや、正確には別の危険性だけを十二分に察していた。
「ああ、お願い……、撃たないで……っ」
それでも一応、言わざるを得ないセリフ。
今の状況で最も相応しい言葉を機械的に導き出して、口にする。
必死で命乞いをする女を再現するために。
「お前しだいだな?」
「んっ!」
どうやら、一応うまくいったらしいのは、とうとう僅かな距離さえ喪失した銃口の感触で知った。
狙っていた中心からわざとそらして、胸を下から押し上げるように、長細い物体に突き込まれ埋没される感覚。
タンクトップを巻き込んで柔肉に沈み込む、銃器の先端。
「お前は一応、そこで狙いをつけてろよ」
「わかってるよ」
当然の警戒を維持したまま、蹂躙を始めるらしかった。
沈み込ませた先端を、弄ぶみたいに何度かゆっくりと出し入れしたあと、本格的な“尋問”へと移っていく。
「あ……、ん……っ」
最初は外側から円を描くように。
嬲るような緩慢な動きで、銃口が僅かにのめり込んだまま、柔らかな表面を辿っていった。
「たまんねーな。お店でもこんなの拝めねーよ」
「一応、音声切っとくぜ」
「ああ、たのまあ」
渦を描いて徐々に中心へと近づいていく。
そのジワジワと追い詰められる刺激と予感。
きゅんっと、先端に何かが蓄積していくような。
じわぁっと屹立し、接している薄布を押し上げていく確かな抵抗。
もう、触れるか触れないかのところまで来た時には、自分自身がどうなっているかはっきり自覚せざるをえなかった。
「おやおや、気のせいか? おっぱいのさきっぽになんか出てきてるぜ?」
「ううっ! いやぁ……っ」
思わずといった風に腰を捩る。
あれほど動くなと言っていたわりに、男たちはもう随分と寛容な様子らしかった。
「見ろよ、でっかいパイオツで乳首ビンビンにおったててやがるっ」
「ああ、よーく見えるよ。素敵な眺めだな」
「ん……っ、ん……っ、くっぅぅぅっ」
生理的に必然な勃起現象を辱められる。
銃口を使った執拗な確認はしばらく続いた。
膨らみの先端で薄布越しにはっきりと盛り上がった突起を、上に下に、変形するほどこねくりまわすように。
あるいはふちに沿って円を描いてなぞるように。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
そのたびに意図せぬものが迸って、背筋をゾクゾクと走り抜けた。
演じる必要もないまま、私はモジモジと太腿を切なそうにこすり合わせて、自分の肉体が励起しつつあるのを淡々と把握した。
そんな状態でも何気なく、視界の外、暗闇の向こうへと意識を向ける。
まだ……、時間を稼ぐ必要があるらしい。
「じゃあそろそろ本格的に愉しませてもらうか」
カチャカチャとベルトを外し、ズボンを降ろし始める男の動き。
相変わらず頭の後ろで手を固定したポーズのまま、さらなる試練を迎える心構えをしなくてはならなかった。