種無しの男が、超ハイスペックな後輩に妻の種付けをお願いする話 作:minnie_remon
ホテルでの禁断の日から、数週間が経過していた。
12月24日、クリスマスイブの朝。街中が華やかなイルミネーションに包まれる中、達也と亜美の自宅には、静かだが一生を左右するような緊張感が漂っていた。
洗面所に閉じこもっていた亜美が、ドアを開けて廊下に出てきた。その手には、白とピンクの小さなスティック…妊娠検査薬が握られていた。
「達也さん……っ」
亜美の瞳からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちていた。声は激しく震え、胸の上下を繰り返している。彼女は震える指先で、判定窓にクッキリと浮かび上がった2本の赤い線を達也に見せた。
「できた…できたの! 私、お腹に赤ちゃんがいるのっ…!」
「亜美…!本当か…!?」
達也もまた感極まり、泣きじゃくる亜美を強く抱きしめた。
「よかった…よかったなぁ、亜美…!」
出口の見えない暗闇の中で泣き明かした夜。妻の悲しむ顔を見続けてきた達也にとって、新しい命を授かったという事実は紛れもなく胸を打つ歓喜の瞬間だった。
ただ…
妻を抱きしめながら涙を流す達也の胸の奥底には、喜びの感情と同居するように、冷たく重い黒い塊がどっしりと居座っていた。
(本当に、一発で妊娠させたのか…)
たった一度。悠斗が自信満々に語った通り、本当にたった一度で彼の遺伝子は寸分の狂いもなく亜美のお腹の中に根を張り、生命を宿させた。「50億」というあの規格外の数値が嘘ではないと証明するように。
自分が何年かけても、これから何年かけようとも、決して授けてあげることのできない命。それを悠斗は、たった一度の機会で…
圧倒的な生命力の差。男としての根本的なレベルの違い。
妻が自分以外の男によって「女」にされ、母親になれたという事実が、達也の自尊心をズタズタに引き裂いていく。歓喜と同時に押し寄せてきたのは夏海悠斗という完璧超人に対する、絶対に埋めることのできない決定的な敗北感と、惨めすぎる劣等感だった。
………………………………………
達也は震える指でスマートフォンを操作し、悠斗の携帯へと電話をかけた。
『もしもし、達也さん。何かありましたか?』
スピーカー越しに聞こえる悠斗の声は、いつものように落ち着いており、清涼感すら漂っている。
「悠斗…ついさっき、亜美の妊娠が発覚したんだ。本当に君のおかげだ。ありがとう」
達也がそう伝えると、電話の向こうで、悠斗が一息つくような音を立てた。
『そうですか、本当に良かったです。 正直、結果が出るまでは僕もドキドキしていましたからホッとしました。達也さん、本当におめでとうございます』
誠実で、安堵に満ちた声。達也は「近いうちに改めてお礼をさせてほしい」と伝え、感謝の言葉を重ねて電話を切った。
だが、通話を終えた悠斗の表情に、安堵の気配などというものは一切窺えなかった。
都心の高級オフィスビルの自室で悠斗はスマートフォンをデスクに置くと、唇の端をわずかに吊り上げた。その瞳には、溢れんばかりの強烈な自尊心が光っていた。
(一発で妊娠させる?そんなもの、当然の結果に決まってるじゃないか)
悠斗は背もたれに深く体重を預け、心の中で自賛する。俺を一体誰だと思っているんだ。WHO基準値の100倍以上の精液を持っている男だぞ。俺の一発は、そこらの男の百発以上に相当するんだ。しかもタイミングを確実に見計らい、コンディションも極限まで高めた上で、全ての精子を余すことなく注ぎ込んでやったんだ。妊娠しないはずがないだろう…
自分が完璧な成果を出したという全能感に満たされる悠斗。その一方で彼の頭には、ふと不謹慎で贅沢な雑念がよぎっていた。
(でも、もし今回万が一妊娠に到ってなかったら、亜美さんをもう一度抱く機会があった訳か…)
脳裏に浮かぶのは高級ホテルで達也をロビーに待機させ、その妻である亜美の艶やかな身体と、恐怖と快楽に揺れる表情を堪能した、そのひととき。
もし2回目があったなら、次は1回目とは違った体位を試してあげられたのに。背後から突き上げたり、もっと激しく体の奥深くまで揺さぶって、1時間で3発くらい濃厚なのを撃ち込んでみたかったな…
あの極上の体をもう二度と味わえないと思うと少しだけ残念だ…そんな歪んだ征服欲と惜別感を抱きながらも、悠斗は一発でミッションを完遂した自らの能力に、深い満足感を覚えていた。
………………………………………
その日の夜。キャンドルの灯りがゆらめく高級フレンチレストランの個室で、悠斗と美桜はクリスマスイブのディナーを楽しんでいた。
悠斗がグラスを傾けながら切り出した話題は、昼間の「報告」についてだった。
「え、達也さんたちのところ、本当に妊娠したの?」
「ああ。今朝、検査薬で陽性が出たって達也さんから連絡があったよ。予定通り、一発で成功だ」
悠斗がごく当たり前というように淡々と伝えると、美桜は一瞬目を見開いた後、心底感心したように息を漏らした。
「すご…やっぱり悠斗って、本当に怪物だよね。たった一回で一発回答なんて…」
「おいおい、一発で終わらせてって言ったのは美桜だろ。それともまさか、俺を信じてなかったのか?」
「そういう訳じゃないけど…でも本当に一発でやり遂げるなんて」
まさに有言実行の男、悠斗。
美桜の瞳には、愛するパートナーの「男としての圧倒的な強さ」に対する感服が宿っていた。
「こうなると、避妊だけは確実にしなきゃダメだね。…今夜もっ」
「ハハハ…」
この後は、ホテルのスイートルームを予約している。完璧超人とトップ女優が一緒に過ごすクリスマス・イブに相応しい部屋を。
「ねえ、悠斗。今日ってクリスマス・イブでしょう?」
ふと、美桜が言った。
「そうだけど?」
「それってさ…悠斗の精子は、あの夫婦にとって『サンタクロースからの最高のクリスマスプレゼント』だったってことじゃない」
美桜はクスリと可憐に笑って。
「子どもが欲しくて泣いてた夫婦に、最高の遺伝子と命をプレゼントしてあげたのよ。あの夫婦は一生かけて悠斗に感謝し続けなきゃ罰が当たるわ」
トップ女優らしい華やかな毒と、パートナーへの絶対的な誇りに満ちた美桜の言葉。
それを聞いた悠斗は、ナプキンで優しく口元を拭うと、満足気に微笑んだ。
「まあ…確かにそうかもしれないね」
他人の人生の危機をいとも簡単に救ってしまったという全能感に浸りながら。
「美桜の言う通り、今回ばかりは感謝してもらっても罰は当たらない、いい仕事ができたかな」
夜景を見下ろすレストランの中で悠斗はワインの芳醇な香りと共に、男としての優越感と満たされた自尊心にどっぷりと浸かっていたのだった。