※この作品はR-18です。

種を求められる異世界放浪   作:ボルメテウスさん

30 / 30
生命力の確かめ方

囲炉裏の火が、小屋の中を橙色に染めている。

 

俺は促されるままにシャツのボタンを外した。裂けた布の下から、右肩の傷が見えるはずだった。妖怪の爪が掠めた、あの痛み。

 

「…あれ」

 

指先で肩を探る。裂けたシャツの下の皮膚は、なめらかだった。血の跡はある。確かにあの時、爪は俺の肩を切り裂いた。なのに。

 

「塞がっている」

 

傷口が、ない。かさぶたすら残っていない。ただ、乾いた血の痕だけがそこにあった。

 

「…やはりな」

 

式が囲炉裏の前にしゃがみ込んだまま、じっと俺を見ていた。

 

「傷が塞がるのが早すぎる。あんたの生命力は、常軌を逸している」

 

「これが、生命回帰の力です。俺の体は消費した生命力を循環させて再利用できる」

 

「再利用、か」

 

式は立ち上がった。着物の裾が揺れ、腰の刀がかすかに鳴る。

 

「妖怪が狂うのも無理はない。生き血の匂いが、そこら中に溢れているようなものだ」

 

彼女は一歩、俺に近づいた。瞳が橙の光を受けて輝いている。

 

「両義式。死人絡みの性分でね」

 

初めて名乗った時の言葉が、頭の中で反響した。

 

「死人に縁があるから、生きている者の生命力にも敏感なんだ」

 

「それで、俺を助けたんですか」

 

「さあな。気まぐれだと言ったはずだ」

 

式の手が、俺の胸に触れた。白い指先が心臓の上に置かれる。

 

「だが、せっかく拾った命だ。少しは楽しませてもらわないと」

 

「楽しむ?」

 

「あんたの生命力が、どれほどのものか。妖怪たちがあそこまで執着した理由を、私自身の目で確かめたい」

 

式の指が、ゆっくりと俺の胸をなぞった。傷ひとつない肌の上を、冷たい指が滑っていく。

 

「あんた、ここに寝ろ」

 

彼女が顎で指したのは、小屋の奥にある簡素な寝台だった。板の上に薄い布団が敷いてあるだけの、質素なもの。

 

「え、ちょっと待ってください。怪我がないなら、もう大丈夫で」

 

「怪我がなくても、私が確かめたいと言っている」

 

有無を言わさない口調だった。セフィともヨルとも違う、静かな強制力。

 

俺は言われるままに寝台に腰を下ろした。ギシリと木が軋む。

 

式は俺の前に立ったまま、着物の襟元を少し緩めた。白い首筋が、火影に浮かび上がる。

 

「怖がらなくていい。殺しはしない」

 

「そういう問題じゃないというか」

 

「なら、何の問題だ」

 

彼女は俺を押し倒すように、胸に手を置いた。ゆっくりと体重をかけて、俺の背中が布団に沈む。

 

(この人、本気だ)

 

式が俺の上に跨った。袴越しに、彼女の体温が伝わってくる。

 

「久世生真。あんたの体は、この枯れた世界では異物だ。だが」

 

式の指が、俺の腹筋をなぞる。へそのあたりで止まり、ゆっくりと円を描いた。

 

「異物だからこそ、興味が湧く」

 

「式さん、あの」

 

「式でいい」

 

彼女の顔が近づいた。左右非対称の髪が、俺の頬に触れる。

 

「死人に縁のある女が、生命力の塊のような男に触れたらどうなると思う」

 

「…分かりません」

 

「私もだ。だから、知りたい」

 

式の唇が、俺の耳元に近づいた。

 

「教えろ。お前の全部を」

 

その声は、先ほどまでの淡々とした調子とは違っていた。低く、熱を帯びた妖艶な響き。

 

俺の体の奥で生命回帰が静かに脈動を始める。式の身体に宿る、かすかな死の気配を感じ取って。

 

彼女はゆっくりと笑った。炎の揺らめきが、その横顔を照らしている。

 

「…悪くない。お前という男は」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【R18】ポケモン世界に転生したらハーレムができていた件(作者:天野蒼夜)(原作:ポケットモンスター)

男は車に轢かれそうになった子供を庇ったことで命を落とした。男は特典によってポケモントレーナー“レム”としてポケモン世界に転生することになるが、事あるごとに女の子と出会いを重ねた末、ひとつ屋根の下で暮らすことに!?▼男1人に女の子複数、これはどう見ても男が一度は夢見るハーレムそのもの。そんな状況で何も起こらないわけなく……レムは女の子達とエッチな第2の人生を送…


総合評価:420/評価:8.4/連載:14話/更新日時:2026年09月25日(金) 05:50 小説情報

【R18】【R18版】争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい(作者:大気圏突破)(原作:ハイスクールD×D)

全年齢向けで執筆していた『争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい』のR18作品になります。あくまで作者の妄想の産物をぶつけるだけなので箸休め程度に受け取ってください▼基本は1話完結です


総合評価:557/評価:8.25/連載:5話/更新日時:2026年09月14日(月) 13:21 小説情報

【R18】ながされて性乱島(作者:星屑の騎士)(原作:色々)

普通の男子高校生、神凪 悠二はある日、気がつくと見知らぬ場所にいた。▼そこは、二次元の女の子たちが流れ着く夢のような島だった。▼悠二は、そこで二次元美少女たちと仲良くなり(意味深)、その果てに何を為すのか。▼【注意事項※確認必須】▼※該当キャラが登場するようになってから作品名タグを追加させていただきます。▼※タグを確認のうえでの閲覧をお願いします。苦手な場合…


総合評価:1944/評価:8.9/連載:14話/更新日時:2026年10月10日(土) 00:17 小説情報

【R18】学園黙示録の支配者は孕みざかりの爆乳おっぱいの牝達と貪り乳くりあうことしか考えないのでゾンビに満ちた世界は救わない(作者:オッパイは正義マン)(原作:学園黙示録HIGHSCHOOL OF THE DEAD)

ゾンビだらけになった日本で支配者と呼ばれ、爆乳おっぱいの牝たちを囲い、極上の牝の身体を好き放題貪りつくしていた。▼早馬総士(24)ゾンビ世界になった日本で生き抜く鍛え抜かれたヤリチン。快楽楽園の豪邸で爆乳おっぱいの美少女、美女を抱きまくることを生き甲斐としている。▼フルボッキ状態で25cmはある巨根の持ち主で絶倫。▼❤️早馬総士のハーレムメンバー❤️▼No.…


総合評価:503/評価:-.--/完結:23話/更新日時:2026年07月01日(水) 15:58 小説情報

【R18】豪華客船で過ごす日々(作者:アジの塩焼き)(オリジナル:現代/日常)

 都会の激務に追われ、心身ともに摩耗していたあなたの元に、差出人の名も行き先も記されていない象牙色の招待状が届く。 日常のすべてを投げ捨てたいという乾いた衝動に背中を押され、あなたが深夜の工業埠頭へ向かうと、そこには闇夜に白く浮かび上がる巨大な客船《ステラ・マリス》が静かに佇んでいた。▼ 改行や文章の試行錯誤をしていますので、各話毎にテイストが違うと思います…


総合評価:97/評価:-.--/連載:31話/更新日時:2026年09月15日(火) 17:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>