精液にまみれた顔のまま、式が俺を見下ろしていた。
橙色の火影が、彼女の白濁に染まった顔を妖しく照らしている。宝石のような瞳だけが、濡れた睫毛の間から異様な輝きを放っていた。
「式…」
「まだ足りない」
彼女は短く言った。声が少し掠れていた。
「あんたの生命力、もっと欲しい」
式は着物の帯に手をかけた。するりと解けていく帯。着物の前が開き、白い肌が火影に浮かび上がる。
「俺の体が…あんたにとって毒じゃないとは限らない」
「死人絡みの性分だと言った。生者の生命力に触れれば、どうなるか…知りたい」
式の着物が肩から滑り落ちた。
あっさりとした白い肌。細い鎖骨。控えめな膨らみの胸。淡い色の乳首が、夜気に晒されて硬く尖っている。
腰の曲線が窪み、そこから脚が伸びる。袴の下から覗く太腿は引き締まっていて、刀を振るうために鍛えられた筋肉のラインが浮かび上がっていた。
「綺麗だ」
素直に声が出た。
式は一瞬だけ表情を緩めたが、すぐにいつもの掴み所のない顔に戻った。
「お世辞はいらん」
彼女は俺の上に跨った。俺の太腿の上に彼女の太腿が重なる。肌と肌が触れ合う熱が、直接伝わってきた。
「あんたは、変なやつだな」
「変?」
「妖怪に食われかけた直後に、女を褒める」
「状況に関係なく、綺麗なものは綺麗です」
「…呆れた」
式は小さく笑った。精液の乾いた顔面で笑うその姿は、凄惨さと美しさが同居していて、俺は目を逸らせなかった。
彼女の手が、俺の胸に置かれた。心臓の上に、冷たい指先。
「温かい」
「ああ」
「死人にはない温度だ」
式の瞳が揺れた。一瞬だけ、何か脆いものが顔を覗かせた気がした。だがそれはすぐに消え、彼女はゆっくりと顔を近づけてきた。
「ん…」
唇が重なった。
柔らかい。冷たい。そして少しだけ、精液の味がした。
俺は式の背中に手を回した。細い背中が、俺の腕の中に収まる。肋骨の一本一本が浮き出るほど細い身体だ。刀を振るうには十分な筋肉はあるが、それでもこの身体の華奢さは、彼女が普段無理をしていることを物語っていた。
(食事、ちゃんと摂ってないんじゃないか)
(この痩せ方は、ただの武芸の稽古だけじゃない)
(生きることへの執着が、薄いのかもしれない)
思考が唇の感触に溶かされていく。式の舌が、俺の唇を割って入ってきた。ねっとりとした舌が、俺の舌を絡め取る。
「んちゅ…れる…んっ…」
角度を変えて、何度も唇を重ねる。舌と舌が絡み合う水音が、小屋の中に響いた。
俺の手が式の腰を撫で上げる。腰骨のラインを指でなぞると、式の体がビクリと跳ねた。
「っ…!」
「敏感なんですね」
「…黙れ」
式が俺の唇を軽く噛んだ。チクリとした痛み。だがその直後、今度は優しく吸い上げられた。
「んんっ…」
俺の口から声が漏れる。式の唇が、俺の唇を嬲る。下唇を吸い上げ、上唇を舌で撫で、また深く吸い合う。
ベロチュー。唇だけで交わる濃密な時間。
式の吐息が俺の顔にかかる。甘い。枯れた世界に咲く、最後の花の匂い。
「はぁ…ん…イクマ…」
名前を呼ばれた。初めてだ。式が俺の名前を呼んだ。
「式」
「…ん」
「もっと、こっちへ」
俺は式の背中を引き寄せた。胸と胸が触れ合う。式の小さな胸が俺の胸板に押し付けられ、乳首と乳首が擦れ合った。
「んっ…!」
式の喉から、小さな嬌声が漏れた。今までの冷淡な態度からは想像もつかない声。
「式…好きにしていいですか」
「…最初からそうするつもりだった」
彼女は俺の耳元で囁いた。吐息が耳の中に潛り込み、脳髄をくすぐる。
「あんたの中に、私を入れろ」
直球だった。セフィの時とは違う種類の直球。セフィは王族として俺を必要とした。式はただ、生を求めていた。
「…分かりました」
俺は式の身体を寝台に押し倒した。
「っ!」
式の背中が布団に沈む。長い髪がシーツの上に広がる。火影に照らされた白い肌が、闇の中で浮き上がるように輝いていた。
「式、開いて」
俺は式の膝に手を置いた。ゆっくりと内側へ開かせていく。
式は抵抗しなかった。むしろ自ら脚を開いた。袴の裾が滑り落ち、白い太腿が露わになる。
「…見るな」
「見ます」
「…呆れた」
そう言いながら、式の顔は赤くなっていた。
脚の奥に、薄い茂みが見えた。式の秘部は、すでに濡れていた。ピンク色の花弁が、愛液で淡く光っている。
「濡れてる」
「…うるさい」
「俺のせいですか」
「…他に誰がいる」
式は自分の脚をさらに開いた。俺を拒絶しない。むしろ、受け入れる体勢を作っている。
「来い」
短い一言。その言葉の重みに、俺は背筋が震えた。
俺は式の上に覆いかぶさった。ペニスが、式の秘部に触れる。熱い。濡れている。そして、きゅうっと収縮している。
「んっ…!」
亀頭が花弁を割って入っていく。ぬぷり、という音と共に、先端が秘口を押し広げた。
「あっ…!」
式の背中が反った。白い喉が天井を向く。細い指が俺の肩に食い込む。
「大丈夫?」
「…当たり前だ…入れてくるな…と言いたいところだが…」
式の声は震えていた。だが脚は俺の腰に絡みついている。離すまいとしているのが分かった。
「んくっ…!」
さらに奥へ。俺のペニスが、式の膣内を一寸ずつ埋めていく。
狭い。セフィの時よりもずっと狭い。式の膣壁は、きつく俺を締め付けていた。癖のある内壁が、ひだひとつひとつが俺のペニスに絡みつく。
(すごい…締め付けが)
(まるで刀の鞘にペニスを差し込んでいるみたいだ)
(…いや、刀の鞘は冷たいけど、式の中は灼けるように熱い)
「あぁっ…! イクマ…入ってくる…!」
式の声が高い。普段の淡々とした調子とは別人のようだった。
「全部、入った」
俺は根元までペニスを埋めた。式の最奥に先端が触れる。
「んんっ…! 奥…当たってる…!」
式の内壁が、俺のペニスを収めると同時に激しく収縮し始めた。膣壁がひくひくと蠢く。まるで俺のペニスの形を確かめるように、触れては離れ、触れては離れを繰り返す。
「式…動くぞ」
「うん…きて…!」
俺は腰を動かし始めた。
ゆっくりと引き抜き、ゆっくりと突き入れる。浅いピストンから始めて、式の体が慣れるのを待つ。
ズブ…ズブ…ズブ…
「んっ…んっ…んっ…!」
式の喘ぎがリズムを刻む。俺の動きに合わせて、彼女の腰も揺れ始めた。
「イクマ…もっと…!」
「分かった…!」
俺はピストンの速度を上げた。浅いストロークから、深いストロークへ。亀頭が子宮口を叩くたびに、式の全身がビクンと跳ねる。
「あっ! あっ! あっ! そこっ! 奥っ!」
式の脚が俺の背中に回った。白い太腿が俺の腰を挟み込み、逃がさないと主張する。
「式…すごい締め付けだ…!」
「んんっ…! だって…あんたのが…大きすぎて…!」
膣内はきつかった。俺のペニスを包む肉壁が、容赦なく締め付けてくる。引き抜く時は名残惜しそうに吸い付き、突き入れる時は奥まで飲み込もうと蠕動する。
(この人、普段はあんなに淡々としているのに)
(ベッドの上では、全然違う)
(すごいギャップだ)
「イクマ…! もっと…深く…!」
式が俺の首に腕を巻き付けてきた。顔が近づく。息がかかる距離。
「んっ…ちゅ…!」
唇が重なった。膣内にペニスを埋めたまま、唇を重ねる。舌が絡み合う。
「んちゅ…れる…んっ…んん…!」
ベロチューとピストンが同時に俺を攻め立てる。脳が焼き切れそうだ。
「はぁ…んっ…イクマ…イクマ…!」
「式…式…!」
名前を呼び合う。声と声が重なる。汗が交じり合う。体温が融合する。
(この人が求めているのは、生命力だけじゃない)
(寂しさを埋める温もりなんだ)
(死人に縁のある女が、生者の温もりに飢えている)
俺は式を強く抱きしめた。胸と胸が押し付けられ、心臓の鼓動が互いに伝わる。
「式…俺がいる」
「…んっ…!」
「俺がいるから…!」
俺は腰を激しく打ち付けた。
ズン! ズン! ズン! ズン!
肉と肉がぶつかる音が、小屋の中に響き渡る。シーツが悲鳴を上げ、寝台が軋む。
「あっ! ああっ! イクマっ! イクマぁっ!」
式の声が高くなった。背中が弓なりに反る。豊かではない胸が揺れる。乳首が硬く尖り、俺の胸と擦れて赤く染まっている。
「式…俺も…そろそろ…!」
「んっ…! 出して…! 中に…!」
「式…!」
「イクマの全部…私の中に…!」
限界だった。
俺は式の最奥に向かって、ペニスを突き立てた。
ドクッ! ドクドクドクッ!!
「あぁぁっ!!」
射精と同時に、式が絶頂した。
ビクンッ! ビクンビクンッ!!
式の全身が痙攣する。膣壁が俺のペニスを噛み締め、搾り取るように収縮した。
「うっ…! 搾られる…!」
精液が注がれるたびに、式の膣内が蠕動する。一滴残らず吸い取ろうとするかのように。
「あへぇ…! あぁ…温かい…!」
式の瞳が霞む。宝石のような瞳が潤み、焦点が定まらなくなる。
「イクマの…生命力が…私の中に…!」
ビクビクと脈打つペニス。それに呼応するように、式の膣内も収縮を繰り返す。
「はぁ…あぁ…熱い…お腹が…熱い…!」
式の手が、自分の下腹に触れた。
「ここに…入ってる…!」
俺の精液が、式の体内に注がれている。生命回帰が、式の枯渇した生命力を満たしていく。
「温かい…!」
式の目から涙がこぼれた。
「久しぶりに…生きてるって…感じた…!」
「式…」
俺は式を抱きしめた。射精後の余韻の中で、二人の呼吸が重なる。
「私ね…」
式が、消え入りそうな声で言った。
「死人とばかり向き合ってきたから…生きている実感が…なかった」
「…」
「でも今、あんたの温もりを感じて…分かった」
式は俺の胸に顔を埋めた。
「生きててよかった…あんたに会えて…よかった…!」
その言葉に、俺の胸が熱くなった。
(この人は、強い)
(強いけれど、寂しかった)
(死と隣り合わせの生活の中で、誰にも頼れなかった)
(だからこそ、掴み所がなかった)
(俺に触れて、初めて緩んだんだ)
「式」
「…ん」
「これからも、俺が温めてやる」
「…馬鹿」
式は俺の胸に顔を擦り付けた。
「死人の性分が、生者に甘えるな」
「性分なんて関係ない。俺がそうしたいんだ」
「…うるさい」
式は黙った。だが、俺を抱く腕に力がこもった。
囲炉裏の火が、パチパチと音を立てている。橙の光が、二人を包み込む。
小屋の外では、風が杉の枝を鳴らしていた。
遠くで鐘の音が聞こえる。ドーン、ドーン。
瑞穂州の夜が、ゆっくりと更けていく。